森絵都のレビュー一覧
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森絵都さんが描く世界は、卑屈だったり、共感できないような主人公が、物語のラストにはすっかりのめり込んでしまうから不思議だ。
ストーリーの大筋は、父の死をきっかけに、生前の父の人物像が気になった、3人兄妹は父の故郷である佐渡島へ向かうことを決断するところから始まり、生前の父の人物像を明らかにすることで物語は幕を閉じる。
興味深かったのは、誰しも死んだ人を何かの言い訳に使ってしまうかもしれないという点だ。本書に出てくる父は、かなり厳格な性格で、何かにつけて子供達の行動を制限していた。部活動をさせなかったり、異性と付き合うことを許さなかったり、修学旅行に行かせたく無いと学校に直談判したりしていた。「 -
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短編が3本と中編が2本の物語集。
3つの短編に共通しているのが、主人公を誰かが「君は」と呼ぶかたちで進んでいく小説で、その語り部の視点が誰なのか(あるいは誰でもないのか)分からないままであるところが、不思議さを醸し出していて面白い。
2本の中編の間に箸休めみたいな感覚で読めるところも良かった。
表題作は、タイトルそのままの物語。
東京で音楽プロデューサーをしていた長尾が、仕事を辞め郷里で漁師を始めた。長尾について行きそこで生活を始めた愛人の紗江だったが、その立場から田舎の狭いコミュニティからは明らかに拒絶されてしまう。
そんな中、長尾の妻である円香から定期的に電話が掛かってくるようになり、妻 -
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60ページほどの短編2作とショート・ショート+αくらいの長さの3編からなる作品集です。短編のほうは震災後を舞台としたもので、こちらは文句なし。特にアラフォー女性3人が震災をきっかけに夫や恋人との距離を見つめ直していく姿を描いた「あの日以降」はなかなかの佳品だと思いました。表題作「漁師の愛人」も地方のある意味閉鎖的なコミュニティに正妻ではなく愛人という立場で関わらざるを得なくなった女性の心境がうまく描かれていると思います。
ショート・ショートの3編はいずれも少年が主人公のプリンをめぐるコミカルな話です。それなりに面白いのですが若干空回りしているような気も。
文庫版では解説を含めても200ページに -
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「少年とプリン」「老人とアイロン」「あの日以降」「ア・ラ・モード」「漁師の愛人」
このうち「少年とプリン」「老人とアイロン」「ア・ラ・モード」はプリンに対する男たちの偏愛が主要な題材になって居て何とも可笑しい。
「あの日以降」は大震災後にルームシェアするアラフォー女性を描いた佳作。
そして表題作「漁師の愛人」。実はこのタイトルから、あまり興味のないドロドロした恋愛ものがイメージされて購入をためらったのです。でも違いました。
会社に首を切られ漁師に転職した男と離婚しない妻、そして漁師町で同棲する愛人。でもドロドロじゃなくて何やら乾いた感じの三者の関係と、閉鎖的な漁師町の女性陣との戦いがなかなか見 -
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一度は行ってみたい、屋久島。
こちらは、森絵都さんが屋久島をジュウソウした様子を綴ったエッセイです。
ジュウソウ=縦走だということも知らず、重装備の「ジュウソウ」だと思っていたほどの初心者な森さん。
直面した山道は相当にハードそうでした。
とはいえ、全体的にゆるゆるした雰囲気のエッセイで、読んでて楽しい。それでいて、軽ーい気持ちで屋久島に行こうとしていた人をばっちり諌めてくれます。
勝手なイメージですが、なんとなくインドア派だと思っていた森さん(何の根拠もない)ですが、初めて読んだこのエッセイで、ものすごくノリがよくて、実はとってもアクティブなことを知りました。
第2章では世界を旅したエッセ