スティーヴン・キングのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
スティーヴン・キングの最新作。面白すぎました。
主人公はハイスクールに通うチャーリー少年。
キング作品ではおなじみの、アメリカの田舎町が舞台で、チャーリーの日常から物語はスタート。ある日「サイコハウス」と呼ばれる一軒家から、犬の悲痛な鳴き声が聞こえ、住人のミスター・ボウディッチが梯子から転落している姿を発見します。ここから、チャーリーとボウディッチ氏、そして老犬レイダーとの交友が始まります。
上巻はチャーリーの優しさ、そしてレイダーの可愛さを感じる内容ですが、ボウディッチ氏の過去が明らかになるあたりで、物語の様相が変化していきます。チャーリーはレイダーを救うために、異世界『エンピス』に行くことを決意。
下巻では『エンピス』での大冒険となり、一気に幻想的な世界に引き込まれました。なんといっても『エンピス』で出会う登場人物が魅力的。ドーラを始め、「おいどをきゅっと引き締めて!」のクローディア、そして登場人物ならぬ登場虫のスナブ!ラストはお待ちかねのハッピーエンドが待ち構えています。読後感は、長かったぁーの疲労感と充足感で満たされました。
読めたことに幸せを感じるスティーヴン・キングの最高傑作!オススメです! -
Posted by ブクログ
ネタバレダニーとアブラの出会いと、真結族との戦いが幕を開ける下巻。前作、シャイニングを『エイリアン』とするなら本作はさしずめアクション要素マシマシの『エイリアン2』といった塩梅であり、幽霊屋敷という閉鎖空間での恐怖が売りの前作と違い、本作は超能力バトルものでジャンルが全然違う。
この手の異形のものたちとの戦いにしては珍しく、アブラの両親も巻き込まれる形になったのはかなり斬新で、何の繋がりもない少女と中年の男という取り合わせのまずさは日本ならともかくアメリカではかなり厳しいというのもあってか、そうした見られ方をする危険性は示唆しつつも、そのあたりのことで胃がキリキリするような展開にならなかったことにはホッとしてしまった。両親の合意を取り付けるのは展開的にやや強引だなと思いつつも、そのきっかけの一つとして中盤でルーシーがダニーの腹違いの妹だと発覚したことにはかなり驚かされたし、謎に満ちた「かがやき」の能力が遺伝だったというのに説明がついたのは上手いと思う。無関係に思えた主人公二人が血縁関係にあったというのは一見するとぶっ飛んだ展開に思えつつも、前作の『シャイニング』と同じ「家族」の物語として一貫性が生まれたし、この突飛なアイディアでそうした繋がりを生み出したことに感動してしまった。
真結族は当初のミステリアスな感じに反してかなり弱々しく、麻疹で全滅の危機になっているのは悪役としてはかなり格落ち感があるが、身分証明や不動産登記を済ませて社会にガッチリと食い込んでる完全無欠に近い存在が、つまらない病で死ぬというのはH・G・ウェルズの宇宙戦争めいてて面白いなと思った。アイデンティティが完璧でも、医療からの隔絶が死を招くのは実にアメリカらしいとも思うし、銃を使わないジプシーというのも反アメリカ的な要素もあって興味深い。
主人公の顔の蝿という伏線から、死に瀕した曽祖母を身体に宿して一気に毒ガス散布のように使うぶっ飛んだ解決法も中々で、最後に息子を守って死んだ前作のジャック・トランスのことを思うと、本作のダンも同じようになるんじゃないかという恐怖があり、そういう意味では後半のノンストップ感は素晴らしかったと思う。そうして戦いは幕を下ろし、主人公が抱え続けた「キャンニィ」と言いながらコカインを舐める幼児というあまりにも生々しいイメージ。母子家庭から金を取ってしまったという後悔に苛まれているのを皆の前で告白したのも勇気があってとても良かった。主人公は「善」の人間であるからこそずっと気にするわけだし、ここに決着をつけたのはホッとしてしまった。そしてハッピーエンドから再びドクタースリープは末期の患者を眠りにつかせるという落ち着いた終わり方も非常に良い。名作の続編は色々とハードルは高かっただろうが、本作はその期待に違わない名作だった。個人的には前作よりも今作のほうが好みである。 -
Posted by ブクログ
シャイニングの惨劇から40年後。予後は非常に悪く、父親の喪失だけでなくシャイニングこと「かがやき」の能力に苦しんで父親と同じアル中になっているダンがとても切ない。オーバールックホテルでの悲劇は人生のわずか一部分でありながらもその影響は甚大で、物語が始まる前の語られていない重みを感じるのはさすが。上巻はどん底からの出会いとそこから10年かけての禁酒と再起。ダンと同じく強力なかがやきを持つ異能の少女アブラの成長劇という二本立てで物語は進んでいく。
背後で暗躍するかがやきを吸い取るジプシーの一族「真結族」が非常に不気味でありながら、頭目であるシルクハットの女性ローズ・ザ・ハットのキャラクターが素晴らしく、重力に反して傾き、コロコロと転がるシルクハットのイメージが強烈で、こうしたワンシーンによるイメージの喚起がキングは本当に上手い。シャイニングはクローズドサークルでの悪霊ホテルの物語だったが、その続編がまさか異能力者vs半不死の吸血鬼みたいなカルトの一族という話になると思わず、その意外性もあって面白かった。下巻も期待。
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Posted by ブクログ
ネタバレタイムトンネルを潜って60年代のアメリカに行き、ケネディ暗殺の真犯人を突き止めて暗殺を阻止する物語。上巻の時点ではまだそこまではいかず、父親に家族を皆殺しにされた校務員のハリーの過去を変える話と、前任者のアルが変えた誤射で半身不随となったキャロリンの過去を変える話が中心である。中盤にはあの忌まわしき町である「デリー」が出てきて、年代がピタリと付合するのでまさかと思ったら『IT』のルーザーズクラブのリッチーとベティが出てきたことには驚いてしまった。ピエロの恐怖が去った後であるとはいえ、相変わらずデリーの描写とそこに住まう悪徳の影響を受けた人間のおぞましさは読んでいてゾワゾワしてしまう。
まずタイムトンネルの設定が面白く、年代は1958年で固定されており、過去改変はできるものの再びタイムトンネルを潜れば全てリセットされてしまうというのが特徴の一つで、ケネディ暗殺までは5年間の猶予があるというのがポイントである。裏を返せば一度失敗するとまた5年かかるのと、そこに至るまでに変えた過去改変含めて全てやり直しになるため、そう気軽にポンポン変えれるわけでないあたりに「時」のルールの重みを感じる。加えて、過去改変にはそれを押し留める強制力があり、それに対してどう抗うのかも本書の見どころの一つだろう。
キングは稀代のストーリーテラーでありながらも、その真骨頂はやはり微に入り細に穿つような徹底した描写力にあり、キングの愛する60年代の牧歌的なアメリカの情景が読むだけで脳裏に浮かび上がってくる。泡をスプーンで切って提供されるルートビアは非常に美味しそうだった。このキング特有の濃密な描写による楽しみは小説ならではだと思う。
舞台もまた魅力的であり、SNSはおろかインターネットすら覚束ない世界特有の寛容さや人に対する警戒心のなさ、そして人目につかない所で起こる犯罪などの、未知の領域がまだあることによる薄暗さなど、この小説の主役は60年代アメリカそのものと言っても過言ではない。中巻、下巻も楽しみである。