アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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どれも読み応えがあって面白かった。
『謎の盗難事件』と『砂に描かれた三角形』は、読み進めていくうちにドラマを観た記憶が蘇ってきて、また映像で観たくなった。
個人的には、一番短いけど一番衝撃的な『砂に描かれた三角形』が好み。インパクトすごい。
他の方も書いていたけど、短編でも各話の最初に登場人物一覧をつけてほしい。『死人の鏡』なんてもうだれがだれやら。
それと、毎回言ってる気がするけど、ポアロシリーズは翻訳がしっくりこないものがときどきある。ドラマの印象が強いからか、ポアロさんには「〜だぜ」なんて言ってほしくないんだよなぁ。だれに対しても敬語を使う方が潔癖で上品なキャラクターに合ってると思う(個人の見解です)。
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ネタバレクリスティーがメアリ・ウェストマコット名義で書いた一冊。この作品群はとにかく登場人物の内面が他作品以上に深く描かれているのが特徴。
夫に先立たれたアンは、娘のセアラに無償の愛を注いでいた。あるとき、セアラが三週間のスイス旅行に出掛けている間にアンは自分と同じく配偶者に先立たれた悲しみを背負って生きるリチャードと出会い、たちまち恋に落ちる。しかしスイスから帰ってきたセアラはリチャードを毛嫌いし、二人の結婚を認めようとしない。リチャードはリチャードで、そんな態度を取る近い将来継娘になるはずのセアラを拒絶する。
母親には女性としての幸せを求めることは許されないのかと苦悩するアン、突然現れた継父に「お母さんの幸せを考えてあげないといけない」と説教され反発するセアラ、継娘に拒絶され、アンが間を取り持ってくれるわけでもなく苛立ちを募らせるリチャード。
それぞれの苦しい胸の内がこれでもかと深掘りされている。
リチャードとセアラの板挟みになったアンはリチャードとの結婚を諦め、ついに壊れてしまう。何もかもがどうでもよくなり、ただ目の前の快楽に溺れるアンがあまりにも哀しい。
アンが結婚を諦めざるを得ないほどセアラはリチャードを嫌っていたのに、当のセアラはあっという間にリチャードのことなど忘れてしまう。また、アンがリチャードとの結婚を考えていた時は頑なに家を出ることを拒んだのに、騒動が過ぎれば家を出たいと言い出す始末。セアラへの不満が募るのに、「娘だから」「愛しているから」と自分の本心に蓋をし続けたアンの気持ちを考えると苦しくなる。もちろんセアラも含め登場人物の誰もがそれぞれに葛藤を抱えながら生きているが、それでもやはりアンがあまりにも不憫。そのため、アンがセアラにぶつけた憎しみの言葉はそこまで残酷とは思えない。
ただその部分を深く考えてみると、セアラがリチャードに厳しく当たったのは、「自分の娘にはまともな人を結婚相手に選んで欲しい」と考える世の母親に対する強烈なカウンターにも思える。
最終的に母娘は和解し、今まで何もかも母や他人のせいにばかりして生きてきたセアラが地に足をつけしっかり生きていこうと決意するので、その点は救いかもしれない。家族とは言えそれぞれが自我を持った一人の人間。甘えから、家族であればどんなきつい言葉をぶつけても大丈夫というわけでは決してない。
何をやらせても駄目なジェリーが母娘の関係の在り方も含め意外に常識人なのと、クリスティー作品の中に出てくるある種の秩序を形成する役割を担うローラとイーディスのキャラクターがとても魅力的。 -
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「わたしは決して忘れませんよ。よく憶えておいてね。わたしは何一つ忘れていませんよ」
ほんとうのホラーは、人のこころの中にある。
恐るべきマザーにより支配されたポイントン家の人々。
第一部はこの話の主人公たちがこの物語の彩りを掻き回すように着色する。
ここでのポワロはまるで“ひょっこりはん”のように、物語のちょっとした端っこに顔を出す程度。
事件発生後の第二部になり、ポアロは本来の位置に着く……。
アガサ・クリスティーのミステリーは、本当に色々な展開を楽しむことができる。
最終的には謎の解明になるが、その結果がそんなに重要ではない時もある。
このお話はまさにそう、過程での登場人物のあやふやさがいい。
良かったです。 -
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ミス・マープルはテレビドラマシリーズで見ていましたが読んだことはありませんでした。
なにか読んでみようとこちらを。これはドラマで見ていないので犯人知らない。
イギリスの田舎町チッピンググレイホーンの住人は新聞の広告欄に「殺人お知らせ申し上げます。リトル・パドックス館で午後6時30分。」という文章を見る。「晩餐会の催し物だろう」と言いながらも訝しがる気持ちは抑えられない。村の人々はたっぷりの好奇心でリトル・パドックス館に集まる。
リトル・パドックス館の中年女主はレティシア・ブラックロック。彼女も「覚えがない」と言いながら客を迎える準備をする。
そして6時30分。館の明かりが消え男が乱入してくる。「手を上げろ」それから銃声。明かりがついたとき、血を流すレティシアと、銃を傍らに倒れ死んでいる乱入者の姿があった。強盗に失敗しての自殺なのか?
