森絵都のレビュー一覧
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ママには悪いけど、あたし、今はいい高校よりも海に行きたい。
真ちゃんの家までは歩いて十分。軽く走れば五分で着く。あたしはいつも軽く走っていく。p14
・みずみずしい。少女のエッセイ感があるよね。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。楽しいうそは罪にならないんだから。p41
・ませた女の子だ。
手ぶらで歩く帰り道は、いつもよりずっと体が軽い。心のなかにある重たいものをみんな、こんなふうにどこかに置きざりにすることができたら、気分もずっと軽くなるのに…。p62
・仕事でもこう感じることは多い。
「でもね、仮病ったって、立派な病気だよ。」
「病気?」
「そう、心の」
「…」
「でも、こうやってさゆきちゃんが来てくれるうちは安心よ。だいじょうぶ、きっと明日になったらけろっとしてるから、あの子は。」
おばさんはそう言って、あたしの頭に右手をポンとのせた。
大きくて、あったかい手。
この手のなかで育てられたテツは、もしかしたらあたしが思っているよりも、ずっと強い子なのかもしれない。
一瞬、そんな気がした。p79
・理解者がいることが人を思いがけず逞しくするものなのかしら。
「そうね。植物は考えたりしない。なにかを感じているかもしれないけど。」
「じゃあ、きっと植物はみんな、太陽のことが好きなのよ。考えなくたって、自分の好きなものくらいわかるじゃない。」
本気でそんなふうに思ったわけじゃないけど、口に出して言うと、その通りのような気がした。
植物は太陽が大好きで、その大好きな太陽に向かってすくすく伸びていく。
「そうだといいな。」
「そうだといいわね。さゆきちゃんも、C組のみんなも、好きなものにむかってすくすく伸びていってくれればいいな。」p95
・好きなものは考えなくたってわかる。考えなくたってそこへ向かう。
「あたし、三木先生でよかったよ。たった一輪だけ学校に持っていった花のこと、こんなふうにおぼえてくれる先生でよかった。」
「ありがとう」
先生は今までで最高の笑顔を作った。
休日の朝っぱらから、コスモスの花束を抱えて生徒の家へ自転車を走らせる、三木先生にしかできない特別なスマイル。p96
・いい先生だなぁ。自信がないながらも精一杯生徒のこと考えてる。
いつかあたしが大人になって、本当に海外へ行くことがあったら、長い長い作文を書いて、先生に送ってあげよう。
いいことをたくさん探して届けよう。p98
・こういう風に思えるっていいな。 -
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森絵都は勝手に青春モノのイメージがあったけど、幅広い世代の恋愛小説があって印象が変わった。【17レボリューション】で恋愛に失敗した自分を変えるために親友と絶交という格好をとるのとか、だよね〜ぽいな〜となった。主人公が親友や父親と「価値基準は客観的である必要はない」「自分が良いと思ったものを良いと思えばいいじゃん」的な話をしているところが良かった。【本物の恋】はそっちか〜ってなるオチもしっかりあったし【ブレノワール】の最後も良かった。個人的に一番好きだったのはタイトルの【気分上々】。大人になった今だからこそ中学生の時の感覚とか思い出しちゃったりして森絵都〜となった。
まとまってないけどどの話も語り口調を変えてて読み飽きしない短編集でした。 -
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この物語はある女についてある男が書いた小説である。
主人公は大阪の釜ヶ先で日雇い労働をしている男、礼司。
彼は友人の紹介で、ホテル富豪の妻である結子の人生を小説に書いてくれという依頼を受ける。
調査のために結子と会話を重ねる礼司だが、自分の過去を知られたくないのかホラ話を繰り返す結子。
礼司と結子との関係、釜ヶ先の状況にも色々な変化が現れ始め、それは礼司の書く小説そして礼司自身にも影響を及ぼし始める。
幼少期からの生い立ち、家族との関係、自らのハンデ。
ヒロイン結子を知り、魅かれ、小説を書き進めることは礼司が自らを見つめなおすことにも直結する。
二人の物語が徐々に渾然一体となって描かれていく勢いと「同じ男とは二度寝ない。一度寝れば家族になるから欲情しないから」など独自の価値観を持つ結子の力強さに、読者である私は魅かれていった。 -
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ネタバレ*村山由佳、坂井希久子、千早茜、大崎梢、額賀澪、阿川佐和子、嶋津輝、森絵都―当代きっての人気女性作家8人が「女ともだち」をテーマに豪華競作!「彼女」は敵か味方か…微妙であやうい女性同士の関係を、小説の名手たちが描きだす逸品ぞろいの短編小説集。コワくてせつなくて愛しい物語の世界をぜひご堪能ください*
前半は女同士の執着や束縛が続くありがちな展開でしたが、後半は力量のある作家さんの本領発揮で、一味違う物語を堪能しました。
特に気に入ったのは、森絵都さんの「獣の夜」。最初はハラハラしたものの、パプリカで大笑い出来る、いつでもあの頃に戻っていける、これこそが女の友情の真骨頂ですね。でも、これはひと歳取らないとわからないかも。型に嵌らず反旗を翻す二人がカッコよくて、痛快な物語。 -
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釜ヶ崎のドヤ街(あいりん地区)で生活をする青年、礼司がある一人の女性について小説を書いて欲しいと依頼される。
ドヤ街とは??と余り知識のない私には衝撃的な一冊となりました。
どんな生活をしていようとも、生きるというのはやはり大変だ。
食べなくてはいけないし、何よりお金がいる。
初めは礼司がドヤ街で暮らしている事に違和感を感じていたのですが、その答えはしっかりと終盤で語られています。
礼司と結子に幸あれ。
他の方のレビューを見ると、関西弁がおかしい!と多く書かれていますが、東京育ちの私には全く分からず。
『言葉の違和感』とはどんな感覚のものなんだろう、と想像してみても今一理解できず。
外国の方がヘンな日本語使ってる感じかしら?
