【感想・ネタバレ】項羽と劉邦(上)のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月21日

登場人物全員、キャラがいいんだよなあ。。。
劉邦のダメっぷりもいい(笑)
ちっぽけな自我を捨てられたら、少しは器が大きくなれるかなあ~

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Posted by ブクログ 2023年12月19日

紀元前221年に春秋戦国時代の中国を統一し、秦王朝を打ち立てた始皇帝の末期から始まる本書。それまでの封建性に取って代わり、官僚制による各地を統治するという斬新な方法で全国を支配した。万里の長城を始めとする数々の大型土木工事を行ったが、これを実行する為に各地から労働力を徴用しつづけたことで民心は離反し...続きを読むていた。始皇帝が死ぬと、各地で武力勢力が蜂起する。宦官の趙高は胡亥(こがい)を担いで形ばかりの後継の皇帝とし、自らがすべてを取り仕切る事に成功する。

統制が乱れた地方では同じ様に各地域の旧王族を担ぎ上げた自称王国が多数誕生する。其の中の一つが、江南の楚であった。項梁がかつての楚の王を血を引く男、羊の糞を乾かして売り歩く男を探し出し、楚王に祭り上げる。
軍を立上げ、項梁の甥である項羽と、劉邦は楚軍の将軍として秦の軍を打ち破っていく。

一方、秦は趙高の代理施政によって完全に内部が腐敗し、外で展開する反乱を収める能力は失っていた。

ここで描かれている事は、その4〜500年後の三国志で起きる事と酷似しており、歴史は繰り返すという言葉はすでに2000年前から同じである事を思い起こされる。役人の腐敗、人民からの搾取と虐殺、傀儡による政治の私物化、謀反などあらゆる悪事はその後の中国の歴代王朝でも何度と無く繰り返され、そして現代に至る。

更に驚くのは、ここから更に1500年ほど遡った殷王朝に関する記述。存在が確認されている王朝としては中国最古であるが、その遺跡には王の周辺に首の無い骨が500柱程発掘されているという。それが何を意味するのかは不明であるが、おそらくは殉死者なのか奴隷なのかという事である。そのような野蛮な事が行われていた事に驚愕する。

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Posted by ブクログ 2023年08月19日

歴史には疎く、歴史書を読むことは少なかったのだが、先日中国の西安・成都に観光に行って興味が湧いたことをきっかけに、司馬遼太郎の項羽と劉邦を読むことにした。上・中・下の三巻からなり、それぞれ約500ページもある書で、まだ上が終わったばかりだが、非常に面白い。

項羽と劉邦だけではなく、周りの人物像もこ...続きを読むと細かく記載されており、歴史的背景も非常によく分かりやすく記載されており、またクスッと笑える部分もある。たまに中だるみする箇所があったが、戦闘シーンなどはまるで映画を見ているように情景が頭に浮かび、最後の項羽と章邯が出会う場面では、章邯に感情移入しすぎて涙が流れた。

続いて中へ進もうと思う。

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Posted by ブクログ 2021年11月28日

キングダムにハマり、中国の歴史に興味を持ち読み始めました。 どの視点で物語を見るかによって感じ方も大きく変わりますね。 司馬遼太郎さんの歴史小説は面白く、次に進みたくなりますね!

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Posted by ブクログ 2021年02月19日

この書を読んで、人間とは、政治や宗教で生きているのではなく、食を繋げるために生きていること、歴史上の大動乱は飢餓が産み出していることに納得した。

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Posted by ブクログ 2019年07月12日

おもしろい!項羽も項梁も劉邦も章邯もみんなみんな性格が違うし、色々なことが起こりすぎてドラマを見ているようだった!

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Posted by ブクログ 2018年10月17日

始皇帝が中国全土を初めて統一したという業績の裏に、彼一人が法を超越した独裁者であったが故に、その死後に人民の反乱を招いたことを再認識。陳勝呉広の乱は、遥か昔の教科書の記憶か? 項羽と劉邦の生い立ち・性質の違いや、彼らの参謀となる人物が、著者の筆致で生き生きと伝わってくる。

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Posted by ブクログ 2018年09月24日

登場人物全てに物語がある。
特に気に入った人物は秦最後の名将、章邯将軍
その卓越した戦略眼と報われない忠義、呆気ない最後...。

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Posted by ブクログ 2018年07月22日

キングダムで中国について少し興味を持てたのでやっとこの本に手を出して見た。
ちらっとキングダムにも出てきた趙高がこれほどの悪いヤツだったとは!!!
今後の展開が楽しみ!

