【感想・ネタバレ】項羽と劉邦(下)のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月26日

局面での戦闘においてあれだけ強い項羽が、劉邦を悉く追い詰めながらも、突如として転がり落ちるように没落して、最終的には劉邦が勝つという、その流れや理由をきちんと知ることができて良かった。また、あまりに有名な四面楚歌や項羽の詩を全体の文脈の中で読むことができ、当時の項羽の心境に肉薄することが出来たように...続きを読む思う。この辺りは筆者の筆致のなすところであった。また、莫大な褒賞が掛けられた項羽の死体をちぎりあった話も人の欲望の逸話として、あるいは劉邦の性質を示す逸話として、非常に興味深かった。

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Posted by ブクログ 2024年01月09日

武のカリスマ項羽と究極の凡人劉邦の苛烈な戦争譚だった。これで何で劉邦が天下を取るのかも不思議にも感じるくらい。
項羽と虞姫の話や無欲な張良、劉邦の部下であろうとする韓信など、人柄が分かるエピソードもこの物語を肉付けしていて、結末を胸に迫るものにしている。
これはもう再読必須ですわ。

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Posted by ブクログ 2024年01月07日

年末年始休暇を使い読破。

項羽と劉邦という全く異なる2人のリーダーを軸に始皇帝亡き後の楚漢戦争を描いた司馬遼太郎の大作。

中国のスケールの大きさに圧倒されます。
歴史の勉強にもなります。
項羽の壮絶な最期は、司馬遼太郎の筆が冴え渡り。情景が浮かんできました。

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Posted by ブクログ 2023年11月20日

上、中、下巻あるけれど是非。
10年以上前に初めて読んで、2、3年前にもう1回読んで普通に面白かった。
たぶんいつか、また読みそう。

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Posted by ブクログ 2023年04月21日

面白かった。漫画「キングダム」と平行して読んだので、より諸行無常感が増幅された。この漢帝国も、後に腐敗し、魏呉蜀の三国志に滅びるのか・・・。
司馬遼太郎の文体の小気味よさと表現力に何度も感嘆した。
一番好きな部分が、「韓信のみるところ、愛すべき愚者という感じだった。もっとも痴愚という意味での愚者では...続きを読むなく、自分をいつでもほうり出して実態はぼんやりしているという感じで、いわば大きな袋のようであった。置きっぱなしの袋は形も定まらず、また袋自身の思考などはなく、ただ容量があるだけだったが、棟梁になる場合、賢者よりはるかにまさっているのではあるまいか。賢者は自分のすぐれた思考力がそのまま限界になるが、袋ならばその賢者を中にほうりこんで用いることができる」まさに劉邦像を言い得て妙である。

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Posted by ブクログ 2022年10月26日

筆に勢いのある司馬遼太郎。項羽と劉邦の人格の違いが魅力の本作ですが、その違いは中国の風土・文化への丁寧な分析と構成のなせる技。特に食うに困った「流民」の概念が全体のベースになっているのは、なるほどと。各所で良い味を出している諸子百家の士や客たちも戦国期の農業生産性の向上による自立農の増加から生まれた...続きを読むことや、そうした思想に加えて民族的にも多様な層がおり混ざる坩堝的なカオス、その中でも共通基盤となる中国的文化などなど、中国の魅力がこれでもかと練られ項羽と劉邦に集約された名作。

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Posted by ブクログ 2022年06月12日

負け続けた劉邦が何故勝つことができたのか。
「賢者は自分のすぐれた思考力がそのまま限界になるが、袋ならばその賢者を中へ放り込んで用いることができる。」
劉邦は愛すべき愚者、大きな袋だったと言う話に、勇気付けられる。

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Posted by ブクログ 2021年11月20日

将の将たる人と将たる人の違い。でもやっぱり将として優れていないと、将の将たる人にはなれないということもあるし、常に変わり続けるしかないのだなと。

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Posted by ブクログ 2020年01月30日

ついに「項羽と劉邦」完結。

下巻に入っても途中まで全く劉邦に勝つ要素が見受けられなかったのですが、気がついたらあれよあれよと逆転していました。

結局、劉邦の勝因は何だったのか。やっぱり何もかもを飲み込む寛容さなのかな。項羽は身内以外にはあまりに冷た過ぎた。

背水の陣や四面楚歌といった有名な故事...続きを読む成語もこのときのものだったんですね。萌えました。

てか、項羽って31歳だったんだ…若っ!!
この時代の濃密さを感じます。。

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Posted by ブクログ 2019年10月27日

上中下をまとめて。

どんな出来事でも、歴史の教科書のなかでは数行で語られるが、その背景にはこれだけの物語があること(どこまでが史実に基づいているかは別として)を改めて感じた。

生まれもよくエリートであるが故に、時には残虐であっても結果を求める項羽と、ゴロツキからの成り上がりでわがままだが、何故か...続きを読む憎めず周りからの人望が生涯尽きない劉邦。

