司馬遼太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『竜馬がゆく(一)』を読んでまず感じたのは、これは歴史小説というより、ひとりの若者の成長物語だということだった。
幕末という激動の時代を描く作品なので、もっと政治や歴史の話が中心なのかと思っていた。しかし1巻で描かれるのは、まだ歴史を動かす前の坂本竜馬だ。剣術に憧れ、江戸へ出て、仲間と出会い、自分の進むべき道を模索する。その姿は後に教科書に載る偉人というより、将来に迷いながらも前へ進もうとする一人の青年に近い。
読んでいて印象的だったのは、竜馬の持つ不思議な魅力だ。決して天才として描かれているわけではない。剣術も最初から抜群というわけではなく、身分も高くない。それでも周囲の人間が自然と惹かれていく。頭の回転が速いというより、人と違う視点でものを見ることができる。目先の勝ち負けよりも、もっと大きなものを見ている。その片鱗がすでに1巻から描かれている。
また、本作の面白さは登場人物の描き方にもある。武市半平太、お田鶴、千葉定吉や千葉佐那など、後の人生に大きく関わる人物たちが次々と登場する。単なる歴史上の名前ではなく、一人ひとりが生きた人間として描かれているため、人物相関を追うだけでも面白い。歴史の知識がなくても自然と物語に入り込めるのは、司馬遼太郎の筆力の凄さだと思う。
特に感じたのは、竜馬と武市半平太の対比だった。同じ土佐で育ち、同じ時代を生きながら、二人が見ている世界は少し違う。武市は土佐藩という枠組みの中で考える。一方の竜馬は、その枠組み自体をどこか窮屈に感じている。この違いが今後どう広がっていくのか非常に気になった。
そして何より、この作品はとにかく読みやすい。歴史小説というと堅苦しい印象があったが、『竜馬がゆく』はまったく違う。会話は生き生きとしていて、人物は魅力的で、気づけばどんどんページが進んでいく。25年以上前に書かれた作品とは思えないほどエンターテインメント性が高い。
読み終えて感じたのは、まだ大きな歴史は始まっていないということだった。薩長同盟も大政奉還もまだ先の話である。それでも面白い。なぜなら、この時点ですでに「竜馬という人間」を好きになってしまうからだ。歴史上の偉人としてではなく、何かを成し遂げそうな若者として見守りたくなる。
『竜馬がゆく(一)』は幕末史の入門書ではない。坂本竜馬という人物に出会うための物語だ。そして1巻を読み終えた時点で、なぜ多くの人がこの長大な物語に夢中になるのか、その理由が少し分かった気がした。歴史を知るためではなく、この男の行く末を見届けたくて次の巻を手に取ってしまう。そんな力を持った作品だった。
#2026年20冊目 -
Posted by ブクログ
司馬遼太郎先生の幕末維新モノとしては『翔ぶが如く』が著名だろうが明治政府の巨頭大久保利通がわざわざトドメを見届けに来るほど警戒していたところに江藤新平の凄さが分かる。金の無い書生を置いたり(史実によるとテストがあったらしい)している良さがあるのに何故か性格的に難のある人物となっている。分岐点は征韓論だろうか。周囲の忠告があるのに帰国したのはいただけない。妙な表現だが知能は高いが賢く無いような気がする(違ってるかもしれないが劉邦はその逆だと思う)。指名手配の写真を導入とかも仕事ができる証左だが己が反乱者かつ敗北者となって逃亡者として活用される運命の皮肉!
それにしても士族の反乱に巻き込まれずに最後まで政治家として大久保利通と対抗していたら法務大臣には収まっていたと思われる。合掌。 -
Posted by ブクログ
幕末戦争史に影響と名前を残した維新の十傑にして軍事家の一代記最終巻。同じ適塾でも福沢諭吉が驚いた攘夷派だが、その学識というか実践力は深く花神とタイトルに称させれるのも頷ける。
現実の大村益次郎は乗馬も出来るし豆腐以外も普通に好んで食べていたしイネとも不倫関係になかったという事らしいが、小説としてみれば本作の無愛想で職人のような平等思想を持つ彼の方がキャラは立っている。海江田氏が黒幕にして悪党のような描写だが、彼からすると約束したのに戦費とはいえお宝を売却してしまう大村益次郎の方が悪党という事になりそうだ。
政治が苦手なエキスパートという事でジャンル違いで高橋是清を彷彿させるが2人とも暗殺されているところにも共通点を感じる。