吉田篤弘のレビュー一覧
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本作の1行目は、まるで「流星シネマ」の1行目に続く文章のように始まる。
「そして、冬はある日、何の予告もなしに終わってしまう。」
「屋根裏のチェリー」は「流星シネマ」と響き合う作品だ。
なので、「流星シネマ」から読むことをお薦めしたい。
この物語はガケ上の街に暮らすサユリが主人公で、「流星シネマ」と同じ時間軸を別角度から描いている。
その為、2作品を読むことで、双方の物語の厚みが増す。
とあるシーンに登場していなかった人物が、その間に誰と何をしていたか?が明かされたりする。
それから現実にも起こりうる事だが、対面で会話をしていても、言葉を発した者と言葉を受け取った者とで、印象が違ったり、心 -
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文章が好き ◯
作品全体の雰囲気が好き ◯
内容結末に納得がいった ◯
また読みたい ◯
その他
連作を途中から読むことは滅多にしないのだけれど、なぜか「読みたい」が勝ってしまった。
アパートの屋根裏でひっそり一人暮らしをするサユリの物語。
本作は『流星シネマ』の続編ですが、こちらから読んでも大丈夫、みたいです。
物語がリンクしているところもあれば、本作が前作よりも先に進んでいるところもあるそうです。
なので、前作を読んで自分なりの答え合わせをするのが楽しみ。
答え合わせをして「大丈夫」だったかどうか検証しよう。
吉田篤弘さんの作品は全てを語り尽くす感がなく、その余韻が好きだったり -
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何気ない日常を淡々と綴った小説です。町の喧騒や雑踏からかけ離れ、会話のテンポややり取りも余計な感情が削ぎ落とされた印象なのですが、不思議なことにずっと読んでいたくなる魅力があるのです。これが吉田篤弘さん特有の世界でしょうか。
主人公・太郎の視点で描かれる日々は、優しさと静けさ、寂しさと哀しさが同居し、幻想的な雰囲気さえ醸し出しています。
物語の舞台が、<鯨塚>というガケの下の町で、暗渠(地下埋設の川・水路)があり、かつて、この川に鯨が迷い込んで絶命し、埋葬されたという逸話があるのでした。
「今」と「かつて」を結び付ける、というより、つながっていることを示した浪漫が感じられます。「あとが -
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「電球交換士」という肩書を持つ十文字という名の男が主人公です。
バー〈ボヌール〉の半永久的常連客で、酒場は好きだが酒は呑めない。
いつも炭酸水を飲んでいて、どこまでも終わりのない電球交換をし続ける不死身の男。
彼の行く先々で、小さな事件が起こり、謎々みたいな、ちょっと愉快であぶない話が続いていきます。
(吉田篤弘さんの場合は、謎解きではなく謎々と言った方がしっくりくるのです。)
バーやキャバレーがひしめく一角や、吹けば飛ぶような粗末な映画館、海の近くのサーカス小屋など、まるで古い映画に出てきそうな街に思わず迷い込んだような気持ちになります。
彼は古いものへのこだわりと、新しいものに挟まれ、柔 -
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ネタバレ12編のアンソロジー。
どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
その中でも特に好みだった2つについて書きたい。
『藁の夫』
2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。
『逆毛のトメ』
シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か -
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見えない川が 静かに、静かに、流れるような不思議なお話。
現実の話として語られるのですが、ファンタジーのようです。
それは、「目に見えないもの」について語っているからでしょうか。
昔、海からとんでもないものがやってきたという伝説の川がある町。
伝説の川は、今は埋められて遊歩道になっています。
でも、歩道の下は暗渠になっていて今でも川は流れているのです。
表に見えないだけで…。
ある発見が町を湧きたたせます。
詩人であり、詩集の編集者でもあるカナさんはこう言います。
「たいていのものはかけらなのよ。すべてが何かの一部なの」
かけらを形にしようと 作業を進めるうちに
作業に関わる人々の心に、未 -
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いやこれ、めちゃくちゃ面白かった。
世界的名作、ドストエフスキー作の『罪と罰』を読んだことのない作家4人が、持っている知識(断片的)を駆使し、出版社の人にヒントをもらいながら、作品の内容を想像(妄想)し語り合う企画を書籍化したもの。
企画からして既にかなり面白そうなのだが、なまじ作品構成や小説づくりを日頃から考えている人たちなので断片からの推理力や展開への発想が鋭かったり、好き放題言ったり盛り上がりがすごい。というかわからないからこそ皆さん言いたい放題。笑
特に三浦しをんさんによる登場人物へのあだ名の付け方や人物考はかなり笑わせてもらった。
主人公の名前も「ラスコーリニコフ」じゃとっつきに