吉田篤弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あまりに穏やかで、はらはら冒険もなく、ドキドキの恋物語があるわけでもない。
ふと見上げた時にだけその姿を認識できる、昼間の月のような物語。
暗い夜には、その明るさは夜道を照らす導になったり、夜の暗い室内で電気のスイッチを探す手助けになったりするけれど、必ずしも必要というものではない。
でも、傍らにあればその柔らかさと穏やかさで、なくてはならないものになる。
そんな物語かもしれない。
読み始めた時は、あまりに平坦で、退屈かもと思ったのだけれど、読み進めて行くうちに、少しズレた世界だけどすぐ隣にいる誰かの日常を感じているようで、それがなんだか愛おしく思えてきて、病室のベットの上で一気に読んでしま -
Posted by ブクログ
半年くらいかけて、ゆっくりと読んだ。どこを読んでも東京の長い夜を過ごす人たちを描いていて、まだ眠りたくない夜に、時間をかけて読むのにふさわしい一冊だった。
ある登場人物が、私はいま夢を見ているのか、と感じながら会話をして買い物をするシーンがある。始めから最後まで、この本を読んでいてそんな心地だった。ふわふわと数センチ浮かんでいるようで、現実との境目が曖昧で、特に劇的な出来事も大きな感銘も生まれないけれど、色々な思いをそっと自分の中に置いていく…
それなのに最後にはさまざまなピースが収まるところに収まって、始めからここに向かっていたのかと不思議な気持ちになった。
私は一時、介護の仕事をしていた -
Posted by ブクログ
純文学作家の発想
ひとつづつ評していく。
川上弘美。未来SF。
発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
妙にSFが現実路線のわりには