ブレイディみかこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
理不尽な理由でホームレス用のホステルの退去を迫られたシングルマザーたちが、使っていないショールームを占拠するという活動を描いた実話をもとにした小説です。
物語の中心となるE15ロージズの活動は、社会の片隅に追いやられた人々が自らの尊厳を守るために立ち上がる姿を描いています。
彼女たちの活動を知った記者の史奈子とその元カレ幸太もその活動に加わります。特に史奈子は日本人で、お金に困ったこともない「部外者」とも言える存在ですが、幸太の行動力や、占拠活動の現場を間近で体験することで「当事者感覚」を取り戻していきます。このあたりの流れはとても共感でき、読者にも「自分ごと」として社会問題を考えるきっかけを -
Posted by ブクログ
子供の育つ環境が貧困や、親のドラッグ依存といった厳しい状況である場合、彼等がどの様な立場に置かれ、何にどの様に苦しめられているのか、この作者からはこれまで読んだ本からも教えられてきたが、本作でも同様であった。
本作はこれまで読んだのと違って小説ではあるが、それこそ「リアル」を感じさせる。この「リアル」については、p.181〜ミアの書いたリリックに対してウィルに「リリックが本物(リアル)なんだ。それが凄いよ」と言われ、彼女の心に刺さるのだがそれは「ミドルクラスの人たちが自分の様な環境で生きている人間の生活を指して言う言葉だと知っていたからだ」とある。作者自身ワーキングクラスの生活を体験しているこ -
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イギリスに住んでいる少女ミアの実世界と、ミアが読んでいる本の世界がパラレルで進行していく入れ子の構成になっている。貧困をストレートに描くだけでは表現しきれないミアの内面の移り変わりや感性を、本で登場する少女のストーリーがあることで、立体的に描いているように思う。
読み始めではあまりピンと来ていなかった本の世界の存在が、後半に向かって効いてきて、作者がこの構造にした意図が伝わってきた。
どこの国でも貧困にまつわる悲劇は重層的で、ドラッグやアルコールやいじめや暴力がまとわりついている。その渦中にいて、諦めつつも抜け出そうとする子ども達のつらさがしんどい。
終始、ミアがチャーリーを守ろうとする姿 -
Posted by ブクログ
「最近は「一年ひと昔」の時代が来たかと思うくらい政治状況の変化がめまぐるしい」と、著者が言う通り、2021年5月に出た本書(連載は2018年から2020年)を2025年の今読むと、頭の中が混乱してクラクラしそう。まさかまさかウクライナやガザで深刻な戦争が続き、安倍晋三やエリザベス女王が亡くなり、小池百合子がまだ都知事でトランプが再び大統領に返り咲く未来が来るなんて‥コロナ禍初期の当時は想像もしなかった。ため息しか出ない。それでも、こうして実在の女性の政治家の立場やふるまいを記録し伝えていくことはきっとこれからの人々の役にたつと信じたい。勇気を持って考え続けなければ。
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Posted by ブクログ
【目次】
珠玉の世界
バンク爺
君の名は。
ロックダウン鬱と終わりの始まり
足が痒い
オンライン面接に気をつけろ
ある雑談
野暮という言葉の意味
現時点はどこ?
アニバーサリー(命日)
カミング・ホーム狂騒曲
そしてわたしは辞書を引く
通訳はつらいよ
パートナーの呼称
ギャン泣きプリンセス
お達者ブラフ
ふつうの風邪を恐れよ
街の本屋さん
ダウンの終わりはアップの始まり
検査キットを求めて三千里
濡れた脱脂綿
ライフは続くよ
圧倒されるにいたらない日々
ある増殖とその連鎖
遅すぎることはない
「そんなものだ」ホラー
味覚は人の記憶を強烈に呼び覚ます
偶然は怖くない
パスポート狂騒曲
できるか -
Posted by ブクログ
1に続いてやっぱり面白いねえ。1の時はそもそも小説だと思って読み始めたから衝撃がすごかったんだけど、2も読みやすくて面白い。難しい、いろいろ考えちゃうようなトピックが盛りだくさんなのにブレイディさんの文章とユーモア、息子さんとちょくちょく出てくる旦那さんのおかげでスッと入ってくる。
P35「誰かのことをよく考えるっていうのは、その人をリスペクトしてるってことだもんね」→宗教とかフェミニズムとかそういうのだけじゃなくて全ての人間関係においてこれが言えると思う。相手へのリスペクトとは何か。よく考えること。エンパシー。1から続いて軸となってるテーマの一つだと思う。
P171『スクール総選挙』→日 -
Posted by ブクログ
母はアル中のシングルマザー、8歳の弟・チャーリーを抱えて生きるヤングケアラーの14歳のミア。
カネコフミコの自伝を偶然借りたミア。
自分と同じように、恵まれない幼少期を過ごしたカネコフミコ。
フミコに共感すりミア。
ミアの苦境は続く…
ミアの一番の恐れは、母が育児をできないと判断され、ミアとチャーリーがバラバラになること…
イギリスの貧困層のリアル。
胸が痛い…
ソーシャルワーカーの介入は本当に良いのか…と考えさせられてしまう…
最後には希望が見えたが…
ミアとチャーリーのようにゾーイたちのようにいい大人に出会うケースは少ないだろう…
それを思うと胸が痛い…