【感想・ネタバレ】ソラシドのレビュー

あらすじ

むかし写真誌のレイアウター、今は文筆業のおれは、ふと手にした古い雑誌の記事に惹きつけられる。その二人組は愛してやまないアルバムと一番好きな曲が自分と一致し、片割れはかつてのおれと同じくダブル・ベース弾きだった。彼女たち=ソラシドの断片を掻き集め、おれは紡いでゆく――。クラフト・エヴィング商會の物語作者が描く、失われたものの小説。

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Posted by ブクログ

いやあ、出だしの時代背景や主人公の職業から、てっきり吉田篤弘さん自身のことを綴っているエッセイかと思って読み進めていた。

ら、小説だったのね。

1986年当時にいたという女性2人のジャズバンド『ソラシド』を追う主人公の話。

主人公は若かりし頃、ダブル・ベース(コントラバス)を偶然ゴミ置き場で拾い、あまりの大きさに「エレファント」と名付け、一人練習していた。

『ソラシド』の薫もダブル・ベースの奏者ということで、興味が湧いたのだった。

しかし、レコードも出したことのないマイナーなバンドで、たま~に雑誌の隅に紹介が載るくらいなので、追跡は困難を極めるのだが。

あるとき、『ソラシド』が映画の音楽を担当したことがあると知り、そしてまた、その映画を保管している映画館を付き止め見に行くのだが、なんとそれはサイレント映画だった!

まあ、このくだりは、私の中でめっちゃ盛り上がって、そして、えええ~~~っ?!とジェットコースターのように急降下したよね。笑

だって、どんどん謎の『ソラシド』に興味が湧いてきて、それは、やっとの手がかりだったんだもの!

そんなこんなで、吉田作品にしては、一気にぐいぐい読める話だった。

いつもなら、文章を味わって読む感じなんだけどね。

これはちょっと、ミステリー小説っぽい感じだったから。

冒頭はちょっと退屈だったけど、どんどん面白くなってきて★5つ!

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2025年07月01日

Posted by ブクログ

キーワードは、1986年。大量のレコード、そしてソラシドという女性デュオ。
ゆるゆると時間が流れているような感覚。
後半60ページくらいから、今までのことがつながり出す感じ。読んでいて、印象的なフレーズがいくつもあり、思わず書き留めた。
レコードは、確かに子供の頃聴いていた。あのノイズが入るざらつく感じ、よく覚えている。

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2024年12月06日

Posted by ブクログ

ドアの向こうに進むには鍵が必要。
鍵を開けて進む人、鍵が見つからない人
鍵を持っているのにドアを開けない人、
自分はどのタイプだろう。
読後、余韻に浸りながらずっと考えていた。
今年、一番の本かもしれない。

26年前の無料雑誌の小さなコラムに載っていた女性デュオ「ソラシド」。ジョージ・ハリソン好き、ダブルベースを弾いていたという自分との共通点から、どんな音楽を奏でていたのか気になりネットで検索するも、ヒットしない。26年前の彼女たちの音楽を、どうしても聴きたいという思いが強くなり、妹と「がらくた屋」の店主と三人で「ソラシド」の痕跡を探し始める。

1986年と26年後の現在を行き来する物語。
1986年は異母兄妹の妹が生まれた年。

またひとり、好きな作家に、
めぐり逢ってしまった。

最初は時系列、複数の登場人物が入り乱れるので、頭が混乱してしまうが、いろんな方向を向いていたベクトルが、そのうち同じ方向に向かっていく。もう、前にしか進まない。本を読む手が止まらなかった。80年代の音楽も場所も人物も物も空気さえも、粗くて掠れててノイズがあった。今考えるとあり得ない時代、でもどこか愛おしい。

くれぐれも Don't disturb. 

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2024年06月20日

Posted by ブクログ

だいすきな本になった。

吉田さんの本は、読んでいてにやついてしまうことがある。

ノート。1986年。ダブルベース。ソラシドの2人。音楽。言葉。レコード。コーヒー。

今のこの気持ちをうまく言葉にできない。
何度でも読みたい。

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2015年06月18日

Posted by ブクログ

雨の様に降り注ぐ
幾千もの言葉を
日々、ぼんやり目にしつつも
思わず(はっ!)と、手で受け止めたくなる様な
キラリに出会う事がある。

それは自分だけに光るキラリ。

音楽好きの彼が
パラパラ捲っていた雑誌に掲載されていた
ほんの小さなコラム。
その記事がキラリと光った。

(誰?聞いた事もないアーティスト…)
それがソラシド。
どうやら女性2人のデュオらしい。

彼女達のコメントや弾いている楽器も気になる…

早速NETで調べてはみたものの、
彼女達は派手な活動をしていなかったらしく、
全く手がかりがつかめない。
でも、
何故か追っかけずにはいられないし、
そうせざるを得ない事情も出来た。

