司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ鳥羽・伏見の戦いから戊辰戦争、そして大村益次郎の死期までを描いた下巻。薩長連合軍の内部において様々な感情や陰謀が蠢いていたことがよく分かった。一口に「開明派」や「攘夷派」といっても、そのグラデーションは十人十色である。その最も極端な例が、大村益次郎であったと言えるだろう。蘭方医学を学ぶことを通して西洋合理主義的思考を習得し、その思考法を持って、明治維新における薩長連合軍の軍事指揮官を務めた大村益次郎は、同時に「開明派」の代表格である"福沢諭吉から冷笑されたほどに攘夷家でもあった"のだ。
大村益次郎の人生は興味深い。幕末において日本中が感情を爆発させて殺気立っている時期に -
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司馬遼太郎の代表作のひとつ。
文庫本にして八巻、構想五年・連載五年という大作。
1972年刊行。
伊予・松山の城下町に生まれた秋山好古・秋山真之兄弟と、真之の親友であった正岡子規の三人を主人公とし、明治初期〜日露戦争終結までを描いた小説。
秋山好古は、佐幕藩であった伊予松山藩の徒士(下級士族)の三男として生まれ、大阪師範学校を経て陸軍士官学校を卒業する。その際、創立間もない騎兵学科を選択する。以降、好古は生涯を懸けて日本騎兵を世界水準まで押し上げることに身を捧げ、「日本騎兵の父」と呼ばれるに至る。
後年、フランス軍人から「秋山好古の生涯の意味は、満州の野で世界最強の騎兵集団を破るというただ -
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ネタバレ秋山兄弟と正岡子規を主人公に置いて、日清戦争から日露戦争へと向かう明治の日本を描いた歴史小説。日露戦争についての細かい知識が無い状態で読んだため、物語の展開を素直に楽しむことができた。また、各人物のキャラクターがハッキリしていて、なおかつ印象に残るフレーズも出てくるため、長さの割りには飽きずに読めた。もっとも、元が連載小説であるためか、同じ説明が何度も繰り返される点は、冗長に感じた。
読後、坂の上の雲の内容は、司馬史観と呼ばれ、批判されていることを知った。司馬遼太郎が描く明るい明治と暗い昭和の対比は、たしかに現代日本人にとってしっくりくる感じがある。しかし、それが本当に正しい見方なのかを疑 -
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ネタバレ「維新の十傑」の1人である大村益次郎は、改名するまでの期間を村田蔵六と名乗っていた。「蔵六」という熟語は、亀が手足を甲羅の中にしまって閉じ籠る様子を指す言葉であるようだが、これほど村田蔵六という人物を的確に表す言葉は他にないだろう。攘夷思想によって殺気立つ長州藩に仕えながらも、政治活動には興味を示さず、ひたすら蘭方書を読み漁る村田蔵六という人物は、同藩の士にとっても奇怪な人物として写ったに違いない。そんな蔵六が、後に木戸孝允と名乗る桂小五郎の指名を受けて長州藩の軍事統括を担うことになる。蔵六が大村益次郎として幕軍との戦争に挑むのは本作(中巻)以降である。
最後に、幕長戦争に臨むにあたって長 -
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ネタバレ印象的な記述を記しておく。
「この極東の島にいる日本人のおもしろさは、オランダ文字といういわば針の頭ほどに小さな穴を通して、広大な西洋の技術世界をのぞいている。」
中略
「西洋人がヨーロッパの他の言語をまなぶ作業とは、大いにちがっている。言語の世界に対してそれぞれの学び手がもっている文明の像と質に対する想像力を最大限にはたらかせることであった。」
「そういう想像力の作業は、この地球上のいかなる民族よりも、日本人はふるい鍛錬の伝統をもっていた。」
スマホやSNSが普及した現代では、情報が波のように押し寄せてくるため、想像力を膨らますにも脳の容量が足りなくなるケースが多