【感想・ネタバレ】いつかパラソルの下でのレビュー

あらすじ

厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出していた柏原野々。その父も亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたころ、生前の父と関係があったという女性から連絡が入り……。

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Posted by ブクログ

理由はわからないけどめっちゃ好みのお話だった。読み終わった時になんとなく私も頑張って生きてみようかなーって思った。

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

私も主人公たちと同じく、父とうまくいかない人生を送ってきました。
そんな父も2年前に亡くなりました。

ふと手に取ったこの本と境遇が似たものがあり、幾つもの文章に勇気をもらえました。

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2023年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

厳格なお父さんが亡くなって、不倫が発覚。お父さんは本当はどういう人だったのか、お父さんの実家・新潟にある島まで3人兄妹で旅に出たりする。あったかい穏やかな気持ちになる家族の物語。

身近な感じのする長女、なんだかんだで頼りになる長男、可愛い妹...登場人物がみんな楽しくて好きで、森絵都さんのお話やっぱり大好き。

物語の中の日常の風景がそこにあるような感じ、兄妹たちの会話もおもしろいし、綺麗な風景の描写もスーッと目の前に広がるようで、読むと心が晴れる。

『イカが好きでも嫌いでも、人は等しく孤独で、人生は泥沼だ。』(201p.)

イカリング、イカめし、イカカレーどれも食べたい!

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2022年07月15日

Posted by ブクログ

交通事故で死んだ厳格だったはずの父の思いもよらない浮いた話によって家族が翻弄される話。周りからしたら当たり障りのないような他人事扱いされる内容で、現実の日常から少し外れたくらいの話は親近感というか生々しい雰囲気が漂っていた。
最後に野々が感じたような、うまくいかないことどうしようもないことに対して、何かに縛られたせいだとかそんな何か理由を取ってつけてズルズル生きるのでなく、人生はそういうものだ等しく孤独で泥沼なものなのだ、といった開き直り?気づき?の考え方はいまの自分にとって真意だなと思えた。
いつまでも言い訳垂れてそのことに縛られて生きるつまんない人間じゃなくて、自分のケツは自分で拭えるようなたくましさを身につけないとなとひしひしと感じた。
マイナスの三人掛け算はマイナスだったり、ゲロ吐くことに対してアウトプットと言ったりと、思わず拭いてしまうようなユーモアあふれた表現が小説内に散りばめられてて読んでて飽きなかった。自分が言った旅先が小説に出てくると親近感湧くし、姫津いかイカ祭りは気になった。また佐渡行きたい。そこでもう一回読むのもありかも、なんて思う。

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2020年09月02日

Posted by ブクログ

面白かったです。
家族の知らない部分を探っていって、ますます分からなくなって、最後は酒盛りで終わる。
いい話だと思います。

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2020年06月16日

Posted by ブクログ

なぜか森絵都さんの小説は、大人が主人公の物ばかり手にとってしまうのですが、本作もやはり自分の好みにドンピシャでした。

厳格と思われた亡き父の、思わぬ過去。その謎を解き明かしに子供達は東奔西走-と言ったところが大まかなプロット。しかしその彷徨はいつか自分探しの旅へと変じ、誰もが抱えていた屈折や避けていた壁を直視し、そっと歩き出す。その過程が丁寧に、リアルに、そしてユーモラスに描かれた傑作です。

家族って、恋って、そして人生って何だろう。あまりにも普遍的で、でも答えの出ない命題に、読者である自分もまたもう一度向き合ったような気分でした。

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2016年09月24日

Posted by ブクログ

日常の中の普通、一大事、どこをとってもそれは人生の一部でしかなくて、些細なことだし大事なことなんだなと思った。
楽観的にふらふら生きてもいいし、堅物にひたすら真面目に生きてもいい。どんな人生でも誰かや何かのせいにしないで、精一杯生きれば幸せなのかも。

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2025年06月26日

Posted by ブクログ

父の死後の浮気が発覚。黒い血?とは何かを追い、3人の兄妹が父の育った佐渡へ。そこで分かった真実は。。
先が気になり一気に読み進めた。結論は少し変わった日常、というレベルであったが、最後ハッピーエンドで気持ちよく読み終えた。