2人の対比が上手くミックスされていて、終始わくわくしながら読み進められた。
また、鴻門の会や四面楚歌、虞美人等かつて学生時代に学んだ出来事も多く登場してその背景を知れたことも良かったと思う。

司馬遼太郎氏の作品は小説を読んでいるのに、さも漫画を読んでいるかのように登場人物の描写が頭の中に浮かび上がるのが凄い。

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Posted by ブクログ 2019年08月21日

項羽と劉邦どちらも生きる道はないのかと読みながら常々思ったが、項羽のプライド的に勝つか負けるかしかないのだと思った。最後は項羽に同情してしまい、悲しくなったが、あれだけたくさんの人を残虐的に殺した罰なのだと自分に言い聞かせて納得させた。

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Posted by ブクログ 2018年10月24日

大河ドラマのように読み進めて最終巻。劉邦は最後まで劣勢だった。項羽は強かった。しかし、項羽のように親族を重用し、不公平と思わせる論功行賞に、現代のワンマン企業の人事を重ねてしまう。劉邦が重要視した食料補給を含めた兵站が、最終的な勝負の決め手になったようだ。

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Posted by ブクログ 2018年09月12日

初めて手に取った歴史小説。元々堅苦しいイメージがあったが、読んでみると一転どっぷりとのめり込んでしまった。
何事も最後は運の要素が大きく関わってくるのだなと感じた。
人事を尽くして天命を待つ、とはよく言ったものである。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年01月08日

初めての歴史小説、、、上中下とあり気が遠くなったけど、数ヶ月かけてやっと読み終わりました!

プライドが高くジャイアン気質な項羽と
器がデカいだけで空虚な劉邦
最終的には、徳を持った劉邦が殿下を統一する。

劉邦のダメダメさを助ける将軍たちは、劉邦の人柄の良さ、素直さ、報酬の良さ、に惹かれていたそう...続きを読む。すごくシンプルだけど、実際にこれを持ち合わせるのはなかなか難しいんだろうなぁ。

個人的には、韓信や張良などの助演男優賞的な人物がいかに劉邦を作り上げたのか、知ることができて面白かった。また劉邦よりも天才であったろう韓信が、天下統一後に劉邦の妻によって殺される。平和になった後も続く波乱な人生に、ハッピーエンドだけじゃないリアルさを感じました。

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Posted by ブクログ 2023年05月23日

ようやく漢と楚の闘いに決着がつく。個人の武に頼り、戦略と兵站を軽視した項羽が亡びたのは必然といえば必然。戦下手だったが故に戦略と兵站に注力した劉邦は、今日的にも参考になるのではないか。
それにしても、漢と楚の力関係が逆転し、いわゆる四面楚歌の状況に至る過程がさらっと描かせているのが残念。もう少しドラ...続きを読むマチックに描けなかったのか。それが司馬遼太郎的ではあるが。

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Posted by ブクログ 2022年02月01日

歴史作家、司馬遼太郎が描く楚(項羽)と漢(劉邦)の戦い。歴史作家の筆名の原点となった司馬遷が残した‘史記‘に描かれる劇的な世界(紀元前200年前後の様々な戦い)を司馬遼太郎が再構築。春秋戦国時代を経て強力な国家(秦)が生まれ、そして崩壊。その過程に生まれた様々な英雄達興亡の物語であります。参考図書と...続きを読むして、宮城谷昌光さんの楚漢名臣列伝の併読をお勧めします。共に☆四つ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月30日

 司馬遷によって編纂された中国の歴史書「史記」を下敷きにした、中国楚漢戦争期を描いた司馬遼太郎の歴史小説。鬼神のごとき勇武で秦を滅ぼした項羽と、臆病だが人柄で優秀な人材を多く抱き漢帝国を興した劉邦の戦い。有名な「背水の陣」や「四面楚歌」という故事の由来となる戦いも収められている。

 項羽と劉邦が対...続きを読む照的な人物として明確に描き分けられており、想像以上に読みやすかった。「史記」を漢文で学ぶ前に一読しておくと、それぞれの人物像が色濃くなり、理解が深まるはず。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月16日

