スティーヴン・キングのレビュー一覧
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キングは何冊か読んでますが、長編ではこれが一番お気に入りになりました。
だいたいキングの長編は前半にためにためたエネルギーを後半に向けて開放するジェットコースターみたいな構造になってますが、今作ではそのジェットコースターが本当に底知れず、どこまでいっても止まりそうにない恐怖感が本当に素晴らしかったです。
モダンホラーの定義は諸説あると思いますが「隣に越して来た人が何者なのかわからない」というのも一つの要素だと思います。今回は吸血鬼伝説をどうモダンホラーにするか。ゴシックホラーからモダンホラーへの飛躍をどうするかということだと思いますが、このハードルも見事に飛越していたと思います。
そして、この作品の本当に怖いところは、町の人間がいつの間にか消えても、誰も関心を持たない「無関心」そのものが恐怖の元凶なんじゃないかなと感じました。
また、キング作品はどこかしらキングの分身が作中にいることが多いように思うのですが、今作は主人公のベンは小説家だし、マーク・ペトリ―はオカルト好きの少年、高校教師のマットもキングの前職と、3人もキングの分身が活躍していて、大変お得です(?)
いかんせん、邦題がちょっとダサいかな~という気が笑 一応「盗まれた街」のモジりにもなっているそうですが。。 -
Posted by ブクログ
さあ皆様、お立ち会い。
ここに描かれるのはあるホテルでひと冬を過ごす事になった親子三人の物語だ。
何? そんなのつまらん? そんな事言わないで。ほら、頁を開いて読んでごらん……。
キングがキューブリック版をこき下ろしたのは有名だが、わからなくもない。ここにある親子の絆は欠片も出てこないし、ジャックはただの危ない親父で、次第に精神を狂わせていく怖さが出ていないからだ(個人的にあれはあれで悪くないし、面白いのだが)。
ここで目を惹くのはエンターテインメントとしての構成の上手さだ。何度読んでもドキドキ、ワクワク、同じところで怖がってしまう。
オーバールックホテルにようこそ! 入る時はニコニコ、出ていく時はどうなっているかわかりません。当ホテルでは永遠に遊べる楽しい仕掛けがたくさんございます。皆様にご愛顧頂ければ幸いです……。 -
Posted by ブクログ
岡田斗司夫さんの読書特集で紹介されていたこの小説、普段あまり小説を読むことのない私にとっては、新たな読書の扉を開くきっかけとなりました。物語の魅力に引き込まれ、気づけば最後まで一気に読み切ってしまったほどです。小説が持つ物語の力、キャラクターの魅力、そしてその先に広がる深いテーマについて考えさせられる素晴らしい作品でした。
この本を読んで特に感じたのは、物語の緊張感とスピード感です。作者の筆致は非常に巧みで、グロテスクな描写や複雑なテーマにもかかわらず、全体のテンポが絶妙に保たれています。そのため、一瞬たりとも飽きることなく、ページをめくる手が止まりませんでした。映像化を望む気持ちもわかりますが、描かれているシーンの中にはかなり衝撃的なものもあり、映像化には確かに挑戦が必要だと感じます。
特に、この作品の中で扱われるレズビアンの関係や近親相姦という難しいテーマは、読む者にとっての挑戦でもあります。これらのテーマは一般的には避けられがちですが、作者はそれらをあえて取り上げ、人間関係の複雑さや個々の登場人物が抱える葛藤を描くことで、物語に深みを与えています。単なるエンターテインメントの枠を超え、人間の本質に迫るような問いかけが随所に感じられました。こうした重いテーマをどう受け止めるかは読者に委ねられていますが、私にとっては、考えるきっかけとなる貴重な体験でした。
集中して読めたこの読書体験は、私にとって最高のものでした。小説の力強さを改めて実感し、言葉が持つ魅力に引き込まれました。普段、小説を読むことが少ない私にとって、この作品との出会いは大きな刺激となり、もっと多くの本を手に取ってみようという気持ちになりました。読むことで新たな世界が広がり、これまで知らなかった感情や思考に触れることができるということを、この作品は教えてくれました。
