ブレイディみかこのレビュー一覧
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【見ようとしていなかったものが、見えた】
イギリスの元底辺中学校に通う子どもの母、という視点から貧困や人種差別などのリアルを描いたエッセイ。
エッセイというには取り上げられている題材に重みがあり、ノンフィクションというには軽やか。そんな印象を受けました。読み応えがあります。
ふだん日本の小さな町で子どもを育てている私は、人種の違いで差別されたり、貧困によって子どもがドラッグの運び屋をするといった世界と離れた場所にいて、「これもリアルだ」と驚きました。そんな世界はすぐ近くにもあって、ただ見ないようにしているだけだったのかもとも思いました。イギリスと教育や政治の違いも興味深かったです。
とはいえ、文章は読みやすく、著者の子どもの発言を頼もしく思い、私自身も気づかされることが多かったです。この子はどんな大人になっていくのだろうと成長が楽しみになってしまいました。 -
Posted by ブクログ
大逆事件の金子文子の自伝を読み続けるミア。母親は、アル中でドラッグ常習者で男と一緒になっては捨てられを繰り返している。まだ幼い弟のために、ソーシャルワーカーから違う里親に連れて行かれることを恐れ、必死で生きているミア。そんなどん底の生活をする英国の女子高校生は、金子文子に自分を重ねる。
授業で書いたミアの詩を読んだ同じクラスのウィルから、ラップのリリックを書いてほしいと言われる。ウィルから一緒にラップをやろうと誘われ、何か変われるかも…と思い始めた頃、母親はどんどん悪い方向に向かっていく。弟と逃げるしかない…。
大逆事件の少女と現代の英国の少女。時代も国もまったく違っていながらも、保護者であるべき大人たちの無責任さに翻弄される少女たち。
なんだか、とても重いものを読んでしまった気がする。
少し明かりが見えてきたミアにエールを送りたい。 -
Posted by ブクログ
ブレイディみかこの著書を読むのは、本書が初めてである。書評で目に留まり手に取ったが、英国で長年暮らす著者の、現代社会に対する見識と洞察の深さに、蒙を啓かれる思いがした。
特に印象に残ったのは、エクストリームセンター(極中)、リマイグレーション(移民の送還)、民のリスポンシビリティと政治家のアカウンタビリティ、テクノ封建制(Technofeudalism)、バラモン左翼、クラスシーリングとメリトクラシー、家産制国家(Patrimonial State)、The Fifth Estate、Ordo Amoris(愛の秩序)、アナキズム、スチュワードシップなど、これまで十分に理解していなかった、あるいは異なる意味で捉えていた概念が、欧米、とりわけ英国を中心とする政治・社会情勢を背景に、明快に定義されていく点である。個々の概念が単なる知識としてではなく、相互に関連しながら現代社会を読み解くための視座として提示されていることに、大きな知的刺激を受けた。
欧米では、移民の増加に伴う文化的・民族的対立が日本以上に顕在化しているが、外国人労働者が人口減少を補い始めている日本でも、ブレイディみかこの描く政治状況の土台は徐々に形成されつつあるのではないか、と警鐘を鳴らしているように感じた。一方で、日本には政治権力が極端な方向へ傾こうとする際の制度的・社会的な抑制が比較的多く、著者が懸念するような、偽善すらまとわない権威主義的な政治家が、民族や世代間の分断を利用して急速に台頭する可能性は、欧米ほど高くはないのではないかという印象も抱いた。
本書を通じて、欧米、特に英米社会が直面する政治的・社会的危機の構造を俯瞰する視点を得ることができた。政治への関心が決して高いとはいえない自分にとっても、本書は現代民主主義の課題を理解するための格好の導入書であり、この分野についてさらに学びを深めたいという知的好奇心を強く喚起してくれた一冊であった。 -
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本屋大賞 ノンフィクション本大賞
毎日出版文化賞 特別賞
カトリック系の小学校(公立、移民が多い、学力高い)から、底辺中学校(公立、白人の労働者階級がほとんど、学力低い)に進学したブレイディみかこさんの息子さん、「ぼく」。
