あらすじ
紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。――これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する“人望”とは何かをきわめつくした物語である。
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筆名のとおり司馬遼太郎に一番影響を与えたのが司馬遷だろう。
司馬遼太郎の長編作品の中で史記を題材にした稀有な作品。
史上初めて中国全土を統一した秦の始皇帝。しかし死後、中国はまた騒乱の世に戻ることに。その中から頭角を現す項羽と劉邦。2人を中心に描かれる作品。
昭和59年の文庫、その頃父の本棚から手に取って読んだことがある。忘れていたが本棚の奥から出てきたのは平成16年版。この頃に買って読み返したらしい。
人生3度目の読み返し。いままで以上に名作な予感。、
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紀元前221年に春秋戦国時代の中国を統一し、秦王朝を打ち立てた始皇帝の末期から始まる本書。それまでの封建性に取って代わり、官僚制による各地を統治するという斬新な方法で全国を支配した。万里の長城を始めとする数々の大型土木工事を行ったが、これを実行する為に各地から労働力を徴用しつづけたことで民心は離反していた。始皇帝が死ぬと各地で武力勢力が蜂起する。宦官の趙高は胡亥(こがい)を担いで形ばかりの後継の皇帝とし自らがすべてを取り仕切る事に成功する。
統制が乱れた地方では同じ様に各地域の旧王族を担ぎ上げた自称王国が多数誕生する。その中の一つが、江南の楚であった。項梁がかつての楚の王を血を引く男、羊の糞を乾かして売り歩く男を探し出し、楚王に祭り上げる。項梁の甥である項羽と、劉邦は楚軍の将軍として秦の軍を打ち破っていく。一方、秦は趙高の代理施政によって完全に内部が腐敗し、外で展開する反乱を収める能力は失っていた。
ここで描かれている事はその4〜500年後の三国志で起きる事と酷似しており、歴史は繰り返すという言葉はすでに2000年前から同じである事を思い起こされる。役人の腐敗、人民からの搾取と虐殺、傀儡による政治の私物化、謀反などあらゆる悪事はその後の中国の歴代王朝でも何度と無く繰り返され、そして現代の中共に至っても同様だ。
更に驚くのは、ここから更に1500年ほど遡った殷王朝に関する記述。存在が確認されている王朝としては中国最古であるが、その遺跡には王の墓の周辺に首の無い骨が500柱程発掘されているという。それが何を意味するのかは不明であるが、おそらくは殉死者なのか奴隷なのかという事である。そのような野蛮な事が行われていた事に驚愕する。
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歴史には疎く、歴史書を読むことは少なかったのだが、先日中国の西安・成都に観光に行って興味が湧いたことをきっかけに、司馬遼太郎の項羽と劉邦を読むことにした。上・中・下の三巻からなり、それぞれ約500ページもある書で、まだ上が終わったばかりだが、非常に面白い。
項羽と劉邦だけではなく、周りの人物像もこと細かく記載されており、歴史的背景も非常によく分かりやすく記載されており、またクスッと笑える部分もある。たまに中だるみする箇所があったが、戦闘シーンなどはまるで映画を見ているように情景が頭に浮かび、最後の項羽と章邯が出会う場面では、章邯に感情移入しすぎて涙が流れた。
続いて中へ進もうと思う。
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キングダムにハマり、中国の歴史に興味を持ち読み始めました。 どの視点で物語を見るかによって感じ方も大きく変わりますね。 司馬遼太郎さんの歴史小説は面白く、次に進みたくなりますね!
