吉田篤弘のレビュー一覧
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本当に素敵な物語でした。
中央公論新社の「螺旋」という、8人の作家による共作で、本作が最後の物語にあたることは知っていたけれど、大好きな作家と心惹かれるタイトルに最初に読んでしまいました。が、もし、これを1作目に読み始めようとしているあなた、やはり順番通りに読む方が良いかもしれません。
吉田篤弘さん特有の、少し不思議で温まる展開になっていて、ずっと浸っていたい素敵な物語ですが、他の作品の伏線と思われるものも散らばっていて、巻頭に説明と年表はついているので、参照しながら読み進めることはできますが、読後の感動は、最後に読んだほうが、さらに感極まるものがあっただろうと思いました。
最初に読んでし -
Posted by ブクログ
『レコード屋の店主に試聴をお願いすると、店主は黙って頷いて、B面の三曲目――それが「Be Nice To Me」だった――に針をおろした。これまた、どうしてなのか分からない。普通はA面の一曲目に針をおろすように思うが、店内に流れ出したのは、にぎやかな曲調のA面の一曲目ではなく、おだやかなゆったりとしたテンポのB面の三曲目だった』―『サイレント・ラジオ』
「Be Nice To Me」と聞いて頭の中で音楽が鳴る。♪You'd be so nice to come home to。おっとこの曲じゃないんだな。検索すると、トッド・ラングレンがピアノの前に背を向けて座っているジャケットが見 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』に続く大好きなシリーズもいよいよこれで完結。
少しずつゆっくり読もうと思っていたのに、一気に読んでしまった。
キッチンあおい、ミユキさん、ロールキャベツ、サユリさん、土曜日のハンバーガー、鯨オーケストラ、チョコレート工場、太郎君、ゴー君、流星新聞、カナさん、そしてアキヤマ君。
お馴染みの人や場所、食べ物などが徐々に繋がって、穏やかな優しい世界が楽器の音が重なるように果てしなく広がっていく。
「人生はね、『なんて短いの』と思ったり、『なんて長いの』って思ったりするものなのよ。人によって違うし、そこまで生きてきた時間によって、短いと思ったり長いと思ったりするの -
Posted by ブクログ
ネタバレどう表現したら良いのか分からないけれど、篤弘先生の世界はひとつの(一枚でもなく、一冊でもなく、もちろん一団体とかでもない)大きな枠のない四次元に広がっている宇宙のようなモノで(尚かついまだに広がり続けている)その中のほんのひとつまみを一冊の本にして表現しているに過ぎないのではないか…
いつまでも終わらなければイイと願いながら手に取る本たちだけど、最終のページは自ずとやってくる。
ならば、広がり続ける宇宙のような、そのほんの一部分を目にしているだけと自分に思い込ませないと。
これまで出会ってきた人たち、街並みや食堂とか、ラジオから聞こえる声や街なかに流れる川。いろんなモノが愛おしく優しく思える -
Posted by ブクログ
吉田篤弘さんの作品を読むのはまだ3作目なのだけど、
いつも始めの1行が素晴らしい。
「この世界は、いつでも冬に向かっている。」
グッと引き込まれて、まだどのような内容かも分からない私を、ストンとその世界に着地させてくれる。
クラフトエヴィング商會としての装幀も、吉田さんのイラストも可愛らしくて、創造力が掻き立てられる。
それに読み始めて直ぐ、他の作品に繋がる欠片を見つけた。
「それからはスープのことばかり…」の街や空気感…。
「天使も怪物も…」の未来予測、鯨、作家、眠り…。
そしてどちらにもあった映画上映シーン。
きっと吉田さんの中には別の世界が存在していて、そこはどこか懐かしく、ちょっぴ