吉田篤弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いやあ、出だしの時代背景や主人公の職業から、てっきり吉田篤弘さん自身のことを綴っているエッセイかと思って読み進めていた。
ら、小説だったのね。
1986年当時にいたという女性2人のジャズバンド『ソラシド』を追う主人公の話。
主人公は若かりし頃、ダブル・ベース(コントラバス)を偶然ゴミ置き場で拾い、あまりの大きさに「エレファント」と名付け、一人練習していた。
『ソラシド』の薫もダブル・ベースの奏者ということで、興味が湧いたのだった。
しかし、レコードも出したことのないマイナーなバンドで、たま~に雑誌の隅に紹介が載るくらいなので、追跡は困難を極めるのだが。
あるとき、『ソラシド』が映画の音楽を担当したことがあると知り、そしてまた、その映画を保管している映画館を付き止め見に行くのだが、なんとそれはサイレント映画だった!
まあ、このくだりは、私の中でめっちゃ盛り上がって、そして、えええ~~~っ?!とジェットコースターのように急降下したよね。笑
だって、どんどん謎の『ソラシド』に興味が湧いてきて、それは、やっとの手がかりだったんだもの!
そんなこんなで、吉田作品にしては、一気にぐいぐい読める話だった。
いつもなら、文章を味わって読む感じなんだけどね。
これはちょっと、ミステリー小説っぽい感じだったから。
冒頭はちょっと退屈だったけど、どんどん面白くなってきて★5つ! -
Posted by ブクログ
少し懐かしい不思議な世界の中で、哲学のような言葉が軽やかに語られます。
旅をする主人公のオリオと共に、この世の真実や真理に出会える物語。
少しずつ自分の気持ちに気づきながら、亡き師匠ベルダさんの面影を追うように旅をするオリオ。
旅の目的はベルタさんの愛用品〈6番目のブルー〉を見つけるという事。
その目的が果たせるのかどうか、この作品の中では不明でしたが、先ずはベルダさんの死を理解する事がオリオの課題なのだろうなと思われました。
〈6番目のブルー〉に関するヒントに出会い、ここからまだまだオリオの旅は続いてゆくようです。この先にどんな学びがあるのかとても気になる作品でした。
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Posted by ブクログ
「月とコーヒー」と同じ版型、21の短編集。
まるでバッハの「ゴルトベルク変奏曲」みたいな物語、と思った(ものすごく褒めてます)。バリエーションの数は「ゴルトベルク」よりも少ないけど、最初と最後のお話に置かれたオレンジのモチーフが、「アリア」の役割を果たしているようで。
(まんなかにも一つオレンジを置いて)ラストまでたどりついた時に、奇跡のようなつながりが立ち上がる。夜にまぎれて語られなかったであろうことがらも含め、一人ひとりが果たした誠意と感情の波と、偶然の導きにぐっとくる。
きっとこの先オレンジに触れる度に、灯火のような光と清らかな香気を思い出すんだろうな。 -
Posted by ブクログ
死んだ飼い犬ベニーが体の中にいる、クラリネット奏者のテツオが鯨オーケストラと出会い、新たな音楽を奏でていくまでの物語。
けれど、それに関わるいろいろな人の物語がそこに織り重なって、重奏的なハーモニーを聴いているかのような繊細な物語になっていく。
別の目的で行った美術館で、たまたま開催されていたポール.モカシンの深海魚展。
モカシンといえば、あの、モコモコとした靴のことでは? と疑問を抱きながら入った展示室で荘厳なハーモニーのような真っ白の鯨に出会ってしまったり。
人ちがいをされて訪ねた食堂で、たまたま出会った土曜日のハンバーガーの完璧な美味しさに舌鼓を打ちながら、たまたま楽団員募集の貼り紙を見つけたり。
静かにゆっくり、未来に旅をするような物語。
ゆるやかに流れる時間のなか、本を閉じて、ふと上を見上げると、そこには真っ白な鯨がゆったりと泳いで漂っているような気持ちになります。