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Posted by ブクログ 2017年11月08日

久しぶりの再読です。
上巻を読んだあたりで、違和感が。もっとダイナミックな話だったはずなのに、なんだか鳥瞰図が多く、妙に客観的な感じがします。しかし、振り返ってみれば上巻時点では主人公の劉邦はまだちらちら顔見せするくらいです。
中巻に入ったくらいから、いよいよ物語が地上に降りてきたようです。劉邦...続きを読むはもちろん軍師・張良、将軍・韓信、奇士・陳平など多彩な登場人物が生き生きと動き始めます。このあたりはやはり司馬遼の真骨頂というべきところです。
軍神とも言うべき項羽と、百戦百敗のくせに人を集めるのが得意で、常に頽勢を盛り返す劉邦。そういった人物像が鮮やかに描かれていきます。多少、解説がくどい感じもありますが。
劉邦寄りの視点で描かれ、劉邦が行った裏切りなどはサラリと流した感じはありますが、そのほうが物語としては面白いのです。
やっぱり、司馬遼です。

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Posted by ブクログ 2016年02月28日

沼沢に囲まれた田園地帯で古代的雰囲気(古代だけど)のなかで、ハングレの劉邦は仲間にかつぎ上げられて反乱を起こす。
前後して、年若の項羽も上海よりずっと南の方でやはり反乱を起こす。
大抵、中国の王朝は反乱が起きて倒壊するが、この史実が記念すべき処女革命。

項羽は超絶無比に強かったけど、冴えない劉邦に...続きを読む日を追って追い越されて四面楚歌。
江南の滸で果てる。

司馬先生の作品領域で唯一の中華史長編。

中華史でもその後の漢民族にとっての性格基礎や民俗、教育概念に影響を与えた劉邦の重要性は大きい。
現代中国人のほとんどは自らを漢族と呼ぶが、劉邦の建国した帝国を漢というくらいだから。

太古の中国農村に劉邦は生まれた。
日本の稲作田園風景、草深さと土臭さのルーツが古代の中国にはありそうだと読んでいて感じる。

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Posted by ブクログ 2021年08月21日

テストの漢文対策で読み始めた本。
しかし読んでいくとなかなかに面白い!
最後のほうは、漢文対策のことなど忘れて読みふけっていました。

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Posted by ブクログ 2024年03月01日

個人的には読み進めるほど、章邯と司馬欣に魅力を感じて持っていかれました笑
現代日本人の私たちでは感覚が掴みづらい当時の風習や世界観を端的にわかり易く説明しながら、キャラクターにしっかり血が通っているのが感じ取れる物語の展開の仕方が凄かった。
司馬遼太郎先生の作品を初めて読み終えたけど、頭が混乱しない...続きを読む物語運びが、ただシンプルに凄いと思った。

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Posted by ブクログ 2023年12月26日

やはり中華の歴史は読み応えがある。

登場人物の魅力的なことといったらない。
その土地土地の民族性などの説明もあり、すごく分かりやすいし読みやすい。

上巻は劉邦はあまり活躍せず、主に項羽がどのような人柄かがよく分かった。

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Posted by ブクログ 2023年12月20日

兵士と共に戦う項羽、戦下手だけど人の話をよく聞き褒美をしっかり出し人が集まる劉邦。この対比が面白かった。

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Posted by ブクログ 2022年03月01日

【著者として 同じく司馬と 名乗れども
 人の魅力と 歴史の必然】

『史記』と言えば司馬遷が有名だが、それを踏まえた上で読むと面白いかと思われる。史記は、個人にクローズアップし、生き生きとその人間の魅力が描かれているが、この著作は歴史現象として描かれている。
下準備もなく挑戦すると、地名なのか、人...続きを読む名なのか、国名なのか、分からなくなる人もいるだろう。
項羽と劉邦というタイトルの割には、二人に対してあまり好意的な感じがしない。むしろ自然発生的な現象として祭り上げられたという感じが強くある。これは司馬遼太郎の独特の英雄史観や歴史史観と思われる。
本当の主役はショウカであり、兵站の大切さを説いている所は、実に新しい考えであると思われた。
この小説はエンターテイメントとして読むのではなく、学術的歴史書として読むと面白さが増す。 面白さが分かるのは、大人になってからだと思われる。

