吉田篤弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
〈読まずに読む〉とは
「文字を読む」と「先を読む」の組み合わせ。
この興味深い読書会を覗き見できるのが本書であり、笑いたい時にぴったりな本だと私は思っています。
登場人物に勝手にニックネームを付けちゃったり、各々が持ち合わせた情報から推理しつつ皆さん好き放題言ってて(特に三浦しをんさん)、電車では読めないレベルで笑えます。
読後の読書会の模様も描かれているので「罪と罰」のネタバレありですが、読んだことのない「罪と罰」を読んでみたくなります。
「本は読まなくても読める」
「読む前から“読む”は始まっている」
「小説は、『読み終わったら終わり』ではない」
という言葉が素敵だなと思いました。 -
Posted by ブクログ
さて、3部作の最後の主人公は、川に流されて子どものときに亡くなったアキヤマくんならぬ、曽我さんである。
三部作の第1作『流星シネマ』は「すべてのことは死に向かっている」で始まるのだけど、この第3作の最後では、サユリさんと曽我さんが合奏を始めるシーンで終わる。クラシックのサユリさんと、ジャズの曽我さんという「まったく違う道を歩いてきた二人だからこそ、そんな二人が音を合わせることで、わたしたちがまだ知らない、あたらしい音楽を作り出せるような気がするんです」。
そして、「真っ白な空間に、はじまりの合図の『ラ』の響きが鳴り渡った。」という希望に満ちた文章で幕を閉じるのだ。
まったく異なる人間が結婚して子どもを産むような。
すべての人は死に向かっているけれど、こうして再生していくのだというような。
ぐっときた箇所。
p165「つまり、僕の場合で言うと、『詩を書く太郎』と、『詩を書かない太郎』っていうふたつの太郎がいるわけです。で、これまでは完全に『書かない太郎』だったわけですが、このままだと、一生、『詩を書かなかった太郎』として人生を終えてしまうと思うんです」
(略)
「もしかして、すべてに言えることですよね」
(略)
「詩を書くとか書かないとかじゃなく、これまで一度も経験していないことに、『いまこそ挑戦してみなさい』と言っているんです。詩を書くことは、そのひとつに過ぎなくてーーたぶん、なんでもいいんです。たとえば――なんだろう――ギリシア料理をつくってみるとか、野菜を育てて収穫するとか、セーターを編んでみるとか――あとは何でしょう――そう――ハモニカを吹いてみるとかね。どれも、自分にとっては思いもよらないことだけで、どれも、さぁ、やってみようと思い立ったら、すぐに始められます。そう思ったら、どうして自分はこれまでハモニカを吹いたことがなかったのかなって――やろうと思えば、すぐに出来るのに――なんと、もったいないことをしているんだろうって」
わたしはこれを読んで、「英語」が頭に浮かんだ。英語を話さない自分で一生を終えたくなかった。話してみたかった。そして学習を継続して8年以上、まったく流暢ではないけど少し話せる人になった。
あと最近興味が出てきた樹木。いろいろな木の樹皮を見て、触ってみている。この間もクスノキに初めて触れた。意外とふわふわだった。桜の木のように硬くない。触ってみなくちゃ一生わからなかった。樹皮に注目して触れてみるなんて、今まで考えもしなかったこと。
p171
「自分はこれまでの人生で、電信柱に触れたことがあったろうかと考えた。
あるいは、遊歩道に立ち並ぶ桜の木に触れたことはあったろうか。
(一度くらい、あるんじゃないか?)とは思う。でも、自信がなかった。
(略)
もし、一度も触れたことがなかったら、天国へ行ったときに、それらはことごとく実態を失ってしまう。触れたくても、もう二度と触れることは出来なくなる。」
この間わたしは30年ぶりにバイオリンを再開した。やろうと思えば意外とすぐにできてしまった。考えてみれば、世の中はそんなことであふれている!!
いろいろなことに手を出すことを、どれも中途半端に終わるのではと批判する向きもあるけれど、経験したことだけが天国に持っていけることなのだそうだ。なんでもやってみるのはいいことだ。
ほかに印象的だった箇所。
p51 「音符をなぞるだけでは駄目なのだ。楽譜のことは忘れて、たったいま自分が思いついたことを誰かに伝えるように奏でるといい」
そうすれば、たとえ、楽譜どおりの旋律でなくても、メロディーが伝えようとしていることは、その音を聴いた者に伝わるはず――。
p193「そうなのかもしれません。時間は過ぎていくのではないのです。どこかへ消えてしまうわけでもありません。すべての時間は自分の中にあり、それが少しずつ積み重なっているんです。
(略)
年齢はただの数字でしかありません。
たまたま、一番上のカードに「17」と書いてあるだけで、その下には十六枚のカードが重なっています。その十六枚がなければ、「17」は成立しません。積み重なった17枚のカードすべてがそのときの年齢なんです。」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ多々さんの言葉で、
感動することに「戸惑いを覚える」
「だって、むやみに心を動かされたくないときだってあるでしょう?」
に、まさにそれだと思いました。
感動作と銘打つ作品に少し身構えでしまう私は捻くれているのだろうか?そんなに心を揺さぶられたいものだろうか?それはそんなに絶賛されるものだろうか?思っていましたが、まさか私の心に共鳴するような言葉がでてくるなんて思わなくて虚をつかれました。
多々さんの言葉を借りると、むやみに「感電」しなくて良いのがこの方の本で、だから毛布に包まれるような安心感で手にとってしまうのだなと得心がいきました。
ああ、だから心地いいんだな。
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Posted by ブクログ
大人が読むファンタジーのような短編集。
一つ一つ、発想が面白くて読み飽きなかった。
題にもなっている「中庭のオレンジ」の物語も、もちろん面白く、最終話で色々回収できて嬉しいまま読み終われてステキな流れに感謝もしたが、他にも1話単体で面白かったのも多々あり。
中でもカウントㆍシープ#5391とか、視点も面白くて私はお気に入り!
『物語はいつも途中から始まって、途中で終わるということです。本のページには終わりが来るけれど、物語はこのあともつづいていく-ーー』
前回読んだ月とコーヒーのあとがきも、とてもよかったけれど、今回のあとがきにあったこの言葉も、いい言葉だなぁと思いました。 -
Posted by ブクログ
「ロングセラー『月とコーヒー』から派生した〈インク三部作〉堂々完結!」と帯に書かれて、このシリーズも終わるのかと、少しセンチメンタルな気持ちになりました。
一時期、吉田篤弘さんの著作品に没頭して読んだ時期がありました。
こう表現するのは語弊があるかもしれませんが、私にとって著者の作品は、「星の王子さま」や「銀河鉄道の夜」そして傾向が外れますが「デミアン」を読んだ頃の自分に帰らせてくれる感があるのです。(自分の読書歴の狭さも感じますが)そして著者の書かれている文章にとても共感してしまうことが多いことも、いつも驚きです。
人と人は、考えや思いが違うから争うんじゃないんだよ。同じことを考えて、同じものを求めるから、争いになる。本文p38抜粋
人と人が「結ばれている」というのは、すぐ隣に寄り添っているからそう云うのではない。たとえ、二人がいる時間や空間が遠く離れていたとしても、すぐ隣の誰かと言葉を交えるように睦み合える。たぶん、人間にはそんな力がある。本文p165−166抜粋
引き継ぐというのは、その人をそっくり真似るのではなく、その人の思いと自分の思いが一つになることを云うのだ。 本文p205抜粋
このシリーズも「月とコーヒー」から読んでいて、結末もとても気になっていました。結論である、6番目のブルーはどうやって作られたのか、それは是非読んで納得してみてください。