司馬遼太郎のレビュー一覧
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幕府を倒すために薩長連合を成立させた竜馬だが、
薩長が新政府を作った場合の帝国主義的政策を危惧する。
幕府対薩長の対立は、帝国主義的に見れば、イギリス帝国主義対フランス帝国主義という対立による、日本の植民地化の争いに他ならない。
そのためには、幕府を倒して、且つ、薩長を制御する方法が求められる。
それが、「大政奉還」の一手だった。
勝海舟•大久保一翁という幕臣が考えた徳川家の延命策のアイデアを、千載一遇のチャンスとして、換骨奪胎して、実行に移したのが竜馬だった。
それは日本が植民地に堕することなく、新しい日本国を作り出す奇策だった。
「薩長連合」にしても「大政奉還」にしても、竜馬という一浪人 -
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一人の人間が歴史を変えることがある。
坂本竜馬が存在しなければ、(襲いかかる幾多の危機を乗り越えられず、もっと早くに死んでいたら—その可能性は物凄く高かった)、現在歴史的として存在している「明治維新」はなかった。
そんなことはあるだろうか?
遅かれ早かれ、江戸幕府は崩壊し、「明治維新」は訪れていたのではないか。
この本は、それを否定しない。
しかし、竜馬無しで成し遂げられた「明治維新」は、現在我々が「明治維新」と呼んでいるものとは、違っていただろうと、本書は指摘する。
そして、あったかもしれない「もう一つの明治維新」の姿を、垣間見させてくれる。
それは江戸幕府主導の「明治維新」だ。
幕臣にも -
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本書で、日本は滅亡寸前にあった、という驚くべき事実を知った。
日本がロシアの植民地にならなかったのは、歴史的偶然の重なりによるもので、決して日本の陸海軍が強かったわけではない。
歴史の教科書では、日露戦争の勝利は恰も必然のように記述されているため、我々は錯覚しているが、実はこの時が、日本史上、国家滅亡の最も瀬戸際にあったことを知って慄然としないわけにはいかない。
圧倒的な軍事的格差があるにも関わらず、日本が大国ロシアに戦いを挑んだ背景には、日本国民の世論があった。
ロシアとの戦争を回避しなければならないと悲壮な覚悟でロシアとの交渉に当たった伊藤博文は、弱腰と猛烈な批判を受けたが、それは、伊藤 -
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▼全4巻併せた感想です。
「山内一豊の妻(千代)」と、山内一豊のお話。司馬遼太郎さんの長編で唯一、女性が主人公のもの。恐らく15年以上ぶりの再読。気軽に楽しみました。
▼千代が主人公、として作ろうとしているのだけど、結局は夫の山内一豊が主人公のような印象。司馬さんはやっぱり基本、戦闘、戦争、戦術、戦略が好き。言ってみればジェンダー性よりそっちが好きなので(笑)。
いやそれでも千代と言うキャラクターも魅力的に描かれてはいるんですけれど。ただそんなには、しつこく、深く、粘着質に、「千代を描く」ことに執着してません。テンポよく、省略の妙でぐいぐい進みます。そのあたりは技術的に目がくらむ旨さ。
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『国盗り物語』(司馬遼太郎)
1. この本を一言で表すと?