また、この作品を通じて感じたのは、物語を通じて他者の視点を理解し、共感する力の大切さです。人間関係の複雑さや、それぞれのキャラクターが抱える葛藤や痛みを描くことで、私たち読者も自分の経験を重ね合わせて深く考えさせられる瞬間がありました。これが小説の持つ本来の力であり、だからこそ私はこの読書体験を「最高」と感じることができたのだと思います。
最後に、この作品に出会えたことに感謝し、今後も様々なジャンルの本に挑戦していきたいという思いを強くしました。読書を通じて、新しい視点や考え方に触れることができる喜びを再確認し、今後も多くの本との出会いを楽しみにしています。 -
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ものすごく良かった。
上巻からの仕込みが期待以上に炸裂していて大満足の下巻。
私がキングに望むのはこういうの。
とてつもなくおぞましく、でもその根底に流れるのは物悲しさとせつなさ。狂気に満ちた愛も。
冒頭の献辞。そうそうたるホラー作家たちの名前が連ねられてるのも、読み終わって納得できる。
特に私が本作で感じたのはメアリー・シェリーとラヴクラフト。ラヴクラフトはそのまんま。キングお得意の虚実織り交ぜテクニック。
メアリー・シェリーについてはフランケンシュタインのオマージュで溢れかえっていると思う。過去の異端発明家たちからの影響を受ける牧師がそのまんまフランケンシュタインと重なる。取り扱うのが電気である点も。
ただ、キングがすごいのはそこからの展開。単なる真似事以上の世界に連れて行ってくれるのだ。
エピローグにいたってはそれだけで一冊できるほどの濃厚さ。
調べたわけではないので違うかもしれないけど、ダークタワーシリーズの一部にあたるように思う。
もちろんシリーズ未読でも問題なく楽しめる。 -
Posted by ブクログ
(上下合わせた全編の感想です)
▼好みでした。分量あるのに、読み終わりたくないような。スティーブン・キング76歳、凄いです。エンタメ力が凄いのに、そこに皮肉と人間ドラマが濃厚。
▼ビリー・サマーズという名の、40代くらいの職業的殺し屋がいます。主にいわゆる犯罪組織の親玉などに雇われています。凄腕の射撃手であるらしい。そして、ぼちぼち引退を考えている。このビリーが巨額報酬の狙撃を依頼されるところから始まります。これを最後に引退したい。ラスト・ジョブ・ストーリー。冒頭からダレ場無し。
▼今回の仕事は、標的は犯罪者。逮捕され裁判を迎える犯罪者。だがとある大物にとって、法廷で言われたら困ることがある。なので、出廷時に狙撃して欲しい。ただ、それは1か月後か、3か月後か、分からない。
▼その法廷の出入り口が、ばっちり見える高層ビル。いわゆるオフィスビル。その中の、「最高の位置」の部屋をビリーは借りることになる。借りる名義は偽名で、「小説家デビューしようとしている作家が、出版エージェントに言われて、缶詰になって仕事するために数か月ここを借りた」という設定になる。
▼もともとビリーは、文学好きなのだ。ただ、裏社会では「文学好き」なことは隠している。ひょんなことから「小説家」の設定に身をやつした。ついつい、パソコンに、自伝的小説を書き始める・・・。
▼ビリーは貧しい家庭の出身。残酷な義父。孤児院行き。海兵隊志願。中東で狙撃兵・・・というキャリア。その精神的風景が描かれる。
▼そして、とうとう狙撃の日が来る。ビリーは、狙撃後に準備された「逃走ルート」に疑念を持っている。だが、仕事は仕事。狙撃・・・そして逃走・・・。
と、ここまでで、前半が終わってないくらい。
ここから後半、とある少女との出会い、触れ合いと交流が、急旋回主題になって来るんですが、決して無理に紡いだわけではなく。全体に「なるほど」と思わせる構成になっています。
▼特に、ビリーが少女に自作の小説を読まれる、読ませるくだり。そのどきどき感。高揚感。
