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作家デビュー50周年に放つ、至高のクライム・ノヴェル
狙いは決して外さない凄腕の殺し屋、ビリー・サマーズ。依頼人たちには、銃撃しか能がないちょっと抜けた男を装っているが、真の顔はエミール・ゾラを愛読する思慮深い人間であり、標的が悪人である殺ししか請け負わない。
そんなビリーが、引退を決意して「最後の仕事」を受けた。収監されているターゲットを狙撃するには、やつが裁判所へ移送される一瞬を待つしかない。狙撃地点となる街に潜伏するための偽装身分は、なんと小説家。街に溶け込むべくご近所づきあいをし、事務所に通って執筆用パソコンに向かううち、ビリーは本当に小説を書き始めてしまう。
だが、この仕事は何かがおかしい……。ビリーは安全策として、依頼人にも知られぬようさらに別の身分を用意し、奇妙な三重生活をはじめた。そしてついに、運命の実行日が訪れる――。
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Posted by ブクログ
狙いを外さない殺し屋が、悪党だけを始末してきた自分に区切りをつけるため、最後の仕事は“作家”として潜伏する物語です。
原稿用紙に向かううち、過去の戦場や殺しの記憶が物語になって立ち上がり、クライム小説がいつの間にか「書くことで生き直す話」へ変わっていくのがたまらなかったです。
狙撃の緊張と、郊外での地味な生活、偶然出会う他者の痛みが同じ重さで描かれていて、乾いた暴力の匂いと、ふと差し込む優しさの温度差で何度も飲み込まれました。
反面、道中は寄り道も多く、展開が都合よく転がる瞬間もあるし、著者特有の長尺には体力は要りましたし、上巻の前振りの長さに少し退屈さを覚えました。
しかし、下巻での回収は素晴らしく、読む手が止まりませんでした。
Posted by ブクログ
(上下合わせた全編の感想です)
▼好みでした。分量あるのに、読み終わりたくないような。スティーブン・キング76歳、凄いです。エンタメ力が凄いのに、そこに皮肉と人間ドラマが濃厚。
▼ビリー・サマーズという名の、40代くらいの職業的殺し屋がいます。主にいわゆる犯罪組織の親玉などに雇われています。凄腕の射撃手であるらしい。そして、ぼちぼち引退を考えている。このビリーが巨額報酬の狙撃を依頼されるところから始まります。これを最後に引退したい。ラスト・ジョブ・ストーリー。冒頭からダレ場無し。
▼今回の仕事は、標的は犯罪者。逮捕され裁判を迎える犯罪者。だがとある大物にとって、法廷で言われたら困ることがある。なので、出廷時に狙撃して欲しい。ただ、それは1か月後か、3か月後か、分からない。
▼その法廷の出入り口が、ばっちり見える高層ビル。いわゆるオフィスビル。その中の、「最高の位置」の部屋をビリーは借りることになる。借りる名義は偽名で、「小説家デビューしようとしている作家が、出版エージェントに言われて、缶詰になって仕事するために数か月ここを借りた」という設定になる。
▼もともとビリーは、文学好きなのだ。ただ、裏社会では「文学好き」なことは隠している。ひょんなことから「小説家」の設定に身をやつした。ついつい、パソコンに、自伝的小説を書き始める・・・。
▼ビリーは貧しい家庭の出身。残酷な義父。孤児院行き。海兵隊志願。中東で狙撃兵・・・というキャリア。その精神的風景が描かれる。
▼そして、とうとう狙撃の日が来る。ビリーは、狙撃後に準備された「逃走ルート」に疑念を持っている。だが、仕事は仕事。狙撃・・・そして逃走・・・。
と、ここまでで、前半が終わってないくらい。
ここから後半、とある少女との出会い、触れ合いと交流が、急旋回主題になって来るんですが、決して無理に紡いだわけではなく。全体に「なるほど」と思わせる構成になっています。
▼特に、ビリーが少女に自作の小説を読まれる、読ませるくだり。そのどきどき感。高揚感。
▼読んでいくうちに、職業的暗殺者のビリーにどんどんどんどん、とめどなく感情移入してしまいます。この力業ったら、すごいですね。脱帽です。
Posted by ブクログ
今回読むキング先生はホラーではなくミステリー、というか殺し屋が主人公の犯罪小説。しかも、『ミザリー』を彷彿とさせるノベル・イン・ノベルでもある。主人公は、仕事のために「作家」という身分を偽装するが、もともと文学に造詣が深いこともあって、自身の半生をモデルにした小説執筆に没頭。『ミザリー』の時のように、地のパートと小説パートでは書体が変えてある。前半は地のパートより、小説パートの方が面白く、読むほうもアクセルを踏んでしまう。
ところが、なにせ執筆中のことなので、いやおうなしに中断させられてしまう。もちろん、ビリーの仕事と「偽りの」日常の描写もそれなりの緊張感をはらんでいる。そんな、かりそめの日常も「決行」の瞬間から一転、キング先生の筆もギアを上げてくる。上巻を読み終えた直後、下巻を手に取ってしまったのは、言うまでもない。
(下巻に続く)
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