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Posted by ブクログ 2021年08月12日

秦の始皇帝の死後、宦官の趙高の謀によって蒙恬や始皇帝の長子扶蘇、李斯が死に、始皇帝の末子胡亥が二代皇帝となった。初めて統一された中国は秦の法家思想に馴染まず、陳勝・呉広の乱を皮切りに各地で流民が反乱を起こす。多くの流民の食を確保し、楚の懐王を奉じて力をつけた項梁は、秦の章邯によって定陶で敗死するが、...続きを読む甥の項羽は章邯の先鋒を破り、章邯を降伏させる。しかし秦の降兵20万の反乱を危惧した項羽は、20万の兵をパニックに陥らせ穴に落として虐殺する。

クールな章邯が項羽に尊敬されていると告げられて泣く場面が印象的。劉邦は別働隊として関中に向かっていて、先に関中に入ってしまうのではないかと項羽がヤキモキしているが、これが鴻門の会のあの場面につながっていくのだろうか。
項羽はまだ20代だけれど劉邦は40超えてる。結構歳いってるんだな。

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Posted by ブクログ 2021年01月28日

p.292
この感心の仕方に一種の愛嬌があり、愛嬌がそのままひとびとに徳を感じさせる風を帯びていた

キングダムの後の世界が"この世界"だと考えると 世界って 歴史って 何なんだろうって思ってしまいます。
(キングダム 全然読んでいません。すみません。秦の始皇帝の話ってことぐらい...続きを読むの知識しかありません。ごめんなさい)

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Posted by ブクログ 2020年11月16日

横山光輝氏の漫画版を読んでいたので物語視点では
違いのない感じだが、秦帝国、陳勝の乱についての
歴史的視点で深く改めてで楽しめました。

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Posted by ブクログ 2020年01月10日

漫画『キングダム』のその後の話(もちろん、どちらもそういう想定で書かれたものではないですが)。

始皇帝=嬴政の晩年の話から始まり、嬴政が!蒙恬が!あんなことになっちゃうなんて!というのはショックでした。。

良くも悪くも色々なリーダーが出てきてとても勉強になります。中巻以降も楽しみです。

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Posted by ブクログ 2019年06月06日

【感想】
最近映画にもなった超人気漫画「KINGDOM」。
この本は、「KINGDOM」で秦が中華統一を遂げた後の時代の物語である。
登場人物が多く、またシーンごとに色んな場所に移り変わりするので、兎にも角にも固有名詞が多すぎる!!
また、漢字の1つ1つも難しいため、中々読み方を覚えられない・・・笑...続きを読む

そんな感じで四苦八苦しながら読み進めていたが、固有名詞を除けば、非常に読み易く面白い物語だった。
自分にとって中国の歴史小説は本著「項羽と劉邦」が初チャレンジだが、中国の国民性や国の歴史の凄まじさは本当に背筋が凍る・・・
同じアジアでも、島国民族である日本人と大陸民族である中国人は似て非なるもの、いや、根本的に全く違う人間だと思った。

秦の凋落は始皇帝の死亡が大きな理由だったのだろうけど、国や時代は違えど、こういったケースは現代の日本社会にも多い気がする。
・トップのワンマン経営からの後継者問題。
・システムがしっかり構築されていたとはいえ、がんじがらめすぎる法整備。
・支配しているとはいえ、心のどこかで軽んじられていて、憎まれていた点。
⇒(本著では、他民族に秦民が漢民族の血が薄いと軽侮されていた点が該当する。)
こういった要素は、遅かれ早かれ組織が衰退してしまう重要な危険要因になり得るなと読んでいても思った。
この物語は項羽と劉邦という英雄が現れているけども、秦が凋落してしまうのは至極当たり前だったのだろう。

