あらすじ
作家デビュー50周年記念刊行、文庫オリジナル長篇!
この小説は、「ぼく」ことジェイミーの回想記であり、そしてこれはホラーストーリーだ。
そう、だってぼくには死者が見える――。
「死人の霊が見える」という、古典的とさえ言える設定。
それがキング流に調理されると、他の何者とも違うユニークな物語が立ち上がる。
ジェイミー少年は、ものごころついた頃から死者が見えていた。死者の世界にはいくつかの決まりがあるようだった。
死者は死ぬとすぐ、死を迎えた場所の近くに、死んだときの姿で現れる。
長くても数日で、だんだん薄れていって消える。
普通の生者にはぼんやり存在が感知される程度だが、ジェイミーだけは会話を交わせる。
そして、死者は嘘をつけない。
文芸エージェントの母。若年性認知症を発症した伯父。
母の親友のタフな女性刑事。同じアパートの引退した名誉教授。
母のクライアントの売れっ子作家。警察をあざ笑う連続爆弾魔……。
ジェイミーはその能力ゆえに周囲の人々の思惑にたびたび振り回され、奇妙な目にあいながら、どうにか成長していく。
しかしある事件をきっかけに、いよいよ奇怪な事象が彼本人の身に降りかかってくるのだった――。
少年の成長物語を書かせれば天下一品、そして言わずもがなのホラーの帝王が、両者を組み合わせた「青春ホラーストーリー」。これが面白くないはずがない。
最後の最後まで驚きを仕込んできて読者を油断させてくれず、自身の代表作のある「ネタ」をからめてくるファンサービスも怠りなし。
どこを切ってもキングという円熟の筆で心おきなく楽しませてくれる、記念刊行にふさわしい逸品!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
おもしろかった!ジュブナイル小説でありながら、しっかり重厚感のある物語だった。かといって決して語り口が重くないところがさすがだなと。ミステリーであり、ホラーであり、ヒューマンストーリーであり、さまざまな表情をもつ小説だった。
Posted by ブクログ
岡田斗司夫さんの読書特集で紹介されていたこの小説、普段あまり小説を読むことのない私にとっては、新たな読書の扉を開くきっかけとなりました。物語の魅力に引き込まれ、気づけば最後まで一気に読み切ってしまったほどです。小説が持つ物語の力、キャラクターの魅力、そしてその先に広がる深いテーマについて考えさせられる素晴らしい作品でした。
この本を読んで特に感じたのは、物語の緊張感とスピード感です。作者の筆致は非常に巧みで、グロテスクな描写や複雑なテーマにもかかわらず、全体のテンポが絶妙に保たれています。そのため、一瞬たりとも飽きることなく、ページをめくる手が止まりませんでした。映像化を望む気持ちもわかりますが、描かれているシーンの中にはかなり衝撃的なものもあり、映像化には確かに挑戦が必要だと感じます。
特に、この作品の中で扱われるレズビアンの関係や近親相姦という難しいテーマは、読む者にとっての挑戦でもあります。これらのテーマは一般的には避けられがちですが、作者はそれらをあえて取り上げ、人間関係の複雑さや個々の登場人物が抱える葛藤を描くことで、物語に深みを与えています。単なるエンターテインメントの枠を超え、人間の本質に迫るような問いかけが随所に感じられました。こうした重いテーマをどう受け止めるかは読者に委ねられていますが、私にとっては、考えるきっかけとなる貴重な体験でした。
集中して読めたこの読書体験は、私にとって最高のものでした。小説の力強さを改めて実感し、言葉が持つ魅力に引き込まれました。普段、小説を読むことが少ない私にとって、この作品との出会いは大きな刺激となり、もっと多くの本を手に取ってみようという気持ちになりました。読むことで新たな世界が広がり、これまで知らなかった感情や思考に触れることができるということを、この作品は教えてくれました。
また、この作品を通じて感じたのは、物語を通じて他者の視点を理解し、共感する力の大切さです。人間関係の複雑さや、それぞれのキャラクターが抱える葛藤や痛みを描くことで、私たち読者も自分の経験を重ね合わせて深く考えさせられる瞬間がありました。これが小説の持つ本来の力であり、だからこそ私はこの読書体験を「最高」と感じることができたのだと思います。
最後に、この作品に出会えたことに感謝し、今後も様々なジャンルの本に挑戦していきたいという思いを強くしました。読書を通じて、新しい視点や考え方に触れることができる喜びを再確認し、今後も多くの本との出会いを楽しみにしています。