警察の捜査により、レティシアはかつての雇い主のし参加、ランダル・ゲドラー遺産相続人となっていることがわかる。遺産を巡る殺人計画なのか?それならレティシアはまた襲われるだろう。
捜査にあたるクラドッグ警部は、名付け親のヘンリー卿の紹介で、田舎町の老嬢ミス・マープルの協力を得ることにする。ミス・マープルは「老嬢は詮索好きだから怪しまれないし、田舎町には詳しいわ」というのだ。
しかし第二第三の事件が起き…。
終盤の「名探偵、皆を集めてさてと言い」の場面ではミス・マープルがいない時に警察や本人が隠された真相が話していくので読者としては「ミス・マープルはどうした!解決しちゃうぞ!」とちょっと焦った 笑
物語の時代は、何世代も前から同じ町に住みお互いを知っている時代から、人々が自由に移動して隣人の身元もわからない時代に変わるころ。この時代の物語を読むと社交が面倒臭そうだなあと思いながら、しかしお互いを知ることは自分の生活を守ることでもあるんですよね。
初めて読んだミス・マープルの性質ですが、穏やかで優しく親しみがある(ので、詮索できる)反面、「私は悪い方に考えるから、物事が見える」ようなことを行っていて、芯の強さと案外苦労した(しかしおそらく苦労を見せない)こともあったのかな。
さて、事件の真犯人は…なんとなくわかりましたが、真相はわかりませんでした(^o^;
ミステリーの真犯人がわかるのって洞察力とかじゃなくてその作家の本を複数読んで、その作家の癖がつかめるってところがありますよね 笑
冒頭は人が死にながらもどことなくコミカルな雰囲気だったのですが、殺人が重なると殺された人はお気の毒だし、犯人の言葉も真実だったんだろうなあと思う。そして事件や人間関係、さらに当時の社会情勢も感じられるクリスティは流石だなあ。
ミステリーって、言い方が矛盾していますが頭を使わないので気分転換によいんですよね。犯人も真相も作者次第なのでわかりません。そして小説はエンタメで、ミステリー小説の「死」はその場だけの無個性のもの。(もちろんあとに引きずり続けるミステリーもありますけど)さあ、また楽しいミステリーを読もうっと。(※^^※) -
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ネタバレ面白かったなあ…
この本を原作とした三谷幸喜のドラマが再放送するのを知って読んでみた。三谷幸喜は「地味だけど面白い」って言ってたけど、たしかにめちゃくちゃ面白かった。
個人的には『ナイルに死す』や『メソポタミヤの殺人』より好き。
作中に登場するエルサレムやペトラの風景がピンとこなかったので、ネットで画像検索しながら読んだら楽しかった。
あと三谷幸喜のドラマのキャストを見て、登場人物のイメージを掴みながら読むのも楽しかった。
ただ、当時のヨーロッパの人の中東地域への価値観や宗教観はやっぱり理解できてないので、そこは仕方ないかな〜という感じ…
「彼女を殺してしまわなければならないんだよ」というセリフを一番最初に置いて、様々な登場人物がボイントン家に関わり合っていく…旅行中の出来事を通して、家族全員の気持ちが犯行へ傾いていく、その過程も面白かった。
そしてそのすべてが伏線で、鮮やかに回収していくのが本当に気持ちいい。
真犯人は最後の最後までわからなかった…
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海辺の午後
クリスティの短編戯曲集
海辺の午後
昔から裕福な人達が過ごして来たビーチ。時代の流れで海辺を訪れる人達も様変わり。
古い時代の夫婦や家族が時間を過ごすビーチにビキニを着た非常識な美女が現れ男達を魅了、女達は反感を抱く(時代を感じる描写)。
一方、付近では盗難事件が発生、エメラルドなど高価な品物が盗まれてしまう。
古き時代を引きずりながらビーチで余暇を楽しむ人達と美女と警察のドタバタ劇。ミステリー的な要素は多く無いが、クリスティ得意の「オールドミス」が牛耳る家族(立場の弱い夫、束縛される息子)や若い二人の男女等、設定は面白い。
今の時代背景から見るとコメディの様に見えてしまうが、少なからず当時もそういった要素があった戯曲だとおもわれ、バランスが変わっても楽しく読める作品だ。いつの時代も若者は革新的で年寄りは保守的だと分からされる作品だ(笑)
患者
私立療養所の個室から始まり、とある屋敷へ。
ウィングフィールドの妻がバルコニーから転落し、意識が戻らない状態。家族は事故と捉えているが、警察が介入し真実を調査していく。
情事のもつれが原因と考えられるが、怪しい人物は数人おり、誰が犯人かを探る人間活劇。
正直、ありきたりな設定かもしれないが、最後まで誰が犯人か、そして最後、犯人が決定づけられてフォーカスされていく舞台の進め方がとても面白い。
クリスティでも良くある設定の様に思えるが、必ず何処かに驚きがあるのは彼女の短編作品にも共通している。犯人はこいつだろうと疑ってかかり、結局裏切られるのはいつもの事だ(笑)。
ねずみたち
