吉田篤弘のレビュー一覧
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六年前に逝ってしまった恋人。
正式に婚姻はしていなかった。
自分(多江)の他にもうひとり女が居ると思っていたからだった。
だけど彼亡き後も続けてきたお店をたたむことになり、友人やラジオからの言葉もきっかけになり、その女に会いに行くことにした。
「さくらと海苔巻き」より
ラジオからの声は不思議だ。
こちら側は見えていないし、そもそも万人に向けて話しているというのに、ひょいと自分に寄り添ってくれることがある。
ハッとさせられたり、共感したり、背中を押してくれたり、思わず笑みがこぼれたり。
そんな小さなお話が、美味しい食べ物と共に12話収められている。
紙カツ、海苔巻き、きつねうどん、ビフテキ、お -
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三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の最後。
書き出しは 「人は皆、未来に旅をする」
前2作に登場していなかった曽我哲生が主役。
『屋根裏のチェリー』より、さらに先の様子が描かれる。
『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』での出来事がいくつも曽我と密接に結びついていた。
太郎の幼なじみであるミユキが惹かれた絵のモデルが曽我だった。
この事実を知った曽我は〈定食屋あおい〉でミユキと出会うことになり、サユリの作るハンバーガーも口にする。
そして、店に貼ってあったクラリネット奏者募集のチラシを目にする。
曽我はジャズ演奏のクラリネット奏者でもあった。
曽我の絵を描いた画家 -
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三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の第二部。
書き出しは 「そして、冬はある日、何の予告もなしに終わってしまう」
『流星シネマ』の書き出しは「この世界は、いつでも冬に向かっている」だったので、なにか寂し気な予感がした。
岡小百合こと「サユリ」目線の物語で「チェリー」はサユリの中のもう一人の自分。
つまり、チェリーはサユリの頭の中にいて、控え目な現在のサユリの行動を後押しする心の声のようだ。
『流星シネマ』でのいくつかの出来事がサユリ目線でも語られるが、『流星シネマ』より未来に物語は進む。
鯨の復活に取り組む人物と並行して、鯨オーケストラの復活に取り組むのがサユ -
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三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の第一部が『流星シネマ』
全部で900ページ程になるが、この順番に一気に読んだ。
『流星シネマ』は、太郎の目線で語られる。
本作品は、書き出しの文に興味を惹かれる人が多いので、3作品共に記すことにする。
本作品の書き出しは 「この世界は、いつでも冬に向かっている」 だ。
都会の端の鯨塚がある町で暮らす人々の物語で、章ごとに異なる登場人物に焦点が当たる。
かつて町に存在していた「鯨オーケストラ」と、かつて存在していた川に「迷い込んだ鯨」の復活に歩み出すまでの話。
鯨オーケストラでオーボエ奏者だった岡小百合さんは、次作『屋根裏のチェ -
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幻のインク〈六番目のブルー〉探しの旅も最終巻を迎えました。「インク三部作」の第3巻です。
〈五番目のブルー〉 + 「?」 = 〈六番目のブルー〉
という方程式を解くには、〈五番…〉を移項して
「?」 = 〈六番目のブルー〉 − 〈五番目のブルー〉
あはっ、懐しい中1数学!
でも、物語は決して数学で割り切れるほど簡単なものではありませんよね。巡り巡ってやっと辿り着いた〈六番目のブルー〉の謎は、きれい過ぎるくらいに収束します。世界の不思議な巡り合わせ、つながりが心地よく感じられ、オリオにとってインク探し以上の意味がある旅になったと思います。
「喪失」は正しい時間の流れの -
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オリオは、ギタリストのジャン叔父さんと共に幻のインク〈六番目のブルー〉探しの旅を続けます。第1巻の終末で、インクの秘密が、ある奇妙な「唄」に隠されているということが明かされ、第2巻の物語が新たな展開を見せます。
偶然の導きが道しるべとなり、行く先々で風変わりな人と出会い、交流を重ねていきます。インクと唄の謎に少しずつ近づいていく興味・関心と、逆にどこまでもほのぼのとした感覚は、大人にも心地よく刺さります。
万物は流転する…それでも世界は回っている…喪失から再生へ…。"いつのまにか"に抗いたくて、時間を止めたいのか、戻したいのか、後半少し幻想の度合いが増した? どこ -
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岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得 -
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十文字扉は世界で唯一の電球交換士。メイド・イン・ホンコンの36時間仕様の腕時計をして、仕事をしている。たったひとりで、ただ電球を替える。なんかいいなあと思った。
なぞなぞのような話や盗難事件の真相にせまったり、自分と瓜二つの人の存在を利用してみたり。いろんなことがあったが、物語は淡々と進んでいった。
そのなかで、食べ物(ベーコン、カレーライス、玉子サンド)が、読むだけでとても美味しそうな感じが伝わってきた。街の様子を頭のなかで思い描くのも楽しかった。
電球交換士の憂鬱なことは、あることでほぼ解決した。「人は不死身になれなくて憂鬱になるのかと思っていましたが、人を憂鬱から解放して幸福にする -
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〈読まずに読む〉とは
「文字を読む」と「先を読む」の組み合わせ。
この興味深い読書会を覗き見できるのが本書であり、笑いたい時にぴったりな本だと私は思っています。
登場人物に勝手にニックネームを付けちゃったり、各々が持ち合わせた情報から推理しつつ皆さん好き放題言ってて(特に三浦しをんさん)、電車では読めないレベルで笑えます。
読後の読書会の模様も描かれているので「罪と罰」のネタバレありですが、読んだことのない「罪と罰」を読んでみたくなります。
「本は読まなくても読める」
「読む前から“読む”は始まっている」
「小説は、『読み終わったら終わり』ではない」
という言葉が素敵だなと思いました。