方言憧れるなー。縄張りみたいで何か格好良し。 -
Posted by ブクログ
エピソードがたくさんありすぎて、混迷している印象。
主人公にも、彼女の周りの人物にも特に共感できず、気分が悪い部分が多かった。
再読はない。
2025.11.2
以前読んだことを忘れていて再読。
初めて読んだと思い込んで読み終えたが、感想が書いてあるので読んだのか…。
改めて感想を書こうと思う。
そもそもは子どもの中学受験の模試で冒頭部分を読んだことから続きが気になり購入。
当時小学生だった子どもも大学生になり、今読むと感じ方が変わったのかもしれない。
主人公も周りの人々も一生懸命生きている愛おしい人たちだった。
特に、エピローグは刺さった。
読んでよかった。 -
Posted by ブクログ
森絵都さんが描く世界は、卑屈だったり、共感できないような主人公が、物語のラストにはすっかりのめり込んでしまうから不思議だ。
ストーリーの大筋は、父の死をきっかけに、生前の父の人物像が気になった、3人兄妹は父の故郷である佐渡島へ向かうことを決断するところから始まり、生前の父の人物像を明らかにすることで物語は幕を閉じる。
興味深かったのは、誰しも死んだ人を何かの言い訳に使ってしまうかもしれないという点だ。本書に出てくる父は、かなり厳格な性格で、何かにつけて子供達の行動を制限していた。部活動をさせなかったり、異性と付き合うことを許さなかったり、修学旅行に行かせたく無いと学校に直談判したりしていた。「父のせいで、今の自分はこんなにもおかしくなってしまった」と兄妹3人は、辛い時や受け止めれないことがあると、格好の言い訳として使っていたのだ。
自分の人生は他ならぬ自分が決定するとはよく言うけれど、多くの人が「誰か」のせいにして、「自分」がうまくいかない理由を見つける。特に、「死んだ」人であれば、批判しても本人はいないので、より簡単に責任を押し付けることができる。 -
Posted by ブクログ
短編が3本と中編が2本の物語集。
3つの短編に共通しているのが、主人公を誰かが「君は」と呼ぶかたちで進んでいく小説で、その語り部の視点が誰なのか(あるいは誰でもないのか)分からないままであるところが、不思議さを醸し出していて面白い。
2本の中編の間に箸休めみたいな感覚で読めるところも良かった。
表題作は、タイトルそのままの物語。
東京で音楽プロデューサーをしていた長尾が、仕事を辞め郷里で漁師を始めた。長尾について行きそこで生活を始めた愛人の紗江だったが、その立場から田舎の狭いコミュニティからは明らかに拒絶されてしまう。
そんな中、長尾の妻である円香から定期的に電話が掛かってくるようになり、妻である円香と愛人である紗江が電話で普通に会話をするという、奇妙な関係が出来上がっていく。
愛人の立場の紗江は、不安はあるけれど全く未来が見えないわけではない、という状況。だけど地域で省かれて居心地は悪く、どこか呑気な長尾に苛立ちを覚えたりもする。
紗江を気にかけてくれる人も僅かながらいるけれど、何よりも彼女の支えになったのは、長尾の妻の円香との他愛のない会話だったのかもしれない。とても奇妙な現実だけど、常識を取っ払った時に見える関係はけっこう温かかったりもする。
真っ当とは言えないけれど、紗江のことも円香のことも憎めない感じがある。
もうひとつの中編「あの日以降」は、東日本大震災が軸になった物語。
はっきりと被災地とは言えない東京で同居する女3人が、震災によって考えを変えたり人生自体を変える決断をする。その途中の心の揺れがリアルに描かれている。
震災という大きすぎる出来事に心を揺さぶられた人が数多いたというのは恐らく事実で、この本が出版された頃はとくに、震災に何らかの意味付けをすることに意義を感じていた人が多かった時期なのかもしれない。
それはもしかしたら、被災して本当に辛い思いをした人たちではなくて、それを少しの距離感を持って見ることが出来ていた、ある意味幸福な人たちだったのかも。
ひとつの出来事が色んなかたちで色んな人に影響を与えるということ。後から考えてみれば自分の行動に理由を付けたかっただけなのかもしれないけれど、きっかけとしてはあまりにも大きい。
薄めの本ながらも、とても充実した内容だった。