吉田篤弘のレビュー一覧

  • 台所のラジオ

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    「明日、世界が終わるとしたら」
    美々と直人の微妙な関係。伯母いわく臆病すぎる性格の美々と、猪突猛進な直人のほんの少しの生きづらさ。わかるなぁ。何もかもが上手く行ってないわけじゃないんだけど、思い描いていた未来とズレていって息がしづらい感じ。
    学生時代によく行った中華料理店に大人になってからは年に一回行くか行かないか…くらいになって
    コロナ禍で閉店してしまったあの時を思い出しました。
    もっと行っておけば良かったな、なんて。
    他に思い入れのあるお店がなかったから、まだ若い皆さんは学生時代にもっと思い出を作っておこうね。もう大人な皆さんは行きつけだったお店大事にしてね。
    前向きになれる作品でした。

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    2025年08月01日
  • おやすみ、東京

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    ネタバレ

    4.6
    ちょっとずつ登場人物たちが繋がってるのがいい。ミツキが最後の指輪を戻すところが良かった。コークハイが美味しそうだった。

    加奈子の弟は「レインコートを着た犬」にでてくる青年じゃない?長いあらすじ書いて、館長が逃げ出して館長になるって。

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    2025年07月24日
  • 月とコーヒー

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    久しぶりの短編集。
    どちらかと言えば普段は最初から最後まで物語にどっぷりつかれる長編集が好み。
    今、本を読みたい、だけど読書に重きを置かずに気が向いた時にさらっと読めるものがいいと思い選んでみた。
    まさに選んだ時の気分にぴったりだった。
    作者の後書きに、「とるに足らないもの、忘れられたもの、世の中の隅にいる人たちの話を書いてみたい」とあった。無くてはならないものでもない、スポットライトが当たる人でもない、でもそういったものや人は世の中に必要だしそれが生活に安らぎを与えてくれる、そんなことを想わせてくれる短編集だった。

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    2025年07月02日
  • おやすみ、東京

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    連作短編という形式があるらしい。
    作者のあとがきを読むと「一見、短編集のようでありながら、じつは、それぞれの短編がつながりを持ち、読みようによっては、長編小説としても読めるものをそう呼んでいる」ものだそうだ。

    まさにこの おやすみ、東京 は、連作短編で書かれているように感じた。
    一編一編がまるでDNAのように、いくつかの螺旋階段のように、ある瞬間には交わりかけて、ある瞬間には遠く離れてしまう。
    そしてある種独特な文調が、まるで作者の夢の中に紛れ込んだような錯覚になる面白い読み物だった。

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    2025年07月01日
  • 月とコーヒー

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    国語の教科書にあったような、エネッチケーの1コーナーで朗読アニメでもやってそうな感じの短編集
    作者は寝入り話を想定していたようで納得

    肝心なところ語らんのかーいと物足りなく思ったり、数十ページ先で進展があってうれしくなったりする

    青いインクと万年筆の彼ら
    くっついたんかい(嬉)
    「(要約)書くことで言葉にならない気持ちがペン先から出てくるで。カオスがコスモスに変わるで」
    ワイ万年筆ユーザー、首がもげるほど頷く

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    2025年06月26日
  • 月とコーヒー

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    タイトルに惹かれたけど、期待通りの短編集で胸が温かくなった。
    一つ一つはとても短く、少し不思議な世界観で、まさに寝る前にうってつけ。
    もう少し先が知りたい、というところで終わってしまうので、ずっと心に残っていて、日常のふとした瞬間に思い出すのが嬉しかった。

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    2025年06月22日
  • 月とコーヒー

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    ネタバレ

    世界観が素敵だと思った。短編だからこその余韻が残る。個人的に好きだったのは三人の泥棒の話。長い間泥棒だったからこその能力とその能力でしかできないことで街が失ってしまったものを再び返還するというのが良い。どんなものを盗んできたのかは知らないけれど、「泥棒」という言葉には悪いイメージが付いている。彼らはとても悪い人たちには見えなくて、それでも泥棒と呼ばれていることに言葉の不自由さを感じた。一気に星たちが空に放たれた夜空は言葉にできないほど綺麗なんだろうな。