さて、上巻では主に始皇帝の末期から死後の中国史が書かれており、どのようにして反乱が勃発するに至ったかを明確に描かれている。
また、タイトルにもある項羽・劉邦の生い立ちから反乱に至るまでを書かれていたが、現時点では項羽に焦点が当てられて物語は進んでいる。
(劉邦に比べて)育ちが良いサラブレットのような項羽と、「雑草魂」さながらの劉邦。
2人が今後どのように決裂していくのかは非常に楽しみである。


【あらすじ】
紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。
しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。
これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する“人望"とは何かをきわめつくした物語である。


【引用】
p17
秦は早くから法律と刑罰と鞭による統制主義を採用し、法家の国とされた。
また真鍮や冶金が上手で、するどい兵器も他の六国(楚、斉、燕、韓、魏、趙)に比べてはるかに豊富だった。
秦がもつ統制主義と生産量と兵器の優越が、この国をして他の六国を凌がせ、秦王・政(セイ)にいたり、やがて六国を滅ぼして奇跡としか言いようのない大陸の統一を遂げさせた。

しかし、旧六国の遺民たちは秦を野蛮国と見、漢民族の血液が薄いと見て軽侮していた。
軽侮されてきた国の王が皇帝になったところで、劉邦や項羽ならずとも神聖視しなかった。


p30
・始皇帝の最期と粛正
紀元前210年、始皇帝が巡幸中に死亡すると粛正の嵐が始まる。
始皇帝の身辺の世話をしていた宦官(かんがん、去勢を施された官吏)・趙高と宰相・李斯(りし)は、まず皇帝から後継指名を受けていた長男の扶蘇(ふそ)を自殺に追い込む。
そして次男の胡亥(こがい)を二世皇帝に据え、傀儡政権を樹立した。


p43
悪事というのは積み重ねられると、どこか空疎で滑稽な色をおびてくる。
が、悪事は仕上げられるという極みがない。

法にあかるい趙高は、不安要素である皇族や重臣ひとりひとりについて罪状をつくりあげ、法に照らして処断していった。
またその家族や使用人も同様の目に合わせたが、その数がおびただしいために社会不安の元となった。

その不安は官営土木事業に集められている農民や兵士要員の連中も動揺させ、「逃げるも行くも死刑」という考えが満ちてゆき、「法の元である秦そのものを亡ぼす」という反乱の火種となった。


p62
項羽は二十歳前になると、身の丈八尺(184cm)を越える大男となった。
それに力は鼎を持ち上げるほどに強く、頭脳の回転が速く、一種匂うような愛嬌もあった。
この項羽の肉体的な雄大さと人柄とは、叔父とともに縁を結んでゆく土地土地で、若者たちの人気を得るようになった。


p76
始皇帝の多くの失敗の一つは、自分の称号「皇帝」について、伝統のない新語を作ってしまったことであろう。
「秦といえば西戎(せいじゅう)、西方の野蛮人のたぐい」と人々は思っている。
始皇帝の生存中はその強烈な統御力と、彼が率いる固有の秦軍の強さでもって天下は恐れ伏しなびいていた。

いまひとつ、始皇帝の失敗は、すべての人民を自分の私物であると思い込み、盛んに労役に駆り立てたことであろう。


p89
劉邦の生まれは、この沛県(はいけん)の治下の豊(とよ)という邑である。
劉家は、ごくありきたりな農家といっていい。
「劉」という姓を持つだけで、家族たちは名前らしいものをもっていない。当の劉邦でさえ、「邦(パン)」というのは「にいちゃん」という方言で、劉邦とは「劉兄貴」ということであった。

劉邦の面白さは、いっぱしの存在になってからも名を変えず、あにいのまま押し通したことである。


p141
劉邦の人間は、ひとに慕われやすくできている。
そのくせ有徳人でもなく、またこの時期に長者の風があるわけでもない。
ただ人間の風韻が大きい上に、弟分の者が劉邦を仰ぐときにいたたまれぬほどに何かしてやりたくなる可愛げというものが劉邦に備わっているのであろう。

