【感想・ネタバレ】焔【ほむら】と雪【ゆき】 京都探偵物語のレビュー

あらすじ

探偵・鯉城は「失恋から自らに火をつけた男」には他に楽な自死手段があったことを知る。それを聞いた露木はあまりに不可思議な、だが論理の通った真相を開陳し……男と女、愛と欲――大正の京都に蠢く情念に、露木と鯉城が二人の結びつきで挑む連作集

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元警官と伯爵令息の安楽椅子探偵系の大正ミステリかと思いきや……。かなり好き。鯉城も露木もかなり良いキャラなので、シリーズ化に期待!

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2025年04月29日

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ネタバレ

大正ロマンたっぷりのバディもの。活発な元刑事と病弱な安楽椅子探偵なんだけど、二人の関係はそれだけでは言い表せないのがとても面白い。片思いなのもいい。どれもボリュームとしては大きくないものの、起承転結がしっかりしてて読みやすいし、いくつもの解決法を提案してくるのが新鮮だった。今だとできない、この時代ならではの面白さかもしれない。できればまた新作が読みたいなあって思った。

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2025年02月02日

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ネタバレ

刀と傘が好きで同じ作者さんだったので購入しました。

面白く無いわけじゃないけどなんか無理があるんだよなあとか思って読んでたら…その違和感をひっくり返してからが本番だった。

鯉城と露木自分がうがってみちゃうからな〜って思ったら本当にそうでよかった笑

全部の真犯人が実は露木まで妄想してたからハッピーエンドでよかった

ハッピーエンドかな……

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2024年11月18日

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 伊吹氏の過去2作品には、実在の人物が登場したが今回は誰もいない。
主人公鯉城武史は元刑事で、ある理由から警察官を退職した。

 露木という人物から声をかけられ、探偵事務所を開き共同経営をしている。屋号は、鯉城探偵事務所という。なぜか露木の名前が入っていない。物語を読み進めると、探偵の依頼を鯉城が受け、実際の調査活動も鯉城が遣っているからなのだろうと推測していた。

 露木は、事務所にも出勤していない。判断に困る案件があった時だけ、鯉城は露木の家を訪れ相談をしている。事件があっても現場には赴かず、主に鯉城から状況説明や資料を基に推理に徹している安楽椅子探偵なのだ。

 目次は以下の通り
 第一話 うわん
 第二話 火中の蓮華
 第三話 西陣の暗い夜
 第四話 いとしい人へ
 第五話 青空の行方

 鯉城と露木の関係は、唯一無二の幼友達とだけ伝えておこう。そして出生の秘密がある。
 彼の推理は、いつも鯉城を呻らせる。しかし探偵事務所は、犯人を逮捕する必要がないのだ。露木の推理がどんなに素晴らしくともそれが真実とは限らない。
鯉城の推理は、自分にとって都合のいい物語を創った。
露木が反論「真実が人を救うとは限らないじゃないか」

 〈ときに熱く ときに冷たく きみと謎解くいとしさよ〉(帯より抜粋)
 過去の作品の中で、この作品が一番面白いと感じた。
 読書は楽しい

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2024年02月22日

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ネタバレ

普段推理小説はあまり読まないので、事件の真相にこじつけ感がある気がするが、創作だとこんなものなのだろうと思い込んだ。

だから、第四話で全ての事件の真相はみ「鯉城のための作り話」と知ったときは、驚きで鳥肌が立った。この話からようやくページをめくる手がスラスラ進むようになった。

タイトルの焔と雪。最初は表紙の構図をみて2人の位置に違和感があった。だけど、最後まで読むと、一見穏やかだけど心に熱い気持ちを隠す露木と、熱血漢に見えるが自身を冷たい人間だと思う鯉城を焔と雪に例えていることが分かる。深くていいタイトルだと思った。

露木にとっての世界は鯉城のみだけど、鯉城にとってはそうでないのが切ない。

続編を読みたいと思ったが、二人の関係が変わらないことを示唆する終わりが、1番綺麗かもしれないとも思ってしまう。

時代ものだからか、現代ではあまり使わない言葉や漢字が多く、読むのに苦労したけど、諦めず最後まで読んでよかったと思える作品だった。

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2025年09月01日

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鯉城と露木のバディ関係が絶妙。真実が人を救うとは限らない。事件解決に人を救う解釈をめぐらせる。おもしろかった。