無能だが器が大きく己を知っている劉邦と、カリスマ性があり愛憎激しい項羽の対比。ものすごく勇猛で戦の天才なのに政治感覚がなく兵糧に気が回らず人心がわからず、項羽はたしかに天に滅ぼされる運命だったかもしれない。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年02月28日

p.232
しばらく関中に帰る。あとをよろしくたのむ

さすが劉邦!と思ってしまいました。
普通に読んでる最中、吹き出していました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年12月24日

項羽の死をエンディングとするために、随所に各登場人物の後日談を織り込む構成になっていたんだなあ。
漢の為に尽力した者が政争に巻き込まれて、死んでいくのも現代と変わりなく。。。

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Posted by ブクログ 2020年12月15日

【感想】
大好きな『キングダム 』後の中国がどうなっていくのか知りたい。漢の成り立ちの部分について勉強したい。という思いがあった中で、どうせなら、面白く勉強したいと思い、司馬遼太郎さんの『項羽と劉邦』を手に取った。

司馬遼太郎さんの作品は読み切ったものでいえばこれが3作目で、これまでに『太閤記』と...続きを読む『最後の将軍』を読んいてその史実を踏まえ面白く物語をつくる才能に今回も大の期待をして読んだ。上・中・下を約1週間でら読めたのは、挫折しやすい僕からすると希少であり、この作品の面白さから来るのであろうと感じた。

本作で私が注目して読んでいた点は大きく二つあり、一つが「秦の衰退と漢の勃興」、もう一つが項羽と劉邦という2人の「リーダーシップ」のあり方である。

秦の衰退と漢の勃興
キングダムで見てみてきた嬴政の創った国が約15年で滅んでしまうのは非常に心痛いことであった、取りわけ、当時先進的であった法家思想を取り込んだ政治の仕方は非常に革新的であるために残念である。その中で趙高のような権力者を作ってしまったのだが、いかんせん、帝国自体が史上初であるため、この程度のミスは半ば仕方のない失敗であるとも思えた。秦が成立した時点で早く崩壊してしまうことは、ほとんど決まっていたようなことであると思われるが、漢が勃興したことに関して言えば、より多くの偶然が重って成されたことであると感じた。

リーダーシップ
項羽と劉邦という相対する2人のリーダーが登場するのである。項羽は圧倒的武力と経験、莫大な部下、良い家柄と完璧に近い男である。ただ、この項羽が天下を取れなかったということが面白かったところで、それ以上に部下に伸び伸びプレーをさせ、愛嬌とルックスを売りにした劉邦が勝利したのは、全ての人へ勇気を与えるのではないかと感じた。48歳まで一介の侠であった劉邦が高祖となったことで、僕もこれからまだまだ狙うチャンスがあるんだと言うことを再認識できた、そして、劉邦が行った部下に対するマネジメントの数々やその姿勢は大きな事を成し遂げる際の一つの頼れるロールモデルであると思う。


【要約】
韓信の躍進と劉邦のジリ貧具合が映る前半部分。中盤以降では広武山で戦いにおける両軍の対峙、そして最後の垓下の戦いへと話が大きく動いていく。その途中途中で、新たな登場人物や、彼らにまつわるエピソードが登場するなどしてストーリーに厚みを増していく構成となっている。
【引用】
P16
-出来そこないの田舎侠客、沼沢のなかの泥ぶなのような草賊の親分。
というのが、劉邦も自認しているかれの前半生であったが、その経験で学んだことといえば子分や兄弟分に対する信しかなかった。

P167
ひるがえっていえば、項羽の幕僚にはこの少年程度の者もいなくなっていたのである。

P242
むかし、かいとうがわしに説いたとおりの結果になった。あのときあの男の言葉どおりにしておればこういうばかなはめにならずに済んだろう。(韩信)

P260
馬上天下を得ても、馬上で天下を治めることはできない。(陸賈[リクカ])

P261
高祖の愛嬌は道理だとわかればひどく従順になることで、その配下からみればかれの魅力はこのあたりにあったのに違いない。

P348
劉邦のような立場の男は、たとえ側近を相手に韩信のことをこぼしても、なにかの形で韩信に伝わってしまうのである。

☆ずっとずっと強かった項羽軍が最終盤に細くなるのは、虚しく、先日読んだ『老人と海』で激闘の末に獲ったオオカジキが鮫に食われていくのに近い感覚を覚えた。

P384
しかも四面ことごとく楚歌であった。
→四面楚歌、、、こういうことだったのか。

P389
彼女が舞いおさめると項羽は剣を抜き、一刀で斬りさげ、とどめを刺した。

〜あとがき〜
P401
この大陸の場合、周辺からさまざまな暮らしの仕方を持った民族が間断なく流入しつづけたということを見ねばならないであろう。具体的情景としては、農業だけしか知らなかった民族に、牧畜を専業とする民族が接触してくると、長靴を穿くことや、動物の腱を干して弦をつくること、あるいは干肉つくり、乳製品を食べることなどが教えられる。