▼読んでいくうちに、職業的暗殺者のビリーにどんどんどんどん、とめどなく感情移入してしまいます。この力業ったら、すごいですね。脱帽です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ上巻ではあらすじ以上の事は起こらないのに面白い。
ビリーのなりすまし生活が図らずも、尊いものになってしまい、この仕事を受けたことすら後悔し出すのが可笑しくも愛おしい。
ビリーの人となりは悪人以外殺さない信条とか、一般人に向ける優しい目からも分かる通り善の人だし、後半で隣人家族の娘から貰った愛溢れる絵を捨てずにお守りみたいに大切にする所も微笑ましい。
そんなビリーがどうして暗殺稼業をしているのかを小説にして書いていき、間に作中作として読みながらビリーの過去を知れるという作りになってる。上巻では子供時代までだから核心に迫るような話まではいかないし、暗殺の方も成功するけど一筋縄ではいかないしとまだまだ楽しくなりそう。評判通りの面白さ。
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Posted by ブクログ
一気読み…
残念ながら、我らのバァァビィーは活躍できなかったけど(囚われてるので)、相変わらず檻の中でも生存のために手段を選ばないところがかっこよかった。ベタ褒め。
街のマトモな人たちが少しずつ少しずつ、集まりはじめて、対ビッグジム勢力になりつつある。嬉しい反面、やっぱりいつか誰かが死ぬことになるのかと怯えながら読む。秘密の集会と、バービーたちの救出。うまくいくのか? 痛手を負わずに?ハラハラ。ドキドキ。
私も異常事態になった時、できればまともな方に入っていたい…自分を恥じることがないように。
それにしてもラスティ!
のこのこと…たった1人でビッグジムのとこ行くなんて、お前はバカか!と言いたい笑笑 ここで殺されてしまうのかと、もう読んでいられなくて一回本を閉じちゃった笑
え、今思ったけど、ドラマで死んでしまった人たちは死亡確定なのだろうか…?
ジュニアは哀れすぎて見ていられない。脳腫瘍が悪化して死を待つのみ。行動が読めず恐ろしい。
バービィが留置所で銃を突きつけられて冷や汗かく場面がよかった(Sっ気)。
leather heads、この正体は明らかになるのか?
シェフがサマンサをきちんと迎えに行って埋葬するのも良かった。
パイパー牧師が意外と内に熱を秘めた女性だった。
ラスト1冊だ!
ドラマ版での「繭の中で仮想現実を見て現実とごっちゃごちゃになる編」があったんだけどあれはオリジナルかな…?
終幕がたのしみ!
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Posted by ブクログ
物書きを目指す人には是非読んで欲しい一冊。キングの生い立ちから、文法や会話文やテンポ、推敲の仕方などの小説作法が丁寧に書かれている。小説の書き方がメインだが、エッセイとかノンフィクションなど書くこと全般に生かせるアドバイスも沢山ある。自分も物書きを目指しているから、これから何度も見返そうと思う。文章自体も堅苦しくなくユーモアがあって読みやすかった。
キングの幼少期から作家として売れるまでの半生は凄く苦労が伝わってきた。トレーラーハウスの洗濯室の机で執筆していたことや教師をしながら小説を書いていたこと。才能に加えてこのストイックさがアーティストには必須なんだなと思った。ここでの沢山の体験や出会いが小説の設定や人物造形(キャリーとか)に生かされていて、苦労も含め、若いうちに色々な世界を見なければな、と感じた。ものを書くためには、沢山読み、沢山書くこと。文法などの勉強や読書などのインプットと荒削りでもいいから実際に書いてみるアウトプットの両方が大事。早速実践したい。 -
Posted by ブクログ
読書備忘録820号(下巻)。
★★★★★。
稀代のストーリーテラー!さすがキング!という感じでした。今回はネタバレ感強めです。
冒頭、翻訳物によくある巻頭。
「全米では毎年80万人の子供たちが行方不明になり、大半は戻ってくるが数千人単位の児童は行方不明のままである」と挨拶文が。ということは怪しい誘拐ものか!とゾクゾク感半端ない!
