森絵都のレビュー一覧
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『でも、やめられませんでした。柏原さん、良すぎたんです。すごかったんです。とても五十代の男性とは思えないくらい、絶倫だったんです』
それが親友でも、それが夫婦でも、そしてそれが家族でもそれぞれのことってどこまで知っているんだろう、とふと思う時があります。なんでも話せる間がら、隠しごとなしの間がら。理想論はそうかもしれません。でも、理想は理想、現実はそんな綺麗にはいかないもの。ましてや『病的なまでの潔癖さ』、『傍迷惑なほどの厳格さ』、そして『正気の沙汰とは思えない堅物ぶり』を散々見せつけられ、『欲望の前に屈することなどあるわけがない』と思っていた父親、その死後に、父の部下であった女性から『絶倫 -
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『ジャンプできるというか。短編って思いきったことができる。長編はストーリーの大きな流れがあって、それを流し続けることが最優先だけど、短編は自由なフォーカスで人物や風景だけを切り取ることもできる』。この作品の刊行時のインタビューでそう語る森絵都さん。この作品は、様々な媒体に様々なテーマのもと書かれた短編を、書かれた順番通りに掲載した短編集です。それぞれの短編に繋がりは一切ないため、ゼロから世界に入っていって、読み終えて、また次の短編、の繰り返し。だからこそ、森さんの色んな引き出しの中を見ることができる貴重な機会。さて、どんなものが見れるのでしょうか。
9編の短編から構成されたこの作品。一冊の作 -
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みなさんは、小説の巻末にある『解説』を読むでしょうか?『読まない or 読む(読書後) or 読む(読書前)』、まあ選択肢としてはこんなところでしょうか。私の場合は、半年前に読書を始める前は、まさかの『読む(読書無)』以上。でした。学校の読書感想文を書くために『解説』だけ読んで残りは想像でやっつけて提出する。随分いい加減なことをやっていたものです。時は流れ、今は『読む(読書後)』です。『解説』を書かれる方がどのように選ばれているのかは分かりませんが、著名な作家から本屋の店員さんまで多彩な方が登場します。しかし、その出来はピンキリだとも思います。こんな著名な方が書いてこれ?というような『解説』を
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卒業式がなくなって、入学式もなくなって、ゴールデンウィークの予定もすっかり白紙、それどころか、世界的イベントであるはずのオリンピックまで延期されてしまった2020年。予定はあくまで予定であって未来というものは過去になってみないと確定しないものだとつくづく思います。でもそんなことが繰り返されてきたのも人間の歴史です。東日本大震災が、熊本地震が、そして90年代には阪神・淡路大震災もありました。不可抗力により全く意図せず変化する未来。公に予定されていたものがキャンセルになると、逆にそのこと自体が大きな出来事として歴史に刻まれます。でも、一方で皆をあっと言わせるために秘密裏に進められていた予定が不可抗
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ママには悪いけど、あたし、今はいい高校よりも海に行きたい。
真ちゃんの家までは歩いて十分。軽く走れば五分で着く。あたしはいつも軽く走っていく。p14
・みずみずしい。少女のエッセイ感があるよね。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。楽しいうそは罪にならないんだから。p41
・ませた女の子だ。
手ぶらで歩く帰り道は、いつもよりずっと体が軽い。心のなかにある重たいものをみんな、こんなふうにどこかに置きざりにすることができたら、気分もずっと軽くなるのに…。p62
・仕事でもこう感じることは多い。
「でもね、仮病ったって、立派な病気だよ。」
「病気?」
「そう、心の」
「…」
「でも、こうやって -
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森絵都は勝手に青春モノのイメージがあったけど、幅広い世代の恋愛小説があって印象が変わった。【17レボリューション】で恋愛に失敗した自分を変えるために親友と絶交という格好をとるのとか、だよね〜ぽいな〜となった。主人公が親友や父親と「価値基準は客観的である必要はない」「自分が良いと思ったものを良いと思えばいいじゃん」的な話をしているところが良かった。【本物の恋】はそっちか〜ってなるオチもしっかりあったし【ブレノワール】の最後も良かった。個人的に一番好きだったのはタイトルの【気分上々】。大人になった今だからこそ中学生の時の感覚とか思い出しちゃったりして森絵都〜となった。
まとまってないけどどの話も語 -
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女ともだちかぁ…ドロドロだろうな…
と、読むかどうか迷っていたのだが、気が付いたら読んでいた。
しかし、内容は、予想の斜め上を行くもの。
私の思い描いたドロドロは“三角関係”とか“ライバル”とか“嫉妬”だったのだが、それは、さすがオバチャン、認識が古い!!…という感じで。
最初の三作は、三部作?この本には裏テーマがあるの?と思わせるほどの共通点があり…なんというか、サイコパス?
普通と異常の認識が、いきなり反転するところなど、胃袋がグルッと裏がえるような気持ち悪さを味わう。
大崎氏の作品は、知ってる舞台に知ってるキャラが友情出演のサービスあり、テーマもひとひねり。
阿川氏の作品は、女の友情 -
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この物語はある女についてある男が書いた小説である。
主人公は大阪の釜ヶ先で日雇い労働をしている男、礼司。
彼は友人の紹介で、ホテル富豪の妻である結子の人生を小説に書いてくれという依頼を受ける。
調査のために結子と会話を重ねる礼司だが、自分の過去を知られたくないのかホラ話を繰り返す結子。
礼司と結子との関係、釜ヶ先の状況にも色々な変化が現れ始め、それは礼司の書く小説そして礼司自身にも影響を及ぼし始める。
幼少期からの生い立ち、家族との関係、自らのハンデ。
ヒロイン結子を知り、魅かれ、小説を書き進めることは礼司が自らを見つめなおすことにも直結する。
二人の物語が徐々に渾然一体となって描かれて