アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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ネタバレ以下個人的な推理。
三人を怪しむ。
まず怪しいのが庭師。読者側はこいつが公安の人間であり、潜入捜査をしているということは明らかではあるが、それは一種の上位情報であって、シンプルに考えた場合に犯人として考えやすいのは情報を多く持っているこいつである可能性がある。
また、学園が崩壊しないようにと考えると、明らかな外部者であるこいつが犯人であるというのは都合が良い。
銃を所持しやすい立場だというのもある。
次にチャティ。これは二番目の被害者のときに明らかに犯行っぽかったのでそうだろうな、と思うのだが、そうすると最初の犯罪がよくわからなくなってしまう。
ポワロも犯人はひとり、みたいなこと言っているしうーむ。
最後に王女。これはまぁ誘拐が狂言で別人なのだろうな、というのは予想できる。
被害者が犯人というのはよくあるパターンだし。
とはいえ最終的にバスのお母さんが帰ってきて、というパターンになる場合は王女は同席していないし、チャティが犯人だとやっぱり最初の事件が意味不明になってしまうので、シンプルに庭師か……?
で犯人が秘書だったわけだが、いや、確かに犯行シーンのときに秘書の話に移り、明確なアリバイが立証されていたのは疑うべきではあったんだよな。
だってあのパターンでアリバイが100%あるみたいな言い方されるの、普通ないじゃん。恋人同士なら庇うからうんぬん、みたいなことが少しくらいあっても良さそうなのに、読者の神の目線からも完全なアリバイになっちゃったのは明らかにおかしかった。
とはいえそこはメタ推理だし、うーむ、そもそもこの秘書が犯人だという妥当性や必然性も薄いので、ミステリーよりはサスペンスだよなぁと思ってしまうぜ。 -
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時代的には、第1次世界大戦と第2次世界大戦の間の1930年代らしいです。飛行機を使っているので、もう少し後かと思ったんですが。しかも、この作品が出た1930年代には、舞台となったプロメテウス号の様な21人も乗客を乗せることが出来る旅客機は数少ないながら特定できていないっぽいですね。イメージに近いDC-3は、この作品の刊行後に世に出てきているらしいです。
そんな、当時としては最新の乗り物での、ある意味密室殺人なのですが、ポワロの灰色の脳細胞は見事に解決しています。まぁ、自分も容疑者のひとりであるわけなので、解決しないわけにはいかない状況だったんですけどね。 -
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4.2
読んでいてショック。誰しも身につまされることがあるのではないか。。子供のため家族のためとやっていることが空回りしていたり、一方的な思い込みや良かれと思ってしたことが相手には、とても迷惑がられ、反論ももらえず、そっとされておいたのだとしたら。
自分がしてしまったことや、切り回してきたことを思い返して、実はこういうことではなかったかとか、気づかないようにやり過ごしたが、実はこうだったよねと気づいたり、物事の一面しか見えていなかったことに気づいてしまう。
その時点で30年近く経ってるので、悔恨と反省が湧き出たとしても、あるいは新しい自分になった気ではいても、端から見ると何も変わっていない。
人間は、そう簡単に新しくなれるわけでもない。
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ネタバレ前から読みたかった小説。読めて良かったが、心が苦しい。
ジョーンは自分のことを良き母、良き妻として認識していたがそう思っていた、思い込んでいたのは自分だけと言う恐ろしさ。
ロドニーのエピローグが本当に救いがない。全てジョーンの推理通りだった。「君はひとりぼっちだ。これからもおそらく。」という文章。アガサクリスティなんて残酷なのか…。
ただ自分の見たいものだけ見て理想の世界に閉じこもってしまうというのよくあることだと思う。自分本意で客観視できてない人は思いの外多い。自分もそう。また、ジョーンも言っていたが、忙しい日常にかまけて、内省をしないとこのような悲劇が生まれてしまう。
ジョーンもせっかく真相に辿り着き、良い再スタートを切れると思ったら自身の過ちを認めたくなくて、認められなくて悲劇で終わってしまう。自分のこれまでの行い、ひいては人生を失敗と認められなかったところにジョーンの弱さがある。
