吉田篤弘のレビュー一覧
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流星シネマは、屋根裏のチェリー、鯨オーケストラとで三部作となっており、そのひとつめにあたる。
3部作を通して根底にあるのは、喪失とそれを見つめて新たな何かをつくりだす話だと思う。
流星シネマは、鯨塚のある町で発行されている小さな新聞「流星新聞」、-それは外から来たアルフレッドにより作り始められたものだが-そのアルフレッドの意図せぬ帰郷から物語は始まる。
アルフレッドがいなくなった今、流星新聞は、新聞づくりのお手伝いをしていた太郎が作っていかなくてはならない。
新聞の発行を続けることは、帰郷することになったアルフレッドの願いだから。
「流星新聞」を取り巻くのは、個性豊かな街の人々(犬)。
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私にとって、肩の力を抜いて心地よい時間をすごすのにぴったりな本が、吉田篤弘さんの物語です。
実はこの本は、読むのがもったいなくて今までとっておいた本です。装幀は、クラフト・エヴィング商會。味のあるイラストがまたとてもいいんです。
本を開くと、寝る前に一話ずつ読むのにほどよい長さの短編が、24編紡がれていました。
とるにたらないもの、忘れられたもの、世の中の隅の方にいる人たちのお話は、どれも心を穏やかにさせてくれました。時にクスッと笑えたり、なるほどねと思ったり、物語の続きを思い描いたりしながらの読書でした。
あとがきには、吉田さんのこの本への思いが書かれていました。私にとっての「月とコ -
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いやあ、出だしの時代背景や主人公の職業から、てっきり吉田篤弘さん自身のことを綴っているエッセイかと思って読み進めていた。
ら、小説だったのね。
1986年当時にいたという女性2人のジャズバンド『ソラシド』を追う主人公の話。
主人公は若かりし頃、ダブル・ベース(コントラバス)を偶然ゴミ置き場で拾い、あまりの大きさに「エレファント」と名付け、一人練習していた。
『ソラシド』の薫もダブル・ベースの奏者ということで、興味が湧いたのだった。
しかし、レコードも出したことのないマイナーなバンドで、たま~に雑誌の隅に紹介が載るくらいなので、追跡は困難を極めるのだが。
あるとき、『ソラシド』が映画 -
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死んだ飼い犬ベニーが体の中にいる、クラリネット奏者のテツオが鯨オーケストラと出会い、新たな音楽を奏でていくまでの物語。
けれど、それに関わるいろいろな人の物語がそこに織り重なって、重奏的なハーモニーを聴いているかのような繊細な物語になっていく。
別の目的で行った美術館で、たまたま開催されていたポール.モカシンの深海魚展。
モカシンといえば、あの、モコモコとした靴のことでは? と疑問を抱きながら入った展示室で荘厳なハーモニーのような真っ白の鯨に出会ってしまったり。
人ちがいをされて訪ねた食堂で、たまたま出会った土曜日のハンバーガーの完璧な美味しさに舌鼓を打ちながら、たまたま楽団員募集の貼り紙