吉田篤弘のレビュー一覧
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〈新世紀〉吉田篤弘ワールド
伊坂幸太郎を始めとする今を輝く著名作家たちが一斉に会して主催された「螺旋プロジェクト」。
その〈未来編〉に当該するのが本作となります。
独特な世界観や、個性たっぷりのキャラクターたち。彼の長編を手に取った読者にとっては見慣れたであろう、多数の登場人物たちが交差するお決まりの展開。
言うなれば、
『22世紀版おやすみ東京』
と言えるでしょう。
睡魔が失われたネオ東京で起こる様々な出来事。
それは一見散発的だけれど、実は底の方で繋がっている。
様人々の思惑と「眠り姫」を巡って、物語は加速していく。
読後は、SFでありながらどこか現代社会に通づるものを感じました。
そして感想を書くにはあまりに夢想することが多い。
それは登場人物一人一人の考え方、生き様、そして動き出す世界の有り体に何かしら心惹かれるところがあるからです。
話を進めるために登場するモブキャラなど誰一人いません。
その人でなくてもいいけど、その人でないとだめ。
そんな人々が、吉田篤弘作品には多く顔を出します。
そんな愛おしい彼らが導き出した世界。
自分一度、こっそり顔を出して、誰かと語り合ってみたい。
うまく感想にならないけれど、概ねそんな気分になりました。
天使も怪物も眠るような夜更けに、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
強いていうなら良くも悪くも登場人物が多いがゆえ、読むのに苦労します。吉田作品初心者には向いていないかもしれません。そこだけ注意。 -
Posted by ブクログ
タイトルからして面白そうだけど、実際面白いのが凄い。クラフトエヴィングさんの著作は未体験だけど、いかにも面白そうなメンツだもんな。何よりも、エッセイが最高な岸本さんが、本座談会でも本領を遺憾なく発揮してるのも良い。物書きを仕事にしているとはいえ、殆ど情報ゼロの状態から、わずかな手掛かりを元に、よくぞここまで想像を広げられるものだな、と。そして、”カラマーゾフ”を読んだとき、名前の長さや難しさ、その圧倒的なボリューム感にかなりの根気を要したから、ドストの他の著作にはなかなか手が出せないと思ってたけど、本書を読んで、またちょっと読みたくなりました。
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ネタバレ螺旋プロジェクト(私の中で)最後の作品。
今まで読んだ他の7作品よりも、海と山の対立が前面には出ておらず、途中まで螺旋プロジェクトということを忘れそうになるほどだった。しかし終盤に行くほどその仕掛け(?)が分かり、これまでの7作品が紡いできた最終着地点として感慨深い作品となった。
登場人物が多く、文体も結構独特なので慣れるまで時間がかかったが、このワールドにハマると結構面白い。「未来」にうってつけだったのではないか。最後のあとがきを読むとまた一段と感慨深かった。
【最後に螺旋プロジェクト全体の感想】
このプロジェクトを知ってから1冊ずつ読み進めるのが本当にワクワクして面白かった。
同じ設定でも、作家さんによってこんなに変わるものかという面白さもあったし、初めて出会う作家の方もいて新鮮だった。
螺旋プロジェクトは8作品同時に連載されていたものを今回文庫化したようなので、1冊ずつ読んだ今回と、8作品同時にちょっとずつ読み進めたのではきっと感想も変わったと思う。特に本を跨いで出てくる共通のキーワードや描写などは、文庫だと1冊目に読んだ本では分からない。
第2弾もあるようなので期待したい。あー終わっちゃった!トートバッグが届くのが楽しみだ。 -
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吉田篤弘作品、読んだつもりになっていたけど、実はこれが初めてだった。
「流星シネマ」「屋根裏のチェリー」に連なる物語だと読んだ後に知り、順番に読めば良かったとちょっと後悔。
でも、もちろんこの作品だけを読んでも十分に楽しめる。
読みやすくサラサラと入っていく感じの文章は心地よく、何のストレスもなく読み進められる。
「涙腺崩壊」とか、「大どんでん返し」といった仰々しい宣伝文句とは無縁の気を衒うことのない、静かで淡々とした物語の運び方が心地よく、一枚の絵が導く小さな奇跡のような出会いが胸を温かいもので満たしてくれる。
「時間は過ぎていくのでは無いのです。どこかへ消えてしまうわけでもありません。すべての時間は自分の中にあり、それが少しずつ積み重なっているんです」‥‥歳をとるのも悪くないなって思わせてくれるいい言葉。 -
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「屋根裏のチェリー」を買おうと思っていたが、その前の話があると分かり、こちらから読むことにした。
都会のへりの窪んだところにあるガケ下の町で、「流星新聞」を発行する手伝いをしている太郎君と、その周りの人たちの話。
自分が創刊した「流星新聞」を太郎君に託して故郷に帰ったアルフレッド。
「メアリー・ポピンズ」を愛読しジュリー・アンドリュースにあこがれるミユキさん。
編集室に置いてあるピアノを弾きに来るバジ君。
詩集屋を営む“煙草をくわえた女神”カナさん。
幼馴染で〈オキナワ・ステーキ〉の店主・ゴー君と、流し目が素敵な看板娘のハルミさん。