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2024年08月11日

Posted by ブクログ

父から厳格に育てられたが故に、絶縁状態だった息子と娘、そして厳格さの中でしっかり育ったもう1人の娘。
父の死をきっかけに、父の知らなかった面やルーツを探る。
ルーツ探しはちゃんとその頃を知ってる人がいないところが実際っぽくて面白い。そして、そういったことを通しての、それぞれ子どもたちや奥さんの着地点もなんだか面白かった。

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2023年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

家族であってもそれぞれが色んな感情を持っていて様々な形があると感じた。
自分の親のルーツを知ることで何か分かるかもしれないって思う気持ちに同感した。

私の親は離婚していて、父の顔をよく覚えていない。この作品では、父と娘が互いに理解し合えないまま、父は亡くなった。その後父の故郷を訪れてルーツを辿っていた。

細かい状況は違うものの、私も自分の父の故郷に行ってみたい。勇気はまだ出ていないが、自分の父親がどんな環境で育ったのかには興味がある。

この作品を読んで、自分の父親について考えるきっかけになったし、今一緒に暮らしている家族をもっと大事にしたいと思った。

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2023年08月03日

Posted by ブクログ

数々の児童文学賞を受賞している方が気が触れた?かのセックスシーン描写「良し、私も試してみよう」
そして佐渡島、地の観光協会からクレームは無かったのか?と気を病む程の取扱い・・・・吸い込まれるように読み続けました。素晴らしい展開 そして東京、すべてハッピエンド。裏切られ感

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2023年03月08日

Posted by ブクログ

いつも何かのせいにしていた...。あるコンプレックスを抱える長女野々の視点で語られる柏原家の日常。明らかになる亡き父の秘事。父のルーツを辿りながら、家族それぞれが人生を振り返る。
いろいろあるけどそれも人生だなぁ、としみじみ思える一冊でした。

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2021年08月20日

Posted by ブクログ

『でも、やめられませんでした。柏原さん、良すぎたんです。すごかったんです。とても五十代の男性とは思えないくらい、絶倫だったんです』

それが親友でも、それが夫婦でも、そしてそれが家族でもそれぞれのことってどこまで知っているんだろう、とふと思う時があります。なんでも話せる間がら、隠しごとなしの間がら。理想論はそうかもしれません。でも、理想は理想、現実はそんな綺麗にはいかないもの。ましてや『病的なまでの潔癖さ』、『傍迷惑なほどの厳格さ』、そして『正気の沙汰とは思えない堅物ぶり』を散々見せつけられ、『欲望の前に屈することなどあるわけがない』と思っていた父親、その死後に、父の部下であった女性から『絶倫』という言葉を聞かされた娘が受けることになる強烈なまでの衝撃。その衝撃は、彼女を、そして残された家族にどのような変化をもたらすのでしょうか。この作品は森絵都さんが描くそんな衝撃の後の日常を生きる人たちのとっても『大人』な物語です。

『達郎には嚙み癖があって、それは遠慮がちな猫の甘嚙み程度にすぎないけれど、達する一瞬だけは制御不能になるらしく、歯と歯のあいだを鋭い痛みが駆けぬける』とインパクトのある冒頭。『次の瞬間、達郎は汗にそぼった肌を粟立てて力尽き、あ、とか、う、とか言いながら出しきって、私の下でぐったりと動かなく』なった後に『達ちゃんもシャワー浴びてくれば』と言うのは主人公の野々。そんな時、携帯が鳴ります。『もしもし、私。今日の約束、忘れないよね。うちに三時集合。時間厳守。問答無用。頼んだよ』と父親の一周忌の打ち合わせの確認をする妹の花。『とにかく今日はちゃんと来てよね、ちょっと本気で相談事もあるんだから』という花。『行っといでよ』という達郎に『じゃあいっそのこと、達郎も一緒に行く?注目浴びるよ』と同行を求めるも『浴びたくないよ。行ってらっしゃい』と止むなく部屋を後にする野々。『約束の三時に間に合った』野々は『実家の門をくぐるなり意気消沈』します。『一体いつの間にうちの庭はこんな有様になってしまったのだろう。どこを見てもまともな手入れをされている気配がない』という実家。『最後にここを訪ねたのは、去年の秋。父の四十九日の折』という野々。花に『どうにかならないの?』と言うものの『そんなこと言うなら、お姉ちゃんがやってよ』と、家の面倒を一手に引き受けている花は不満な様子。遅れて兄が到着後、花は今度は兄に突っかかります。『でも俺、仕事はここんとこずっと同じの続けてるぜ』と返す兄は、『野々はどうなわけよ』と矛先を野々に向けます。『今は友達の天然石のお店を手伝ってるの。パワーストーン。一粒、八百円』と胸元の石を見せながら答える野々に『はあ、そんな石ころが…。いいなあ、おまえ、良い商売見つけたなあ』と答える兄。『お姉ちゃん、そんなインチキ商売に加担して恥ずかしくないの?』とヒステリックな妹。『ねえ、お父さんがさ、今の二人を天国から見てたらどう思うよ?』と詰め寄る妹を見て『きょうだいって不思議だな』と冷静に思う野々。『めったに顔を合わせない間柄でも、会えば会ったで各自がすんなりと本来のポジションへ収まる。おのおのの役割を血が記憶している』と考えます。そんな中、いつまでも母が姿を現さないことを訪ねる野々に『だから、病院だってば』と答える花。そんな『妹は軽く姿勢を正すようにしてようやく話を切りだした』のでした。それは『一周忌の打ち合わせどころではなくなってしまった』という深刻な事態。一周忌を前に、亡き父親の思いもよらない隠された素顔が兄妹三人の心を大きく揺さぶっていきます。

