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Posted by ブクログ
過去の自分を認識して受け止めて、前に進めさせてくれる物語。
吉田篤弘さんの本は2冊目。電球交換士で心を奪われ、他のも読んでみたくなった。
結果、ものすごく良かった!個人的に良い本というのは情景や人物が勝手に思い浮かぶ本。頭の中で映像のように動き、その成行きに目を奪われる。
そして読み終わったあとに少し現実の世界がどこか変わったような感覚になる。
まさにそんな印象を受けた本だった。
あとがきに書いてあったが、実は本書は3部作のうちラストらしい。これだけで十分面白かったのに…!
これは他の2冊も読まなければ。
はぁ。久しぶりにいい読書をした。
Posted by ブクログ
「流星シネマ」「屋根裏のチェリー」に続くお話。
文庫になるのを待っていたはずが、そこから5か月経ってようやく手にした。
河口にある町のローカルラジオ局で深夜の番組を担当している曽我くん。彼のおしゃべりと同じく、静かでおだやかでゆっくりと進む話の佇まいが良い。
ある日ラジオで、17歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、リスナーから、とある美術館で出会った一枚の絵の中に写真で見たあなたによく人がいた、と葉書が届く。
そこから話は動き出し、『「アキヤマ君――ではないんですよね?」』『クラリネットを吹ける人、探しています。』『ソガ君、ひさしぶり。』…、ページをめくるたびにいちいちびっくりしてじんとする、不思議な縁が繋がっていく。
ミユキさん、サユリさん、太郎君、カナさん…、曽我くんが出会う人たちには、私も懐かしい人に再会した感じ。
鯨の骨が浮かんでいるチョコレート工場がある町で、それぞれに喪失を抱えた人たちが新しい出会いによって心のわだかまりを解し、新たな関係を紡ぎ出していく姿がとてもいとおしかった。
海の深いところから少しずつ海面へ向かっていき、より広い、より明るい空間へ抜け出て行こうとする意思を感じさせる、曽我くんが訪れた美術館の展示が素敵で印象的。
G線上のアリアの『何か神聖なものに引き込まれていくような』あるいは『自分がゆっくりと前へ進んでいくような』旋律が、この物語によく似合っていた。
Posted by ブクログ
『流星シネマ』、『屋根裏のチェリー』に続く3つ目の物語。
主人公は、町のローカルFM局で深夜の番組を担当する曽我哲生。
これは、彼が17歳の頃、古びた映画館〈銀星座〉で働いていた多々さんに描いてもらった絵が導く、奇跡のような出会いの物語です。
巡り巡ってたどり着いた場所は、イトウミユキさんが営むロールキャベツが美味しいお店〈キッチンあおい〉。
そして、彼女の傍らにいたのはサユリさん。
サユリさんに連れて行かれたチョコレート工場。
〈流星新聞〉の羽深太郎…。
懐かしさがこみ上げてくるとともに、3つの物語が一つに合わさって、壮大な物語になっていきます。
大きなもの、(例えば鯨)に飲み込まれるような、ゆったりとした感じがとても心地よかったです。
まるで音楽を聴くように途切れることなく、登場する人たちとともに物語を楽しむことができました。
川を埋め立てて作った遊歩道。桜並木。
この鯨の眠る静かな町に訪れる日が、再びやってきますように。
Posted by ブクログ
三部作『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』の最後。
書き出しは 「人は皆、未来に旅をする」
前2作に登場していなかった曽我哲生が主役。
『屋根裏のチェリー』より、さらに先の様子が描かれる。
『流星シネマ』『屋根裏のチェリー』での出来事がいくつも曽我と密接に結びついていた。
太郎の幼なじみであるミユキが惹かれた絵のモデルが曽我だった。
この事実を知った曽我は〈定食屋あおい〉でミユキと出会うことになり、サユリの作るハンバーガーも口にする。
そして、店に貼ってあったクラリネット奏者募集のチラシを目にする。
曽我はジャズ演奏のクラリネット奏者でもあった。
曽我の絵を描いた画家の女性とは長年音信不通だったが、あだなが〈鯨〉という音楽家と結婚していた。
それを聞いたサユリは、かつての「鯨オーケストラ」の指揮者だった「鯨さん」かも知れないと会いに行く。
その音楽家は、7人の子どもに楽器演奏を教えていて、子供たちの楽団の名前は〈鯨オーケストラ〉だった。
サユリが復活させようとしている「鯨オーケストラ」は、復活ではなく新しい楽団としての姿が見えてきたところで物語は終わる。
この三部作は、一冊の本にしたらタイトルは『鯨オーケストラ』がふさわしそうだ。
だが『屋根裏のチェリー』で終わっていても成り立つし、さらに続編があってもいいような物語だと思う。
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