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この書を読んで、人間とは、政治や宗教で生きているのではなく、食を繋げるために生きていること、歴史上の大動乱は飢餓が産み出していることに納得した。
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沼沢に囲まれた田園地帯で古代的雰囲気(古代だけど)のなかで、ハングレの劉邦は仲間にかつぎ上げられて反乱を起こす。
前後して、年若の項羽も上海よりずっと南の方でやはり反乱を起こす。
大抵、中国の王朝は反乱が起きて倒壊するが、この史実が記念すべき処女革命。
項羽は超絶無比に強かったけど、冴えない劉邦に日を追って追い越されて四面楚歌。
江南の滸で果てる。
司馬先生の作品領域で唯一の中華史長編。
中華史でもその後の漢民族にとっての性格基礎や民俗、教育概念に影響を与えた劉邦の重要性は大きい。
現代中国人のほとんどは自らを漢族と呼ぶが、劉邦の建国した帝国を漢というくらいだから。
太古の中国農村に劉邦は生まれた。
日本の稲作田園風景、草深さと土臭さのルーツが古代の中国にはありそうだと読んでいて感じる。
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中国最初の同一王朝である秦の崩壊後、天下を争った2人の英雄である項羽と劉邦の戦いを描いた物語である。
やはり日本国外を舞台にした作品であるだけに、司馬遼太郎作品にしては人物などの解像度が若干低いように感ぜられる部分はあるものの、十分面白く、またあとがきでも書かれている通り、史記等中国古典で描かれた歴史は近代までの日本人にとっては国内の歴史であるかのように思われるほど浸透していたものであり、日本の歴史を理解する上でも役立つ本であると言えるだろう。
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コテンラジオで「項羽と劉邦」をやっていて興味を持ち頁を開く。
キングダムのその後と言うこともあり蒙恬将軍等も出てきて熱い。
レビューは最終巻で。
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読みやすくて、とても面白い。
秦の始皇帝の亡き後、混乱の世を背景に項羽と劉邦の天下を制するまでの物語。
史上最大のあなうめ、新安事件で上巻が終わったので驚きで余韻が残りますが、協同部隊で共に戦った項羽と劉邦、今後の二人の関係が気になります。
項羽の叔父、項梁が二人を前面に押し出した人物のようで興味深かった。流転の繰り返し、礼が厚いところもあり印象に残ります。項羽25歳、劉邦41歳という年齢差も意外性がありました。
著者のペンネームの由来が「史記」の作者、司馬遷からと知り初読みには良かったです。
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現実世界にもあてはまる人間観のかたまりだった
個人的には自信が溢れいさぎよい項羽が好きだったが、自分が強い故にひとりよがりになり他者を信用できない項羽と、自分が弱いことを知っているからこそ他者の意見に耳を傾け、与えること惜しみない劉邦の対決は、とても考えさせられた
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項羽と劉邦をちゃんと読むのは人生で初めて。
部分的には古文の授業で読んだことがあるけど。
ドラマチックな感じではなく、とにかく淡々と歴史を追っていく感じ。
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個人的には読み進めるほど、章邯と司馬欣に魅力を感じて持っていかれました笑
現代日本人の私たちでは感覚が掴みづらい当時の風習や世界観を端的にわかり易く説明しながら、キャラクターにしっかり血が通っているのが感じ取れる物語の展開の仕方が凄かった。
司馬遼太郎先生の作品を初めて読み終えたけど、頭が混乱しない物語運びが、ただシンプルに凄いと思った。
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やはり中華の歴史は読み応えがある。
登場人物の魅力的なことといったらない。
その土地土地の民族性などの説明もあり、すごく分かりやすいし読みやすい。
上巻は劉邦はあまり活躍せず、主に項羽がどのような人柄かがよく分かった。
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【著者として 同じく司馬と 名乗れども
人の魅力と 歴史の必然】
『史記』と言えば司馬遷が有名だが、それを踏まえた上で読むと面白いかと思われる。史記は、個人にクローズアップし、生き生きとその人間の魅力が描かれているが、この著作は歴史現象として描かれている。
下準備もなく挑戦すると、地名なのか、人名なのか、国名なのか、分からなくなる人もいるだろう。
項羽と劉邦というタイトルの割には、二人に対してあまり好意的な感じがしない。むしろ自然発生的な現象として祭り上げられたという感じが強くある。これは司馬遼太郎の独特の英雄史観や歴史史観と思われる。
本当の主役はショウカであり、兵站の大切さを説いている所は、実に新しい考えであると思われた。
この小説はエンターテイメントとして読むのではなく、学術的歴史書として読むと面白さが増す。 面白さが分かるのは、大人になってからだと思われる。
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秦の始皇帝の死後、宦官の趙高の謀によって蒙恬や始皇帝の長子扶蘇、李斯が死に、始皇帝の末子胡亥が二代皇帝となった。初めて統一された中国は秦の法家思想に馴染まず、陳勝・呉広の乱を皮切りに各地で流民が反乱を起こす。多くの流民の食を確保し、楚の懐王を奉じて力をつけた項梁は、秦の章邯によって定陶で敗死するが、甥の項羽は章邯の先鋒を破り、章邯を降伏させる。しかし秦の降兵20万の反乱を危惧した項羽は、20万の兵をパニックに陥らせ穴に落として虐殺する。
クールな章邯が項羽に尊敬されていると告げられて泣く場面が印象的。劉邦は別働隊として関中に向かっていて、先に関中に入ってしまうのではないかと項羽がヤキモキしているが、これが鴻門の会のあの場面につながっていくのだろうか。
項羽はまだ20代だけれど劉邦は40超えてる。結構歳いってるんだな。
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p.292
この感心の仕方に一種の愛嬌があり、愛嬌がそのままひとびとに徳を感じさせる風を帯びていた
キングダムの後の世界が"この世界"だと考えると 世界って 歴史って 何なんだろうって思ってしまいます。
(キングダム 全然読んでいません。すみません。秦の始皇帝の話ってことぐらいの知識しかありません。ごめんなさい)
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漫画『キングダム』のその後の話(もちろん、どちらもそういう想定で書かれたものではないですが)。
始皇帝=嬴政の晩年の話から始まり、嬴政が!蒙恬が!あんなことになっちゃうなんて!というのはショックでした。。
良くも悪くも色々なリーダーが出てきてとても勉強になります。中巻以降も楽しみです。
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宦官 趙高
秦王朝の二世皇帝 胡亥
陳勝・呉広の乱 前209年
中国史上初の農民反乱
王侯将相いずくんぞ種あらんや
(王や貴族も所詮同じ人間ではないではないか!)
