私労働小説 ザ・シット・ジョブ

私労働小説 ザ・シット・ジョブ

1,650円 (税込)

8pt

「あたしのシットはあたしが決める」
ベビーシッター、場の夜間作業員にホステス、社食のまかない、HIV病棟のボランティア等。「底辺託児所」の保育士となるまでに経た数々の「他者のケアをする仕事」を軸に描く、著者初の自伝的小説にして労働文学の新境地。

「自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ」
シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)。店員、作業員、配達員にケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。
他者のケアを担う者ほど低く扱われる現代社会。自分自身が人間として低い者になっていく感覚があると、人は自分が愛せなくなってしまう。人はパンだけで生きるものではない。だが、薔薇よりもパンで生きている。
数多のシット・ジョブを経験してきた著者が、ソウルを時に燃やし、時に傷つけ、時に再生させた「私労働」の日々、魂の階級闘争を圧巻の筆力で綴った連作短編集。
■声を出さずに泣く階級の子どもがいる。
■水商売では年齢と美醜で判断されて、失礼な言葉や態度を許容することでお金を貰う。失礼を売り、失礼を買う。失礼は金になるのだ。
■何かを感じたり、ムカついたりする主体性のある存在として認識しない者は、相手の賃金だけでなく、人間としての主体性さえ搾取している。
■革命とは転覆ではなく、これまでとは逆方向に回転させることなのかもしれない。

【目次】
第一話 一九八五年の夏、あたしたちはハタチだった
第二話 ぼったくられブルース
第三話 売って、洗って、回す
第四話 スタッフ・ルーム
第五話 ソウルによくない仕事
第六話 パンとケアと薔薇
あとがき
※本書は「小説 野性時代」2021年4月号、22年1月・5月・9月号、23年1月・5月号に掲載された作品を書籍化したものです

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私労働小説 ザ・シット・ジョブ のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ 2024年01月31日

    ブレイディみかこさん、初の自伝的小説。
    イギリスに渡り、シット・ジョブ(くそみたいに
    報われない仕事)を幾つも経験した彼女ならではのヒリつく言葉に胸を突かれた。

    一話「1985年の夏、
    あたしたちはハタチだった」
    年齢と美醜で判断されて、失礼な言葉や態度を許容する...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2024年01月16日

    普段小説を読まない自分にとって、読みやすいと感じた一冊。
    ストーリー自体は1話が個人的には最も惹かれたけれど、フレーズとして印象に残ったのは最後のお話。それと後書きも良かったと感じた。

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    Posted by ブクログ 2023年12月09日

    この本の、なんだか上手く表現できない、もやもや感、憤り、残酷さ、悲しさ…、こういうのは、正直好きじゃない。
    でも、こうでしか表現できない事があるし、現実がある。自分の中にも存在する黒い部分、それを嫌悪する気持ちが、語られているような小説だった。

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    Posted by ブクログ 2023年11月19日

    面白い。僕はイエローでももちろん面白かったけどこれはブレイディさんの視点で世界を見ているから全く別物。
    ブレイディさんの強さと弱さのバランスとパンクさと繊細さが見ていて共感もできるし心が温かくなる。
    短絡的だけどアルバイトの最低賃金が1500円になれば日本ももう少し生きやすくなる気がするけどな。

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    Posted by ブクログ 2023年11月08日

    ブレイディみかこの「私小説」。著者の経験をもとにしたフィクションということで、とても臨場感があり、リアル。
    すべての短編に通底しているのは、ままならない状況に置かれている人たちへのエンパシーだ。

    水商売は、失礼をお金に変えていること。
    「失礼を売り、失礼を買う。失礼は金になるのだ。」

    「自分のソ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2024年04月01日

    ・生臭い、リアルな既視感のある「労働」の「小説」。
    ・読んでスカッとする類の物とは正極な小説。
    ・同じ怒りや諦めや醜さ…も自分の中で再確認した。必要な小説。
    ・自意識に(余り)結びつけず、「労働」そのものに眼差す、という小説は結構貴重なのでは。

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    Posted by ブクログ 2024年03月23日

    この著者の本は2回挫折してるけど、これは読める!
    若い人が外国で働くことは、円安もあって増えているようだが、イギリスではまだこういう階級社会の空気が残っているのかなぁ。まぁ日本でも外国人実習制度で、歪みが露呈して問題になってるから、同じようなことがあるってことか…
    外国で生きていくのは、たいへん。国...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2024年03月17日

    小説だけど「私」が入っているし、中洲のガールズパブや、ナニーとして働いたイギリス上流家庭、クリーニング工場、保育園などで起こったことはどれも本当に近いのではないかと思う。
    ケン・ローチの「この自由な世界で」では、イギリスの労働者階級が東欧や中東の不法移民を働かせて儲けていたけど、見た目はほとんど違わ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2024年02月24日

    自伝を含めての私小説。
    読んでいると本当にブレイディさんが経験されてきたことなんじゃないかなと思うくらい惹き込まれた。

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    Posted by ブクログ 2024年02月22日

    自伝的要素たっぷりのフィクションだそうだ。ブレイディみかこさんがどんなふうにシットジョブで働いてきたのかがよく分かる。ライターという才能があったからこそ、そこに光をあて、こんな僕にも知ることができ、言語化された世界が見ることができた。ブレイディみかこさんはイギリスに行かなかったとしても、たぶん日本で...続きを読む

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