少年の情緒が感性豊かに描かれ、懐かしいような優しい作品でした。
年々高密化し、緻密になってゆくキングの作品ですが、この作品には、キラキラ輝く穏やかな波の満ち引きを眺めているような、繊細な揺らぎがありました。
でもやっぱり「言ったように、これはホラーストーリーだ」ですね。
Posted by ブクログ
久しぶりに徹夜して一気読みしたいと思うキング作品だった。若い頃のような無茶はできないので一気読みはしなかったけど。
やっぱりキングは中編がいいね。この頁数だと一般的には長編の部類に入るだろうけどキングだと中編の感覚。
キング中編は過不足なく濃密な読み応えの作品であることが多く、ファンとしては横道にそれてくどい部分がないのが物足りなくもあるジレンマ。
本作はいつもの翻訳者の方ではないので、言葉選びや文章の組み立てに少し違和感を覚える。違う作家、キングなのにちょっと別のキングのような。ジョイランドの時もそうだった。
読み進めるうちにそれはほぼ解消される。
おそらく原文そのまんまな翻訳は好みが分かれるかもしれない。日本人に理解しやすいような独自のアレンジめいた翻訳ではない。翻訳者にも個性があるからどちらがどうというのは特にないけど。
これもダークタワーワールドの一つの世界と思えば面白いかも。
内容は純然たるホラー、スーパーナチュラル、しかも古典的とも言える幽霊もの。
自分だけが死者が見えるという、あらゆる分野で手垢にまみれたジャンルなのに、キングの手にかかれば驚くほど読者を惹き付ける。どんな料理も料理人次第なのだ。
中盤までは圧倒的に私が好きなキング展開で、その後徐々に失速(あくまで私の中で)、最近のキング作品のテイストに収束していった。もっとお下劣なのがいいんだー!もうそういうの書かないのかキングさん。
クライマックスがびっくりするほど地味で爆発力もない。徐々に登っていく感覚もなかったな。
全体的に物悲しさやせつなさは少ない。それでも不気味な空気感はずーっとまとわりついたまま走りきったのは素晴らしかった。
あとであれこれ考えを巡らせて薄ら寒くなる。見事なタイトル(原題)だ。
キングの少年ものにハズレなし。
Posted by ブクログ
怖いだけじゃなくて、ちゃんと人間の深くまで描いているのが好き。重量のあるストーリー描けるのいいなぁ
怖さも、小説の怖さを感じられる、映像とは違うゾクゾクする感じ。安定だと思います。
Posted by ブクログ
読みやすい、ちょうど良い長さ、初級編スティーブンキングという感想。
霊が見える(しかも話せる)少年が主人公。
とある老人の亡くなった奥さんから指輪のありかを聞いたり急死した小説家から続編のストーリーを聞き出すところはコミカルで楽しい。(こんな能力欲しいなーと呑気に思ってしまう)
ただ、おとなしく優しい(?)霊ばかりではなく、ある爆弾殺人鬼の霊に生前に仕掛けた爆弾の在処を聞き出したところから平和が崩れ始め、、、
ストーリーは流石のスティーブンキングでスラスラ読める。テンポも良い。
主人公と母親が健気に生きている描写に感動しながら読んでいたのに最後のオチが1番ホラーだった。
Posted by ブクログ
死者の声が聞こえたら‥最初は伝えられなかった思いを伝えられる良い話かと思いきや、そこはキング。人間の悪意がしっかり絡んだ少年の成長物語になりました。初期の化物系ホラーも好きだけど、後期のしんみりしたホラーもなんだかんだすきだなぁ。
Posted by ブクログ
まあいつものキング作品、って言ってしまえば簡単なんですけどやはり面白いです。
主人公が回想しながら語る作りなので全編気持ちに余裕のある物語だった印象です。
といいつつ主人公母親の元恋人の悪徳警官や爆弾魔のくだりは流石にキング、肝を冷やす、嫌な気持ちにさせる描写が上手いと思いました。
全体的には怪談のような雰囲気でした。
Posted by ブクログ
面白かった。するする読めた。期待以上。
死者が見える少年というと「シックスセンス」だが、ブルース・ウィリスはいない。アルツハイマーを患った伯父や隣家の大学教授はいる。
初めて死者を見たと認識したシチュエーションは、映画のシックスセンスの感動的シーンをモチーフにしている気がする。似ている。
リズが抱えている問題が現代アメリカっぽくて、まんま。リーマンショック前後と麻薬依存の話。
結局、爆弾魔だったセリオーは教授いわく外から来たものらしいが、クトゥルフ案件?キングユニバースのダークゾーン案件?
