司馬遼太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
先日、旅行で萩に行き、明倫学舎や松下村塾跡を訪れた。自分は、もともと歴史に関心が強い方ではなく、歴史小説や司馬遼太郎はほとんど読んだことが無かった。しかし、現地で、多くの幕末や明治の偉人を輩出することになった松下村塾がたった1年余りしか開かれていなかったこと、また、その当時の吉田松陰はまだ20代だったこと(死亡したのも29歳)を知り、この若者がいかにして人々に影響を与えたのか興味が湧いた。そして、旅行から戻ってすぐ買って読み始めた。
第1巻には吉田松陰が黒船に忍び込む直前期までが描かれている。
自分は、吉田松陰を、激情家で強引に物事を進めようとする人物だと想像していたが、ここで描かれる松陰は、どこまでも理想主義者でありながらも、その理想を実現するために、自分に常に厳しく学問を追い求める、現実家たろうとする側面があった。また、自信に溢れるのではなく、自分は凡庸な人間だからこそ、英雄になるためには人一倍研鑽を積まなければならないという、極めて謙虚な面も見られた。
司馬遼太郎の、綿密な取材に基づくリアリティある描写は、空想の中の松陰像をどんどんと活気あるものとし、この後に待ち受ける悲劇がどう表現されるのか、怖くて知りたくないが、でも早く続きを読みたい、という相反する気持ちを強く抱かせてくれた。
最後に、今の政治社会情勢もあいまって、記憶に残った部分を抜き出してみたい。
「かれの攘夷は、奇妙なほどに男性的であった。大型の攘夷は、日本人の対外感情の通性がそうであるように、女性的であった。松陰は、ちがっている。海をこえてやってきた『豪傑』どもと、日本武士が武士の誇りのもとに立ちあがり、刃をかざして大決闘を演ずるというふうの攘夷であった。」
今の時代、日本人ファーストという言葉が耳目を集め、外国人への差別的な発言が広まっている。もちろん、雇用や治安等の具体的な懸念によるものもないとは言わないが、やはり漠とした不安に基づくものが多いように思える。
不安定な時にはそのような声に流さてしまいそうになるが、そうではなく、見識を深め、自らの中に判断基準を持つことで、自信を持って世の中を見つめていける人物であれたらと思う。 -
Posted by ブクログ
下巻の主要場面は、小牧・長久手の戦い。(家康VS秀吉)戦局の様子を、家康と秀吉の立場からだけでなく、家康の家臣、安藤直次、本多忠勝、石川数正の動きも取り入れて描写されており、真に迫るものがありました。まるで、現場に行って取材してきたかのよう。秀吉が頭を使って、相手方に取り入ろうとするところも印象的でした。(石川数正との関わり)
関ヶ原の戦いや大坂の陣については記されていないため、終盤は“あれ、もう家康の晩年なんだ”という感覚でした。
『関ヶ原』『城塞』の作品をご参照ください!という感じに、時間をとびこえていきます。家康が死に直面する場面での家臣とのやりとりで、最後まで緻密で入念な家康の気質が読み取れました。
私の今までの家康像の中に「独創性がなく、マネが多い」「言葉に出してはっきり言わない」といったことはありませんでした。
本書であらゆる角度からの家康の性格、生き方(体調管理は天下一品、医者に勝る。)を感じとることができました。 -
Posted by ブクログ
人間“家康”が、司馬遼太郎さんの筆致で深掘りされます。上巻は、家康の幼少期から信長の死(本能寺の変)、秀吉の台頭。
上巻前半で、家康が生まれた三河の国の気質(地味、我慢強いなど)が分かり、興味深かったです。
信長の前で律儀をモットーとする家康。それを示す最たるものが、正妻の築山殿と信康殺傷でした。
家康の家族内の問題が、政治にまで及んでしまう事件で、ワイドショー的興味がそそられるように描かれていました。
武田攻めの後、信長凱旋のために、家康は最大級のおもてなしをします。(道や橋を造るなど)家康、どこまでも徹底しています。信長へのリスペクト、これでもか、という感じ。
賤ヶ岳の戦いの後、家康が秀吉に贈る戦勝祝いも最高級。(「初花」小壷の茶器、信長から家康の手に渡っていた)気の回しようが抜かりない。
現代社会でも組織における人間関係は、仕事を円滑に進めていく上で重要。時には根回しも。
家康の、人をそして情勢をも見抜き、遠くの将来まで見据えて対応する能力、腰の低さ、恐るべし! -
Posted by ブクログ
天下分け目の決戦から石田三処刑で黒田官兵衛がトリを飾る構成。中心人物はもちろん徳川家康と石田三成だが下巻に至っては脇の登場人物達の出来事も更に書かれておりフラットな形での関ヶ原戦記といえる。前田慶次も登場してくる(脇役中の脇役だけど)のは嬉しい。
個人的には島左近がキャラも立っているしかっこいい。三成の綺麗事主義だとヤバいし(ちゃんと諫言している)彼程の武将なら家康も喜んで受け入れたろうに、現状でできる最善を尽くして最期に大暴れするのが素晴らしい。死体が発見されなかったため生存説も出た様だがこんな修羅場を生き延びたとは考えにくいし生きてたら大坂夏の陣に出てきそうな気がする。
本書では教訓になるエピソードがある。山内一豊が自分より若い武将のアイデアをパクって家康に1番名乗りを上げ武功無くして殊勲と所領を得ている件だ。卑劣極まりない奴だがアイデアの重要性を認識できる力、言うタイミング、何よりも行動力がある。やはり大名となるだけの事はあるし見習うべき点もあると思う。