スティーヴン・キングのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
キングの中編集。二編が収録。
『ハリガンさんの電話』は、ちょっとヘンクツな金持ちのおじいさんと9歳の少年クレイグの交流の物語。
前半はおじいさんとの交流。後半からちょっと不穏な雰囲気に。
ハリガンさんは引退した大金持ち。ふとしたことで気に入られたクレイグは、ハリガンさんに本を読み聞かせるバイトを提示され、交流がはじまります。
ヘンクツながら律儀なハリガンさんは祝日にはメッセージと福引のようなくじをくれるんですね。金持ちなんだから、現金をプレゼントしてくれてもいいのに、なんて父親は言ったものですが、あるときその福引でけっこうな金額があたり、そのお金でクレイグはハリガンさんに出たばかりのiPhoneをプレゼントします。
テレビやインターネット、デジタル機器は人を奴隷にする、と忌避していたハリガンさんですが、それが自身の株取引に大きな力となると知り、クレイグに感謝して使うようになりました。
その後、ハリガンさんは亡くなり、クレイグはこっそりハリガンさんの棺にそのiPhoneを忍び込ませます。
寂しさと、自分に起こったちょっとしたトラブルの憂さ晴らしにハリガンさんに電話します。
電話がつながるわけがない、とは知りながら・・・
でも、電話はかかり、ハリガンさんの留守電メッセージが聴こえてくる。想いがこみ上げ、電話に向かって自分のトラブルについて語るクレイグ。
そしてそれからしばらくして、クレイグは自分のトラブルのもとが「排除」されたのを知りました。
前半のあったかい交流に対して、後半のやや不穏な雰囲気。
なんとも引き込まれました。
物語の結末も、このままイッたらまずいよね、というところでとめられていて、余韻もよかったです。
もうちょっとイっちゃってたら、ハートウォーミングなキングではなく、怖い方のキングになっていたでしょうね。
もう一篇が、表題作となっている『チャックの数奇な人生』
『サンキュー チャック』という映画になった『チャックの数奇な人生』というお話は、読後、これをどういう映画にしたんだろう、と、ちょっと頭がぐるぐるしました。
小説がつまらなかったわけでは、ありません。
これが映画として、一本筋のとおった物語になるのか、というあたりの見当がつかなかったからです。
これがどういうお話だったのか。
それはもちろん、ご興味のある方は、読んでみてくださいね♡としか、言いようがありません。
ただ、まぁ私なりの読んだ印象を言えば、
人が一人、死を迎えるというのは、ひとつの世界が終局を迎えるくらいに大きなことなんだよね。
その人には、その人の、平凡かもしれないけど、その人なりの充実した時間があったんだよね。
さらには、実はその中に少し不思議なスパイスもあったかも。
なんて、展開に思えました。
まったく説明にはなってませんが。
ただ、スティーブン・キングという作家さんは、とにかく怒涛のように言葉を重ね、物語を紡ぐ人だというイメージはあります。
その中で、ひょっとしたら、誰か親しい人の死に出会ったんだろうか。
キングも、そこそこのお歳ですから、それはあるでしょう。
そのとき、ふと脳裏をよぎった感覚から、ここまでのお話に膨らませた。
そんなふうに思いました。
本書は、『イフ イット ブリーズ』という4編からなる中編集のうち2作を収録したものです。
のこり二篇も、翻訳されているので、そちらも近いうちに読みたいと思います。 -
Posted by ブクログ
★4.5
なかなかの分厚さで時間かかったけど、読んで良かった。
ビリーをはじめとした登場人物が魅力的すぎる。
ただ、前半と後半(アリスが登場してから)では別の話か?!ってくらい展開が変わり、そして全編が長い。普通?はひとりぼっちの男が一人の女性と出逢い、交流を深め、ラストを迎える、なんだろうけど、ひとりぼっちパートや交流部分だけでも独立した本ができそうなくらい長い!
