あらすじ
Don‘t Blame Yourself!
セクハラ、パワハラ、カスハラ、人種差別に事なかれ主義やポジティブ教の上司まで。
ジョブには最低なものとの戦い(ワーク)がつきまとう。
ホールスタッフ、激安量販店の店員、屋敷の掃除人にローンの督促人etc.
「底辺託児所」の保育士となるまでに経た数々のシット・ジョブを軸に描く、自伝的小説にして魂の階級闘争。
「あたしたちは負債の重力に引きずられて生きている。」
だが、負債を返済するために生き続けたら人間は正気を失ってしまう。シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)。
店員やケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。
他者のケアを担う者ほど低く扱われ、「自己肯定感を持とう」と責任転嫁までされる社会。自らを罰する必要などないのに。
働き、相手に触れ、繋がる。その掌から知恵は芽吹き、人は生まれ直し、灰色の世界は色づく。
数多のシット・ジョブを経た著者が自分を発見し、取り戻していった「私労働」の日々を時に熱く、時に切なく綴る連作短編集。
みんな誰かに負債を返すために生きている。それこそが、闇だ
■面倒を避け続ける職場では、いいことは悪いことになり、悪いことがいいことになる。
■上から目線の人々は、あまりに視線の位置が高すぎて、その位置から下の人間の姿が見えてない。だけど、なんとなく下のほうに人がいる気配がするので、とりあえず声はかけておくが、相手の姿は見えないし声も聞こえないのだ。
■嫌と言えない理由があるから貸すのであり、返さなくてもいいという暗黙の了解もあるのだ。こういう特殊な取り決めが成り立つ関係を、家族と呼ぶのだろうか。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
シット・ジョブ クソみたいな仕事
以前読んだ本で知った言葉
海外で多くを経験した著者が
6話のストーリーから導き出した結論
私達は負債の重力に引きずられて
生きている
最後のストーリーから
家族の事を思い出し
育てられた負債を返さないといけない
だから親から借金の申し込みには
応じるけど 返しては言わない
結論になんとも言えない思いが
湧き出してきた
第一話とも繋がっていて
いろんな人 そして自分
そうよね そんなものなのかもしれない
哀しいね 切ないね
Posted by ブクログ
短編集。筆者のあとがきと一緒になってしまうが、どの話も労働と負債(何が"負債"になるかは各短編で異なる)について書かれている。
考えたこともなかったが、言われてみれば私が働いている理由も、家や車のローンやら負債に満ち溢れている。生きているだけで、負債を抱えてるということか。言葉にすると結構嫌な響きだが、普段、負債のことは忘れている。
督促を仕事としている女性は、「督促は正義と暴力」と考えていた。貸したものを催促することは正しいが、一方で、正義のもと振りかざされる暴力という見方も確かにできる。私も借りたものは返すべき、返さない者は底辺だと思っている。
しかし、返さない側からしたら、自分が底辺だなんて思ってないような気がする。返済が滞るのは当たり前、いつか返せば良いぐらいに思っていそう。いやぁ、怖い。お金の貸し借りはたとえ家族間でも何らかの遺恨が残りそうだ。
どの話も、心から楽しんで働いてます!という感じは全然なく、何らかの圧力の中で心苦しい思いをしながら皆、働いている。それでも鬱屈した印象を受けないのは、筆者の書きっぷりがいやらしくないからだと思う。
Posted by ブクログ
著者はイギリスや日本でいろいろな仕事に就いてきたのだなあ。仕事に対する態度、日本人アジア人ゆえの扱われ方、差別など、決してパラダイスではない職場だけれど、だからこそ見えてくる文化や意識の違い。決して分かり合えないわけじゃないけれど溝を感じる。
Posted by ブクログ
勤め先のスナックのママにストーカーされる。万引きを捕まえて叱られる。皿洗いで雇われたのに、チャイナドレスを着て受付に立たされる。邸宅の清掃バイトをして、”見るな”とメモされていたものを目にする。量販店で列に割り込んできた男をのらりくらりと時間をかけてあしらう。借金取り立ての電話をして、盾にされた子供を相手に、自らの幼少時代を回想する。…末端に追いやられ、給仕するだけの側に回り、観察し、呆れながら、自らの身の上を受け入れる。稼ぐのは、富を築くためではなく、負債の重さにあらがうため。人々は今日も暮らしている。
Posted by ブクログ
私より10歳ほど年上の作者の20代の頃の仕事の話なので、海外だからそうなのか、昔だからそうなのか、とよくわからない気分になった。
話自体は興味深かったのだけど。
Posted by ブクログ
様々な職場を舞台とした短編集
血は繋がっていないが、従業員を徐々にファミリーに引き込んでしまうママがいる日本のスナック
従業員は取り締まるが、万引きは許す店長がいるイギリスのスーパー
目先の利益だけ追ってサービスがおざなりになってしまうアジアンテイストのイギリスのレストラン
外国の掃除人を信用しないアイルランド人
自分の出世しか考えず、部下から嫌われているアイルランド量販店の店長
警察官気取りで働いている福岡の貸金業者
貸金業者で働きながら、貸金業者から借金していた親を思い返す作者
労働はまさに人生だと感じさせられた