吉田篤弘のレビュー一覧

  • 流星シネマ

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    世界のどこか知らない町の物語、ゆったりとした平和な日常、静かに町の歴史に刻まれた悲しい過去。
    吉田篤弘さんの文章は、ゆったりと美しくてほんのりと寂しさがあったりしながら心温まる、というイメージ。
    ハラハラさせる作品が苦手な私にぴったりだ。
    4日くらいで読み切った。

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    2022年05月29日
  • 『罪と罰』を読まない

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    『罪と罰』を読まずに読む。

    まず自分も『罪と罰』を読んだことがありません。確か主人公は若い男で老婆を殺す話だったはず。それくらいしか知りません。というわけで前半の推理合戦も、後半の読後感想も楽しく読み、『罪と罰』読みたい、と思いました。色々なキャラクターが気になります。これは読むしかないのでは?

    「読む」という行為は、読む前から始まっており、読んだ後も終わらない。読書は一人で完結しない、著者や他にその本を読んだ人、また読んでいない人とのつながりだと思いました。読書万歳。

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    2022年05月01日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • 流星シネマ

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    見えない川が 静かに、静かに、流れるような不思議なお話。
    現実の話として語られるのですが、ファンタジーのようです。
    それは、「目に見えないもの」について語っているからでしょうか。

    昔、海からとんでもないものがやってきたという伝説の川がある町。
    伝説の川は、今は埋められて遊歩道になっています。
    でも、歩道の下は暗渠になっていて今でも川は流れているのです。
    表に見えないだけで…。

    ある発見が町を湧きたたせます。
    詩人であり、詩集の編集者でもあるカナさんはこう言います。
    「たいていのものはかけらなのよ。すべてが何かの一部なの」
    かけらを形にしようと 作業を進めるうちに
    作業に関わる人々の心に、未

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    2022年03月07日
  • 『罪と罰』を読まない

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    いやこれ、めちゃくちゃ面白かった。
    世界的名作、ドストエフスキー作の『罪と罰』を読んだことのない作家4人が、持っている知識(断片的)を駆使し、出版社の人にヒントをもらいながら、作品の内容を想像(妄想)し語り合う企画を書籍化したもの。

    企画からして既にかなり面白そうなのだが、なまじ作品構成や小説づくりを日頃から考えている人たちなので断片からの推理力や展開への発想が鋭かったり、好き放題言ったり盛り上がりがすごい。というかわからないからこそ皆さん言いたい放題。笑

    特に三浦しをんさんによる登場人物へのあだ名の付け方や人物考はかなり笑わせてもらった。
    主人公の名前も「ラスコーリニコフ」じゃとっつきに

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    2022年02月18日
  • 流星シネマ

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    お正月、のんびりまったり癒されました。

    著者の作品の登場人物はどの人も、どこでもいるようでいない変わりものたちで。
    今回も太郎さんはじめ、いい味だしていました。
    こんな街に、お店に、人の中でのんびり長く暮らしたい理想郷のようでした。

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    2022年01月06日
  • ガリヴァーの帽子

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    掌編を含めた短編集。

    「ガリヴァーの帽子」は、説明のつかないような、おかしな話。
    「御寮人、鰻川下り」は、とりとめのない不思議な話。

    「かくかく、しかじか ──あるいは、彗星を見るということ」は、
    エレベーター並の速さで、上へ向かっている、泡。
    文章の最後に打たれる句点。あの小さな丸が、まるで気泡に見えてきます。
    最初何の事かと思っていたら、なるほど、シャンパンの泡でした。
    長い長い詩を読んでいるようで、面白かった。

    ギャルソンの話も、トースターの話も、どれもこれも私の好きな世界…。

    吉田篤弘さんを読むと、心が柔らかくなります。

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    2021年12月25日
  • 流星シネマ

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    「むかしむかし、この町には大きな川が流れていて、その川へ、鯨が海から迷い込んできた」
    そんなおとぎ話のような、ガケ下の町で、魅力的な個性あふれる人たちばかりが登場するお話。
    淡々と続いていく清流のような、とても静かな物語です。
    音もない断片的な8ミリフィルムを繋げたり、鯨の骨の標本を組み上げたり。
    物事はすべてつながっているようです。
    遠い昔の記憶、その小さなかけらのひとつひとつが温かく、じんわりと心に沁みてきます。

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    2021年12月14日
  • 台所のラジオ

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    あとがきがなにより素敵だった。
    本編である12の短編も好きだけれど。
    起承転結の起承あるいは起承転を描いた話です。

    余談だけど、短編集の感想を書くときが一番難しい。どの話について書けばいいかわからないので。

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    2021年12月13日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ひとつの本でこんなに語りあえるなんて。読む前の妄想満点の会話に噴き出し、読んだあとの感想戦や読み解きに唸らされる。その後の後書きで、数年後には皆すっかりうろ覚えになっていたとの記述に、それで良いんだと安心。
    ステキな会話に加わった気分で楽しめた。

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    2021年12月07日
  • それでも世界は回っている 1

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    好きだった「月とコーヒー」から連なるインクシリーズの第一弾。
    幻のインク〈六番目のブルー〉を探し求める旅。
    なんて素敵な旅だろうか。
    旅の寄り道、出会う人々、出てくる食べ物。どれもとても素敵すぎる。
    この世界に入り込み、一緒に旅したい。
    まだ旅は途中。続編が楽しみ。