けどそこはキングだからダレないんだよねー。
作中作にも胸が締め付けられた。そして、その作中作の仕組みを効かせたラストがすごく良い。結末はともかくとして、最後の仕事は綺麗にまとまりすぎたかなと思ったけど、それで良かった。ほっとした。
あと、シャイニングを思わせるくだり、わたしがコロラド州ってどこにあって、どれたけの広さで、あそことあそこの街はどんな位置関係でーっていうのがぱっと浮かんだら、もっと楽しめるんだろうな。教養ってそういうのを言うのかな、と考えたりした。
怖くないキングも、よいっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公ホリーが振り返る過去の事件が何だか聞いたことあって、確認したらやっぱりそうだった。
『ミスター・メルセデス』のシリーズ物だった。
しかも間にもうひと事件ありそうな感じ。
あれは何か合わなくて辛めの評価になったんだよなーと警戒しつつも、やっぱり稀代のストーリーテラーのお話ぶりは面白い。
学校に届けられた、クリスマスプレゼントを装う爆弾。
悲劇を報道するリポーターの顔と、監視カメラの映像に映った犯人の顔にホリーは違和感を抱く。
よく見れば明らかに別人なのにどうしても気になる類似点が。
中盤に入り思いもよらぬホラーというかSFっぽい展開になってからが、もし警察による爆弾犯の追跡という王道路線を期待していたらあれってなるかもだけど、語りとしてはむしろさすが著者の真骨頂、不気味に描かれる「邪悪さ」に震える。
勇敢と無謀を取り違えているようなホリーの立ち振る舞いや、終盤のお決まりのような「対決」は予定調和に感じ、自分はこの辺のキングの落としの部分は合わないなーと感じた。
むしろよくわからない匂わせ終結の方が好みだったりするかもと思い至る。
『チャックの数奇な人生〜イフ・イット・ブリーズ〜』との関係がよく分かっていなかったけど、元は同じ短中編集だったのを日本版は分冊化して出版した模様。
本書の方に収録されていたもう一つの短編「ラット」はキング版小川哲の頭ん中みたいな感じで最後まで面白かった。 -
Posted by ブクログ
これは、なんなんだ?と読み進めた珍しいパターン。
スティーヴン・キング/著、だけで期待か大きくなる。
大好きな『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』永遠の名作映画の原作者。
母を亡くした主人公チャーリー少年と父の家族の話?
近所の一人暮らし老人と愛犬。ここからどうやって[フェアリー]なストーリーになるのか?
愛犬レイダーと(実は大金持ちの)老人は、次第にチャーリーに心を開いてゆく。
分厚い上巻の後半に、フェアリーではなくミステリーの要素が強くなる。そこから加速的に想像を超えるファンタジーの世界に入り込む。
その中でも、少年らしい暴言と、容姿美しいお姫様へのトキメキと、グロいと思われるドロドロとした描写が見えるのが混ぜこぜなのが著者らしくて楽しい。
全巻に散りばめられいるのはさまざまお伽話昔話ミステリーファンタジーSF コメディ、の本と映画の抜粋。
「みなさんお待ちかねのハッピーエンドだ。」とチャーリーに言わせた309頁
やはり著者もハッピーエンドがお好きな様だ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ先に「もし血が流れれば」を購入しており、購入後に「イフ・イット・ブリーズ」が全4タイトルからなる中編小説集だと知って慌てて前編となる本書を購入した。
スティーヴン・キング作品を読むのは初めてだったのだが、とてもおもしろく読めた。
「ハリガンさんの電話」も「チャックの数奇な運命」も、世界を救ったり不思議な冒険をしたりするような物語ではなく、あくまで普通の、探せばどこかにあるような誰かの人生の欠片を覗き見ている、そんな雰囲気の作品で読後感がすごく良かった(「ハリガン〜」は少しホラーテイストで非日常感があったけれど)。
「ハリガンさんの電話」で、主人公が嫌いな人が死ぬようにハリガンに電話をかけるシーンがあるのだが、最終的に「ハリガンさんはああいう奴が嫌いだからこの行為に喜んで協力してくれるはず。」といったマインドになっていたのが少し怖かった。主人公とハリガンは友人でプライベートな部分を良く知っていたかもしれないが、亡くなって何年も経っていて声すらあまり思い出せなくなっている相手の思想を自分の都合で捻じ曲げて自身を納得させているよう見えた。
「チャックの数奇な運命」を読んだ時、死の間際で五感のうちに1番最後まで機能しているは聴力だというのを思い出した。
死の直前、チャックが最後に取り込んだ外界からの情報がチャックの中の世界で大々的に取り上げられたのかな?と思った。だとしたら最後に聞いた言葉が「ありがとう」なのは素敵な事だなと感じた。
2026年10月1日:追記
映画「ハリガン氏の電話」を観てきた。小説を読んだ時にすくい上げられていなかったシーンや、自分とは違う解釈をしたシーンなど、とてもおもしろい映画だった。映画を見て「ハリガンさんの電話」が更に好きになってしまった。 -
Posted by ブクログ
キングの子供が主人公の作品は割とハズレなしな気がする。
死者が見える少年が主人公で、死者たちは本当のことしか話さないという設定で、少年が死者たちを通して様々な経験をして成長していくお話
死者と話せると言う設定を使って、ヒューマンドラマっぽかったり、ミステリーだったり、色々なパターンのエピソードが描かれるのが面白かった。
