森絵都のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【本の内容】
「ならず者18号」に科せられた刑罰としての旅。
道に迷った「奇跡の犬」の壮大な冒険。
生涯、孤高の旅人として生きた伝説の「試食の人」-。
ユーモアとサービス精神に溢れた旅を巡る48のショートショート集。
単行本未収録作品のほか、本文イラスト・長崎訓子の描きおろしストーリーや、いしいしんじの特別寄稿も加えて、待望の文庫化。
[ 目次 ]
[ POP ]
目の前の現実がキビしいほど、人は、妄想の世界へ逃げたくなるもの。
頭の中はいつだって自由なのだから、つらいときこそ想像力を磨くチャンスだ。
この本は、直木賞作家の森絵都さんが連れていってくれる、1トリップわずか3ページ弱のショートショート集。
風刺のきいた旅から、そんなバカなという脱力系の旅まで、エキゾチックな不思議ワールドが48も用意されている。
『いつかどこかで』は、とくに当てもない旅をしていたジャンが、ある町に足を踏み入れた瞬間から、なんとも言いがたい懐かしさに包まれる話。
自分の家のように思える一軒家の老夫婦は、ジャンを見るなり〈25年前に誘拐された十二男のマリオ〉に間違いないと感激する。
まあ、それが事実かどうかは別として、とにかくジャンの旅は、翌日から目的をもった旅になるのである。
当てのない旅に、目的ができる素晴らしさ!
目的の中身など何でもいい。
生きていく大義名分さえあれば、人は幸せなんじゃないだろうか。
物語の断面にすっと吸いつくような身軽さでトリップしているうちに、目の前のキビしい現実も少しは愛してみようかなという気になってくる。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
冒頭───
若草色の風が吹きぬける四月、それまで二つに結っていた髪をポニーテールにまとめて、千鶴は中学生になった。
中学生なんて、なるときは、だれでもなる。地元の公立中学校だから、新入生の半数は知った顔。そう考えると気もらくで、入学の日もとくに緊張しなかったけれど、唯一、クラス発表のときだけは胸がどきどきした。
小学生から中学生になったばかりの24人の生徒たち。
大人と子供の狭間の中で、揺れ動くそれぞれの心情。
みんな色々な悩みを抱えているんだよなあ。
24人いれば24通りの悩みや葛藤がある。
24人分の個性がある。
それがぶつかりあうのがクラスであり、それが交差しあうのがクラスメイトである。
森絵都は、優しい眼差しで24人の子供たちを見つめる。
中学生になったのを契機に変わろうとする生徒たち。
或いは生徒たちの間に自然と変化は訪れる。
小学校の時は感じなかった些細なことでも、中学生になれば心の奥にずしんと重くのしかかってくる問題も多い。
それでも森絵都は、苦しく悩んでいる生徒たちの未来に明るい希望を提示する。
生徒たちはたくさんの壁にぶつかりながらも、それを乗り越えていくだろう。
良い話ではあるのだが、ハーフ美少女のアリスが一年生で好きな男の子に告白したり、後編になって、それを諦め高校生と付き合い出したりなどというのを聞くと、やはり今の中学生は僕らの時代と全く違うものという気がする。
そりゃあ、色気づく年頃だから、好きになったり、仄かな恋心みたいなものはあったけれど、それを実際に面と向かって告白するなどというのは、卒業式近くまでできなかったな。
なにせ、そんな“付き合い”なんて始めたら、みんなに冷やかされるのがおちで、恥ずかしかったからね。
ましてや中学一年生の女子が高校生の男子と付き合うなんてさ。
でも、森絵都の話は安心して楽しく読める。
児童文学やYA分野の他の本も読んでみたいという気にさせられた。 -
Posted by ブクログ
森絵都著「ショート・トリップ」を読みました。
くすっと笑える、そして不思議な旅のお話が48編入っているショートショート集です。
一つのお話がどれも3ページで終わりなので、気軽に楽しめました。
作者の作品を読むのは、「カラフル」「永遠の出口」「DIVE」に続いて、4つ目になりますが、どれもみな魅力的な登場人物が出てきます。
この48編のそれぞれの旅人も一癖も二癖もある魅力的な人たちでした。
それだけに、それぞれとてもユニークで個性的な旅ばかりでした。
旅の目的の一つが、日常を忘れることだとしたら、この本でもその目的は達成できるのではないでしょうか。 -
Posted by ブクログ
犬の保護と里親探しに奔走する人々を描いたノンフィクション。
ここに書かれている話の多くは救われた命の話。よかったねえ、と思わず言ってしまいそうになるのですが、現実にはほとんどの捨てられた犬たちは最終章の『救われない命たち』の中に入ってしまうのです。
この本を読んでいて思ったのは犬たちの感情の豊かさ。うれしい、かなしい、さびしいといった感情が犬にもあることは飼ったことのない自分でも十分想像できたことですが、ここに書かれている犬たちの中には、連れてこられた家に遠慮する様子を見せたり、もしくは自分が捨てられたことを理解していたり……もはや人と変わらないのではないかと思う感情の豊かさでした。
動物を飼う当初は老後の世話ってなかなか想像できないんですよね。この本の中にも犬の介護の話があって、その壮絶さに思い出した話があります。確か伊藤理佐さんのコミックエッセイだったと思うのですが、伊藤さんの飼い猫も余命わずかとなり猫の介護をされていたのですが、そのさい「これはまさしく親の介護の練習だ」的なコマがあってそれが印象的でした。それだけ動物の介護というものは壮絶なものなのです。
我が家でも妹がハムスターを飼っていたことがありましたが、その晩年にはおなかのあたりに腫瘍ができ、ヒマワリの種の殻をむく力もなくしたらしいハムスターのために妹自身がヒマワリの種の殻を一つ一つむいてエサ皿においてやっていました。
そしてある日の夜ハムスターが突然鳴き声を上げ、けいれんを起こし始めました。およそ一時間ほどハムスターの動きが止まってからもしばらく経つまで妹は泣き続けながらもハムスターの最期を看取っていました。自分もその傍らでただ見ていることしかできなかったことを覚えています。
この本のタイトルは『君と一緒に生きよう』
これに感じたのは動物を「飼う」という感覚ではなく「一緒に暮らす」もっと言えば「一緒に生きる」という感覚を持ってほしかったのではないかと思います。
この本の最終章で出てくる犬たちは刹処分される犬たち。彼らは部屋に入れられ炭酸ガスを室内に注入させられ死んでいきます。犬たちの様子を実際に見た森さんの描写を読んでいて思い出したのは、ナチスがユダヤ人虐殺のために使ったガス室でした。
命を大切に、という道徳の授業がいかに無力か……動物を捨てる人たちや無責任に飼う人たちはこの光景を自分自身の目で見るべきではないかと思います。それくらいやらなきゃきっとわかってくれない……
いつの日か人間だけでなくすべての生き物に幸せな世界が訪れてほしいと心の底から思いました。