スティーヴン・キングのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『霧』が読みたくて買った短編傑作選だったが、『ノーナ』に不思議と惹かれて読後も印象が強い。
主人公以外誰もノーナの姿を見ていないのなら、主人公の内なる暴力性が他者の形をとって現れたということなのだろうか。孤独な生い立ちでどこにも行き場のなくなった主人公に、ただひとつの指針として女神のように現れている。主人公の認識ではノーナは確かに目の前にいたのだと思うと、この歪みがなぜだか神秘的な出来事のように思えてしまった。
『霧』は映画を観たことがあるはずだが内容をほとんど忘れており、読みながら「そういえばそうだった」と思い出していった。
生きるか死ぬかの状況下で先の見えない不安が人々を締め付けて、思いも -
Posted by ブクログ
「浮かびゆく男」2018年、「コロラド・キッド」2005年、「ライディング・ザ・ブレット」2000年。
キングの中編小説3本を収めた作品集で、一番長い「コロラド・キッド」は邦訳で200ページもあり、日本では普通に長編小説で通る長さ。一番短い「ライディング・ザ・ブレット」でさえ80ページほどある。
この3編を私が5段階で評価するとしたら、順に5点満点、3点、4点。
とにかく巻頭の「浮かびゆく男」が素晴らしい。
見た目や体積が変わらないのに体重がどんどん減ってゆく男性の、不条理なホラーSFで、合計20キログラムのダンベルを持って体重計に乗っても体重の数値は変わらず、人を抱きかかえてみるとそ -
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Posted by ブクログ
ネタバレホラーの大作…とあったが、上巻を読み終えて感じたのは、『全然これホラーじゃないじゃん‼︎』といった気持ちである。悪霊の島…とあるが、上巻の中には悪霊要素はほぼない。(霊は出てくるには出てくる。主人公の娘が島に訪れて、一緒に島を探検した際、娘がゲロゲロ吐いてしまった時があったが、それが悪霊の仕業と仄めかされてはいる)
一応、主人公のエドガーが事故をする様子だったり、超自然的な体験をする時は中々グロい描写が散見されるものの、そこまで恐ろしさは感じられない。
私からはむしろ、それでも気丈に頑張っているエドガーがカッコいい!という感想を抱いた。
上巻は、言うなれば『事故で障害を負った者が再生し -
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Posted by ブクログ
引退することにした、暗殺者ビリー・サマーズ。
最後の仕事で引き受けたのは、護送中の殺人犯の狙撃。
報酬は200万ドルというから、1ドル150円で換算すると3億円かぁ。
いや、そうして計算してみると、うさんくさすぎないか、と思うところだけど、ビリーは引退の仕事として引き受ける。
狙撃するためにその街にしばらく住み、そのあいだは新作を執筆中の作家になって街に溶け込め、という。
なんだそれ、あやしすぎないか。
ビリーは指令に沿って、作家のふりをして、実際に書き始める。
警戒されないため、狙撃の腕は一流でも「おバカなおいら」を演じているビリーは、実は文学好きで教養が高い。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ上巻の最終盤でとんだやっかいごとに対処するはめになったビリー。
ただそこでのビリーの振る舞いが、主目的は自身の潜伏生活への危険を排除するためだが、半ばやけくそ気味になりつつもやっぱり「善き人」の行動様式。
このアクシデントから思わぬ旅の友が増えることになる。
ということで後半は自分を嵌めたニック、そしてその奥にいる真の黒幕へ落とし前をつけに行くロードノベルの様相。
上巻から時折挟み込まれていた作中作もいよいよビリーの心の奥底に沈むイラク戦争での喪失と対峙することに。
この”ひと仕事”の筋書きはビリーが睨んだとおりだったのか、真の黒幕は誰で何を狙っていたのか、気になり過ぎてどんどんページが