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2025年04月21日

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ネタバレ

medium霊媒探偵などと同じ二重推理もの
大正時代の日本語の豊かさを感じられる

しかし二重推理のカタルシスは上述の小説のほうがあった

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2025年03月13日

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なるほどね。
こういう切り口を時代ミステリでするんだ。
要はこの連作短編集も、推理は一つではなく
揺れる。解釈は数個もあるうちの閉じた人間にとっての都合のいい解釈が一つの推理になる。
探偵とワトソンの関係も含めて揺れる物語で、よかった。

2772冊
今年211冊目

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2024年12月30日

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スロースターター系ミステリー小説というか、途中まで感じる「なんか違和感が?あれ??これでいいのかな??」が綺麗にひっくり返った瞬間からが本番な一冊。
ミステリーに触れる機会が多ければ多いほど見落としてしまいそうな"意図"が最後にじわじわ来るのがいいなぁ。

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2024年11月10日

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 直線的で、簡単な真相では、本当の解決とはならないことがある。人が生きていくためには多層的な解釈を吟味していく必要がある。
 そんなことを読み取らせてくれた。

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2024年06月17日

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ネタバレ

大正時代の京都を舞台に探偵業を営む鯉城と病弱ゆえに安楽椅子探偵な露木の幼馴染バディミステリー。

各事件解決に残る違和感に気持ち悪さを感じていたら、やはりそれは『解決』ではなく『物語』な罠。
不実なのに渇望が見えて切なかった。

母親とその母を想う従者と自分、という狭い世界に生きていた露木の前に現れた鯉城。
常に死と隣り合わせな彼の世界にはその3人しかおらず、母も死亡。
となれば、露木が鯉城を恋い慕うのは必然なのだ。
鯉城のためだけに生きている露木の歪んだ愛と献身の物語。

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2024年05月28日

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ネタバレ

 舞台設定が大正時代である、鯉城と露木の二人の探偵によるミステリー。鯉城が依頼を受けて調査をしていき、露木が解決していくストーリーかと思いきや、「露木は鯉城のために謎解き、もとい物語を創造している。」という事が分かったとき、某漫画の「真実は人の数だけある。」という台詞が思い浮かんだ。この「露木は鯉城のために探偵行を行う。」「最終的に鯉城も露木のように物語を創造する。」というところが、本格ミステリーに一癖加えた独特な作風になっていて面白かった。

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2024年04月27日

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普通の短編かと思ったが探偵の独白から様子が変わる。
その前の短編の解決について探偵自らが他の解釈もあり得るとした上で、相方が好みそうな方を選んだと。
最後の短編ではその相方までもが依頼者が満足するような解釈を披露したと話す。探偵の解釈を正とするミステリのお約束をぶち壊しているが最後はまたしても探偵が解釈を考えるだろうシーンで終わる。
ちょっとモヤモヤして終わったので次作での解釈を期待したい。

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2024年04月06日

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大正時代の探偵ミステリの短編集。病弱な露木による安楽椅子探偵のごとき謎解きが、ちょっと不可思議で一癖あって面白い。時代の雰囲気も味わえます。

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2024年03月20日

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ネタバレ

なんかミステリー読みたいなと探してたら、BLか同性愛か、まあブロマンスがあるらしいと聞き付けて読んでみた。

ネタバラシとして4話の露木視点で「恋をしていた。」と独白があるが、個人的にはそこまで沸き立つものは無かったが、まあ面白かった。

「うわん」
妖怪か人かの話。妖怪に見せかけた人による殺人だけど、凶器が蜂のアナフィラキシーというのが面白い。鯉城に示した露木の推理もまあ納得が行くけど、その後に死人が出ているので、そっちは自殺か他殺か気になるものの、まあいいかと思った。

「火中の蓮華」
鯉城に披露した、同じ火で死にたい狂った男の話は無理があるけど、狂ってるから狂った死に方というのも、まあありだなと思った。でもやっぱ下駄屋の男おかしくない?とも思った。

「西陣の暗い夜」
心中の後に、偽装して自殺説。ややこし。実際は強盗の後に自殺。強盗犯捕まんないのダメだと思うが、ここでは鯉城の心情が重要視されているので良かった。妻に蔑ろにされた与一に自分を重ねる鯉城。そのコンプレックスがちょっとよくわからない。弓枝という女性の具体的な人物像が出てこないので。
妻のことを本当に愛していたのか?とか。妻は幸せだったのか?何を後悔してるのかいまいちピンとこない。
妻が死んで悲しいのはわかるが、与一のように自分は妻を愛してる自分に酔っていたのでは?ということらしいが、なんかピンと来なかったな。というか、この時代なら周りが縁談持ってきそうだけど、露木が止めてんのかな。