個性的なコーヒーとカレーのお店〈バイカル〉の店主・椋本さん(兄)と、クジラが眠ると言われる町の研究をする椋本さん(弟)。
転校生のアキヤマ君。
黒い革のケースを抱えて〈オキナワ・ステーキ〉に通ってくる丹後さん。
〈鯨オーケストラ〉のオーボエ奏者・岡さん(サユリさん)。
人の記憶とそこからにじみ出る心情について何度も語られる物語だが、出来れば忘れてしまいたいけれど決して忘れてはならない記憶になったアキヤマ君のエピソードが強烈。
人間が手に入れた「忘却」という能力の中で、忘れてはいけないことなのに日々の生活の中で薄れていく記憶との付き合い方が切ない。
ガケ崩れによって突如現れた鯨の骨や本のタイトルにつながる8ミリフィルムのエピソードも印象的。
『小さなかけらを拾い集めて、大きな輪郭を見つけ出す』と語られた編集者の仕事さながら、散り散りになってしまったものとかみんなが忘れてしまったもののかけらを集めて、忘れていた出来事や懐かしい人を浮き彫りにする。
個性的な町の人々と、彼らが暮らす静かで穏やかで不思議で意味深な世界が、心地良かった。 -
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ネタバレ「1」を読み終わった後に娘に手渡しておいたら、あっという間に読み終わり「2」も先取りされ、早く「3」を持ってこいと要求してくるほど。
いや、だからまだ出てないんだって。。。
ということで、小学生高学年から楽しめる幻想旅物語、『それでも世界は回っている』の第2巻。
”6番目のブルー"を探してエクストラへ向かうはずが、いつの間にか唄のメロディーを求めてリリボイに向かうことに。
”人生っていうのは「いつの間にか」をめぐる戦いなんだ”とのことなので、それもまた必然。
それにしても登場人物が多い。
それほど長くない章立ての中、ほぼ1章に1人のペースで出てくる。
吉田さん自身のイラストを毎回挟み込んでくれているので、とてもイメージしやすくて良いのだけど、次から次へと目まぐるしいほど。
この辺も世界は回っている感が出ているのかも。
さて次は完結編(なのかな?)。
待ち遠しい。 -
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「螺旋」プロジェクトの4冊目。
語られる時代としては一番後ろになり、皆さんのレビューを見ると最後に読むほうが良いように書いてあったが、読み始めたものはしょうがない。
2095年、四半世紀前に建てられた壁で街を東西に分断されている東京が舞台。
そこは不眠の都と化し、睡眠ビジネスが隆盛を誇っているという設定のもと、巻頭に紹介されているだけでも25名+1匹、色んな人物が登場し、それぞれの周辺が描かれていく。
睡眠コンサルタントに勤め覚醒タブレットの開発を命じられたシュウが〈いばら姫〉の物語の謎を追うパート、〈眠り姫の寝台〉という本を巡ってシュウの姉で探偵のナツメと小説家のマユズミが動き回るパート、スキンヘッドの音楽家ホシナが曲のモチーフにする幻の酒〈ゴールデン・スランバー〉を探すパート、ポスターハンターのトオルがポスターで見た幻の映画の幻の女にこだわり続けるパート、これらの話が入り乱れ、それにコーヒー・バーの店主サル、生物学者のコドモ博士や特別調査機関の二等調査員ゴヤなども絡んで話は進む。
どのパートもが結構面白い話で次々と頁は捲れていくが、一方、登場人物が多くまた場面転換も早くて、これらが互いにどう繋がっていくのか、細切れで読む頭にはなかなか入ってこず、そこはいささか苦労した。
読み終えてしまえば、小道具も仕掛けも世界観も、どれもがこのプロジェクトの様々な要素を取り入れて物語が構築されているように思え、これまで読んだのはこの本を含め4冊だけなのだが、残る4冊も読んでいれば、もっと多くのことに気付けたのではないかと思わされた。
海と山との対立もなく、寧ろ、ひとつになりたいふたつの物語として、蒼い瞳と大きな耳が邂逅するラストは大団円に相応しく、確かに一番最後に読むほうが良かったように思った。
「おおる、おおる」と泣きつづける赤児の声は、作中の『ふたつの強きものが、勝利への欲望を捨てて、仲良く並び立てば、そのとき初めて、壁は消えて、たったひとつのALLが生まれる』と呼応し、なかなか感動的な幕切れだった。 -
Posted by ブクログ
アパートの屋根裏部屋で一人暮らすサユリは人見知りで、人とうまく話すことができない。
元オーケストラのオーボエ奏者で、彼女の所属していた、がけ下の町のはずれにあったアマチュア楽団〈鯨オーケストラ〉はすでに解散していた。
サユリの頭の中に現れて、時々話しかけてくる小さな彼女の名前はチェリーという。
レモン・ソーダやハンバーガーやササミカツ定食などおいしい食べ物が登場し、物語全体が居心地良く優しい雰囲気がします。
私の住む町で身近におこった、先日の淀川の迷いクジラの出来事を思い出し、『流星シネマ』のことが即頭に浮かびました。
小説も侮れないなと、嬉しさがこみ上げてきました。
個性的で、懐かしい登場人物たちに再び出会い、『流星シネマ』とこの物語が響き合っていることに気づいてから、思わず『流星シネマ』を傍らに置いて読み進めていました。
偶然に引き寄せられて、何かが始まろうとしている緊張と高揚が、次々とやってきます。
サユリを主役にしたこの物語は、ゆるやかにつながっていく偶然の出会いによって、小さな奇跡が重なっていく、とても愛おしい物語です。
この後に続く第三の物語『鯨オーケストラ』もとても楽しみです。