撃退の魔法の言葉は「あとで(later)」ってことかな。ジェイミーが死んだ後にという。これ、結局魂は取られちゃうのか、ジェイミー自体は気にしてないのか。
あと父親の正体がやばいな。伯父か。キングで近親相姦の話って今まで出てたっけ?ゲースロに影響された?
この話もキングのいつも通りの老人と少年と中年キャラで固められていた。隣家の教授、母親、ジェイミー。
リズが厄介すぎる。
死者の描写は面白かった。すんなり、ああ死んだ人間と会話してるんだなっていうテンションになれる。嘘をつかないが、拒否してくるのも面白い。変化してしまったセリオーは嘘をついてきたが。
感動的なところはあまり無くて、死者に質問してやぶ蛇つついたって感じ。
Posted by ブクログ
タイトル「死者は嘘をつかない」が大きな意味を持ってる。ミスター・バーケットな存在が救いだったが、あまりに短かった。最後父親が判明してあまりのことに愕然とした。これからの人生であの得体の知れないものとの邂逅が訪れるかもしれない可能性を匂わせて終わるの嫌いじゃない。
Posted by ブクログ
死者が見えてしまう少年の成長記録… シックスセンスばりのホラー&エンタメ #死者は噓をつかない
■きっと読みたくなるレビュー
エンタメ書かせたらマジで世界一すね。さすがスティーブンキング。
序盤に興味を持たせて、中盤でのエピソードで徐々に盛り上げる。後半は緊張感とボルテージアゲアゲでラストまで一気に読ませちゃう。それにも関わらず、訴えかけるテーマは深く心に残るんですよね。
また読んでると自然に映像が浮かんでくるんすよ。一人称視点での語り口調が絶妙で、かつて自分が書いた日記を読んでいるみたいなんです。
しかも読者を楽しませるため、嫌味がない程度に既存映画などのエピソードやセリフなんかを入れてくる。道具に使い方も上手だし、章立ても短めでテンポがいい。ホント映画を見てるみたい。
さて本作はホラーではあるのですが、サスペンス要素もかなり強め。油断して読んでると、えっーーという展開が待ってたりするのでご注意を。
本作の一番の強みは、やっぱり主人公のジェイミーですね、かわちい。何故だか分かんないけど、持ってしまった能力を忌み嫌いながらも向き合っていく姿に胸打たれるんすよ。子どもの成長していくってのはいいもんすよね。
それに引き換え、子どもにすら甘える大人の屑っぷりに腹が立って仕方がない!誰しも様々な事情がある、もちろん頼りたくないというのはよくわかる。でもそこは大人としてのプライドでやってはダメなことでしょ!何度も叫んでしまいました。まったくもう。
終盤にかけて物語は加速していく。間違いなく手に合わせ握る展開、そして結末は…キング作品ですが、あっという間に読めてしまう短い作品。それなのに、しっかりと世界のエンタメを楽しめるんです。いつも分厚い本と敬遠している方にもオススメですよ!
■ぜっさん推しポイント
子どもが主人公の物語を読むと、いつもわが身のことを反省させられるんです。本作のバーケット教授はいい人だったなぁ… ちゃんと子どもの話を聞いて、誠実に向き合ってあげるんです。この当たり前のことが自身の子どもでもなかなかできないんですよ。
仕事、時間、経済的なことに追われる毎日で、つい後回しにしがち。親子の会話って大事だなぁと切に思ったのでした。
Posted by ブクログ
キング健在!アピールしているよう。一時期は不安な作品があったが(私個人の感想)作品のままに蘇ったよう。霊が見えるって、こういうことなんよって、先に読んだ作品に言いたい。まじでもっと作品を読ませて欲しい。
Posted by ブクログ
キングデビュー50周年で最近キング祭。
死者が見える少年、死者は嘘が言えません。そのルールのため事件に巻き込まれピンチに陥る少年。短いので展開早かったけど、後半ドキドキした。
いつも長編すぎてちょっと小粒感、でも楽しめました!
