吉田篤弘のレビュー一覧
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月に見守られ、コーヒーを片手に24の小さな空想の旅へと誘ってくれる短篇たち。物語は開かれたままその幕を閉じることなく流星群のように新しい旅へと向かっていくので、読み終えてそれぞれのその先を自分なりにあれこれ想像していく贅沢な時間が味わえる。
特に大好きだったお話のひとつは「白い星と眠る人の彫刻」。吉田さんとSFの相性の良さがたまらず、静かで哀しく美しい余韻が後を引く傑作。青く晴れ渡った空に突然白い大きな星「サイロン」が現れた。移動性に法則がない流動星のその星は街の上に居座り続け、星の影響でこのままだと住民の体は縮み始め、数日後には80%くらいに縮み、一週間後には3%となり、そして消滅してしま -
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ガケ上の古いアパートの屋根裏で暮らす元オーボエ奏者のサユリと、サユリの空想上の友人チェリーとのやり取りを中心に進む静かな物語。
イマジナリーフレンドのチェリーが唯一の友達で、人見知りで人付き合いは最小限のサユリが実はレモンソーダを愛飲しハンバーガーやカツを好んで食べる食いしん坊キャラという意外性。彼女が胸の内に秘めた音楽への思いと、解散してしまったオーケストラへの思い。
前作の『流星シネマ』と同じシーンがサユリの視点でも描かれており、視点が変わることで前とは違った見え方になる。
内に籠もりがちなサユリが、前作の主人公 太郎や街の人と知り合い、交流を重ねていくのと同時に仕舞い込んでいた音楽への -
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本書は、前半の「物語の舞台袖」と後半の「エデンの裏庭」の2部構成になっています。
誰もが知る4つの名作物語に対して、創作(妄想)と書評(注釈や解説)を記した前半。後半は前半の試みを経ての小説という内容です。
前半を簡単に言うと、作家が名作児童文学をどう読んできたか、でしょうか。薄暗くひっそりと誰も注目しない舞台袖…いかにも吉田さんらしい着眼点です。そこに想いを馳せて想像するんですね。
繰り返し読んでも新たな発見があり、舞台袖の空想はどこまでも広がります。物語の一場面を取り上げ、創作と書評がセットになり吉田ワールドを醸し出しています。
4つの舞台袖の共通テーマは"時の流れ -
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東京に住んでいるのもあって、タイトルに惹かれて読んだ一冊。
タイトルにぴったりで、夜のベッドでゆっくり読むのにちょうど良かった。
連作短編集で、実は全て同じ東京の夜、一つの小さな食堂を介して登場人物たちの物語が静かに繋がっていく仕掛けが素敵。
登場人物が多いので、最初は誰が誰だか忘れて何度も前の方に戻ったりしたけど、それもこの作品の楽しみ方の一つなんだと思う。何周か読み返しながら味わう作品。
文体がとても読みやすく、すっと心に馴染む。
何か特別な事件が起きるわけではないのに、人々のささやかな日常がとても羨ましくて尊く感じられ、読んでいる間ずっとほっこりした気持ちになった。
東京の夜にぴったり -
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200年前に川に鯨が迷い込んだと言い伝えられる町で流星新聞を編集・発行している太郎と、町に住む様々な職業に就くユニークな住人たちとのあたたかな交流を描く連作短編⸺と思いきや過去のとある事件による仄暗い影があったり、それぞれの住人の抱える悩みや秘め事があったりと、どこか不思議で詩的なおとぎ話のようなストーリー。
最終話でこれまでの話がきれいに繋がって、これまたきれいな大団円。ピアノの静かで優しい音色が聞こえるようなあたたかい締め括りにしみじみと湧き上がるような静かな興奮を覚えた。
既に本棚に続編がスタンバイしているので、そちらも近々読む予定。
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あとがきに“1日の終わり、寝しなに読んでもらいたい”という著者の言葉通り、寝る前にぴったりな絵本のような短編集だった。
大人を主人公にした、大人のための、希望が星のように散らばって、孤独を優しく埋めてくれるようなおとぎ話みたいな物語。
食がテーマということで、いろんな美味しそうな食べ物が出てきた。
クリームシチュー、ドーナツ、卵焼き、カレー、サンドイッチ、バナナ、林檎、たまごのケーキ、パンにジャムやマスタード、魔法瓶のコーヒー。
知ってる馴染みのある食べ物でも特別に見えるし、
詳細が語られないあやふやな食べ物も美味しそうで、あれこれ想像を巡らせて食べたくなってしまう。
“好きな詩集をゆっ -
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少し不思議で温かい二十四の短編集。
あとがきに「一日の終わりの寝しなに読んでいただく短いお話を書きました。先が気になって眠れなくなってしまうお話ではなく、あれ、もうおしまい? この先、この人たちはどうなるのだろう──と思いをめぐらせているうちに、いつのまにか眠っているというのが理想です。」とありますが、吉田篤弘さんの書く世界はほっとして居心地が良くて、なかなか抜け出せず、結果一気読みしてしまいました……。
再読する際は一日一話と決めてゆっくり楽しみたいです。
特に『隣のごちそう』が好きでした。
ちょっと主人公の行動がストーカーじみてるなと思いつつ、この後どうなるのか、何か起きるのかそれとも変 -
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絵本のような世界観、作者自身によって描かれた装丁、挿絵もほんわかして味があって素敵です。
作者さんのあとがきより、
“一日の終わりの寝しなに読んでいただく短いお話を書きました。先が気になって眠れなくなってしまうお話ではなく、あれ、もうおしまい?この先、この人たちはどうなるのだろう⋯⋯と思いをめぐらせているうちに、いつのまにか眠っているというのが理想です。”
とあるように1話目を読み終わり、え?これで終わり?続きは??となりました。
24篇からなる不思議で静かな余韻にひたれるお話の数々で、実際何度か寝落ちしてました(笑)
私が好きなのはやはり「青いインク」であとに出てくる2つのお話と繋が -
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『おやすみ、東京』は、夜の東京を静かに散歩しているような気分になれる物語でした。
登場する人たちはどこか孤独で、でも完全に絶望しているわけではなく、日常の隙間に小さなぬくもりや希望を見つけている。その距離感がとても心地よいです。
何気ない風景や会話が丁寧にすくい取られていて、「東京はこんなふうに息をしているのかもしれない」と思わせてくれます。
この作品は、元気をもらうための本というより、疲れた心を静かに休ませてくれる本だと思います。タイトルの「おやすみ」という言葉どおり、一日の終わりや眠る前に読むと、世界が少しやさしく見えるかもしれません。
夜は何かを解決してくれるわけではないけれど、「 -
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とうとう螺旋プロジェクト最後?を読み終えた。
あくまで螺旋プロジェクトは海族、山族の対立を軸に皆んなで小説を書こうといったものなので特に読む順番などないと思うが、私は古代から順々に読み進めていった。
この近未来の作品では現代付近までの顕著や山族、海族の対立といったものは顕著に表現されていなかったように感じる。どちらかといえば、西、東、眠り、覚醒といった二項対立の要素が様々に散りばめられていたように感じる。
最後には締めくくりなのか海族と山族との間の産声でとじられる。必然なのか偶然なのかシュウが眠り姫まで辿り着く旅路がふわふわと揺れ動く不思議な感覚だと読んでいて感じた。
シリーズの締めくく