P404
中国史は、ふしぎなところがある。後代のほうが文化均一性が高くなるのは当然であるとして、知的好奇心が衰弱することである。後漢の末ごろからいわゆるアジア的停頓がはじまり、その停頓が、驚嘆すべきことに、近代までの長い歴史のなかに居すわりつづける。
 が、いわゆる先秦時代からこの時期までの中国は、べつのひとびとによる社会であったかと思えるほどにいきいきしている。

〜解説〜

P418
『項羽と劉邦』に充満する多彩な「典型群」は、我が国と遮断された無関係の外国人ではなく、かつて日本人に人間社会とはなにかを反芻させ、さまざまな思考に資する「実例」の役割をつとめた。
→解説に書かれている通り、「左国史漢」が平安時代より教科書であったことを鑑みれば、これらを学ぶことは、日本史における実力者達の思考や考えのもとをインストールできることになる。とりわけ、夏目漱石を含め、文豪家の方々が書いたことから考えると、文壇に入っていく上でも、必読であったと改めて思える。

P425
つまり「可愛気が、劉邦の中で光っている。それが大きな光体になって劉邦の不徳も無能も、すべておおい晦ますほどの力をもっている、と蕭何はおもいはじめた」のである。

P425
「劉邦は、土俗人ならたれでも持っている利害得失の勘定能力をそなえていたが、しかしそのことは奥に秘めて露わにせず、その実態はつねに空気を大きな袋で包んだように虚であった」。

p425
劉邦は「韓信のみるところ、愛すべき愚者という感じだった。もっとも痴愚という意味での愚者でなく、自分をいつでもほうり出して実体はぼんやりしているという感じで、いわば大きな袋のようであった。置きっぱなしの袋は形も定まらず、また袋自身の思考などはなく、ただ容量があるだけだったが、棟梁になる場合、賢者よりはるかに優っているのではあるまいか。賢者は自分のすぐれた思考力がそのまま限界になるが、袋ならばその賢者を中へほうりこんで用いることができる」のである。

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Posted by ブクログ 2020年08月17日

項羽は、劉邦に負けたのではない。
天に負けたのだった。

紀元前2世紀といえば、ローマではスキピオとハンニバルが争っていたころである。
ここの歴史も読み応えがあるし、もちろん項羽と劉邦も読み応えがある。
なんと言ってもそれらの歴史が残されているというところにも特筆するべきだと思う。

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Posted by ブクログ 2019年06月08日

勝利の秘訣は勝つまでやること、という警句を思い出すくらい、劉邦の負けっぷりが徹底していて清々しい。でも、勝つまで続けられるのは、周りの支援があってこそ。この人なら助けてあげたい、と周りの人に思わせられるのが、人徳、人望、ってとこでしょうか。
純粋に個人の趣味でいうと、本の中では項羽の方がカッコいいけ...続きを読むど、生の人間として対峙すると劉邦方にふらふらとなびいてしまうのだろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年12月12日

遂に読み終わった。司馬遼太郎作品「項羽と劉邦」最高の軍師である韓信の背水の陣から始まった下巻。武の才もなく、知略もないが圧倒的なほどの徳と義を持った劉邦の部下たちがまた今回も活躍する。特に目立ったのがやはり韓信。彼は本当に劉邦にしてみれば都合のいい部下であり、韓信に少しでもエゴがあれば劉邦は滅んでい...続きを読むたと思う。さらに張良や蕭何、彼らも最後まで劉邦を見捨てず、奔走した。劉邦は項羽に相対する度に弱気になり、弱音を吐き、リーダーとしてどうなんだと感じるところはあるが愛されるべく才を持っためずらしき英雄なんだなと。麻生さんが言っていたことがわかった。一方項羽は、圧倒的武力を誇りながら次第に弱っていき、最後は自害をするという哀愁の漂う人物だが、今まで読んだ本や、物語の中で最強と言ってもいいほど逞しく描かれていた。この2人の戦いは素晴らしかった。裏切りに次ぐ裏切りや、疑心暗鬼ばかりの戦いでこの時代はとても生きづらかったと思う。が、こんな時代だからこそ活躍した将もいて歴史はよくできているんだなと感じた。この三部作で何よりも強く描かれていたのはリーダーの違いである。部下をどれだけ信用するか、どれだけ自分の弱みや逆に強みをさらけ出すか、また背中で見せつけ自分が引っ張っていくリーダーの姿もあった。結果食わせていくことが大事な世の中だが大いに学べた。自分も味方の才を思う存分引き出せるようなリーダーになりたい。そして大事なのはギブアンドテイク!

