あらすじ
ミュージシャンとなった僕は、元牧師の“電気治療(ヒーリング)”のおかげでヘロイン中毒を克服していた。だが後に、
彼の治療を受けた一部の人たちが後遺症に苦しんでいる実態を知る。僕は「ヒーリングをやめるべきだ」と進言するが、
彼は“神秘なる電気”の研究にのめりこんでいき……。ジワジワと襲う恐怖、ホラーの帝王、面目躍如の巨編!
電気に憑かれた元牧師は
詐欺師か、真の魔術師か?
『フランケンシュタイン』メアリー・シェリー、
「クトゥルフ神話」H・P・ラヴクラフトら、
ホラーの巨匠たちに捧げる新たなる恐怖小説!
※この電子書籍は2019年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ものすごく良かった。
上巻からの仕込みが期待以上に炸裂していて大満足の下巻。
私がキングに望むのはこういうの。
とてつもなくおぞましく、でもその根底に流れるのは物悲しさとせつなさ。狂気に満ちた愛も。
冒頭の献辞。そうそうたるホラー作家たちの名前が連ねられてるのも、読み終わって納得できる。
特に私が本作で感じたのはメアリー・シェリーとラヴクラフト。ラヴクラフトはそのまんま。キングお得意の虚実織り交ぜテクニック。
メアリー・シェリーについてはフランケンシュタインのオマージュで溢れかえっていると思う。過去の異端発明家たちからの影響を受ける牧師がそのまんまフランケンシュタインと重なる。取り扱うのが電気である点も。
ただ、キングがすごいのはそこからの展開。単なる真似事以上の世界に連れて行ってくれるのだ。
エピローグにいたってはそれだけで一冊できるほどの濃厚さ。
調べたわけではないので違うかもしれないけど、ダークタワーシリーズの一部にあたるように思う。
もちろんシリーズ未読でも問題なく楽しめる。
Posted by ブクログ
幼少期に出会った神父は奇跡を起こす人だった。
まあ、なにをどう言ってもネタバレになるんですよ。
でも、幼少期の出会いから、落ちて、救われて、そして、っていうのが、エゲツないぐらいうまい。
表現悪いけど、まじエゲツない。
中高の切ない初恋から、落ちていくのが、本当に切ない。
ダメってわかっていても、彼女が好き、彼女にいい所見せたい、ってそれが切ない。
私は、だれかも憎んだりねたんだりしなくて、今いる。
その幸せを、思わずかみしめるのである。
…、もめっちゃ面白かったよ。
Posted by ブクログ
やっぱりキングは面白い。後半は少し冗長に過ぎると思ったが、全体的にとても面白かった。こんな風に過去と現在が交錯する話は好きで、大ハズレはないと、個人的にはおもっている。
Posted by ブクログ
キングらしい展開でした(;^_^A
『スタンド・バイ・ミー』を思い起こさせる子供時代から、結末までの流れはノスタルジックで好きですが、そこからが(◎_◎;)
ですが、やっぱりキングが大好きです♪
Posted by ブクログ
ジェイコブスが求めていたものは………
そこにあって見えないところ、生者の世界から移っていくところ。死者の通路を通り、治療を受けた者をカギに使って扉を開けること。
うーー 恐ろしい。
語られる言葉の映像を想像するだけでゾワゾワする。そんな世界は見たくない。そんな世界に行きたくない。
あぁぁぁ 怖かった。
Posted by ブクログ
原著2014年発表。
「キングひさびさの正統派ホラー」との売り出し文句だが、最後の部分以外はあまりホラーっぽくなかった。ホラーらしさは無いものの話はやはり面白く、ストーリーテリングは抜群である。
ただし、いつものキングの文体にある「地口丸出し」感はあまりなく、割とすっきりとした語り口。
書き手として設定されている「ぼく」がひと桁の年齢から50代、60代へと至る長大な時間遍歴の物語なのだが、50代になって実家に戻り兄弟や旧友と再会する場面はなにかじーんと来るものがあった。私にはそのような「再会して感動する」兄弟などないので、羨ましいような気もした。
ホラーらしさがあまりないというのは、もと牧師の操る電気による「治療術」の患者らの後遺症の出現確率が低いからだ。そんな低確率なら治療の著しい成功例の比率に対して問題にならない、というもと牧師の主張に対抗し得ない。なぜキングはこんな風に書いたのだろう? もっと切羽詰まった危機が明らかであれば、物語は緊張感あふれるものになったろうに・・・。
がそのぶん、物語は老いてゆく語り手の、幼い-若い頃の思い出を生き生きと愛おしく描いてゆく叙述が輝いてゆくのかもしれない。このノスタルジーのあたたかさは、ある時期以降のキングに顕著な情感だ。
気晴らしにと読んでみたスティーヴン・キングは、やはり語り口が上手く、情感の喚起力が素晴らしくて、印象に残るものがある。