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    2025年06月16日
  • 月とコーヒー

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    初めての感覚に陥った本でした。
    言葉の選び方や構成が独特で、まるで絵本のような温もりと優しさを帯びていて、それが一つ一つの世界観にもきちんと反映されてました。
    続きが気になるようなお話ばかりでしたが、世界の片隅を見ているような感覚にもなり、変な表現かもですが、あ〜こうやって世界のどこかで自分以外の人が生活してるんだなぁ〜と何度も思いながら本を閉じました。
    この素敵な世界観、ぜひ体験していただきたいです。

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    2025年06月06日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがない4人が内容の妄想を繰り広げる。
    1ページ解禁しただけで4人の推理が止まらない。
    で、読むんかい!
    この企画を書籍化、さらに文庫化してくれたことがありがたい。

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    2025年04月19日
  • 台所のラジオ

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    六年前に逝ってしまった恋人。
    正式に婚姻はしていなかった。
    自分(多江)の他にもうひとり女が居ると思っていたからだった。
    だけど彼亡き後も続けてきたお店をたたむことになり、友人やラジオからの言葉もきっかけになり、その女に会いに行くことにした。
    「さくらと海苔巻き」より

    ラジオからの声は不思議だ。
    こちら側は見えていないし、そもそも万人に向けて話しているというのに、ひょいと自分に寄り添ってくれることがある。
    ハッとさせられたり、共感したり、背中を押してくれたり、思わず笑みがこぼれたり。
    そんな小さなお話が、美味しい食べ物と共に12話収められている。
    紙カツ、海苔巻き、きつねうどん、ビフテキ、お

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    2025年03月30日
  • 鯨オーケストラ

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    三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の最後。

    書き出しは 「人は皆、未来に旅をする」

    前2作に登場していなかった曽我哲生が主役。
    『屋根裏のチェリー』より、さらに先の様子が描かれる。

    『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』での出来事がいくつも曽我と密接に結びついていた。
    太郎の幼なじみであるミユキが惹かれた絵のモデルが曽我だった。

    この事実を知った曽我は〈定食屋あおい〉でミユキと出会うことになり、サユリの作るハンバーガーも口にする。
    そして、店に貼ってあったクラリネット奏者募集のチラシを目にする。
    曽我はジャズ演奏のクラリネット奏者でもあった。

    曽我の絵を描いた画家

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    2025年03月26日
  • 屋根裏のチェリー

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    三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の第二部。

    書き出しは 「そして、冬はある日、何の予告もなしに終わってしまう」

    『流星シネマ』の書き出しは「この世界は、いつでも冬に向かっている」だったので、なにか寂し気な予感がした。

    岡小百合こと「サユリ」目線の物語で「チェリー」はサユリの中のもう一人の自分。
    つまり、チェリーはサユリの頭の中にいて、控え目な現在のサユリの行動を後押しする心の声のようだ。

    『流星シネマ』でのいくつかの出来事がサユリ目線でも語られるが、『流星シネマ』より未来に物語は進む。

    鯨の復活に取り組む人物と並行して、鯨オーケストラの復活に取り組むのがサユ

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    2025年03月26日
  • 流星シネマ

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    三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の第一部が『流星シネマ』
    全部で900ページ程になるが、この順番に一気に読んだ。

    『流星シネマ』は、太郎の目線で語られる。

    本作品は、書き出しの文に興味を惹かれる人が多いので、3作品共に記すことにする。
    本作品の書き出しは 「この世界は、いつでも冬に向かっている」 だ。

    都会の端の鯨塚がある町で暮らす人々の物語で、章ごとに異なる登場人物に焦点が当たる。

    かつて町に存在していた「鯨オーケストラ」と、かつて存在していた川に「迷い込んだ鯨」の復活に歩み出すまでの話。
    鯨オーケストラでオーボエ奏者だった岡小百合さんは、次作『屋根裏のチェ