定陶の戦い 前208年
秦の章邯 対 楚の項梁
鉅鹿の戦い 前207年
楚の項羽 対 秦の章邯
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始皇帝が中国を統一したところから物語が始まる。始皇帝が全国に顔を見せるために巡回している間に死んでしまい、それに漬け込んだ宦官の趙官が胡亥を要して実質の皇帝になる。始皇帝から始まった建設事業によって多くの人たちが駆り出され不満が溜まっていきついに陳勝が反乱を起こすことで秦帝国の崩壊が始まる。これに続き呉中の項梁、項羽や沛の劉邦らが反乱軍を組織。鉅鹿城にて章秦軍を倒した項羽は20万もの秦軍を捕虜とするも新安で20万の兵を谷に生き埋めにしてしまう。
シンプルに戦国時代の中国を統一した始皇帝はすごいが封建制度から法治国家にするのは難しかったか。無駄な建設はしないに限る。キングダム読んだことあるから少しだけ理解しやすかったが、全体的に登場人が多くて難しいのと中国の地理が馴染みがないので揚子江より南が全くの異文化とかわかりにくかった。
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秦の始皇帝が死に乱世に突入した中国。そこに現れる英雄2人。項羽と劉邦。
上巻ではまだ大きく羽ばたくまでには至らず。
劉邦は人たらしのようだが、まだ皇帝になるような要素は見せない。
項羽が闇落ちしていきそうな予感。
それにしても、この時代に生まれなくてよかったと何気に思ってしまった。
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初めての皇帝として君臨した秦の始皇帝の存在を知った時はなんてすごい人だろうと思っていたけど、その秦が愚鈍な息子と奸臣のせいであっという間に滅んだと知り更にびっくりした。それを滅ぼしたのは誰で、どんな流れで滅亡まで進んだのかに興味が出て手に取ってみた本。史実と違う部分は多いのだろうがイメージをつかむにはフィクションもいいかなと思っている。
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前半部分は割と変化が少ない為、割と辛抱しながら読んだ形ではあるが、終盤にかけては、物語の展開が遅くなり(=濃ゆくなってゆき)面白くなってきた。
秦の法家思想に乗っ取った国づくりは、非常に先進的であり魅力的であるが、趙高のような宦官が力を持ってしまうことを防げるような、牽制しあえる権力構造が必要であると改めて思った。始皇帝が優秀であり、かつキングダム の「政」には非常に思い入れがあるだけに、その秦が内から崩壊していく様は、虚しい。
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――智は大切なものだ。
項羽は、范増をからかうようにいったことがある。
――ただし智というのは事後処理に役立つだけで、勝敗そのものに役立つわけではない。と頭から信じているようであった。
項羽のこの気力に対する信仰は、彼を教えた項梁からひきついだものでないことは、項梁がむしろ智者の煩わしさを持っていたことでも察せられる。項羽はどうしようもなく項羽そのものであった。項羽の武人としてのすべては天性というほかない。しかもかれのおもしろさは自分の天性に対し、他とくらべてのひるみもうしろめたさも持たず、むしろ楚人一般が鬼神を信ずること甚だしいように、かれ自身、ごく自然に自分の天性の中に鬼神を見ているということであった。見る以上の自然さでそれを信じ、あるいは信じていることすら気づかないほどに項羽が項羽として天地の間に存在しているというぐあいで、范増の人間分類の方法では、こういう人間をどうあつかっていいのか、いっそ人間の範疇の外に置くか、ともかくも戸惑ってしまう。(まあ、小僧なのだ)范増はそのように自分に言いきかせて、項羽との接点を強いて仮設している。(わしがたすけてやらねば、どう仕様もあるまい)