伊吹亜門のレビュー一覧
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大正時代の京都を舞台にした探偵バディもの。
元刑事の鯉城(りじょう)が調査を担当し、貴族の隠し子で病弱で家から出られない露木が安楽椅子探偵のように謎を解くという構図。
二人は共同経営者であるが幼馴染。鯉城にとって露木は謎を解き明かしてくれる名探偵であり彼の縁故もまた探偵事務所の経営に一役買ってくれているのだが、露木にとってもまた鯉城との探偵業経営は外との世界を繋ぐものでもあり、また鯉城との絆を深めるものでもあった。
誰もいないのに騒ぎ声が聞こえる山荘。
ストーカーの焼身自殺。
浮気調査を受けた夫婦とその疑いを受けた男三人の斬殺事件。
社長夫人を脅迫する元夫と現夫の死。
男女の情念が絡んだ事件を、表向きの物語とは違う真相を露木が解き明かすのだが、それが本当の物語かどうかは分からない。
だがこの作品は推理が正しいのかどうかが本筋ではなく、鯉城と露木とのバディとしての物語。特に露木が謎解きをする意味は、露木のそれまでの人生もあって切ない気持ちになる。
それは露木の世話係である溝呂木にも通じるものがあって興味深い。
狭い世界で生きる露木と、外の世界で様々な人たちと交わりながら胸に抱える者もある鯉城との関係は個人的には好きなタイプなので面白く読んだ。
出来れば二人の今後も見たいが、何しろ虚弱体質の露木だけに難しいか。 -
Posted by ブクログ
最近お気に入りの伊吹さんの作品。
明治から昭和(第二次世界大戦終結)までに那珂川二坊なる売れない作家が遭遇した様々な事件を描く。
といっても探偵役は那珂川ではなく、それぞれの事件で出会う人たち。その探偵役たちが後の有名人であったというのが最後に明かされる趣向。
事件そのものも楽しいが、むしろこの探偵役が誰なのかというのが途中から気になって読んでいた。
あの人かな?と思いながら読んだものの、結局分かった人はほとんどなし。自分の無知を改めて知ることになってしまった。
徳川公爵邸に忍び込んだ賊を捕まえた活躍譚の綻び。
豪雨の中で起きたクローズドサークル的殺人。
雪の山荘的密室殺人。
これまた同じフロア内の人物にしか起こせない密室的殺人。
密室となればワクワクするところではあるのだが、この作品ではちょっと肩透かしな感じがあった。
同時に那珂川二坊が公私ともに追い込まれていく様子が描かれていて少し辛かった。
主人公が売れない作家であるというところが肝であり、当時の多くの日本人がそうであったろう彼の視点もこの物語の結末がどうなるのかという興味を抱かせた。
この戦争の結末を知っている現代の私にとっては彼やその他の登場人物たちのその後を思うと切なく苦くなるのだが、『歴史に名を刻むであろう者も』『結局は私たち市井の人間と変わらなかった』という、その物語を那珂川二坊先生が描けた(それがこの本作という設定なのだろう)のは良かったと思う。 -
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ミステリー作家5人が、15冊ずつミステリ小説の書評を書いたものを収録。合計75冊(+おまけで紹介されている本もあり)という大ボリュームなブックガイド。
1冊ずつの書評は見開き2ページなので、隙間時間に読むのに最適。
ミステリー作家さんたちがどんなところを気にしながら読んでいるのか、どこを面白いと思うのかが人それぞれで、紹介されている本はもちろんだが、5人の作家さんたちの書かれた本も読みたくなる。
結果、読みたい本が一気に増えて、とても楽しいミステリーツアーだった。
他のジャンル(恋愛、青春、お仕事小説など)や、他の作家さんたちのツアーもぜひ読んでみたい。 -
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大正時代の京都が舞台の探偵モノ。
寺町二条に事務所を構える元警官の探偵・鯉城と、事務所の共同経営者で伯爵の血筋である露木が、様々な謎を解いていく連作五話が収録されております。
京都の風情と、各々の事件の背景に渦巻く“人の業”といった“陰”の気配が絶妙にマッチして、全体的に薄暗いけどしっとりとした雰囲気が漂う物語。
で、この雰囲気自体は結構好きなのですが、これは文体との個人的な相性だとは思うのだけど、ちょっと読みにくかったかな・・というのはありました。
さて本書は、外で探偵業務をする鯉城に対して、蒲柳の質で家から出れない露木が、鯉城から事件の情報を聞いて安楽椅子探偵ばりに推理をするという流れなのですが、いわゆる“事件解決”的なものではなくて、あくまで露木の“考察”というか持論的なものを述べている感じなので、その辺りが一般的なミステリとは違って独特な印象を受けました。
なので、第一話から第三話までは露木の推理に対して“仮説”っぽさがぬぐえず、特に第二話「火中の蓮華」での、執着していた女性の家に付け火をしたという疑いを持たれた男が焼死した理由については、もはや推理ではなく露木の妄想では?と、モヤっていたのですが、第四話「いとしい人へ」で語られる、露木の生い立ちと彼の鯉城への想いを読むと、露木が真相云々より“鯉城の為に”謎解きをしていることが判ってくるのですよね。
その辺を理解すると“なるほどねー・・”と腑に落ちると共に何とも切ない気持ちになった次第です。
そして、第五話「青空の行方」では鯉城も露木的なスタンスで“ある人の為の謎解き”をしていましたね。
事件内容が痴情の縺れが絡んだものが多かったという事もあるかもしれませんが、真相を解明するだけではない、人の心情をくんだ“謎解き”というのもある意味アリなのかな・・と思わせて頂いた内容でした。
因みに、鯉城と露木の友情(バディっぷり)も勿論良いのですが、個人的に気になったキャラは、露木家の家令・溝呂木さんが有能&いぶし銀で好きでした~。 -
Posted by ブクログ
誰が殺したか?
どうやって殺したか?
何故殺したか?
この3つのテーマを、それぞれ2人の作家が問題編と解答編を書き、他の作家が自分で考えた推理編を書く。
私はミステリーは好きだけど、マニアではないので、問題編→解答編→推理編、と、間を置かずに読んだ。物語としてはまあまあ面白かったが、私は推理編を楽しく読んだ。犯人は当てたけど、動機や殺害方法の推理が惜しい!という人もいれば、かすりもしない推理を披露してしまった人もいて、自分は推理しないくせに、この人すごいな!とか、だめじゃ〜んとか突っ込みながら読んだ。雑誌の企画なので、読者も推理して投稿できたらしく、半分くらいの人が犯人を当てたとか。ミステリーマニアってすごい…。
暇を持て余している状況だったら、熟読して、熟考して、1つくらいは私にも犯人当てできたかも?? -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。
舞台設定にまったく馴染みがなかったのだが、作者の文章のイメージ喚起力に助けられ、見事に大正時代の京都を頭に描くことができた。
探偵役が謎に向き合う姿勢や動機が変わっていて、なるほどこれも一種の××小説(あえてぼかす)なのかもしれないなと思った。××小説に詳しくはないので、あくまでも僕の想像だけれど。
シリーズものの連作短編集で、全体的に静かなトーンで物語は進む。
各篇の謎解きは複雑なものではなく、与えられた数少ないカードの位置や順番を入れ替えて推理を組み直してみせるが、そこまでの意外性はない。
ガチガチの本格というよりは、しっとりと味わい深い探偵物語だ。