スティーヴン・キングのレビュー一覧
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原本では「チャックの数奇な人生」も合わせて一冊だったとのこと、日本版だと2冊に分冊ですが、「イフ・イット・ブリーズ」だけでもかなりの厚みです。
「イフ・イット・ブリーズ」はホリー・ギブニーが主人公。読んでなくても大丈夫とのことですが、ホリーはミスターメルセデスから始まるホッジス3部作、アウトサイダーの登場人物なので、出来れば読んでるとすっと入りやすいかも。特にアウトサイダー。
事件現場に現る謎のリポーターに立ち向かうホリー。ストーリーもよきながら、ホッジス亡き後の彼女が悲しみや淋しさも抱えながらも支える人がいて、きちんと自分の足で立っているところを見れたのは喜び。どんな自分でも大丈夫だよ、ホリー。
「ラット」は不気味さが漂う一編。短いですが私は好きでした。主人公の作家が山小屋で一人ということもあり、ミザリー系列の怖さ、という帯でしたがそこは全然別物です。
いずれにせよキングの本を今でも読める喜びよ!本作も楽しみました。
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凄腕の暗殺者が最後の仕事として請け負ったのは、200万ドルという破格の報酬の仕事。ただし暗殺のチャンスが巡ってくるまでに時間がかかる。それまでに町の住人として馴染んでおくという準備期間も含めた報酬。仮の仕事は駆け出しの小説家。どうせならと自伝を描き始める。彼の過去と現在が並行して語られていく。いつもと違うスタイルの仕事に、違和感もあり警戒しながら、偽装の日常生活を送る主人公。生き生きと描かれた日常生活も魅力的だ。読者としても、あぁ、このまま暗殺なんて起こらず、このままの日常が続けば良いのにと思ってしまう。(それでは小説にならないのはわかっているのだけど。)とても面白かった。
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話のあらすじとしては本作の語り手である2011年を生きるリスボン・ハイスクールの英語教師のジェイク・エピングがジョン・F・ケネディの暗殺を阻止するために過去にタイムトラベルをする物語。
上巻はケネディ暗殺阻止の前にバタフライ・エフェクトの検証実験としてリスボン・ハイスクールの校務員ハリー・ダニングの壮絶な過去を変えようとして、主人公が奔走するエピソードが主な内容。
まだ上巻だけど、キング作品に通底する特徴としてエンタメで魅せながら、本作の背景にあるようなケネディ暗殺事件、ベトナム戦争といった社会や政治に対する善悪を問うまなざしがあり、話の展開やキャラクターの説得力だけに拠らない深みがあるように思う。 -
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スティーヴン・キングのイメージといえばホラーやサスペンス作品が数多く映画化されていて純文学ではなくエンタメ寄りの作家と思っている人が多いと思う。
もちろん、登場人物のリアリティや物語のテンポ感だったり、読者を飽きさせないエンタメを意識した目配せは超一流だ。
ただ、本作を読めば、著者が純文学の作品も含めた多くの読書経験から良い小説、良い文章がどうゆうものか、自身の中で批評基準を培ってきて、それを実践しているのかが分かる。
本書の中心である色々なテクニック的なことは小説を書きたい人だけでなく、読書家にとってもなるほどと思えるもので、色々な本を読む時の参考になると思うので、小説批評論という点でも楽しめる。
作中で著者が賛同している“すべての小説はひとりの人間に宛てた手紙である”という言葉が多くの作家のモチベーションの源泉ともいうべき真理だと思った。そして著者がお金とか名声じゃなく妻のタビサに楽しんでもらえるために小説を書いているのが素敵だと思った。 -
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ネタバレ最後の最後に泣かされてしまった。
たとえ嫌いな人間でも最期は助けてやれると、そのためにこそ生まれてきたと自負しているダンに涙が出てきた。一度どん底まで落ちたダンが、長い年月をかけてしっかりと自分の立ち位置を見つけたことが嬉しい。
物語としては、ローズとトゥルーノットを殺してきれいさっぱり終わりました、という形にしないところに好感が持てる。悪の組織は倒しても、人生は続く。正当防衛とはいえ殺したという事実は自分の中に残る。怒りを抑えられない思春期に突入しているアブラにはダンが必要だったなと思う。
これが読者にも無関係ではないのは、残忍で冷酷な喜びは程度に差はあれど誰の胸の中にもあり、強い者が暴力行為をはたらく事件は世界中で無数に起こっているからだ。
ホラー要素やスリリングな要素以外にも、人と人との繋がりにかなりのページを割いていて、重みがあった。人々は支え合いながら生きているのだと感じられた。このリアルな人々の描写が土台となっていることが重要だと思う。そういうところに心を掴まれた。 -
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ネタバレシャイニングに続編があると知って手に取った。ダニー少年のその後の話だ。
あの素直で可愛い少年が成長して、アルコール依存症になっていたのは読者としてショックだった。父親ジャックを思わせる荒々しさが宿っていて二重にショックだった。
あんなことがあったのに何故酒をと最初は思ったけれど、私が間違っていた。「自分が狂うかもしれない」という恐怖までは想像できていなかった。ダンにはアルコールに頼るか、狂うかのどちらかしか選択肢がなかったということだ。人が内側に何を抱えているかは、外からは分からないものなのだということを、改めて心に刻んだ。
赤ん坊のアブラがテロを予知したと分かったシーンは鳥肌が立った。情報が繋がっていくところが本当に面白い。同時に心配と不安もあって心臓に悪いけれど、下巻も楽しみ。 -
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荒れ地でのダム作り、3人で映画を観た後でイジメっ子と対峙する場面が大好きでした。
この愛おしい時間がずっと続けばいいのに…
でも、我らがキング先生は容赦なく登場人物を痛めつけるんですよね。
大人も子どもも関係なく、最も効果的な方法で心身ともにズタズタに痛めつける。
キング先生、流石です。
1巻で『チョケてばっかでこの子嫌いやわぁ』と思っていたリッチィが友だち想いのエエやつになるのも2巻からです。
私のイチ推しはベン、2番目は何故か分からないけど博多弁アイルランド人のお巡りさんのミスター・ネルです。
皆さんには推しキャラいます?