それから
彼がソラシドの足取りを巡る物語は
まるで何千枚ものレコードを並べ(勝手に思い描いております。)
一枚、一枚、のんびり視聴でもしている旅の様な展開となった。

活字を追っているだけなのに、
頭の中ではゆるいメロディーが勝手に流れ出す。
ザ、ザザザ…時折味のある雑音まで混じりながら。

なかなか出会えないソラシドだが、
キラリ光った時点で、もう会っていたのではないだろうか…

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2015年04月24日

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ネタバレ

「オレ」という一人称の篤弘さんはこれまで以上に気取りがなくて親しみやすい兄ぃなのです。
1986年と今を行ったり来たりしながらまた素晴らしい音楽を聴かせてくれました。(実際。ネットなどで音楽を捜しながら聞いて読んで・・・)
この本もまた大事な一冊となりました。

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2015年03月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

吉田さんの小説は、静かに静かに始まる
そして、どこか変わった人たち、建物から
物語が動き出していくのが心地よい
1986年、渋谷区と世田谷区の間の
松見坂の上にある「空中の長屋」
まずいコーヒー、「ザ・ビートルズ」
エレファントという名のダブル・ベース
現在の「オレ」と年の離れた妹「0(オウ)」が
過去を探していく
不思議だけど、心地よく
たくさんの音楽が聴こえてくるような小説
極上の読書の時間を過ごすことが出来ました

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2015年02月20日

Posted by ブクログ

すごくいい。
すごく好き。
出来ることなら★を100こ並べたい。

ものすごく優しいお話。
でも、ちょっと寂しい。
そして、じんわりと温かい。

「おれ」は探し物をしている。
いや、「おれ」だけじゃなく、みんなが探し物をしている。
探し始めた時には自分が何を探しているのか正確なところは分からない。
だんだんと見えてくる。
そうすると最初にイメージしていたものとは違うものだったことが分かってくる。
いよいよ探し当てたと思い、「そうだったのか」と納得しようとすると、また新たな探し物が始まっている。
気付かないうちに。

「この物語はこういう物語です。」と言い切れません。
ただ、とても美しい物語です。
とても美しいものが描かれていると思います。

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2015年01月30日

Posted by ブクログ

途中までは時間軸が行ったり来たりで頭がごちゃごちゃしたけど、最後それがまとめられていくのが面白かった。音楽が好きな私にはとても共感できる内容でした!

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2020年07月27日

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ナンデモ屋を見下ろす場所から、二十数年前のバンドを探す。冬の音楽を奏でる、女性デュオ。
レコードと雑誌と喫茶店のまずいコーヒー。雑踏の裏の街。
吉田篤弘さんの作品はほぼリアルタイムで読んでるのに、何故か抜け落ちてた本作。
吉田さんらしくて、好きなタイプの話でした。
顔見知りかそれにちょっと毛が生えたくらいの間柄の人たちが阿吽で守る物語の優しさ。

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2020年07月17日

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かつて奏でられた音を求める物書きの話。
読後に、文章で読んだ光景が自分の記憶だったように錯覚する、そんな一冊。
音と当時の空気を閉じ込めた一枚のレコードは、耳にした人に影響を与え、文章として記述され、読み手は音を求める。
なんて穏やかで、心地良いループだろう。

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2015年09月02日

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ネタバレ

「新潮」の連載でちょいちょい読んでいたのだが、
これは一冊の本の方が楽しめた。

相変わらずの心地よい空気感のある作品。
ただ、「ソラシド」という名前しかわからないミュージシャンを探し求める、とゆーストーリー上、
ちょっとミステリーチックでもあり、いい意味でずっと緊張感、みたいなものが作品を通してある。
彼女たちが今どうなっているのか、という疑問を
登場人物たちと同じように、持ちながら読み進める。

妹との関係にどーもラブっぽさを感じてしまったのだが、
よく考えたら血、繋がってるんだよなー。

冬の音楽。
聴きたいです。

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2015年07月09日

Posted by ブクログ

もう まだるっこしいなぁ
と 思うか
いいねぇ このまったり感
と 思えるか

もちろん 後者になれる人は
独特の浮遊感が
なかなか たまりませんでしょうねぇ

小説の筋というよりは
そこに描かれている雰囲気を楽しむ
そこが
この 小説を楽しむコツでしょうか

それにしても
表紙の レコード は
んな 音楽 なのだろう と
ずいぶん 気になってしまいます

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2015年09月14日

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吉田さん独特のストーリーのテンポが大好き。いろいろと都合よく収束していくのでファンタジーだと割り切って読んでいる部分もあるけれど、こんな素敵なことがおこったらいいなって思える。一緒に「ソラシド」を探しているうちに、自分も遠い昔の何かを探してみたくなった。

