ブレイディみかこのレビュー一覧
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時間、空間を超えてさまざまな現場を自由に飛び回る、おしゃべりで“しなやかな黒猫”のようなブレイディさん。それを温かな眼差しで「言葉にしか現場のないわたしは劣等感を抱いてる」と子どものような素直さで机上で紡いだ詩で応える好々爺、谷川さん。本質に迫るアプローチもアウトプットも異なるけど、表現の奥にある魂は一緒で、その“あわい”の世に引き込まれそうになるのをもんど君の挿絵が“この世」に引き戻してくれる。「うりゃ〜なんとかなる」が個人的な座標としては好きかな…。先日、再放送で観たETV特集「ぼくは死んだ」も感動したが、谷川さんのリクエストに応えたもんど君、大変だったろうなあ。
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Posted by ブクログ
ブレイディみかこ節が炸裂した、一番最近のエッセイ集。コロナ禍での生活が主だったので、いつも以上に雲がかかった物語に仕上がっている印象。彼女の物語に晴れ渡る日はくるのかな…
p.36 これからは、みんな自分が本当に好きな場所に住むようになるんだ。というか、自分が本
当に好きな人がいる場所」
いきなり照れた顔になって彼は鏡の中で微笑した。彼は、ポルトガル人の同性パートナーとの結婚式がコロナで2回も延期になっている。
「Zoomでウエディングだってできるじゃん」
意地悪く言ってやったら、速攻で彼は言った。
「それはダメだよ」
そのきっぱりした声の調子に笑いながら、初夏の真っ青な空にピンクや白の風船が揺れている光景を思い描いた。サード・タイム・ラッキーという言葉もある。
彼らの結婚式に何を着て行こう。
p.65 この友人は、地味で尽くし型の性格ではあったが、見た目は派手でセクシーなラテン系美女だったので彼女を好きになる男性が後を絶たず、ついに老人ホームで働いていた移民の青年と恋に落ちた。しばらくは18歳年下の恋人と幸福な日々を送っていたが、ある日、彼が家庭の事情で帰国しなくてはならなくなり、彼女の苦悩がはじまった。情の深い彼女は、元配偶者の母親のことを考えると、新しい恋人と一緒に英国を去るなんてできないと言うのだ。
けれども、彼女を決意させたのは恋人のある言葉だった。
「いい人でいるのは、もうやめたほうがいい」
この言葉には、彼女がいい人であることをやめても自分は彼女のことが好きなんだという意味も込められていただろう。それは彼女の中にあった何らかの呪糖を解いたようだった。
こうして友人は英国から去って行き、いまでもそのときの恋人と幸福にデンマークで暮らしている。誰かのベターな半身であることをやめて、ベストな人生の伴走者を得た物である。
p.69
あのとき、ギャン泣きプリンセスの母親が言った言葉をいまでも覚えている。どうやってプリンセスの父親を説き伏せてボールを買ったのかと尋ねたら、彼女はこう答えたのだ。
「男の子の遊びとか女の子の遊びとか言わない国にわたしたちは来たんでしょ、と言ってやりました」
英語の上達が早かった若い母親の、ヒジャブの下できらきら輝いていた瞳がいまも忘れられない。
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Posted by ブクログ
先月逝去された谷川俊太郎さんと、個人的に大ファンなブレイディみかこさんの往復書簡。
ジャンルは異なれど物書きとして一流であるお二人、ただの読書好きである私との次元の違いを思い知らされました。
谷川さんはご自身で散文が苦手と仰っており、なるほどブレイディさんへのお返事もかみあっているのかいないのか凡人には判断が難しい部分もありますが、添えてある詩は当然ながら素晴らしいものでした。
タイトルにある「その世」とは谷川さんの詩によると
「この世とあの世のあわいに」あり
「騒々しいこの世と違ってその世は静かだが あの世の沈黙に与していない」そうです。
「その世のつかの間に人はこの世を忘れ 知らないあの世を懐かしむ」とのこと。
これに対する返信でブレイディさんが彼女の言葉で「その世」を表現しており、ここまで読むと私にもははぁ、なるほどあの感覚かと理解できたような気になれました。
老いや介護、音楽などお互いの暮らしを背景にやり取りされる手紙たち。
私が彼らの意図するところを全て読み解けているか自信がありませんが、何とも面白く良いものを読んだなという満足感があります。
他の作品からは窺い知れない側面を垣間見られたようで幸せでもありました。
また、谷川さんの晩年の思いや様子も少し知ることができるのですがそれは何とも切ないものでした。
特に印象に残ったのは
「この世は他人だらけである
他人ではないのは自分だけだと思うと
寂しい」
という谷川さんの詩の一部。
改めてご冥福をお祈りします。
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Posted by ブクログ
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の著者のブレイディみかこさんの私小説。前著でもよくでてきた「シットジョブ」がいろいろでてくる。
ロンドンに行くための資金集めバイトから、ロンドンに来てからも移民の立場としての仕事の苦労がよくわかる。
いわゆる海外に夢を持って憧れの国へいってハッピーエンドじゃなく、リアルな体験がフィクションとして書かれている。でもそこには「私」がかなり入っていて、実体験が多いんじゃないのかと思いつつ読ませていただいた。
日本よりも露骨に上流と下流の格差が出てくるけど、見えにくいかどうかだけで日本にもある。形にしにくいものをよく表してくれているなと思う。