当たり前のことだが、失敗を認めることは恥ずかしいことであり、自分の人生に関わることなら尚更。しかし、校長の言葉を借りるなら、人生は進歩の連続である。そのためにはやはり失敗を認め、謝る勇気を持つことが必要不可欠。
SNSの発達した昨今、自分1人きりになって物事を考える時間が減っている。いつも誰かと繋がって予定を埋めないと不安というのは分かるが、1人で内省する時間を取らないと本作のような悲劇が生まれてしまうことを胸に留めておきたい。 -
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ネタバレ私たちはみな、人生に何を求めているのだろう。
ポアロがルーシー夫人の招きに応じて屋敷を訪ねると、プールの側で男が血を流しており、そばには拳銃を持った女が呆然と立っていた。果たして、夫ジョンを殺したのは妻ガーダか、恋人ヘンリエッタか、かつての婚約者ヴェロニカか、それとも異なる人物か。次々と出てくる断片的証拠、訳ありの人物たち、ポアロへの打ち明け話、それらからポアロがたどり着いた真実とは。
はやみねかおるが解説を寄せている。はやみねかおる世代を自称する者として、この作品を見るとポアロが名探偵であると言える要素が詰まっている。すなわち、皆が幸せになるように事件を解決すること。ポアロはこの作品で真相を皆の前で言い当てないし、警察にも告げていない。愛するジョンに頼まれてガーダを守ろうとしたヘンリエッタの想いを汲み、真相を闇の中へ隠すと決める。後に息子が真相を尋ねに来た時には、彼にだけ話すだろうと言いながら。彼には真相が必要だからと。
親族の中で1人勤めを持つミッジの逡巡に心を打たれた。愛しているエドワードはいつまでもヘンリエッタの影を追っている。ひどい職場で心無い扱いを受けているが、そのことを親族たちにわかってもらおうとは思っていない。エドワードが来て、天国のようなエインズウィックの暮らしに彼女を誘ってくれるとは思っていない。エドワードがある日職場に来て、彼女を連れ出してくれ、2人は婚約する。エドワードがヘンリエッタを忘れていないことから、一度は婚約を解消する。しかしミッジは自死を図ったエドワードを助けたときに、エドワードがヘンリエッタを想っていても、エドワードには自分が必要だと決意するのだ。そしてエドワードもミッジの実際的なところと温かさに心を動かされる。メインキャラクターとは言えないかもしれないが、2人のエピソードが心に響く。こういうところがクリスティー作品を読むときの楽しさだ。 -
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ネタバレ【再読】
ポアロの秘書ミス・レモンの姉ハバード夫人が寮母を務めるロンドンの学生寮で、盗難事件が相次ぐ。依頼を受けて調査を始めたポアロだったが、女子学生の一人が犯行を認めたため事件はあっさりと解決。だがその後、その学生シーリアが死亡した。当初は自殺と見做されていたものの、それは他殺であったことが発覚する。ポアロは近頃紛失した物品と殺人事件に関連があるものとみて捜査をすすめる。
さらなる犠牲を出した後、ようやくポアロは真相に辿り着く。犯人はナイジェルだった。ナイジェルはリュックの底を加工して薬物の売買を行なっていたが、ある時たまたま警察が寮を訪れた際、発覚を防ぐためリュックを切り裂いた。その現場をシーリアに見られたため彼女を殺した。さらにナイジェルの密輸には、服飾品バイヤーのヴァレリ・ホッブハウスもかんでいた。
シリーズの中では知名度もさほど高くなく地味な作品だが、ミス・レモンに国際色豊かな学生たちにと、登場人物の個性はシリーズ随一。学生寮が舞台ということもあり、気取った登場人物が多いのも特徴。
また、すり替えられた遺書や毒薬などミステリ要素も申し分なし。
●見どころ
・みんな大好きミス・レモン
・『葬儀の後に』に引き続き、目的を隠して潜入したのにバレてしまうポアロ
・唐突な長崎生まれ
・愛すべきアキボンボ -
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ネタバレクリスティにしてはトリック?が凝ってて良かった。
葬儀に現れ、事故死とされた事件が実は殺人だったと告発した人物が、翌日遺体で発見されるという掴みの良さ。しかもそれが別人という真相は面白い。
ただ、首を傾げる癖を真似たとき、鏡越しに見ていたから違和感なかったが実は逆に傾げていたなんて後から気づけるだろうか?そこはゴリ押し感があると感じる。
まぁ言い出したらキリがない。
ロザムンドは結構気に入ったキャラ。バカっぽいけど大切なことは知っていて、男のバカさも理解しているのが格好良かった。妊娠して女優を引退。お母さんになる。
ポアロ「その職業はあなたに最もお似合いですよ」
んーかっこいい!