「いとしい人へ」
焔と雪の由来の一つの焔がカルラである露木で良いとして、雪がわからん。最後のほう、雪降ってたけど。
露木のネタバラシ回。鯉城という読者を引き付けておくための推理が良い。鯉城を罪の意識から救うための推理が、この関係を維持するためのものであり、エンタメになっていく。

「青空の行方」
亡き妻である弓枝に似た女性を救うために、露木と同じように、彼女のための推理をする鯉城。
露木はそれに気付くが、鯉城は気付かない。ボーイは気付くと思うんだけどなあ。自分が指示された薬を幸助が持っていって死んだら、あれ?とならんか。

全体的に大正の雰囲気を感じさせる小物や地図で面白かった。鯉城のほうも露木に対して疑念があれば良かったかなあ。どうなんだろう。
歪な探偵と助手の関係なら、麻耶雄嵩の木更津やメルカトル鮎が大好きなので、それくらいのやりすぎさがあっても良いかなと思った。個人的には。

でもまあ、助手のための謎解きをする探偵も良いな。いつまでも親の庇護下にいてね、という傲慢さと依存さがある。

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2024年03月10日

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大正時代京都が舞台のバディもの
安楽椅子探偵でしょ?と思って読み進めると……⁉︎

誰のためなのか、何のためなのか考えさせられる作品でした。
舞台となっている大正時代の京都が文章から
伝わってくる美しさ素敵でした。

読み終わった後に帯を見て納得
“ときに熱くときに冷たくきみと謎解くいとしさよ”
の作品が2024年初読みでよかったです
続編希望!!

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2024年01月10日

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ネタバレ

シリーズ一作目っぽくないというか何作かこのコンビで出てる感があってなんだか面白かった。馴染む。
鯉城が犯人だと疑われる展開が来そうで来なくて意外だった。実際世間的には誰が犯人と見なされたのか書かれてないけど、なかなか後期クイーン問題…と思っていたら…だったのでうれしかった。探偵助手の可能性は無限大…というか探偵探偵か。

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2023年12月09日

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時代小説
現代にはない言葉や物が惜しみなくどんどん出てくるので状況を確認する為に検索しまくった

3冊読んだこの作者のものでは一番好き

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2025年10月12日

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ネタバレ

いわゆる連作ミステリとはちょっと毛色が違う。
同作者の「刀と傘」を読んだと時にも思ったけど、主要人物がみんな薄っすら闇を抱えていて何かの拍子に加害者になり得てしまいそうな危うさがある。
今作も真相と願い、加害者と被害者の境界線があやふやでずっと不穏な影を感じながら読み進めた。
文体はさらりとしてるのに湿度が高めでとても好みだった。

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2025年07月09日

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元刑事の鯉城が大正時代の京都を舞台に、探偵として事件を追う連作短編集。何より彼の幼少期からの友人の露木の助言で事件解決に向かうと言う設定が良かった。

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2024年09月28日

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大正時代の京都が舞台。元警察官の探偵鯉城と、伯爵の血筋で蒲柳の質ゆえ屋敷に引きこもっている露木の安楽椅子探偵バディモノ……この手の連作短編集を読み慣れていない人ほど純粋に楽しめると思うんだが、悲しいかな、ミステリ読み慣れてる人ほど、途中から不穏な気配を気取って、これは途中からアレがアレする奴では?みたいな勘ぐりが働き出すのが勿体ない(これは読者側の問題。私がそうなっちゃったので)。

東京創元社のシリーズが実在の人物も登場する史実寄りのミステリで、講談社の奴は現代のファンタジー要素も入れたライトな読み物路線。で、今回のハヤカワさんところのはなるほどこの路線で来たかーと。大正時代の男→男のクソデカ感情をここまで織り込んだ作品を仕上げてくるとは。BLかと言われるとそこまではいってないな、って感度ですが、ブロマンスバディものとは違う爆弾を抱えているこの二人の物語は本作のさらに続きを読んでみたいです。

