高橋源一郎のレビュー一覧
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決して万人ウケする作品ではないし、一部の人には不快な可能性もある作品。
著者があとがきで述べているとおり、この小説は酷いんだけれど、酷いのにも関わらずマジメにみえてしまうという、それほどまでに現実の方も酷い時代なんだと思う。
途中の震災文学論はナウシカを中心にマジメに核戦争、震災、水俣病といった悲劇を通じてみえてきた我々の世界の隠していた負の側面に言及しながら、負の側面が我々の世界を支えてもいる構図を示していて、本書の基本的な考え方になっているのだけれど、震災文学論だけではただのマジメな文学論になってしまって正統性を競う争いに巻き込まれてしまう。それを避けるために震災復興支援のためのAV撮影を -
- カート
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試し読み
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先生は左翼文化人とのレッテルを貼られがちだが、単に政治の愚昧を嘆いているだけだ。憲法すらも一種文芸批評の方法を持って提示してくれているため、むしろ一切の偏りがない。その上で憲法論議が引っかかっているトゲをクローズアップして見せてくれた。自ずと天皇論も、先生が誰もに向ける人間への慈しみを注ぐ点においてよりヒューマニズムを感じることができた。この視点と立ち位置は続く韓国朝鮮関連の章においても、コロナの章に至るまで貫かれている。
かといって高踏派だとか相対主義などとは全く違う主張があり、納得してしまう。どうやらシリーズになりそうなので、タイムリーに発刊していってほしい。「年刊 高橋源一郎」ならばもち -
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2021/06/17
これを読んだのは2回目。初めて読んだ時には文章のキレの良さにページをめくる手が止まらなかった。こんなに自由な小説があってもいいのか、と感動していた。しかし、それより先には進めず、この本で著者が言わんとしていることはまったくわからなかった。内田樹による解説を読んでも、あまりピンと来なかった。この小説の魅力に取り憑かれはしたが、それは言葉とか形式の面でだけであって、内容に関してはわからずじまいだった。
今日、改めて読むと、それが少し見えてきたような気がする。が、なんというか、やっぱりまだ距離があるような気もする。内田樹の解説によれば、この小説の主題の一つは「暴力的なもの=邪悪 -
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多様性が重要視され、個人を尊重する風潮が高まっている昨今。しかしながら私たちはその中で正解を求めて日々窮屈な思いをしている。
本書は正解を求める相談者に対して、著者が独自の視点で答えていった新聞での「人生相談」をまとめたものである。
何か明確な正解があるわけではない。
著者も「正解はないのですから」と述べている。
その言葉がとても深く、そして安心できる一言のように感じる。
自分という人間が間違っているのではないか、他人に非難されてしまうのではないか。
心のどこかで溢れる不安に対して、「自分であることを認める」ことの大切さを教えてくれるる一冊。
落ち込んでも、間違えても、立ち止まってもい -
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これは、なんというか、「小説」の書き方がわかる本ではあるけれど、(括弧付きではない、一般で言われている、そしてこの本の中では「狭い意味での」と言われている)小説の書き方の参考には、あんまりならないと思う。自分の中に何か燻っているもの、煮えたぎるもの、不穏な気配とか、抑えがたい欲求とか、そういうものがあって、それのやり場に困っている、という人にはおすすめできると思う。
それと、この本を通して、高橋源一郎が小説というものにどのように向き合っているのかが少しわかる。なので、彼の書いた小説が、嫌い、というわけではないけれど、ちょっとよくわかんないよな、と思っている人にとっては、この本がひとつの高橋源 -
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大学2年の時に友人宅で薦められて読み、冒頭数ページで心をガッツリ持って行かれ、帰り道に書店に寄り「文庫なのに高いなぁ…」と思いながら購入した記憶がある。
とにかく勢いのある小説なので読み進めるスピードのコントロールが不可能。特に授業シーンのスピード感リズム感はハイフェッツの演奏並。逆に立ち止まると内容が頭に入ってこない。そんな小説。どんな内容かと問われると説明が難しい。
愛についての小説でもあるし、死についての小説でもあるし、読み手によってどんな小説にもなり得るというまるで変幻自在なスライム状のように存在している作品。そろそろ再読してみようと思う。 -
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2020.11.1
やっと読み終わった、、
長らく論語の全訳が読みたいと思っていた中、本屋で発見。積読状態が長かったが、ようやく読み切ることができた。
時代背景の理解も必要な論語を、現代風にわかりやすく訳された内容で大変素晴らしい。何より孔子への愛が伝わる文章で、とても気持ちよく読めた。あとで調べたら筆者の経歴も中々のもので、「よくぞ書いてくれた」といった感想を抱きます。
論語は年1は必ず読んでいますが、読むたびに自分の悩んでいることの答えが見つかり、自分の定点観測的な立ち位置になってます。たくさんの解説本を読みましたが、その中でも今回の本はバイブル入り間違いなし。
今回もまた、孔子に学ばせて -
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ネタバレ印象的とこメモ。
◆家族に不幸が続き怖い
『事故に巻き込まれ、妻子を失った知人がいます。彼に過失は一切ありませんでした。病院のベッドですべてを知った彼は、生きる気力を失いかけていました。そんな彼に医者はとどめを刺すように、「お気の毒ですが、大きな障害が残るでしょう」と宣言したのです。その時彼がどう感じたと思われますか。あまりに悲惨な運命を呪い、希望を完全になくしたと?
自分でも驚いたことに、彼にやって来たのは、凄まじい怒りでした。彼は、自分を奈落に突き落とした「運命」に向かって、こう叫んだそうです。
「人間というものが、そんなことでダメになると思ってるのか?なめてんじゃねえぞ。俺をひざま -
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さよならクリストファー・ロビン
(和書)2012年09月06日 19:34
高橋 源一郎 新潮社 2012年4月27日
むかし高橋源一郎のファンだったことがある。かれのファンであったことで得たものと言えば柄谷行人を知ることができたことだろう。しかし柄谷行人を知ったことで高橋源一郎がなんだか嫌になった。
こんかい谷崎潤一郎賞を受賞したと聞いて久しぶりにこの小説を読んだのです。谷崎潤一郎賞がどういった賞か良くはしらない。村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』のイメージが強い。他では大西巨人が受賞の打診があったが拒否したという話を聞いたことがある。
イノセントな世界観など