『森絵都が大人たちの世界を初めて描いた、心温まる長編小説』というこの作品。いきなり性行為直後の場面からスタートする冒頭には「カラフル」の森絵都さんのイメージが一瞬にして吹き飛んでしまう強烈な衝撃を受けました。しかし、読んでいくとそこに描かれる世界はやはり安心の森絵都クオリティに満たされた世界でした。主人公の野々は『ストーンマート』というアクセサリーショップでアルバイトをしています。そこでの野々の心の内がこんな風に描かれます。『こんな毒にも薬にもならないようなものたちが、こんなにもつるつると愛らしく光って財布の紐をゆるませる、こんな世界があるのだなあと私はすっかり感心した』という野々は、その仕事を前向きに捉えています。『ショップを訪れる女の子たちを眺めているのも楽しい』と店を訪れる客に目を向ける野々。そこに訪れる女性、女子高生を『皆が自分を飾りたいとか、誰かの心をゲットしたいとか、友達を面白がらせたいとか、なにかしらの前向きな意思を携えてそこにいる』と彼女たちがパワーストーンを手にしようとする理由に思いを巡らせます。そして『それでいて、真剣さの如何を問わず、誰もがどこかしら浮かれている』と今度はそんな彼女らの表情に目をやります。その表情の裏にあるのは『ブランド物のバッグを持ったり、エステで脚を細くしたりするのにも似た、上滑りのエネルギー』ではないかと考える野々。そして、『地球をきらきらと輝かせているのは意外とそんなものなのではないかと私は思ったりするのだ』というなんとも地球を俯瞰してしまうとても大きな視点が登場します。そんなショップでの仕事を大切にする野々にもやがて大きな転機が訪れていきますが、そんな野々の視線の向こう側に森絵都さんをとても感じた一節でした。

そして、この作品では亡くなった父親の衝撃の事実を知った兄妹三人の心の動きの描写が作品を動かしていきます。冒頭に読者が受ける三人の印象は『捨て身で我が道を行こうとする長男に、宙ぶらりんの長女、親の敷いたレールにとりあえず忠実な次女』という三人。それが『俺たちはパンドラの箱を開けちまったんだ。何が出てこようと、迎え撃つしかねえんだよ』という父親が持つもう一つの顔を知った衝撃に三者三様の反応を見せます。『親父に流れてた血は俺たちにも流れてるんだ。親父を知ることは、自分自身を知ることでもある』という兄。『お父さんのこと、私たちには知る権利があると思う』という花。一方で、戸惑いながらも父親の姿の中に自身を投影し、自分自身を見つめ直すきっかけを作っていく野々。父親に『何かがあるとは思っていた』という野々は『子育てに問題のある親の多くは、自らもまた問題のある親のもとに育った過去を持つ』というテレビや新聞で目にしてきた他人事が自らに降りかかってきた現実に思いを巡らせます。『私は兄と同様、自分のダメさ加減を父のせいにしてきた』という野々。『妹と同様、父に輝かしい青春をだいなしにされたと恨んでいた』野々。そんな野々は、やがて『私はまだ父に囚われている』という自らの存在に目を向けます。『もはやこの世にいない父に縛られ続けている』という死者に未だに心を揺さぶられ、その呪縛から逃れられない生者である野々。思えば私たちもなにかしら亡くなった人のことを意識して、”もし○○が生きていたら何と言うだろう”、とか、”もし○○が生きていたらどうしただろう”というように、もし死者が生きていたらと考えてしまう事、場面があるように思います。死してもなお、生きる者に影響を与え続ける死者たち。そんな死者たちはあの世でそんな思いをどう考えているのだろうか、というように考えだすとこれはもうどこまでも逡巡し続けるキリのない話になってしまいます。でも、そんないつまでも死者に囚われる考え方がその人の人生自体を形作っているとしたら、そしてそのことにその人自身が気づけていないとしたら、それは限りなく不幸な人生という他ありません。『私はこうして何もかも父のせいにしてきたのだろう。そしてまたこれからも、事あるごとに父にすべてをなすりつけていくのだろうか』と考える野々。そしてそんな父に囚われる自分自身に気づき『ぞっとした』という野々。父の亡霊に囚われていた野々がその呪縛から逃れるには、そんな父の本当の姿を知る必要があったのかもしれません。父を知ることが自分を知ることに繋がる、自分に影響を与えている人がいるのであれば、まずはその人を知ること、それはこの作品の中のことだけではなく、読者である私たちにも言えることかもしれない、そんな風にも感じました。