四話のタイトルが秀逸でしたね。あれは、読み終わった後にあの話に登場する人物全員それぞれの視点で考えて、どれでも成立する良いタイトル……。そこで残酷で素晴らしいのが全て矢印の向きが一方通行なのだ……。

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2024年07月25日

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大正時代の京都を舞台にした探偵バディもの。
元刑事の鯉城(りじょう)が調査を担当し、貴族の隠し子で病弱で家から出られない露木が安楽椅子探偵のように謎を解くという構図。
二人は共同経営者であるが幼馴染。鯉城にとって露木は謎を解き明かしてくれる名探偵であり彼の縁故もまた探偵事務所の経営に一役買ってくれているのだが、露木にとってもまた鯉城との探偵業経営は外との世界を繋ぐものでもあり、また鯉城との絆を深めるものでもあった。

誰もいないのに騒ぎ声が聞こえる山荘。
ストーカーの焼身自殺。
浮気調査を受けた夫婦とその疑いを受けた男三人の斬殺事件。
社長夫人を脅迫する元夫と現夫の死。

男女の情念が絡んだ事件を、表向きの物語とは違う真相を露木が解き明かすのだが、それが本当の物語かどうかは分からない。
だがこの作品は推理が正しいのかどうかが本筋ではなく、鯉城と露木とのバディとしての物語。特に露木が謎解きをする意味は、露木のそれまでの人生もあって切ない気持ちになる。
それは露木の世話係である溝呂木にも通じるものがあって興味深い。
狭い世界で生きる露木と、外の世界で様々な人たちと交わりながら胸に抱える者もある鯉城との関係は個人的には好きなタイプなので面白く読んだ。
出来れば二人の今後も見たいが、何しろ虚弱体質の露木だけに難しいか。

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2024年07月06日

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大正時代の京都が舞台の探偵モノ。

寺町二条に事務所を構える元警官の探偵・鯉城と、事務所の共同経営者で伯爵の血筋である露木が、様々な謎を解いていく連作五話が収録されております。

京都の風情と、各々の事件の背景に渦巻く“人の業”といった“陰”の気配が絶妙にマッチして、全体的に薄暗いけどしっとりとした雰囲気が漂う物語。
で、この雰囲気自体は結構好きなのですが、これは文体との個人的な相性だとは思うのだけど、ちょっと読みにくかったかな・・というのはありました。
さて本書は、外で探偵業務をする鯉城に対して、蒲柳の質で家から出れない露木が、鯉城から事件の情報を聞いて安楽椅子探偵ばりに推理をするという流れなのですが、いわゆる“事件解決”的なものではなくて、あくまで露木の“考察”というか持論的なものを述べている感じなので、その辺りが一般的なミステリとは違って独特な印象を受けました。
なので、第一話から第三話までは露木の推理に対して“仮説”っぽさがぬぐえず、特に第二話「火中の蓮華」での、執着していた女性の家に付け火をしたという疑いを持たれた男が焼死した理由については、もはや推理ではなく露木の妄想では?と、モヤっていたのですが、第四話「いとしい人へ」で語られる、露木の生い立ちと彼の鯉城への想いを読むと、露木が真相云々より“鯉城の為に”謎解きをしていることが判ってくるのですよね。
その辺を理解すると“なるほどねー・・”と腑に落ちると共に何とも切ない気持ちになった次第です。
そして、第五話「青空の行方」では鯉城も露木的なスタンスで“ある人の為の謎解き”をしていましたね。

事件内容が痴情の縺れが絡んだものが多かったという事もあるかもしれませんが、真相を解明するだけではない、人の心情をくんだ“謎解き”というのもある意味アリなのかな・・と思わせて頂いた内容でした。

因みに、鯉城と露木の友情(バディっぷり)も勿論良いのですが、個人的に気になったキャラは、露木家の家令・溝呂木さんが有能&いぶし銀で好きでした~。

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2024年05月17日

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 「刀と傘」で初めて知った伊吹亜門。この本は面白かった。
 それに比べるとちょっと落ちるかな?大正時代の京都を舞台とした連作探偵ミステリー。
 連作短編で読みやすくはある、

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

京都を舞台にした大正時代のミステリー。さほど京都色はない。初めて読む作者さん。どうやんでうちの息子の一つ下か。そういう時代になったんやなね。なぜかちょっと文章が読みにくいんだよなあ~。設定としては面白いが、私には今一つかな・・・