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    2021年11月19日
  • それでも世界は回っている 1

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     「月とコーヒー」などに登場した青いインクを巡る長編小説の1巻。
     博物館で働く14歳の天才少年オリオは、在庫切れになってしまった青いインクを求めて旅に出ることに……。
     少年が主人公という、今までにない目線が新鮮で、これまで大人の童話と思っていた吉田さんの世界観が、冒険小説のように感じられました。
     ファンタジー色が強めなのですが、いつものようにインク、コーヒー、音楽が上手に物語に溶け込んでいるところはやっぱり吉田さんの作品だな、と。
     果たしてオリオは目指す青いインクにたどり着けるのか……。早く続きが読みたいです。

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    2021年09月05日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ネタバレ

    『罪と罰』は挑戦したことはあるけど、結局まだ読めていないです。
    なので、こんな有名な作家さんたちも読んでないんだ!と嬉しくなって手に取ったのですが、最終的に読んでる・・・!
    でも読まずに推理する座談会って画期的すぎる。
    そして言うこと言うことが面白い。登場人物に変なあだ名付けるし。
    でも『罪と罰』が堅苦しくない、エンタメ本だと分かったので、
    この本を傍らに置いて今度こそ読破してみたいです。
    欲を言えば『カラマーゾフの兄弟』とか他のドスト作品でも座談会して欲しい。

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    2021年09月01日
  • それでも世界は回っている 1

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    ネタバレ

    『月とコーヒー』のショートストーリーから生まれた長編小説。
    幻のインク〈六番目のブルー〉を求め彷徨う旅物語。

    博物館の保管室で働く14歳のオリオ。
    ある日、保管の記録に必要な万年筆のインク〈六番目のブルー〉がないことに気付く。

    〈六番目のブルー〉
    それはこの世でいちばん深い海の底の青色。
    奥深くて華やかで悲しくて麗しくて涙が出てきそうで…一言では言い表せないほどの美しい色。
    そして人生における師匠の魂が宿る色。
    一体どんな”青”なのだろう。
    読めば読むほど謎めいてくる。
    そんな大切なインクを失くしてしまったオリオのインク探しの旅は、人との出逢いの旅でもあった。
    次から次へと登場する個性的な

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    2021年08月27日
  • 流星シネマ

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    ネタバレ

    鯨の話とアキヤマ君の話とオーケストラの話と…カナさん、バジ君、ハルミさん…全ての話と全ての人が個性的でありながら、主張的ではなくて静かに絡みあっていく様子に引き込まれ、ページを操る手が止まらなかった。
    ファンタジーではないけれど、ファンタジーのような心地よい世界に浸りきった気分。

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    2021年08月11日
  • 奇妙な星のおかしな街で

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    高温多湿の梅雨の末期に
    ようやく家に戻ってきて
    風呂場に飛び込んでシャワーで
    ひと汗流す
    それから
    冷蔵庫の氷をコップに入れて
    とにかく冷たい飲み物をこさえて
    一口飲んで
    ほっ と している

    冬だったら、
    寒風の吹きすさぶ中
    ようやく家に帰ってきて、
    とりあえず外套とマフラーをはずす前に
    ストーブの火を入れて
    やかんにお湯を沸かし
    熱々のココアをつくって
    ほっ と している

    そんな 感じの
    こころがゆったりする瞬間の
    エッセイ集

    何気ない 普段の景色が
    なんだか 愛おしく感じてしまう
    お話しも素敵ですが
    緑罫線の原稿用紙風も
    いつものクラフトエヴィング社さんの装幀も
    いかにも 素敵で

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    2021年07月06日
  • それでも世界は回っている 1

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    『月とコーヒー』で好きだったインクの話だったので購入。

    作者の世界観が本の中で余すことなく表現されている。
    話の内容は、あくまでも序奏。
    どう進んでいくのか、今後に期待。

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    2021年05月30日
  • 台所のラジオ

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    旅をした気分
    黒ソースと相性抜群の〈紙カツ〉を食べたくなり、マリオの〈コーヒー牛乳〉を飲んでみたくなった

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    2021年05月26日
  • 台所のラジオ

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    美味しいものと美味しいお店が連なった短編集。
    そして、どのお話にもラジオがさりげなく出てきて、ほっこりさせてくれる。
    趣はそれぞれ違うけれど、どれも人を笑顔にしてくれるようなお話ばかりだった。
    吉田さんの遊び心が満載で、ちょっと聞き慣れない職業が出てきたり、いろんな仕掛けがあって楽しい。
    さくっと気軽に読めるものばかりです。
    特に「マリオ・コーヒー年代記」がよかった。

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    2020年12月06日
  • 電球交換士の憂鬱

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    不死身である(かもしれない)電球交換士が電球を交換していく話
    とまとめると変な感じになるけれどそう言う話
    尽きない(かもしれない)命と尽きる電球
    尽きる(かもしれない)命と尽きない電球
    時間の使い方感じ方 もしくは時間という概念の話か
    文字をなぞるだけでは足りない話

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    2020年11月12日