吉田篤弘のレビュー一覧
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インク3部作の第3部
-紹介文-
この世界は
喜びと悲しみを繰り返しながら
回りつづけている。
もう、泣かないで。
師匠のベルダさんが
愛用していた万年筆のインク、
〈六番目のブルー〉を探し求めて
ジャン叔父さんと旅をつづけてきた
14歳のオリオ。
インクの秘密を解く鍵が
奇妙な唄にあるとわかるが、
なかなか見つからない。
そんなとき、
迷えるオリオを導いたのは
世にも稀な
「本当の真っ赤な林檎」だった――。
吉田篤弘さんの世界…
「六番目のブルー」と言う青いインクを探す旅。
なんだけど、
なんか、世界はモノクロな感じ…。
ブルーと真っ赤なリンゴだけが鮮明に浮かび上がる。
うまく -
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ドアの向こうに進むには鍵が必要。
鍵を開けて進む人、鍵が見つからない人
鍵を持っているのにドアを開けない人、
自分はどのタイプだろう。
読後、余韻に浸りながらずっと考えていた。
今年、一番の本かもしれない。
26年前の無料雑誌の小さなコラムに載っていた女性デュオ「ソラシド」。ジョージ・ハリソン好き、ダブルベースを弾いていたという自分との共通点から、どんな音楽を奏でていたのか気になりネットで検索するも、ヒットしない。26年前の彼女たちの音楽を、どうしても聴きたいという思いが強くなり、妹と「がらくた屋」の店主と三人で「ソラシド」の痕跡を探し始める。
1986年と26年後の現在を行き来する物語。 -
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うん…
好きだなぁ…
それしか出てこん。
好きな作家の言葉、頭の中と同調しようとする行為
が
読書の醍醐味のひとつだと思った。
ひとつ5,6ページのエッセイ集。ページごとの文字数も少ないので、サクサクと読める。
著者の想像力の羽が自然と伸びていく様がいい。
小説でも出てきたフレーズが垣間見れるのもいい。夜のカバンとか。
引用
カバンの中には闇があるのだ。
カバンの中は基本的に、静かで、ほの暗くて、ひんやりとしている。つまり、自分が考える「夜」の条件をすべて充たしている。
そう思うと、なんだか愉快になってくる。
電車に乗ってごらんなさい。乗客のほとんどがカバンを持っていて、そのいちいちに -
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ネタバレ【あらすじ】
失われた“六番目のブルー”を探して旅に出たオリオが出会ったのは“5番目のブルー”と“六番目のブルー”を作った青年カナタ。
でも、そのカナタにもどうして“六番目のブルー”を作ることが出来たのかが分からないため、“六番目のブルー”を作ることは出来ないと言われてしまう。
探し物が見つからないまま、旅を終えることになると思った矢先、“六番目のブルー”にあって“五番目のブルー”になかったものの答えが判明する。
※以下の感想にはネタバレが含まれます。ご注意ください※
【感想】
「インク三部作」がついに完結です。
失われたインクを探す少年の旅が終わりました。
“六番目のブルー -
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『流星シネマ』から引き続き、吉田篤弘さんの世界がまた広がった。
ガケ上にある建物の屋根裏部屋に住む、元オーボエ奏者で、食いしん坊のサユリ。土曜日よりも日曜が好き。人との関わりを避け、頭の中のチェリーと過ごす日々。チェリーの言葉に叱咤激励されつつ、ガケ下の町に住む人々との交流が広がっていく。
鯨オーケストラ、暗渠、定食屋〈あおい〉、鯨、流星新聞、川の流れ、ピアノ、チョコレート工場、あおい橋・・・
繋がっていくものを表す表現がいつも通り心地よく感じた。素敵な表現が多いなかで、今回は〈体の中のいちばん静かなところに「全休符の箱」がある。〉という表現が一番好きになった。
どうしてなのかわからない -
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「くつろいでお聞きください。静かな声でお届けします。」と始まり、ラジオで曽我哲生が語ってくれているような感じがした。うまく言い表せないけれど、吉田篤弘さんの小説を読むと心が落ち着く。
17歳のときにモデルになった絵から、新しい人との繋がりができ、いくつかの奇跡を感じさせてくれた。「時間は消えるものではなく、すべての時間は自分の中で積み重なっていく」という言葉や、「人と別れるのは自分で決められるけれど、誰かと出会うのは自分で決められない。だから、人生は面白い。」など、なるほどと思う言葉にもたくさん出会えた。
そして、キッチンあおいの土曜日のハンバーガーとロールキャベツは、とても美味しそうだし -
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角川のオンライン小説で読んだもの。
ダウンロードしたファイルはPDFで、kujira.01~kujira.18まであった。
もともと美術館と、音楽を聴くことが大好きなので、この作品にはとても沢山の想いが溢れた。
「やはり、美術館から遠ざかってはいけない。」
「こうした時間を過ごすことは繰り返される日常の中に組み込まれているからこそ意味がある。」
「こうした時間を求める思いにもっと潤いを与えるべきなのだ。」
ここ数年のコロナ禍で、先日久しぶりに美術館を訪れた際に思った事が代弁されているようで、ひどく共感した。
「僕」の父が憧れていたベニー・グッドマンはKing of Swingと称されてい -
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半年前に読んだ「流星シネマ」の続編。
前作の最後にチラと出てきたオーボエ奏者・サユリさんを中心に語られるお話。
しんみりと確かな文章で綴られたお話にはたくさん感じるところがあった。
団長がいなくなり練習場所もなくなって、〈鯨オーケストラ〉は自然解消になった状況の中、寄る辺なくガケの上にある古いアパートの屋根裏に引きこもっているサユリさん。
その孤独な心情や切なさや淋しさや不器用な生き方が、自分の分身というか心の中のツッコミ役・チェリーとの会話も交えながらゆっくりじっくり描かれる。
サユリさんに付かず離れず、自由に現れては消えて、サユリさんの心に刺さる、チェリーの存在が自然でとても良い感じ。