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ネタバレこんな作品を描けるのが意味がわからない。序盤は王道のミステリー小説の謎解きだった。もちろん最初から事件解決の伏線は散りばめられているわけではあるが、いつものアガサクリスティーのミステリーという感じ。ただ過去の事件との絡み合いが凄まじかった。遺伝学、弱み、金銭問題、愛人関係と序盤から挙げていた全ての要素が、うまく噛み合い物語が収束していくのがとても美しかった。一つの長編で、あそこまで複雑に多層的に絡み合った謎解きを、最後は単純明快な論理構造に持っていけるのが素晴らしい。ラスト7割くらいのベラが出頭したところで拍子抜け感があり、油断していたが、そこから一捻りあって、全てを綺麗にまとめていく。ベラの出現も最後意味あるものにするのが本当に素晴らしい。ヘイスティングズとシンデレラ、ジャックとマルトとベラの人間関係なども最後、綺麗に美しくまとめられるのもわけわからない。アガサクリスティーのミステリーは、現実離れはしているものの、物語の序盤で謎解きのヒントは出してくれているということだ。ポワロも物語内で、ジロー刑事に対して、「フェアであるために、ヒントは出しているつもりだ」と言っていたのは、まさに筆者が読者に対して言っていたのではないかと考える。でも相変わらず、自分の脳では、物語の人間関係と時系列が複雑すぎて、追いつかなかった。えらい集中力がいるが、まあ今の自分には丁度いい程度なのかもしれない。難解な哲学書とかに比べれば。今回は過去1番で、騙されたかもしれない。それも限られた登場人物の数で、何度も展開が変わるのがしんどかった。
果たして、他の読者と比べて自分はどのくらい理解できているのか。楽しみ方は人それぞれでいいと思うのだが、あまりにも感情的に読みすぎている気がする。もう少しメタ的に、推理をしていった方がいいのだろうか。ただ少なくとも今の自分の心身の状態的には限界だった。まあ気張らずに、ほどほどに読んでいこうと思った。
それにしてもこんなすごい物語が代表作にならないアガサクリスティー恐るべし。
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富豪アバネシー家の当主リチャードの葬儀が執り行われた後、宏壮な邸「エンダビー・ホール」で親族が一堂に会した中、莫大な遺産の分配が伝えられた。遺産の大部分はリチャードの弟ティモシー、亡き弟の妻ヘレン、妹コーラ、甥ジョージ、2人の姪スーザンとロザムンドに6等分されるという内容であった。自分の取り分を聞いて素直に喜んだ末妹のコーラは、小首をかしげて無邪気に言い放つ。「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」その一言が、一族を怪事件へと巻き込んでいく。
面白かった!結末が分かってからの衝撃。人って本当に何を見て何を分かっているか、全然当てにならないんだなって思う。分かったような気でいて、事実は違うかもしれない。ミスリードの上手さに舌を巻きました。そして意外と小さなミスが綻びとなるということも、ミステリーとしては本当に良い作品だなと思う。クリスティの作品は人間関係の機微が細やかで、今回のように夫婦や兄弟関係が複雑に絡み合っていると余計に混乱してしまいました。新訳は読みやすくて古臭さもないし良かった。 -
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ミス・マープルが出てくる長編作品の2作目。
舞台設定的には、推理小説にある典型的な設定かな。ちょっと気になったのは、主人公がミス・マープルなので仕方ないのかもしれませんが、警察の捜査の動きが余り描かれない事。スラック警部の描写が、結構示唆的だと思ったんですが、あまり描かれませんでしたね。
結末は、謎解きまで一気に進むんですが、なんか微妙にノックスの十戒と言われる推理小説の原則から外れているような気がするのは気のせい?犯人像について、結末を描くまで、明かされていなかった点があると思うんだよねぇ。
とはいえ、古典(と言うほど古くないかもしれないけど)の作品で、良く読まれている理由が分かった気もします。面白かったです。 -
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ネタバレようやく、本作を読めたー!
殺傷能力は高め。ここに至るまで気づかなかったジョーンもだが、それをわかっていて彼女に向き合わず心の中で憐んでいるロドニーも同罪だよね…こうして相手に向き合わない夫婦いっぱいいるんだろうな〜やだやだ
「人間なんて、まあ、そんなものよね。しがみついてた方がいいのに、投げだしちまったり、ほっとけばいいのに、引き受けたり。人生が本当と思えないくらい、美しく感じられて、うっとりしているかと思うとーたちまち地獄の苦しみと惨めさを経験する。物事がうまくいってるときは、そのままの状態がいつまでも続くような気がするけれど、そんなことは長続きしたためしがないんだし。どん底に沈みこんで、もういっぺん浮かびあがって息をつくことなんて、できそうにないと思っていると、そうでもないー人生ってそんなものじゃないの?」(p.26)
娘のエイヴラルが既婚者と恋に落ち、駆け落ちしようとした時の言葉たち好きだった。
「安っぽいメロドラマのようないいかたをなさる必要はありませんわ。…あたくしたちーお互いに好きになった、それだけのことですわ」(p.176)
「君にはエイヴラルがわかっていないんだよ。あの子は分別よりも心情で行動する人間だ。誰かを好きになれば、心の奥深い所で恋をする。だからその傷は永久に残るだろうね」(p.176-7)
「しかしあの男の身にもなってみたまえ、長年、病気の妻をかかえて味気ない生活を送ってきたところに、エイヴラルの若い惜しみない愛、そのありったけの情熱と美が差し出されたのだよ。真摯で、新鮮なあの子の心意気がね」
「二十も年上の男ですのよ!」
「わかっているよ。もう十も若ければ、誘惑もそれほど強くなかったろうがね」(p.178)
「わたし、ひとりじゃないわ。ひとりぼっちなんかじゃないわ。わたしには、あなたって人がいるんですもの」
「そう、ぼくがいる」とロドニーはいった。
けれども彼は自分の言葉の虚しさに気づていたのだった。
君はひとりぼっちだ。これからもおそらく。しかし、ああ、どうか、きみがそれに気づかずにすむように。(p.326)