あらすじ
ツキにからかわれるのも、人生長い目で見れば悪いことではない。
年々歳々、馬とともに春夏秋冬をめぐり、移り変わる人と時代を見つめ続けた作家の足跡。
日本文学の巨星が三十余年にわたり書き継いだ名篇エッセイ、初書籍化。
編・解説:高橋源一郎
何年先のことになるやら、たとえばダービーの日のスタンドかテレビの前で、そういえばあの男、このダービーをもう知らないんだ、と生前の私のことをちらりと思い出す人がいるかもしれない、と今からそんなことを考えると、心細いようで、あんがい、慰められる気持ちになる。自分一個の生涯を超えて続く楽しみを持つことは、そしてその楽しみを共にする人たちがこれからも大勢いると考えられることは、自分の生涯が先へ先へ、はるか遠くまで送られて行く、リレーされて行くようで、ありがたいことだ。
(本文より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
30年以上にわたる「優駿」誌上での連載からのセレクション。競馬好きとはどこかで聞いた気もするが、この連載のことは知らなかった。まったく期待を裏切らない内容だった。
この本の概ね前半は私がリアルタイムでは知らない競馬、グラスワンダーあたりからが実際に見ていた競馬になる。思い出の馬、忘れかけていた馬の名前が次々と現れると、自分がいつどこで何をしていたのかも思い出される。毎年々々おなじような競馬が繰り返されるかにも見えるが、そのあいだにも時は着々と進んでいる。ここ7,8年は競馬から離れていたのだが、戻るきっかけをもらったような気がする。