伊吹亜門のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アンソロジー作品。
問題編と解答編に分かれていて、豪華な作家陣の作品を自分でも推理する事ができます。また、参加している作家さん同士でお互いの作品の推理した回答が掲載されており、思考を覗き見するようで面白かったです。
普段、推理小説を読んでも推理しないのですが、この作品は問題編が比較的短く、自分でも挑戦してみようと思えました。いくつか挑戦してみましたが、少し真相に近付けたり、全く思い浮かばなかったり…と様々でした。推理に挑戦した結果、より丁寧に作品を読み込む事につながり、読後の満足感が上がったように思います。
推理が苦手な人も、気軽に挑戦できるのでおすすめです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ凄く面白かった。個人的に一番好きなのは第一話「長くなだらかな坂」ですね。自分はスケールが大きい話より日常の延長線上に近い話の方が好きらしい。
文章が堅いのに読みやすくて、個人的に一番丁度よい文章。時代がかってて堅い文章なのに、一度読み始めるとスルスル読めるのが珍しくて助かる。
語り手である那珂川二坊の物書きとしての現実と理想の葛藤や、断片的に描かれる妻との関係性が非常に読み応えがある上に、推理物としても初心者の自分でも理解しやすいうえに真相シーンがワクワクできて満足度が高い。
あとこれは正規の読み方とは違うのだろうけど、歴史・時代ものをロクに読まないタイプなので各話の探偵役に付いての知識が全く -
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Posted by ブクログ
歴史的な出来事の裏で起きた事件を描くのがお得意の伊吹さんの最新作。
今回はタイトルで分かる通り、二・二六事件。
冒頭から陸軍内で起きた殺人事件。直情径行型の軍人が、行き過ぎた愛国心で暴走した事件のように見えるが、その裏に事件を起こそうと誘導する人物も垣間見える。
探偵役は憲兵大尉の浪越。思わぬ大物から間諜として二名の人物の内偵を命じられた彼だが、その中でまた殺人事件と出会う。
探偵の仕事はタイムスリップに似ている。
一つの事件を起点に、関係者たちの真実に迫ることは彼らの過去を遡ることでもあり、その捜査の中で新たな過去の事件にも出会う。
皇道派と統制派の衝突や、そこに入り込む私欲に塗れた活 -
Posted by ブクログ
二・二六事件の裏で起きていた「もう一つの事件」を虚と実を織り交ぜて描く歴史ミステリ。
永田鉄山や渡辺錠太郎、相沢三郎など実在した人物のエピソードを盛り込みながら、フィクションとしての主役・浪越憲兵大尉が叛乱の裏で起きていたある事件を解明していくというミステリ。
これほどの殺人事件を起こした犯人の動機が今ひとつ納得いかなかったけれど、真相が明らかになっていく過程はなかなかスリリングで面白かった。なぜわざわざこの時代背景?とも思ったけど、浪越のなんでもありの行動はあの時代じゃないと成り立たないし、何より浪越と麦島の同期の絆がもたらす感傷はあの騒擾が絡むからこそなんだろうなと納得。
それにして -
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Posted by ブクログ
ネタバレ明治から昭和初期までのとある小説家視点のミステリ。彼はどちらかというとワトソン役で、ホームズというか謎を解く探偵役はその都度登場していくタイプ。しかもその探偵は歴史に名を残すような偉人たち。主人公はそんな輝かしき偉人たちの側で、様々な役回りを果たしていく。尾崎紅葉に認められた最後の門下生という、言ってしまえばちっぽけなプライドだけで主人公は生きてきた。その矜持も悪くはないものの、総合的に彼は誰かしら、何かしらに流されてしまっている。だからこそ文壇で輝けなかったのかなあとちょっと思ってしまった。話の内容は面白かったんだけど、昔の表現方法が多いので読みづらさも少し感じた。
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Posted by ブクログ
「だから捨ててといったのに」から全ての物語が始まる短編集。作者によって「何を捨ててと言ったのか」を読むのが楽しいですね。昔星新一の「ノックの音が」を読んだときのようなワクワク感があります。普段あまり本を読んでいないので、この手のタイプの短編アンソロジーはいろんな作者さんの作品を一冊でたくさん読めるのが本当にありがたいです。多分読書家の方なら、作者を伏せても「この話はこの人が書いたのかな」と分かるのかもしれないなと思いました。そういう楽しみ方をしても良いのかも。
真下みこと「お守り代わり」
五十嵐律人「累犯家族」
芦沢央「久闊を叙す」
多崎礼「海に還る」
谷絹茉優「猟妻」
こちらの5編が特に好き