Posted by ブクログ
読み終わるまで本当に時間がかかりました。(物理です、つまり積ん読の中に入ってしまい行方不明だった)
幽霊が見えて、話をすることができるジェイミー少年が青年になって子どもの頃を回想するというキングお得意のスタイルのホラー小説です。
その能力でいろいろ大変な目にもあっているのですが、ある出来事に巻き込まれてしまって、そこから、どうしてこうなってしまった! というジョットコースターの乗せられてしまったように物語が動いていきます。
私はキング大好きですし、今回も面白かった! と満足ですがラストの不穏な空気が気になりますかねぇ、くふふ。
Posted by ブクログ
死者が見えて話すことができる少年・ジェイミーの青春ホラー作品。
ジェイミーは様々な出来事に巻き込まれ、最終的に危機的な状況に追い込まれてどうなるのか?という展開はハラハラしながら読みました。
ジェイミーが少年から青年に成長していく課程での葛藤がとても良いです。『大人になるうえで最悪なことは、口を閉ざすことではないか』というセリフがあり、無邪気になんでも話せた幼い頃の自分と、大人になりかけている自分の葛藤を感じる一文でした。
キング作品にしては短いストーリーなので、少し物足りなさを感じましたが、コンパクトにまとまっていて読みやすかったです。
Posted by ブクログ
うーんホラーの帝王にしてはイマイチだったなぁ。若干ホラーの要素はあるけど普通の内容だな。
キングを読んだのはミザリーが最初だったけどいまだそれを超える作品に出会えない。
Posted by ブクログ
70歳を超えてこの軽やかさ。同じ少年ものの『ジョイランド』のような深みはないけど、一気に読ませる筆致(短い章立て)と、章の最後の一言の巧さ、クライマックスの迫力は相変わらず。キング初心者にも大変読みやすいかと。
Posted by ブクログ
久しぶりの翻訳小説だったが、やはり少し読みにくさを感じた。映画を見ているような文章で、映画好きの私はとても楽しめた。終盤のジェイミーが誘拐される展開には恐怖したが、同時にワクワクもした。
Posted by ブクログ
S.キングが楽しんで執筆しているのが伝わってくるような そんな感じ
ジェイミーの語り口に、妙にわくわくさせられてしまうからかもしれない
ホラー要素は少量、うやむやに終わる感もあるけれど嫌いじゃない
セリフに違和感を感じ現実に戻される事は皆無、逆にそのセリフから色々と調べてしまう
4に近い3
Posted by ブクログ
死者の霊が見える少年ジェイミー。死んだ時の姿で現れるからなかなか壮絶だったりするし、危険な方へと導かれていくからどんな恐ろしい結末になるかと期待したけど、特に盛り上がらず。主人公もこれはホラーストーリーであると再三言っていたけどホラーではなかった。驚いたのは、死んだ人は嘘をつけないが故の最後にサラッと明かされる衝撃の真実。
Posted by ブクログ
初スティーブン・キングは邦訳最新作から。死者と会話が出来る子供という設定は決して目新しくないが、今作には【死者は嘘がつけない】という追加要素が加味されており、その設定の妙が物語の牽引力であると同時に、ラストの悲壮的な決意表明に効いてくるし、青年になった主人公が当時を振り返る回顧録というスタイルは、心を落ち着けて作品に没頭出来る不思議な安心感がある。アメリカならではのジョークや固有名詞が頻出するので少々面食らった部分もあれど、今更ながら他の作品も読まなければと思った次第。まずは積読している「ミスト」から…。
Posted by ブクログ
I see dead peopleな少年とシンママの話…といえばあの映画ですが、さすがキング。すらすら読めてキャラに説得力があって、成長を爽やかに描きながら少し恐怖を残したエンディングで。こういうのでいいんだよー、夏は! まあ、これがほかの作家だったら、さっぱりしすぎだろうとか文句をつけそうだがw