蕭何(しょうか)のような男が、自分の保身のためにそう思ったはずがない。
それだけではなく、蕭何は劉邦を売り出そうとし、農家にて田畑を耕すべき劉邦を最下級とはいえ、ともかく吏にさせた。


p160
「戦国の頃のほうが良かった」と思わぬ者はいない。
かつて戦国の頃、六国が割拠していたときはかえってその国々の内側では治安が良く、このような労役もなく、乱れもなかった。
法治主義と官僚機構の整備という点で世界史上最も先進的な国家をつくった秦は、その点で先進的でありすぎたのか、人民が国家や法の組織から肉離れしてしまい、厳格な法のもとでかえって治安が悪くなった。


p225
胡亥は秦帝国に背く者や、そういう勢力が出現するなど想像したこともなく、ましてそれが戦争の形態をとっている事実そのものを知らない。
「汝、朕をまどわすか」と叫び、趙高に処させた。

趙高は、次々に似たような使者がくることを恐れ、戦場からいかなる報告がきても、「流賊は鎮定されつつある」と伝令に言わしめよ、と命じた。

以後、戦場から多くの使者がきたが、宮門を入ると、すべて戦勝と鎮定の報告になった。
胡亥はついに陳勝という名を知ることなく、また項羽・劉邦といった名も知らず、秦を滅ぼすに至る反乱者の名を知ることなく短い生涯を終えることとなった。


p237
陳勝の幸運は、たまたま穀倉地帯で挙兵したことであった。
「陳ならば食える。」その情報が四方の流民に飛び、陳勝の徳望によるものではなく、食ということについての魅力が流民を吸引したといっていい。
膨張しすぎた流民団のために、陳勝はさらにあらたな穀倉地帯を求めるべきであった。
そのことを怠け、自らを高くして王を称してしまったことが、陳勝の失敗である。

食が英雄を成立させ、不幸にも食わせる能力を失う時には、英雄はただの人になる。


p342
・項梁の最期
籠城し続けてた挙句、敵方の夜襲によって城内に入られ、敵味方の洪水の中でいつのまにか押し潰されるようにして死骸となった。
一軍の総帥でありながら、誰に討たれたかということさえわからなかった。
項羽と劉邦からみれば、彼はこの両人を前面に押し出すために懸命に生き、そして死んだとも言える。


p402
秦の章邯(しょうかん)は、おそるべき器才を持っていた。
のち、反乱軍が歴史の正統の位置を占めるために章邯の存在はほとんど注目されなくなったが、ともかくも彼の機動軍が、反乱の火の海の中を転々して敵を各個に撃破しつつ、しかも軍隊内部の統制がよく保たれていた。

彼の作戦の特徴は、盛んな機動性の発揮にある。
さらには攻撃すべき要所をよ選び、それを決定するとそこへ兵力の大集中を演じてみせる。


p442
秦軍総帥の章邯は、士心を得ていた。
「章邯将軍がいる限り、必ず勝つ」という信仰がもはやできていた。
章邯は特に演技をして彼らの心を獲ろうとしたのではなかった。

戦いを経るにつれ、元来太り気味だった章邯の体つきが、腱をより上げた鞭のようにしなやかになり、かつては丸かった容貌までが、?肉がそげおち、あごがとがって別人のように変わった。
前頭部は常に傾いていて、何かを絶えず考え込んでおり、すぐれた職人のように無駄口というものを一切たたかなかった。

章邯は職人肌の男だった。
自分の作品である戦争という勝負事に没頭しているだけで、後方の都に対し、政治感覚を働かせるという配慮は全くしなかった。


p456
趙高は軍事に暗くはあったが、しかしこの段階ともなれば、章邯の軍隊が敗れた以上、秦も終わりだということはわかっていた。
さらにはそれを破るほどに楚軍が強大になっているということは、次の帝国が楚人によっておこされるということも見通していた。

