アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これは満足度の高い一冊!
どれも安定して面白く、それでいて長さもちょうどいい。
とはいえ収録作4話のうち、ドラマで3作視聴済み、「死人の鏡」は同じアイデアである「2度目のゴング」を読んでいるので、かなり馴染みがあるといえます(でもオチを忘れている)。”あの”サタースウェイト氏の登場にもニヤリ!
中編に近い短編ながら、なかなか込み入った人間関係が展開される作品が多いので、まったくの初見だとちょっと混乱するかも?私は「死人の鏡」でページを戻りまくりました;
小説として面白いのは「砂に書かれた三角形」、ドラマ込みで好きなのは「厩舎街の殺人」です。特に後者は、ドラマでの女性陣や内装の描写がほんとに素敵だったなぁ。小説の方でも、ポアロさんとジャップ警部のくだけたやりとりにほっこりします(^^)
また、本書の作品群は、クリスティーからポアロさんへのなかなか辛辣な物言いが多いのも面白い。
この稀代の名探偵への彼女の評価は世に知れ渡っているところですが、それをまざまざと感じさせるような表現が散見されます。まあ、当のポアロさんは特に気にしてなさそうですけど。。
黄金期の他の作家や、後世の別の作品に挑戦してもやっぱりクリスティーに戻ってきてしまうのは、親しみやすい文章はもちろんのこと、この当時の風俗にとっても惹かれるからなんですよね。
服装や食事風景、お屋敷やお庭の様子……それらが、過剰になることなくさりげなく描かれていて、今は大部分が失われてしまったそれらに、私はうっとりしてしまうんです。ポアロさんの装いや紳士的な態度にもね!
クリスティーの未読作品もだいぶ少なくはなってきましたが、忘れっぽい記憶力に感謝しつつ、ドラマ版も含めてこれからも末永く楽しんでいきたいですね(◍•ᴗ•◍) -
Posted by ブクログ
ネタバレ自己認識と、身近な人間関係の構築の仕方を考えさせられる一作だった。
ジョーンはこれまで、自分の理想とする模範的な人間であろうと努力を重ねてきた。その努力は決して否定されるべきものではない。
しかし、何事もそつなくこなせる自分への自信が、いつしか独善的な価値観へと変わっていった。自分の中の常識や正義を絶対的なものと信じ、そこから外れる人々を無意識に見下すようになっていたのだ。
そんな彼女が旅先で日常の忙しさから解放され、思索にふける時間を得たことで、これまで目を背けてきた自分自身や周囲との関係に違和感を覚え始める。
自分が正しいと信じ、努力して積み重ねてきたものが、実はそうではなかったと気づくことは、どれほど恐ろしいことだろう。信頼していた人も、愛していた人も、すべては自分というフィルターを通して見ていた姿にすぎなかった。そして、その関係が少しずつ変化していたことにさえ気づけなかった。
もちろん、自分の価値観に固執し、他者の気持ちを顧みなかったジョーン自身にも問題はある。
しかし、夫のロドニーにも責任があるように思う。彼は一見すると柔和で優しい人格者だが、自分の意見を伝えず、間違っていることを間違っていると指摘してこなかった。その沈黙もまた、ジョーンが自分の正しさを疑わなくなった一因ではないだろうか。
優しさとは、ただ相手を受け入れ、衝突を避けることなのだろうか。
自分の正しさを疑うこと、相手の価値観を尊重すること、そして時には相手と向き合い、間違いを指摘すること。
本作を通して、自分を客観視することの難しさと、本当に良い人間関係を築くためには何が必要なのかを深く考えさせられた。