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Posted by ブクログ 2018年07月07日

韓信の最後…そして項羽の最後など盟友たちの終焉が描かれている。特に四面楚歌の場面は感情移入して同情を誘う。司馬遼太郎さんの書籍は一回読んでもまた読みたくなるぐらいどのテーマも心を揺さぶる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年07月06日

――漢王は能なく智なく勇なく、しかも人間が粗㒒すぎて雅馴でない。まことに不徳の人である。といってるのを劉邦は耳にしたことがある。
「陛下は、御自分を空虚だと思っておられます。際限もなく空虚だとおもっておられるところに、智者も勇者も入ることができます。そのあたりのつまらぬ智者よりも御自分は不智だと思っ...続きを読むておられるし、そのあたりの力自慢程度の男よりも御自分は不勇だと思っておられるために、小智、小勇の者までが陛下の空虚のなかで気楽に呼吸をすることができます。それを徳というのです」

 義とは、骨肉の情や、人間としての自然の情(たとえば命が惜しいなど)を越えて倫理的にそうあらねばならぬことをさす。
義は戦国期にできあがった倫理ではないかと思われる。のちに儒教にとり入れられて内容が複雑になり、また反面、義という文字から儀礼の儀という文字が作られてゆくように儒教では多分に形骸化されて礼儀作法とか、人と人とのつきあいの仕方といったものへ衰弱してしまう。
 が、この時代は戦国期からほどもない時代だけに、この流行の精神は初期のたけだけしさや壮烈さをうしなっていなかった。
義という文字は、解字からいえば羊と我とを複合させて作られたとされる。羊はヒツジから転じて美しいという意味を持つ。羊・我は「我を美しくする」ということであろう。古義では「人が美しく舞う姿」をさしたともいわれるが、要するに人情という我を殺して倫理的な美を遂げる――命がけのかっこうよさ――ということを言い、この秦末の乱世では、庶民のはしばしまでこの言葉を口にした。

 かつて若き日に「沛の町の飲屋で」「町中の劉邦好きの男や与太者たち」が自然に集まり、「彼らにすれば、劉邦に見られているというだけで楽しく、酒の座が充実し、くだらない話にも熱中でき、なにかの用があって劉邦がどこかへ行ってしまったりすると急に店が冷え、ひとびとも面白くなくなり、散ってしまう」のであったが、そのような場における劉邦の茫漠たる個性に、強い複雑な印象を受けぬものがあろうか。あえて一息に要約するなら『項羽と劉邦』は、人望とはなにかをめぐる明晰な考察の集大成なのである。

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Posted by ブクログ 2023年09月02日

項羽と劉邦の最終決戦までを描いている。韓信における蒯通や劉邦における候公のように自分自身で活躍するというよりも主人をもって覇者にさせようとし、言葉で天下を取ろうとする士の活躍が描かれてた。この時期の日本はまだ稲作も伝わってないのに隣の中国では高度な文明が起きていたのが伝わる。最後項羽が漢軍を一人で薙...続きを読むぎ倒す描写は痺れた。強すぎた故に周りの才能に気づかずまた重宝しなかったことで劉邦に負けてしまったのか、

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Posted by ブクログ 2020年12月13日

ここまで主体性が無く戦争に弱い勝者はいないかもね。人より勝るのは仲間に慕われる事のみで中華統一、逆に不世出の英雄。劉備も曹操みたいに優秀だったら周りから担がれてなかっただろう。何も無い事を自覚して劉邦をなぞったのかもね。

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Posted by ブクログ 2019年08月01日

有名な背水の陣や四面楚歌、虞美人なんかが出る。
話が前後したりしてすんなり進まない。
当時の人の民族の違いや考えかたなど、よく考察しているように思う。

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Posted by ブクログ 2018年08月30日

武も勇も器も、項羽には及ばなかった劉邦が天下を取ったのは痛快なようで、私には少し悲しくもあります。
項羽の思慮が浅かったとか韓信の驚異的な活躍があったとか、そんな理由はあるかもしれないけれど、圧倒的な力をもった個の光が運命の前に立ち消える様には同情を隠せません。
内容としては、紀元前版「ワンピース」...続きを読むといった感じでしょうか。面白かったです。

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