そして、一番ラストにとんでもないホラー展開が待ち受けていて、少年が否応なしに大人の対応を身につけることになるのが切なかった。何よりも怖いのは「真実」そのもので、一度知ってしまうともう元の日常には戻れない。
映像化したら面白そうだなと思って読んでたけど、このラストだと難しそうだな。 -
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友人のおすすめで読む。
スティーブン・キングでちゃんと読んだものは5冊ほどしかないが、どれもなかなかに楽しんできた。
その中で、新たに読んだこの一冊が一番好きかもしれない。
タイトル通り、書くことについてのエッセイである。
自伝であり、けっこう本格的な文章講座であるが、一番大切なのは、キングが、あなたは私のように、書くことを楽しんでいい、と強く叫んでいることだ。
読みながら、このシニカルでユーモアがあって、厳しく優しく、たくましく、最後には本当に愛があるこの本はまさにスティーブン・キングの作る世界そのものだなと思った。
子供時代の話はめちゃくちゃ笑えるし、本当にこの人って、作品そのまんまの人なんだなあと思った。
子供のころ、はじめて自分で真似ではなく書いたウサギの小説を母が面白がってお金を出して買ってくれたときの喜び、簡潔だけどとても素晴らしいシーンで、この部分だけでジワーっと心が温かくなった。
このお母さんのおかげで、私たちは素晴らしい作品を読めたのだから、この今は亡きご母堂にありがとうとお伝えしたいところだ。
ラストは例の大きな事故にあった時の話。
これがまあ、本当にドラマチックだし、私の作品に出てくるような人間に車で轢かれた、というフレーズにも笑ってしまった。
カムバックしたことは本当に奇跡だが、その裏にどれほどの努力と強い精神があったか。
スティーブン・キングはまさに巨人である。
難点が一つあるとすれば、読後もこの口調がうつって、なかなか抜けないことですかね。 -
Posted by ブクログ
ノースカロライナにある遊園地「ジョイランド」を舞台に、
21歳のぼく(デヴィン)が経験する青春の日々と、ミステリー。
スタンド・バイ・ミーのような青春パートと、シャイニングの「輝き」を
彷彿させるような力を借り、とある殺人事件の謎解きをするミステリパートが、
舞台は同じとはいえ分離されているのでどちらも中途半端っちゃー中途半端
なんだけど、それでもやはりキングの描く青春の煌めきやせつなさは圧倒的で、
胸がぎゅっとなる。
個人的にはタイトルがいまいちかも...
と考えてみたけど、
「観覧車の天辺」
「着ぐるみを脱いだら」
うん、センス無かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレキング小説を読んでいるときに、なぜか応援されている気持ちになることがある。まあ、「ペットセメタリー」や「クージョ」なんかを読み終わったときには、勿論そんな気分にはならない。だけれど、「IT」「スタンド・バイ・ミー」「ジョイランド」等の、一番キラキラしている部分……、友情を確かめ合ったり、力を合わせて危機を乗り越えたり、愛する人と踊ったりする場面には、人間の朗らかで透きとおった部分が、読んでいる自分にもあるのだと、背中を押されているような気持ちになる。
(そして、そこから奈落に真っ逆さまになるのが、キング小説の良いところでもある…)
「書くことについて」を読んだときにも、そんなキングのあたたかい応援、そして懐深さを感じた。しかしさすがキングというべきか、これは創作論というより自伝。語り口が面白く、まったく堅苦しくないし説教じみてもいない。
この本を要約すれば、小説家を目指すならばたくさん読んでたくさん書くこと。そして彼の言うところの「テレパシー」を信じること。それを磨いたホラーの帝王の念波は、海を越えて時代を隔てた私にも、たしかに届いている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレバビノーの身体に乗り移ったブレイディが起こすゲームマシンを使った自殺煽動。物語は完全にホラーへと転調し、クライマックスの絶体絶命の状況と一発逆転のカタルシスはまさにキングのお家芸である。ホッジズの脾臓癌はより深刻なレベルに達しており、その痛みは作中を貫いて行動に制限をかけているが、その痛みに堪えて進むあたりが第一作のハードボイルド路線の名残を感じさせる。メルセデスキラーで多数の人間を轢殺した男が、最後雪上車で胴体を踏み潰されるというのも皮肉的なオチであり、手堅く纏めた印象こそあるものの、とにかくキング濃度が高い作品だった。
それと同時に本作は探偵ホリー・ギブニーのオリジンを締め括る話であり、葬儀で見出された駆け出しの探偵が、最終的にホッジズの葬儀で一人前になるというのはとても良かった。精神疾患を抱え、年齢にしては精神は幼く、外の世界への恐怖はあれど、正義感は忘れない。持ち前の強迫神経症を推理に転用する設定といい、ホッジズ三部作はホリー・ギブニーの物語と言っても過言ではないと思う。
余談だが、巻末に現実の自殺事件について書かれたキングの言葉が素晴らしい。
「なぜなら、物事には好転する可能性があり、あなたが機会さえ与えるなら、それはかならず好転するからだ」
これが一番胸を打ったセリフである。任務の終わり——エンドオブウォッチ。三部作ラストに相応しい作品だった。