アイザック・アシモフやロバート・ハインライン作品を小尾芙佐さんの翻訳で読んでいましたが、キング作品名物のとーっても下品なアメリカ人のセリフも見事に表現していらっしゃいます。
キング作品の翻訳は深町眞理子さんや白石朗さんが有名ですが、この『IT』に関しては小尾芙佐さんが大正義だと思います。 -
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スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で書いたSFアクション小説。
デスゲームと呼ばれるジャンルの古典とも呼べるような作品。
本書が出たのは1982年なのだが、それもあって古臭い部分もある。だが強度を保っている部分もあって印象的だった。
例えば古臭く感じるのは撮影したVHS(?)をポストに投函しないといけないという部分。
これはエドガー・ライト監督の『ランニングマン』でも活かされている。動画メディアがここまで発達した現実社会だと、本来なら動画をデータで送信で完了する。だがわざわざアタッシュケース型のカメラで撮影してから、それをポストに投函しないといけない。しかもポストはドローンで飛んでくのである。このミスマッチ感がヘンテコで逆に面白くも見えた。
逆にディストピア世界の描き方は結構、手垢がついたような典型的なディストピア世界ではあるのだけれど、世界が混迷を極めて現実がどんどんディストピアに近付いてくる現代では、そこに古臭さやお決まりのパターンね、といった思いを抱かなかった。
フリーテレビと呼ばれる家に備え付けで無料視聴出来るテレビもあるのだが、これはジョージ・オーウェルの『1984』っぽかった。
現代ではスマホが人の注意をひたすら集め続けるデバイスとなっている。フリーテレビはさすがに80年代だからという感じはする。だがいつの時代だって国民にはバカなコンテンツで現実に目を向けてほしくないのが為政者たちなのだ。
だが面白いのがベン・リチャーズはフリーテレビには興味がない読書家なのだ。三文小説を大酒をかっくらいながら何冊も読み耽るのだ。映画ではこの読書家という部分はあまりフィーチャーされていない。逆に権力への抵抗の手段としてZINEを刷るレジスタンスの一員から影響を受けたりするのだ。
映画では原作のラストだけでは予定調和と感じてしまったのか、その先にもう一捻りが入っている。
個人的には原作のラストの切れ味で十分だと感じたが、映画も映画で良かった。ただそこは原作を読んでいないと、尻すぼみに感じるので原作に目を通していたほうが楽しめるかもしれない。 -
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長かったー。2段組の小説なんて久しぶり。細かい描写が多すぎてもっと文字数減らしても話の筋は通るのでは…と上巻の最中は思ったけれども、下巻からはハイスピードで物語が進み始めて読む手が止まらなかった。あの上巻じれったくなるご近所さんとの平和な日常や子供たちとの時間は下巻への伏線だったと、今なら分かる。
物語の背景では、アメリカの所得階層と生活レベルがよく分かるし、銃とドラッグが合法的な文化ならではの不幸もよく読み取れる。トランプとメディアのことも。
スティーブン・キングの作品は初めて読んだ。心に残る作品だと思う。しばらくじっくりと余韻に浸りたい。隅々にまで本当らしさを感じる作家だと思う。悪人を殺すスナイパーは、大部分は善人で本人も自分は悪人であることを知っていて葛藤しながら、善くありたいと望む姿が人間らしく素晴らしく感じた。
壮大なる殺し屋のストーリーだった。 -
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下巻の要約は本書カバー見返しに書かれてあるとおり。追われる身となり潜伏中のアパートで、ビリーはある雨の夜、男たちから酷いことをされた女の子アリスを助けてしまう。
仕事の残りの支払いはされず、傷ついた女の子を追い出すわけにもいかず、ビリーは身動きを取りづらい状況に追い込まれるが、自分をはめた連中、そしてアリスを傷つけた男たちへの制裁に、ビリーは仕事の相棒バッキーの手を借り、動き出す。自伝の続きを執筆しながら。
さて、ここから少しネタバレモード。
ビリーが助けた女の子アリス。21歳になったばかりというが、見た目はティーンエイジャーにも見える美少女。アリスといえば、キングの作品では『セル』に登場した勇敢で聡明な少女だ。お世辞にも成功した作品とは言い難い『セル』において、一つの希望のような存在だったアリス。絶望的な状況を切り開いた彼女はしかし、物語の中盤で命を落としてしまう。このことは多くの読者を失望させ、キング自身も「失敗した」と感じたんじゃなかったけ…。とにかく、「アリス」という名前のヒロインに私はある希望を見出さずにはいられなかったのです。キング先生、今回はアリスを殺すなよ、と。