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2024年04月29日

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初めて読む作家さん。
舞台設定にまったく馴染みがなかったのだが、作者の文章のイメージ喚起力に助けられ、見事に大正時代の京都を頭に描くことができた。
探偵役が謎に向き合う姿勢や動機が変わっていて、なるほどこれも一種の××小説(あえてぼかす)なのかもしれないなと思った。××小説に詳しくはないので、あくまでも僕の想像だけれど。
シリーズものの連作短編集で、全体的に静かなトーンで物語は進む。
各篇の謎解きは複雑なものではなく、与えられた数少ないカードの位置や順番を入れ替えて推理を組み直してみせるが、そこまでの意外性はない。
ガチガチの本格というよりは、しっとりと味わい深い探偵物語だ。

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2024年03月31日

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ネタバレ

元刑事の探偵鯉城が遭った事件を幼馴染の露木が安楽椅子探偵となって謎を解く・・・という流れの連作短編。

なんというか・・・露木があかす真相がどれもそんなに意外性がなくてパッとしないな・・と思っていたら露木が語り部となりさらなる真相が。でもなんだろうな、いまいちピンとこなかったかな。真相を隠す露木の心情みたいなものが。あっと驚く真相!というほどでもなかったし・・・むしろイヤミスよりですらあった・・このあたりは好みの問題ですけども。

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2024年02月13日

Posted by ブクログ

京都近代バディもの。
鯉城(りじょう)は豆腐屋の息子として生まれ、警官となったが、事情があって職を辞し、今は探偵として働いている。
彼のパートナーでもあり、ある種パトロンでもあるのが露木。伯爵の血を継ぐ庶子で、本家には嫌われている。病弱な彼は鯉城のようには動けないが、思慮深く、頭脳明晰で、鯉城に何くれとなくアドバイスする。安楽椅子探偵型ホームズといったところである。
舞台は大正時代の京都。浪漫漂う世界で繰り広げられる事件には、生臭い情念が渦巻く。
鹿ヶ谷の別荘に正体不明の化け物の叫び声がする。そこに残されたのは異様に顔が腫れた男の死体。男は化け物に取り殺されたのか?
聚楽第の娘にかなわぬ恋をした男は娘の家に付け火をする。それに留まらず、自ら油をかぶって焼死する。いったいなぜそんな死に方を?
西陣の老舗機屋で、男女3人の死体が見つかる。社長夫妻とその弟。これは不倫の代償なのか?
いずれも混み入った事件。鯉城はそれぞれ、結論にたどり着くのだが、露木はもう一歩、踏み込んだ「解」へと鯉城を導く。

全5話の連作集。第4話のみ、露木の語りとなり、あとは鯉城の視点で事件が描かれる。
通常のミステリと少々違うのは、露木の示す「解」にある種の裏事情があることだ。これはなかなか目新しい試みかもしれない。起きた事柄は1つでも、視点を変えればさまざまな見方が「出来得る」というところだろうか。

正直なところ、個々の事件の筋は混み入り過ぎで、キレも弱い。事件解決の爽快感は得られにくい。現実世界で起こる事件もあるいはこのくらい割り切れぬものもあるのかもしれないが、それにしてもカタルシスは薄い。
読みどころとなるのは、大正京都の濃い目の仄暗い情感と、2人の探偵の関係性だろう。
一風変わったブロマンス。「焔(ほむら)」は直情的で頑強な鯉城、「雪」ははかなく怜悧な露木だろうが、表紙では鯉城が雪の中におり、露木は暖かな(おそらく暖炉のある)部屋にいる。いずれにしろ、対照的な2人である。
さて、この2人、さらなる事件に挑むことはあるだろうか。

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2024年01月25日

Posted by ブクログ

大正時代の京都を舞台に、元刑事の探偵と病弱な華族が様々な謎を解く連作短編集。
大正の雰囲気がいい。鯉城と露木の関係も単に行動力と頭脳の分業ではなく、露木の独白で謎解きの見え方が変わるのが面白かった。

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2024年01月19日

Posted by ブクログ

舞台は大正の京都。探偵の鯉城と、探偵社の経営を共にする露木。現場は鯉城が足を運び、未解決で終わったとしても、露木の推理により事件はとりあえずは解決をする。が、果たしてそれが正しい答えなのか、そう思うことで救われることもあるのではないか。現代のような鑑識があるわけでもないので、露木の推理もごもっとも、と感じる一方で、人の心とは得てして分からないものである。

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2023年12月23日

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