学校の中で、通学路で、さまざまな人種差別的発言にさらされる。それは、母親であるみかこさんも同様であった。
しかし、みかこさんのみならず、「ぼく」も人種差別、LGBTQ、貧富の差などについて深く考察するのである。
それは、イギリスの教育によるところも大きい。
『エンパシー(共感)とは何か』と、中一のテストに出るのだ。「ぼく」も、「そういう授業、すごく面白い」と言っているのは、やはり母親の影響が大きいのだろう。
翻って、日本も(イギリスほどではないかもしれないが)、最近は移民が多いが、これほど深く考えている子はいるのだろうか。
ニュースなどを見ていると、人種や宗教、階層などが違う人々が分かり合える日はいったい来るのだろうかと、暗澹たる気持ちになるのだが。 -
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ミアとフミコの自伝が交互に語られていく
金子文子は実在した人物で自伝や歌集も出していた。その自伝のたぶん最初の方だけを使っているのかなと思われる
唇を噛みながら胸が裂ける文字を追っていた。苦しい境遇それでも希望を信じ生きていこうとする。溶けて沁みていく言葉は人の道を外れた者には届かない。ミアはリリックに、フミコは自伝に想いを載せる。伝わってくる懸命な姿、どうにかどうにか安らげるようにと願いながら、苦しくも希望を忘れたくない物語だった
ラストにウィルの気が抜けるような思いが緊張を和らげてくれてよかった
好きなフレーズ引用
それはここではない世界で 自分が本来いるべき場所っていうか 行ったこともないのになぜか知っている場所…
一緒に震えることができる相手を友だちっていうんだろうか
いま住んでいる世界だけが私の住む場所とは限らない -
Posted by ブクログ
ブレイディさんの本は『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』以来。
女性の政治家のみとりあげた視点に興味があって読んでみた。が、いかんせんちょっとトピックスが古すぎた。本の出版が2021年、コロナ禍以前の話が半分以上で、トランプも小池さんも一期目だしイギリスはEU離脱でまだ揉めてる頃。
が、どちらかというと政治の話にはながらく敢えて興味を持たないできたので、知らない単語がゴロゴロでてきてとても勉強になった。文体も読みやすい。
あとびっくりしたのが、世界にはLGBTを公言している女性政治家がたくさんいて(男性もいるかもしれないけどこの本には出てこない)、しかも党首や首相にまでなっていること。
女性首相がでた日本といえど、それは当分あり得ないだろう。日本もまだまだだな。 -
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読もうと思いながら2年ぐらい積読にしてたかも⁇GWの旅のお供で読み始めて、ようやく読み終わった。
前作が見つからないので、「振り返り読み」出来なかったけど、色々思い出しながら、読んでいった。
ブレイディみかこさんは、婦人公論のエッセイを読ませてもらってるけど、こんな風な一編の物語にしてもらうとまたちょっと違った印象だ。映画かドラマを見てるような気がしてくる。
この息子さんの成長が素晴らしい。
ちょうど公開中だった『オールドオーク』という映画を見たのだけど、移民(映画では難民かな?)のこととかいろいろ重なるところがあった気がする。映画の舞台の方がもっと田舎だったかな?
この本は映画と違って「終わり」はなく、ただ明日に続く…ということかな⁇ -
Posted by ブクログ
エンパシーを「他人の靴を履く」という素敵な解釈で説明する著者のシスターフット・エンパシーをテーマとしたエッセイ。
マスコミに何かとカテゴライズ分けされ煽られる女性間だけれど、シスターフットという言葉・概念があったのだ。
「自分のことは自分で決める」という権利のために闘ってきた過去の女性たちのエネルギーと行動力に比べて、今日本人のエネルギーのなさ、諦め感は何なんだろう?
まだ男尊女卑、家父長制の意識が残り続けている社会の中で、尊重されない扱いを受けたとき、尊重されていなかったことに気付いたときには異議を唱え、闘うことが大切だと思った。
【シスターフット】
女性同士の連帯や絆を示す概念。
女性が互いに支え合い、共に成長し、社会的課題に立ち向かう力を表す。