吉田篤弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
角川のオンライン小説で読んだもの。
ダウンロードしたファイルはPDFで、kujira.01~kujira.18まであった。
もともと美術館と、音楽を聴くことが大好きなので、この作品にはとても沢山の想いが溢れた。
「やはり、美術館から遠ざかってはいけない。」
「こうした時間を過ごすことは繰り返される日常の中に組み込まれているからこそ意味がある。」
「こうした時間を求める思いにもっと潤いを与えるべきなのだ。」
ここ数年のコロナ禍で、先日久しぶりに美術館を訪れた際に思った事が代弁されているようで、ひどく共感した。
「僕」の父が憧れていたベニー・グッドマンはKing of Swingと称されてい -
Posted by ブクログ
半年前に読んだ「流星シネマ」の続編。
前作の最後にチラと出てきたオーボエ奏者・サユリさんを中心に語られるお話。
しんみりと確かな文章で綴られたお話にはたくさん感じるところがあった。
団長がいなくなり練習場所もなくなって、〈鯨オーケストラ〉は自然解消になった状況の中、寄る辺なくガケの上にある古いアパートの屋根裏に引きこもっているサユリさん。
その孤独な心情や切なさや淋しさや不器用な生き方が、自分の分身というか心の中のツッコミ役・チェリーとの会話も交えながらゆっくりじっくり描かれる。
サユリさんに付かず離れず、自由に現れては消えて、サユリさんの心に刺さる、チェリーの存在が自然でとても良い感じ。
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Posted by ブクログ
本当に素敵な物語でした。
中央公論新社の「螺旋」という、8人の作家による共作で、本作が最後の物語にあたることは知っていたけれど、大好きな作家と心惹かれるタイトルに最初に読んでしまいました。が、もし、これを1作目に読み始めようとしているあなた、やはり順番通りに読む方が良いかもしれません。
吉田篤弘さん特有の、少し不思議で温まる展開になっていて、ずっと浸っていたい素敵な物語ですが、他の作品の伏線と思われるものも散らばっていて、巻頭に説明と年表はついているので、参照しながら読み進めることはできますが、読後の感動は、最後に読んだほうが、さらに感極まるものがあっただろうと思いました。
最初に読んでし -
Posted by ブクログ
『レコード屋の店主に試聴をお願いすると、店主は黙って頷いて、B面の三曲目――それが「Be Nice To Me」だった――に針をおろした。これまた、どうしてなのか分からない。普通はA面の一曲目に針をおろすように思うが、店内に流れ出したのは、にぎやかな曲調のA面の一曲目ではなく、おだやかなゆったりとしたテンポのB面の三曲目だった』―『サイレント・ラジオ』
「Be Nice To Me」と聞いて頭の中で音楽が鳴る。♪You'd be so nice to come home to。おっとこの曲じゃないんだな。検索すると、トッド・ラングレンがピアノの前に背を向けて座っているジャケットが見 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』に続く大好きなシリーズもいよいよこれで完結。
少しずつゆっくり読もうと思っていたのに、一気に読んでしまった。
キッチンあおい、ミユキさん、ロールキャベツ、サユリさん、土曜日のハンバーガー、鯨オーケストラ、チョコレート工場、太郎君、ゴー君、流星新聞、カナさん、そしてアキヤマ君。
お馴染みの人や場所、食べ物などが徐々に繋がって、穏やかな優しい世界が楽器の音が重なるように果てしなく広がっていく。
「人生はね、『なんて短いの』と思ったり、『なんて長いの』って思ったりするものなのよ。人によって違うし、そこまで生きてきた時間によって、短いと思ったり長いと思ったりするの -
Posted by ブクログ
ネタバレどう表現したら良いのか分からないけれど、篤弘先生の世界はひとつの(一枚でもなく、一冊でもなく、もちろん一団体とかでもない)大きな枠のない四次元に広がっている宇宙のようなモノで(尚かついまだに広がり続けている)その中のほんのひとつまみを一冊の本にして表現しているに過ぎないのではないか…
いつまでも終わらなければイイと願いながら手に取る本たちだけど、最終のページは自ずとやってくる。
ならば、広がり続ける宇宙のような、そのほんの一部分を目にしているだけと自分に思い込ませないと。
これまで出会ってきた人たち、街並みや食堂とか、ラジオから聞こえる声や街なかに流れる川。いろんなモノが愛おしく優しく思える