彼は今は生き残ることを考えている。ただ生きるだけでなく、次の楚帝国の貴族として残りたかった。

そのためには二世皇帝の胡亥を楚のために殺せばよかった。胡亥を誰よりも容易に殺せる位置に、趙高はいる。

(劉邦という男に密使を出さねば。)
(それまでは、胡亥の首はわしの手飼いにして生かしておく。)
と、肚の中で思いつつ、現実の胡亥に対しては、いずれ天下は平らかになりましょう、しかし前線の将軍(章邯)の失敗はすぐさまお叱りにならねば、と言った。


p483
秦兵というのは、歴史的にも非秦兵にとって強兵という印象が強く、捕虜になっても恐怖を感じざるを得ない。
その上、20余万人という人数はいかに丸腰でも楚軍よりも多く、捕虜として連れ歩くには荷が重すぎた。
「章邯以下3人だけは大切にしたい」


p483
・新安事件
深夜、黥布(げいふ)軍が秘密の運動をした。
足音をしのばせて捕虜たちの宿営地の三方をかこみ、一方だけあけ、次いで包囲を縮めた。
この深夜の「敵襲」で、20余万の秦兵たちがパニックにおちいった。

彼らは一方に向かって駆け出し、互いに積み重なりつつ逃げ、やがて闇の中の断崖のむこうの空を踏み、そこから人雪崩をつくって谷の底に流れ落ちた。
最初に底に落ちた者は即死したが、つぎの段階きらは落ちた者の上に落ち、続いて落下してくる人間によって体をくだかれた。

ついには無数の人体によって窒息し、密度が高くなるにつれて人の体が押しつぶされて板のようになった。
たちまち20余万人という人間が、地上から消えた。

大虐殺(ジェノサイド)は世界史にいくつか例がある。
一つの人種が他の人種もしくは民族に対して抹殺的な計画的集団虐殺をやることだが、同人種内部で、それも20余万人という規模でおこなわれたのは、世界史的にも類を見ない。

また、項羽がやったように、被殺者にパニックをおこさせ、かれら自身の意志と足で走らせて死者を製造するという狡猾な方法もまた、世界史上この事件以外に例がない。

翌朝から項羽軍は総力をあげて断崖のふちに立ち、数日かかって秦兵の死骸に土をかぶせ、史上最大の穴埋めを完成した。

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Posted by ブクログ 2019年04月09日

ヤクザの大親分であるオッさんvs血気盛んで優秀な若手武将。能力的及び格好良さでは項羽に軍配が上がりそうだが、そうはいかないのが歴史の面白さでありこの本の醍醐味。

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Posted by ブクログ 2018年12月12日

紀元前2世紀の中国での話。春秋時代が終わり始皇帝が中華を統一する。新しい時代が始まり平和が訪れると思いきや、新しい政治や、凄まじい税金、労役に耐えきれず不満が各地であふれ始める。秦の新皇帝となった胡亥を盾に裏で工作をする趙高の暴政。元六国の兵士が打秦を目指し反乱する。馬鹿という言葉の由来もこの時代の...続きを読む趙高の暴政のエピソードである。
反乱するものの敵は秦只一つだが、その反乱の仕方や、手段はそれぞれ違い、残虐なやり方や、人望を集めるやり方などそこが面白かった。この話の主人公である項羽と劉邦。全く正反対の性格といってもいいこの2人の今後の展開がきになる。