『人は等しく孤独で、人生は泥沼だ』と書く森さん。『愛しても愛しても愛されなかったり、受けいれても受けいれても受けいれられなかったり』という日々を送る我々。『それが生きるということで、命ある限り、誰もそこから逃げることはできない』と言う森さんが綴る大人の物語には、生々しい性描写、大人ならではのどす黒い感情表現など、「カラフル」とは一見遠い世界が描かれていました。しかし、そこに描かれている人が人として生きていく中で感じることになる生きるさびしさと、だからこそ生まれるやさしさ、そして生きることの愛おしさには森さんならではの世界観が確かに息づいていました。

「いつかパラソルの下で」という書名から感じるなんとも言えない突き抜けた清々しさを感じる物語。冒頭と結末になんら変化のない普通の日常が描かれた物語。登場人物の心の内に開かれた未来から感じる深さと爽やかさの絶妙な競演を楽しむ物語。森絵都さんが描く大人な物語は、人の心の機微に触れるそんな素晴らしい作品でした。

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2020年08月06日

Posted by ブクログ

森絵都さんが描く世界は、卑屈だったり、共感できないような主人公が、物語のラストにはすっかりのめり込んでしまうから不思議だ。
ストーリーの大筋は、父の死をきっかけに、生前の父の人物像が気になった、3人兄妹は父の故郷である佐渡島へ向かうことを決断するところから始まり、生前の父の人物像を明らかにすることで物語は幕を閉じる。
興味深かったのは、誰しも死んだ人を何かの言い訳に使ってしまうかもしれないという点だ。本書に出てくる父は、かなり厳格な性格で、何かにつけて子供達の行動を制限していた。部活動をさせなかったり、異性と付き合うことを許さなかったり、修学旅行に行かせたく無いと学校に直談判したりしていた。「父のせいで、今の自分はこんなにもおかしくなってしまった」と兄妹3人は、辛い時や受け止めれないことがあると、格好の言い訳として使っていたのだ。
自分の人生は他ならぬ自分が決定するとはよく言うけれど、多くの人が「誰か」のせいにして、「自分」がうまくいかない理由を見つける。特に、「死んだ」人であれば、批判しても本人はいないので、より簡単に責任を押し付けることができる。

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2017年07月04日

Posted by ブクログ

うまくいかないことを誰かのせいにしても仕方がない。終わったことはいずれ風化するので前向きに行こう!と元気をくれるお話でした。娘に読んで欲しい小説です。しかし性にあからさまばところもあるので、気恥ずかしくてオススメしにくいは難点。

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2016年09月11日

Posted by ブクログ


20代の三人のきょうだい。兄、姉、妹。
厳格な父に縛られた生活を送ってきたが、上の兄と姉(野々)は早くにうちを飛び出し、不安定ながらも自由な生活を送っている。妹は父に縛られたままの生活を選ぶ。
ある日、その父が亡くなった。
父の浮気相手という女が現れ、母の様子がおかしくなる。
今まで滅多に揃うことのなかった三人きょうだいが顔を合わせ、父の秘密の過去の解明に乗り出すことに・・・。