そして、もう一つ、キングファンのお楽しみ、いや、ニヤリと笑うか、心がざわつくか。
バッキーノ住まいというのがコロラドの山中。しかも、山道を登った先の見晴らしの良い場所からは、あの「展望台ホテル」の焼け跡が見える。さらに、バッキーの山小屋のすぐ上にある〈夏別荘〉と呼ばれる小さな小屋には、不気味な絵が。子どもが描いたと思われるその絵は、オーバールックホテルの庭園にあった動物のトピアリーを描いたものだった。しかもその絵は見るたびに少しづつ姿を変え…。もう、いやな予感しかしない。
嫌な予感はもう一つ、ビリーとアリスが最後の敵を倒しに行く道すがら、ハイウェイで追い越して行った車の後部座席に乗っていたピエロ…。読者はいやでも「最悪の結末」を予感してしまうのです。
さて、ビリーの自伝は、最後にわれわれ読者にも思いがけないプレゼントを残してくれます。ええっ、こんなのあり…?!ていうか、そうか、その手があったか!とキング先生の手腕に快哉を送らずにはおられません。ノベル・イン・ノベルという構造を巧みに利用した構成に、私は救われる思いがしました。
上下二巻、今回もあっという間に読んでしまいました…。
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タイトル通り、「書くことについて」の技術、考え方、著者のこだわり、作家としての生き方などが綺麗に言語化されている。作家志望、著者が好きな人、あるいは文章に携わる人は読んでまず損はしない。気に入った箇所をメモしたら結構な量になった。それだけ面白い部分が多かったという話だ。
外国人なので当然だが、外国の話や具体例が多い。そのため知らない作品や人物名が多く表れるが、やはりベストセラー作家というべきか、語りや比喩が上手いので読んでいても苦にならない。楽しめて読めた。技術の提示だけを著した本も多いが、この本はスティーブン・キングのエピソードも絡めて技術を説明しているので読み心地が良い。
作家としての技術を道具箱として喩えたり、小説における三つの要素としてストーリー、描写、台詞を示したりと、なるほどな、と感心できるところが多い。特にプロットを重視していないのが意外だった。ストーリーとプロットは相矛盾する、と言ってプロットはストーリーの幅が狭まることを提言している。ストーリーをとことん重視している。
印象に強く残っているのは、「知っていることを書け」、「読者は職業に強い関心を示す」だ。
言われてみれば確かに。職業を強く意識したことは無かったが関心があるのは、どういう職業の人間がどういう世界でどういう人間と関わるかだった。主人公が刑事、弁護士など、それだけで既に興味を惹く。それに加えて知っていることを余すことなく活かせば、それはもう小説としての素地は十分だろう。
元弁護士が弁護士を主人公にすれば知っている知識、経験を活かしたリアリティのある作品ができる。読者は知らない知識やその職業人ならではの葛藤を知ることができる。未知の体験に浸ることができる。考えてみたら当たり前のことを改めて実感させられた。
良い読者体験だった。結局、こういった仕事術に関する本は、読んで前向きな気持ちになれば、それだけで良い。
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かったので何度でも読みたいが、怖すぎてもう一度読む勇気がない。幼少期から怪談やホラーは数えきれないほど読んだけど、さすが金字塔と言われてるだけあってダントツで怖い
あとアルコール依存症をきちんと「病気」として描いてるのが良いなと思った。そういった日常の些細な事象にも目を背けず、ホラー小説でそこまでするかというほど繊細に描き切るのがキングにしかない良さだし、それによって逆にホラー要素をより身近に感じさせて恐怖を煽っているのかなって。もうこの分野ではキングの右に出る者は現れないだろうな
この本だったか忘れたけど、昔キングの本の後書きで「子供の頃、電気を消すと天井の木目が人の顔に見えたり、ハンガーにかけた服が人影に見えたりした。そういった日常に潜む純粋な恐怖心を描きたい」みたいなことを言ってた気がして。どの本もそれを体現しているところに物書き魂を感じるし、だからこそ読んでいる間も読み終わった後も「誰かに見られてるのでは」なんてつい振り返ってしまうほど背筋が凍る恐怖心を植え付けることができるのかなと思った。小説でここまでできるのは感服だし、文章の力を感じた