サスペンスミステリ。クリスティによる恐怖ミステリの傑作だろう。密室に男女二人。体の関係もあり不倫関係にあるが、密室のなかで徐々に人間性が現れていく。最後、リドルミステリーの様な形になるが、結局はどういう事なのだろう。中編の一部分を切り取った様な作品で、できれば推理小説として読みたい一作だった。
作中に登場人物は五人しか出てこないのに圧倒的に面白く、謎が残ったまま、陰鬱な感じで終わっていくのも魅力的だ。
劇として進めていくとおそらくかなりシンプルになるだろうが、初めてどの様な舞台になるのか気になった。 -
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ネタバレ途中まで事件が起こらず長く感じてしまったが、最後に怒涛の展開でひっくり返された。真実がわかってから考えると、それまでのエピソードが違った意味をもって見えてきて、読み返すのがおもしろかった。
「終りなき夜」と「甘やかな喜び」が対比的であり象徴的。「甘やかな喜び」である、やさしく美しいエリーの喪失がより一層「終りなき夜」を深めていく。
主人公の周りには母やサントニックスなど警句を発し引き止めようとする人たちがいた。
母が主人公に、安定した仕事と生活をするよう、あんなにうるさく言っていた理由がわかった。母が言っていたのはこのことだったのだ。
すべてを得た後は、皆が去った。
読後はやるせなさと哀しみがじんわり残った。 -
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夏休みの1冊にぴったりなアガサ・クリスティの作品。ポアロシリーズ。舞台は夏のリゾート地。爽やかな舞台に、めっちゃドロドロなストーリーに苦笑。とはいえ、(時代もあるのか)アガサ・クリスティならではの上品さがあって嫌な気分にはならず、伏線も緻密で、トリックも面白かったです!
アガサ・クリスティの、可愛いけど自立してない女性が大嫌いな感じが伝わってきて、なんか時代を超えて微笑ましいです。アガサ・クリスティが現代にいたらワーママvs専業主婦論争に加わっていそうだ。
あとがきで、この話を戦時中のロンドンで家を焼かれながら書いたという話を読んで、びっくりしました。本当に芯の強い女性なんですね…。伝記も読んでみたいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレポアロシリーズ㉕
アバネシー家の主人リチャードの葬儀は滞りなく終わり、遺産についての遺言が読まれるという時に放たれたコーラの一言「だって彼は殺されたのでしょ?」
なにこの一気に不穏に変わる空気。なにこの一気に心掴まれる展開。ワクワク感。
アガサ・クリスティがえがく『館に集まる一族』って本当に面白いわ~
相手に対する親族ならではの人物評や思い出によってそれぞれのキャラクターが分かってくると、ダメっぷりも、隠している秘密も、怪しさも浮き立ってくる。そして、それらが事件の謎をさらに深めていく。
やっぱり最後は犯人に驚かされる。
関係者を集め最後に行われるポアロの謎解きに、ただただ、ため息。 -
匿名
購入済みクリスティーの代表作
アガサ・クリスティーのチャレンジ精神の、一つの到達点。中心となるトリックは、一度読めば単純明快なんだけど、それを盛り上げる細工も上手くできてて、何度読んでもクライマックスはドキドキできる。
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Posted by ブクログ
その名はもちろん知っていた、
アガサ・クリスティ。
翻訳本アレルギーがあったので今まで読んだことなかったんだけど、荒木博之さんのVoicyで触れられて以来、気になっていたので読んでみた。
作家の真山仁さんは50頁で犯人がわかったということで、変な挑戦欲が掻き立てられたものの、やはり私には推理力も洞察力も集中力も足りない。
最後の最後まで犯人が分からなかったのは、…まあ想定内です。
ただこれ、犯人が分かってから読み返してみると、確かに50頁までで犯人のアタリはつけられる仕立てになっている。
自分の凡庸さを改めて思い知らされるようで、そこがなんとも悔しいな。
大富豪アバネシー家当主リチャードの葬儀を終えて、莫大な遺産相続についての遺言公開の席でその相続人の1人が言った無邪気な一言から始まる物語。
舞台設定、登場人物、物語展開まで、全てが私の想像する「the本格ミステリ」。
たくさんの登場人物を頭で整理するのは結構面倒くさかったけど、最近は翻訳モノも少し読み慣れてきたせいもあり、
問題の50頁までにはしっかり物語に入り込めた。
読み終えた後、ネタバレ回避しながら感想を言うなら、極上のマジックを見せてもらった上でその種明かしを鮮やかに示してもらった…みたいな印象。
こういう印象が残るのも私にとっての「the本格ミステリ」て感じだ。
因みに280頁あたりでもう一度最初の方に戻っては、怪しそうなところを再読したりしてみたが…、
結局最終章まで犯人が分からなかった。
いやぁ面白かったなー。
そんでやっぱり悔しいなー。