ともすれば重くなりがちなテーマなのですが、3人のキャラクターがゆるめで何だか愛嬌があるのと、描き方に温かみがあるため、穏やかに物語は進みます。
20代とはいえ、まだまだ大人になれない(なりたくない)3人が、父の死、父の故郷に触れて、少しずつ大人になっていく物語。

父の故郷、佐渡への旅の終わり、彼らは気づく。
父にストイックに育てられたから今の自分はこんななんだ、と実は自分に自信がないだけないのに言い訳にしていた。自分のだめなところから目をそらす言い訳に。

どんなわだかまりや別れがあろうとも、いつかは、みんなでパラソルの下でビールを飲みたい。飲めるときがくるかもしれない。そんな希望を持てるような気がします。
パラソルの下でビールという表現が良いなぁ。

あと野々の恋人、達郎くん、言葉がぶっきらぼうだけど心の中の温かさが伝わってきて良かった。
妹さんのシャツの胸のワンポイントもいい働きをしていてお気に入り。

  人は人を忘れる。けれどもまた思い出す。もう何もかも取り返しがつかなくなった頃に記憶の蓋をゆるめる。それが憂鬱で、面倒くさくて、だから私は父の故郷など訪ねたくなかった。p177

この一文、なんかとても心に響いてきました。わかります。この感じ。

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2022年08月04日

Posted by ブクログ

父が今のように病院で寝たきりになったのは去年のGWの直後だったのでもう1年が経つ。
鼻から胸からチューブを挿され最早生きているだけの体。にも拘らずその頭を櫛で梳き髪を整えている母。
そんなことしても何もならないのにと思い、自分がこうなった時には人にはこんな手間はかけたくないと思う…。

この本、ヒロイン野々は25歳。
大人になって、厳格すぎた父親から逃れ、職も同棲相手も何回も変え、根無し草のような生活を送っている。
同様のノリの兄とそんな兄姉を反面教師に真面目にいい子に育った妹。父が亡くなって1年。
とある女性が訪ねてきたことから、死の直前の父の浮気を知り、3人が大いに驚きうろたえる一章。
誰しもが経験する若い時分の親との葛藤。自分自身のあらゆる欠陥が親の影響によるものだとの責任転嫁。同じ屋根の下に育ちながら斯くも異なる人生への悲憤。
父が残した「暗い血」という言葉から、父のルーツを探しに佐渡に旅する二章。
彼氏や彼女に喝破されながら、それでもうじうじ引きずっていたものを、佐渡の眩しい太陽と青い海と素朴な人々との交わりの中でようよう断ち切る。
親になって初めて分かる親の心情というものもあれば、未だに分からぬ父母の気持ちもあり。
しかしながら、それもこれもあわせてそうこうした情の積み重ねが親子や夫婦や兄弟の在り様と今更ながらに思う。
「なべて生きるというのは元来、そういうことなのかもしれない、と。人は等しく孤独で、人生は泥沼だ。愛しても愛しても愛されなかったり、受けいれても受けいれても受けいれられなかったり。それが生きるということで、命ある限り、誰もそこから逃れることは出来ない−」

どれだけ手間がかかっても、父の命のあることがどれだけ母の救いかと。

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2018年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【2025年155冊目】
ストイックな父が死んだ。一周忌について話し合うため集まった、兄と私と妹の三人兄妹は、母親が以前の溌剌とした様子とは打って変わって病院通いばかりしていることを知る。原因はどうやら生前の父の浮気にあるようで――厳格な父は何を隠して逝ったのか。ルーツを探りながら自らの人生に向き合い始める物語。

森絵都さんにしては、結構生々しいお話でした。いい意味です。完璧主義者に見えていた父親に育てられ、反発するように家を出ていった兄と私。唯一従順だった妹も、父親の過去を知ってショックを受けるものの、本当の父親の姿を知るため調査を始めるのですが、単に父親のルーツを追うだけでなく、主人公の私を通した登場人物たちの心情にも触れている物語だったところが良かったです。

死んだ人の話よりも、生きている人の話の方が楽しいみたいな一文もありましたが、死んだ人をきっかけに、物事が加速していくのも悪くはないなぁなんて思ったりしました(もちろんポジディブな意味で)

大事に捉えていたことが蓋を開けてみれば存外大したことがなかったりして。とっても人生だなぁなんて思いました。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

学生モノが多かった中で
なかなかディープな課題に直面する本作。
不安定な感じとかほんといつまで経っても
人はその年代に合わせて
何かしら問題あるよなーと、、笑笑
最初ミステリーチックで最後はヒューマンでした。