常識と権威を破壊し、自らの才覚と情熱だけを武器に時代を切り拓く「変革者の生き方」を学ぶための物語。
2. この本から得られる3つの核心的学び
学び①:過去の成功体験は、未来の足枷になる
本書で引用される「負けた戦法をくりかえす軍人」のように、人間や組織は一度成功した方法に固執しがちです。しかし、時代や環境は常に変化しています。過去のやり方が通用しなくなったとき、それに固執するのは敗北への道です。真の勝者とは、プライドや前例を捨て、大胆にやり方を変える「戦術転換」を断行できる者です。
学び②:常識を疑い、本質だけを追求する
油 -
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戊辰戦争は西軍が優勢のまま、ついに越後にも恭順か抗戦かという決断が迫られる。その中で武装中立という、あくまで長岡藩を独立させつつ西軍と東軍の橋渡し役を担うべく奔走する河井継之助は、やがて自らの運命を悟るようになる。
題名の「峠」とは、実際の戦場となった榎峠のことを指すとともに、幕末から維新へと向かう日本社会にとっての転換点でもあることを示している。とくに北越戦争および会津戦争は、必ずしも優勢ではなかった西軍がその後の維新へと向かうための重要な戦略的転換点であり、ここでの勝利が決定的だった。
継之助にとって不幸だったのは、西軍との交渉役が岩村精一郎だったことだろう。歴史にタラレバは禁物だが、 -
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ついに戊辰戦争が開始される中編。長岡藩では緊急事態下で河井継之助を家老に任じて、幕府と朝廷の様子を探るべく藩主自ら大阪・京都に直接赴くことを決意する。長岡藩を含めた幕府方の大軍が徳川慶喜のいる大阪城周辺に集結するなかで、ついに鳥羽伏見の戦いが勃発するのだった。
徹底的なリアリストとして、藩には緊縮財政を迫りつつそこで得た金で最新鋭の武器を西洋から仕入れる継之助。プロイセンという列強のなかでは後発の国で、自らも成り上がろうとするスネルからガトリング砲など強力な武器を次々に購入し長岡に運び入れていく。
恐らくは著者の創作だろうが、河井継之助と福沢諭吉の対話はお互いがリアリストでありながら、戦争 -
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河井継之助はいわゆる敗軍の将であり、戊辰戦争時には小藩を率いて官軍に抵抗し一目置かれた存在である。その継之助が何者でもない、自分探しのような旅に出るのがこの上編となる。
江戸に遊学して古賀謹一郎の私塾に学び、備中松山へ山田方谷に会いに行き、長崎や横浜に逗留して海外情勢を読むといった行動をする継之助。彼はすでに幕府は倒れるであろう見通しを持っており、開国や尊王の不可逆な流れは避けられないと悟る。司馬史観における幕末アナザーストーリーとして、どこまでが史実かは不明だが、まるで坂本竜馬である。
しかし彼の立場はあくまで徳川譜代大名の家臣であり、佐幕と体制維持の圧力を公私にわたって受け続けることと -
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稀代の軍師黒田官兵衛一代記の最終巻。官兵衛の性格は一見すると軍師らしからぬけど、こういう人でないと策も上手くいかないというのは説得力がある。毛利元就も同タイプだったのかもしれない。その毛利元就の息子2人が凡庸な孫の輝元を支えるのは美談。高松城の水責め中に本能寺の変が起こり秀吉が始動する訳だが官兵衛の一言は正直過ぎて失言に近い気もする。それで警戒されている訳だから確かに正直な人だったのだろう。
太閤記もそうだったけど本作も後半は駆け抜けるようなテンポになっている。如水となってからが短い印象だ。
関ヶ原の時の不穏か行動も息子長政の東軍への功績で露と消える訳だがこれは段取り不足で長政の名前を落とすに -
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ネタバレ司馬遼太郎の数多くの中・短編の中でも秀逸した作品の一つだと思う。
本書で書かれているのは、幕末の動乱期を舞台にした勝者・敗者の双方を取り上げているが、いずれも歴史に翻弄された人々を描いている。
表題以外に、岩倉具視の策士として歴史に大いなる影響を与えた玉松操を描いた「加茂の水」、日本史上最高の軍事家大村益次郎の非凡な生涯に触れた「鬼謀の人」(「花神」の別バージョンといえる)、長岡藩の天才的軍師河合継之助の悲劇を描く「英雄児」(「峠」の別バージョンといえる)、最後に幕末の異端児で、これも身分制ゆえに悲惨な生涯を送った岡田以蔵を描いた「人切り以蔵」が収録されており、いずれも読みごたえがある。