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Posted by ブクログ 2018年06月26日

骨太な歴史小説を読みたいと思って読んでみた。

秦の始皇帝が亡くなって、悪政に苦しむ中から、秦を倒そうとする勢力が立ち上がる。
その中に項羽と劉邦がいた。

かつての大将軍の家柄を持ち、戦での圧倒的な強さも持つ項羽と、

何もないが周りを引きつけるカリスマだけはある劉邦。

それぞれ違う境遇ながら、...続きを読むその対比がお互いを生き生きと見せる描き方になっている。

上巻では二人が本格的に立ち上がる所までを描いているが、二人以外の色々な人物像もとても面白い。

明らかにクズな人間や、不遇の人生を歩んだ人間。
悪政と反乱に恐れなければならない市民など。
酷い時代もあったんだなぁ、と不憫におもう。

文章の書き口が、淡々と事実描写を書いてるように見せて、人物の心の動きも感じることができる書き口であった。司馬遼太郎はすごい。

次巻も楽しみ。

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Posted by ブクログ 2023年08月24日

始皇帝が中国を統一したところから物語が始まる。始皇帝が全国に顔を見せるために巡回している間に死んでしまい、それに漬け込んだ宦官の趙官が胡亥を要して実質の皇帝になる。始皇帝から始まった建設事業によって多くの人たちが駆り出され不満が溜まっていきついに陳勝が反乱を起こすことで秦帝国の崩壊が始まる。これに続...続きを読むき呉中の項梁、項羽や沛の劉邦らが反乱軍を組織。鉅鹿城にて章秦軍を倒した項羽は20万もの秦軍を捕虜とするも新安で20万の兵を谷に生き埋めにしてしまう。
シンプルに戦国時代の中国を統一した始皇帝はすごいが封建制度から法治国家にするのは難しかったか。無駄な建設はしないに限る。キングダム読んだことあるから少しだけ理解しやすかったが、全体的に登場人が多くて難しいのと中国の地理が馴染みがないので揚子江より南が全くの異文化とかわかりにくかった。

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Posted by ブクログ 2023年04月27日

秦の始皇帝が死に乱世に突入した中国。そこに現れる英雄2人。項羽と劉邦。
上巻ではまだ大きく羽ばたくまでには至らず。
劉邦は人たらしのようだが、まだ皇帝になるような要素は見せない。
項羽が闇落ちしていきそうな予感。
それにしても、この時代に生まれなくてよかったと何気に思ってしまった。

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Posted by ブクログ 2022年05月05日

初めての皇帝として君臨した秦の始皇帝の存在を知った時はなんてすごい人だろうと思っていたけど、その秦が愚鈍な息子と奸臣のせいであっという間に滅んだと知り更にびっくりした。それを滅ぼしたのは誰で、どんな流れで滅亡まで進んだのかに興味が出て手に取ってみた本。史実と違う部分は多いのだろうがイメージをつかむに...続きを読むはフィクションもいいかなと思っている。

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Posted by ブクログ 2020年12月03日

前半部分は割と変化が少ない為、割と辛抱しながら読んだ形ではあるが、終盤にかけては、物語の展開が遅くなり(=濃ゆくなってゆき)面白くなってきた。

秦の法家思想に乗っ取った国づくりは、非常に先進的であり魅力的であるが、趙高のような宦官が力を持ってしまうことを防げるような、牽制しあえる権力構造が必要であ...続きを読むると改めて思った。始皇帝が優秀であり、かつキングダム の「政」には非常に思い入れがあるだけに、その秦が内から崩壊していく様は、虚しい。

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Posted by ブクログ 2018年01月20日

秦の始皇帝が亡くなるところから物語はスタート!劉邦より、項羽が中心に話が進んでいく。まだまだ俯瞰した時点での話なのでこれからどうなるのかが楽しみ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年01月06日

――智は大切なものだ。
項羽は、范増をからかうようにいったことがある。
――ただし智というのは事後処理に役立つだけで、勝敗そのものに役立つわけではない。と頭から信じているようであった。
項羽のこの気力に対する信仰は、彼を教えた項梁からひきついだものでないことは、項梁がむしろ智者の煩わしさを持っていた...続きを読むことでも察せられる。項羽はどうしようもなく項羽そのものであった。項羽の武人としてのすべては天性というほかない。しかもかれのおもしろさは自分の天性に対し、他とくらべてのひるみもうしろめたさも持たず、むしろ楚人一般が鬼神を信ずること甚だしいように、かれ自身、ごく自然に自分の天性の中に鬼神を見ているということであった。見る以上の自然さでそれを信じ、あるいは信じていることすら気づかないほどに項羽が項羽として天地の間に存在しているというぐあいで、范増の人間分類の方法では、こういう人間をどうあつかっていいのか、いっそ人間の範疇の外に置くか、ともかくも戸惑ってしまう。(まあ、小僧なのだ)范増はそのように自分に言いきかせて、項羽との接点を強いて仮設している。(わしがたすけてやらねば、どう仕様もあるまい)

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