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2015年03月02日

Posted by ブクログ

耳元で心地いい音楽を聴いた後のような、すごく素敵な気持ちで読み終えた本でした。
全体的に落ち着いたトーンで、コーヒーの茶色から始まり、ニューヨークのグレイ、冬の吐息の白、と浮かび上がるシーンが美しくて、なんとも言えない不思議な世界に迷い込んだようです。

過去と現在、現実と空想が入り混じった世界は、映像がとにもかくにも美しい。古着屋とバー、世界の果てのような白い荒野、ダブル・ベース「エレファント」、1つ1つのシーンがにくいくらいに素敵で、とにかくうっとり。これは、映画化してほしい。
美しいシーンも然ることながら、本書に登場する音楽を聴いてみたい。

音楽には疎い私ですが、とある場面では鳥肌が立つくらい全身ぞわっとしました。読み進めるうちに、本当に耳元に音楽が聴こえる気がしてきます。

冬を切り取ったような冷たさと一緒に、じんわりとした温かさが同時に楽しめることも魅力的だし、音楽で震える空気感も病みつきになります。

装丁もすごく素敵で何度も眺めてしまいます。冬に読むのにお勧めな1冊でした。

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2015年02月16日

Posted by ブクログ

にやりとする。こころにくい文章に。
トークイベントの話を思い出しつつ読む。行って良かったなぁ。。

もう一回読み返したら、散りばめられたいろいろにもっと気付ける気がして。

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2015年02月25日

Posted by ブクログ

「意見は言葉に出来るけど、思いは言葉にならないよね」とは登場人物のセリフ

忘れ物を取り戻しに行くかそのままそっとしておくかは人それぞれだけれど、無かったことにはしたくないね

というモチーフを感じた。

それはそうとソラシド(作中に登場するユニット)の曲を聴いてみたい。自分の中のソラシドを見つける作業も楽しいかも知れない。

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2022年03月03日

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レコードを蒐集することだけにすべてを費やしている主人公は、1960年代にごく一部で話題になっていた女性デュオ、ソラシドの現在を追うことになる。主人公には、親子ほどに歳の離れた異母妹がおり、二人で探し始める。
音楽の話かと思いきや、二つの家族の絆の話だった。とても個性的な家族だが、読後は優しい気持ちになる。

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2021年11月07日

Posted by ブクログ

何冊か読んで、この著者の空気感が好きだと思ったのでこの本も読んでみました。
でも今までで一番「おじさんが書いている」という感じが伝わってきてちょっと辛かった。
あと私は音楽好きなのですが、出てくる音楽は全然わからなかった・・・
音楽の趣味が合えば、すごくテンションが上がる話なんだろうな。

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2020年09月29日

Posted by ブクログ

謎の女性デュオ・「ソラシド」。
1986年と現在をリンクしながら、彼女達の足跡をたどる主人公ヤマシタと、腹違いの妹・”オー”。
レコード、不味いコーヒー、ダブルベース、小さな映画館…。
雑多なものは淘汰され、洗練されつくされたように一見見えても、実はひっそりと息づいていたりする。あの頃の冬の空気と共に…。
路地裏の雑貨屋のような、独特の空気感が漂う物語です。

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2019年03月10日

Posted by ブクログ

女性デュオ・ソラシドを巡り、聞いたことのない音楽を求める男の義理の妹や母との距離感、父の影の話。レコードの音のような少し篭ったノスタルジーを感じさせる。

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2018年05月06日

Posted by ブクログ

昔のものは最近はネットでなんでも検索できるが、もしそれがマイナーすぎてネットにも引っかからなかったら自分で探すしかない。
大変だけど、ネット検索よりリアルに当時の空気に触れられるような気がする。

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2017年03月26日

Posted by ブクログ

人は何かを探す過程で新たな物を知ったり、人と巡りあったり、過去の自分に再会したり。思いがけない出会いが生涯忘れられないものになったりするんだろう。

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2016年06月25日

Posted by ブクログ

ぐわしと一気に世界に引き込まれる感はなんなんだろうなぁと毎回思う。強引なところは全くなく。
途中ちょっと中だるみ感があったけど,終盤の展開にはやはり脱帽。

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2015年11月19日

Posted by ブクログ

レコードを生活費を削って集めている、物書きの主人公。古い音楽雑誌に小さく載ったデュオ「ソラシド」を追いかけ始める。
「冬の音楽」を思わせる少し不思議で静かな本だった。

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2015年02月25日

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