そして、物語は始まる。
フロリダからニューヨークへ向かう飛行機に乗るおっさんの話。ん? 誘拐は?笑
おっさんの名前はティム・ジェイミースン。
飛行機は満席。どうしても乗りたいお偉いさんがいて、席を譲ってくれたら相応の謝礼をすると。
ティムは2000ドルで席を譲った。
そして、ヒッチハイクで北を目指す・・・。
ニューヨークの影も形も見えてこないサウスキャロライナ州の小さな町。デュプレイ。
どうやらティムはフロリダで警官だった。で、職を失った。そして、デュプレイで警官として採用にこぎ着けそうだった・・・。
なるほど。キングのストーリーでは後半にすさまじい戦いになるが、この町が主戦場になるのでしょう!と想像して読み進む!
次の章。時はちょっと遡り舞台はミネソタ州ミネアポリス。
12歳の天才少年ルーク・エリスがいた。地域の特待生だけが通う学校の生徒だったが、その学校の教育プログラムでもルークの能力に対応できない。
そうなったら飛び級で大学だ!MITの選抜試験をパスし、さあいよいよ12歳の一人暮らしとなる予定だったエリス家を不幸が襲う。夜中に何者かが侵入し、両親を射殺。ルークを拉致して連れ去る!やっぱり誘拐だ!
連れ去られた先は<研究所>なる施設。
どうやらメイン州の森の中にある模様。
そこは超能力の片鱗を持つ子供たちを拉致して、ある行為を秘密裏に実行している組織の施設だった。
超能力はテレキネシス(TK)とテレパシー(TP)。ルークにはTKの素養があった。
その施設ではフロントハーフというエリアで、子供たちの能力を更に増強するための薬物投与や身体的な虐待を繰り返していた。
そして能力が増強された子供たちはバックハーフと呼ばれるエリアに閉じ込まれ、二度と戻ってこなかった・・・。
ルークはフロントハーフで、カリーシャという16歳の黒人少女に一目ぼれ。ニックという18歳の兄貴分に憧れ。とんでもないTP能力を持つ10歳のエイヴァリーを可愛がる。
そして、ずば抜けた知性を持つルークは、この施設からの逃亡とこの施設ひいては影の組織の破壊を目論む!
手始めに、ルークは個人的な問題を抱えていた施設の掃除婦モーリーンを助け信頼関係を築く。モーリーンから施設外の逃走ルートを教わる。そして脱出そのものはエイヴァリー達とTPを使ったコミュニケーションで計画を進める。
そして逃亡!GPSを埋め込まれた耳たぶを自ら千切り、野山を駆け抜け、川をボートで下り、フロリダ行きの貨物列車に潜り込む。そして、ほうほうの体でたどり着いたデュプレイ!ここまでが上巻!
施設での非人道的な薬物投与と身体への虐待の数々。施設の残虐非道なくそクズな大人達。その苦痛の中で心を通わせていく子供たちの物語。
上巻から引き込まれました!
しかし、やはりキング作品は後半が命!下巻!
ルークとティムが出会う!
組織の追手がすでにデュプレイに!一気に盛り上がります!
物語は、ルーク&ティムの視点、施設くそクズ連中の視点、まだ施設のダークハーフエリアに捉えられていて命が風前の灯となっているルークの盟友エスパー少年少女たちの視点でシーンチェンジしながら目まぐるしく展開していく。目が離せなくなる!
ここから先、空前絶後のクライマックスに向けて備忘録不要だと勝手に判断!
ルーク&ティムが勝利するに決まっていますからね!でも犠牲が半端ない。これは悲しい!
そして最終章。
この悪の施設と組織が担ってきたミッションは世界平和の維持。その為に子供たちを犠牲にしてきた。
その施設と活動が失われた先の世界の在り様。作者キングの気持ちが深く練り込まれた最終章でした。
キングの思い「大きな出来事でも、動きの軸になるのは小さな蝶番だ」ということですね。
シャイニング、ファイアスターター、デッド・ゾーン的超能力ストーリーと、少年少女が一致団結して巨悪を倒すIT(イット)的ストーリーのミックス!
堪能しました!
そして、忘れずに上下巻の並びを調整しました。一枚の絵になるように。