吉田篤弘のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
吉田氏の月とコーヒーシリーズ第2弾。前作の空気感は残しつつ、新たにそれぞれの物語の終わらせ方を少し変えてきた、ちょっとアレンジ。そして繋がっている物語もある(これは前作も同様に)。頭を空っぽの状態で、例えば仕事帰りの電車の中。夕飯を食べた後。就寝前。そんな、疲れたひとときに少し飲むコーヒーのように寄り添う静かな物語。前作のテイストからよりストーリー性を感じる今回の短編集は、良くも悪くも続きが気になる。前回が空気感を好きになるきっかけとなり、今回は物語を理解しようとこちらがより求めている。1周だけでなく2周したくなる。そんな、小さなカップに注がれて飲む夜たち(短編集)である。
-
Posted by ブクログ
「罪と罰」を読んだことのない作家4人が、最初と最後のページ、間の数ページ、登場人物表など数少ないヒントを参考に物語を考察していく。もう超面白かった。笑った。
登場人物名がおぼえられないといい勝手に省略したり、松岡修造だと呼んでみたり。
元々同人誌でのみ出版予定だったということで、かなり自由に好き勝手やっており、それが最高だった。
けどやっぱり作家を生業としてる人達はすごい。数少ないヒントから当たらずも遠からずな考察したり、文脈を整理し読み取る能力に長けすぎている。
こんなにこの企画が面白くなるのも個々の能力がしっかりある人達が集まったからこそなんだろうなと思った。
私は「罪と罰」本編を読んだ後にこちらを読んだけれども、「罪と罰」を読んだことがない人にももちろんおすすめで、絶対に本編を読みたくなるはず!!
「罪と罰」を読んだ人にも、長すぎてちょっと読む気にならないわという人にも、おすすめの1冊。 -
Posted by ブクログ
吉田篤弘さんは、岩波書店「図書」21年8月9月号で、吉田さんなりの「星の王子さま」論を展開していた。それが24年2月に池澤夏樹版「星の王子さま」を読んだキッカケだった(3年間積読した)のだが、実は吉田さんの本自体を読んだのは、これが初めてだ。印象は、「星の王子さま」+「星新一」÷2という感じ。奇しくも「星」が並んだ。星という字は、吉田さんにとても似合う言葉だと思う。
星新一よりも、王子さまみたいに上品でかつ哲学的。でも、そこまで純文学していなくて、エンタメ。
月とコーヒーの間には間(ま)がある
月とコーヒーの間には魔(ま)がある
一編一編の中に(必ずではないけど)「月」と「コーヒー」の「言葉」を入れながら、生活の傍らにあったら嬉しかったり寂しかったりする数々がさりげなく綴られるショート・ショート24編。なんかクセになりそうな本でした。 -
Posted by ブクログ
面白かった。有名な古典小説「罪と罰」をネタにした対談集。
前半は、この小説を読んでいないメンバーが読まないままに語り合う座談会。最初はこれまで知っていた断片的な知識を元に内容をあれこれと内容を想像し、途中から各章ごとに数ページを抜き出して読み、それを元に内容を「推理」する。これらが面白い。断片から空想を広げていくわけだが、その過程がとてもファンタスティックである。新しい断片を読む度に、これまでの想像が更に飛躍していったり、ひっくり返されていったりするさまもスリリングである。
いったん座談会が終わってから各自が「罪と罰」を読み、そのあとで語り合うのが後半の座談会。読む前の座談会の答え合わせ及び振り返りという感じなのだが、ひとりひとりの読みが鋭くて読んでいて知的好奇心を大いにそそられた。また、作品に対するリスペクトが随所に感じられて、とても気持ちがよかった。
僕自身は、高校生の時に「罪と罰」を読んだ。1週間もかからず一気に読んだように記憶している。それなりに読み応えがあったが、古典的名作という以上に強く印象に残ってはいなかった。改めてこの座談会の記録を読んで、あたらめて読みたくなった。たぶん、以前とはまったく違った印象を持つに違いないと感じる。 -
Posted by ブクログ
『月とコーヒー』のタイトル通り、眠れない夜に
月の下でコーヒーを飲みながら味わいたい短いお話の短編集。
作者の吉田篤弘さんが、本来人間には、月とコーヒーよりも太陽とパンが必要、でも月やコーヒーがなかったら人生は味気ないものになるだろう、ということを書かれており、本当にその通りだなぁと思った。世の中って、生きていく上で無くても生きていける物で溢れているけれど、もしも余計な物がなかったら、ただただ寿命まで生きているだけになってしまう。栄養を摂るだけならサプリでもよいけど、彩りを楽しんだり、調理法を考えて工夫して達成感を味わったりすることで、人生は豊かになるんだろうと、この本から経験の少ない自分なりに考えた。自分にとってやらなくてもよいことも、やってみたら楽しいかも知れないと思った。 -
Posted by ブクログ
「本はすべて面白いものです。すべての本が、その可能性をもっています。面白さというのは、刻一刻と移り変わっていくんです。」「本を求める理由は千差万別で、理由はどうあれ、ある日突然、こんなふうに本と自分とがつながるのです。本の中身が面白いのはもちろんですが、こうしたことが──つながるということが、本のもうひとつの面白さなんです。」
螺旋プロジェクトがなんなのかよくわからないまま作者買い。表紙とタイトルがすごく好みです。
不眠症が蔓延した東京が舞台。「面白くない本」は不眠者たちに重宝され、「面白い本」は不眠を助長するとして発売禁止、焚書の憂き目にあっているという未来の話。
そんな「面白い本」をどうにか手に入れようとした愛読家秘密結社〈ロンリー・ハーツ読書倶楽部〉が密輸の手筈を整えた八万五千冊あまりの「面白い本」がハリケーンの渦巻きによって水没した、という衝撃的な始まり。
最初はどこに向かっているのかわからず読んでいて不思議な感覚がしましたが、登場人物たちの行動や言動が少しずつ重なってとある映画へと繋がっていく様子はわくわくしました。
165P。口うつしのシーン、ドキドキした。一番好きなシーンかもしれない。定期的に読み返したいのでここにメモ。 -
Posted by ブクログ
「本屋がなくなるとさ。なんというか、セーターの袖に小さな穴があいちまったみたいな——」
決して生きていくために必須なわけではないけれど、あるとほっとできる。
そんな作品でした!
本が大好きな私にとって、
・ページをひらくことは世界をひらくことでした。
・さみしいもんだよね。本屋がなくなるとさ。なんというか、セーターの袖に小さな穴があいちまったみたいな——
このフレーズは自分の本に対する気持ちも同じ気がしたし、
・重力は偉大だ。どんな人間も平等に地上につなぎとめてくれる
・迷路のごとき路地で迷いながら生きていくことはそんなに悪いことじゃない
このフレーズは生きるのが少し楽になるなと感じました。
他にもたくさん大切にしたいフレーズがありました。
毎日毎日たくさんの大変や生きづらいからそっとコーヒーのように一息つかせてくれる作品でした。