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    2025年03月26日
  • 台所のラジオ

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    読書友達に勧められて読んだ1冊。すごく大きな事件は起きないけれど、淡々と時としてありそうな、時としてなさそうな不思議なお話も混ざりつつなお話がいくつか続く、ラジオ繋がりの短編集。個人的に声に出して読みたくなるような、ここちよい文章でした

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    2025年02月26日
  • それでも世界は回っている 3

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     幻のインク〈六番目のブルー〉探しの旅も最終巻を迎えました。「インク三部作」の第3巻です。

     〈五番目のブルー〉 + 「?」 = 〈六番目のブルー〉
    という方程式を解くには、〈五番…〉を移項して
     「?」 = 〈六番目のブルー〉 − 〈五番目のブルー〉
    あはっ、懐しい中1数学!

     でも、物語は決して数学で割り切れるほど簡単なものではありませんよね。巡り巡ってやっと辿り着いた〈六番目のブルー〉の謎は、きれい過ぎるくらいに収束します。世界の不思議な巡り合わせ、つながりが心地よく感じられ、オリオにとってインク探し以上の意味がある旅になったと思います。

     「喪失」は正しい時間の流れの

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    2025年02月14日
  • それでも世界は回っている 2

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     オリオは、ギタリストのジャン叔父さんと共に幻のインク〈六番目のブルー〉探しの旅を続けます。第1巻の終末で、インクの秘密が、ある奇妙な「唄」に隠されているということが明かされ、第2巻の物語が新たな展開を見せます。

     偶然の導きが道しるべとなり、行く先々で風変わりな人と出会い、交流を重ねていきます。インクと唄の謎に少しずつ近づいていく興味・関心と、逆にどこまでもほのぼのとした感覚は、大人にも心地よく刺さります。

     万物は流転する…それでも世界は回っている…喪失から再生へ…。"いつのまにか"に抗いたくて、時間を止めたいのか、戻したいのか、後半少し幻想の度合いが増した? どこ

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    2025年02月13日
  • 鯨オーケストラ

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    音楽と絵画の、「時間」の感覚の違いに関する部分がおもしろかった。
    描かれたものの、存在の仕方。

    不思議な展開で進む物語でした。

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    2025年01月25日
  • 78(ナナハチ)

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    吉田篤弘さんの、幻想と現実が溶け合うような世界観を存分に楽しめる。和も洋も時代もまざりあって、レコードで繋がっていく短編連作。お洒落な表現も素敵なのだけれど、練られすぎてたまに我に返るというか、引っかかってしまうところがあり、個人的には物語の流れから浮かないような、もう少し抑えめの表現のほうがより好み。
    とはいえ、吉田篤弘さんの、身近なようで遠い、メルヘンなようで現実みのある世界観には、いつもひきこまれる。

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    2025年01月24日
  • 天使も怪物も眠る夜

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    螺旋プロジェクトの最終にして、他の作品とは一線を画す海山エピソードが殆ど表に出て来ない作品でした。
    最終といっても確か同時並行で書かれていたはずですが、本書はまさに吉田氏のオリジナル作品というゆったりかつ不思議な雰囲気が漂っており、それに螺旋のコンセプトを緩く上乗せした印象です。
    ただ、そうでもしなければせっかくの斬新なプロジェクトの締めがありきたりになる可能性もあるので、彼をこのポジションに決めたプロジェクトメンバーの慧眼に賛辞を贈りたい。

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    2025年01月19日
  • それでも世界は回っている 3

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    面白かった。とても満足。
    3冊に渡る、「それでも世界は回っている」。

    六番目のブルーの秘密がついに明らかになった。なるほどね、とほっこりした気持ちで読み終えた。

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    2024年12月30日