森絵都さんの登場人物は
なんやかんやでみんな人間出来てて
優しさが滲み出てるなーと
んでて感じます。

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2024年04月22日

Posted by ブクログ

森さんの小説の中でもダークサイドというか、生々しさが散りばめられた大人向けの作品。ただ、全体は家族小説というか、家族一人一人が父の先に自分を見つける話かな。

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2022年08月31日

Posted by ブクログ

自分の親がどう生きてきたかを知ることは割と大事なことなんだなと思えた本。
親のせいや育ち方のせいにして逃げることが自分にもあったから話がスッと入ってきた。

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2022年01月22日

Posted by ブクログ

カタブツで厳しかった父が生前浮気をしていたことを知り、真相を確かめるためにきょうだい3人で父の生まれ故郷佐渡に旅に出る話。
佐渡にいってみたくなった。
旅の終わりはあっさり。モヤっとした思い出やわだかまりも時間が風化してくれる。

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2021年12月25日

Posted by ブクログ

厳格という言葉では表し切れないほどの厳しさで子供たちを縛り付けていた父親が亡くなった。その後で判明した父の浮気。その父が残した「自分には暗い血が流れている」というやたら意味深な言葉。
三兄弟は父の本当の顔を暴くために奔走する。

やっぱり子供は親の影響を受けて育ってしまうんだなと。親も人間なんだから完璧ではないのは仕方ないにしろ、自分の考えだけを押し付けるのは本当にやってはいけないこと。
気をつけないといけないなー。

あと、最後のイカイカ祭りが美味しそうすぎて。

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2021年08月04日

Posted by ブクログ

なんだか久しぶりの森絵都作品。
表題の付け方が素敵。
家族のことって知ってるようであまり知らない。
一緒に住んでると知っている気持ちにもなるし、いつでも知ることができるという甘えみたいなものもあるのかもしれない。
けど、家族といえどいつ会えなくなるかわからないのは他人と同じだ。
家族、特に親のことを知ることは自分のルーツを知ることにもなるんだよなぁ

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2020年08月18日

Posted by ブクログ

森絵都さんは、第一印象は悪くないのだけど、これはあまりおもしろくはなかったかな。悪くはない、悪くはないのだけど、決して代表作にはならないだろうな、くらいの生意気な感想。

いや、でもおもしろかったよ。特に、佐渡の描写。
今の職場に佐渡出身の20代の男の子がいるから、教えてあげます。

そして、不感症って悩ましいだろうなと考えこみました。やや感じすぎる私の分を、分けてあげたいと思いましたわw

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2020年06月16日

Posted by ブクログ

バラバラな家族。
集まり方は良からぬはじまりでも、
みんなが向かい合えて、
みんなが人のせいをやめて、
それぞれの道をひとりの人間として歩み出す瞬間。
温まるなぁと。
自分の人生は過去になにが起ころうと、
それは誰かのせいではないし
自分の弱さも強さも認められなきゃ
生き抜いていけないんだと思う。

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2020年02月21日

Posted by ブクログ

家族に見せる態度と外での態度の矛盾というか。

色んな人と接してると、
どうしても矛盾て出てくるもんだと思う。
家族になるとそれは契約だから、
悪になってしまうけれども。
ええやん矛盾をかかえてなんとなく生きればって思った。

矛盾が怖くて、自分と向き合うのが恐くて、
人のせいにして誤魔化してたのかな。

お父さんに1番共感しながら読んでたかも

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2020年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

厳格な父が死んだ。ハートや水玉柄、チョコレートの匂いがする消しゴム、紫色のリボン、ウサギは媚があるから厳禁。そんな父が不倫をしていた。こども達には散々我慢させておいて。なぜなのか?「自分には暗い血が流れている」暗い血とは何か。3人の兄妹が父のルーツを辿るお話。でも、結局なんだったのか…。スッキリしたようなしないような…。要するに、人のせいにしちゃいけないよって話?なのかなぁ。

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2020年02月08日

Posted by ブクログ

日常描写と心情表現がリアルで登場人物にスムーズに感情移入でき、登場人物と同一目線で読み進めることができました。

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2017年01月22日

Posted by ブクログ

お父さんの行動に、何かの間違いだろうと思ったけど事実だった・・・。
でも家族が以前よりまとまった感じになって、よかったんじゃないかなぁ。

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2021年04月30日

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