司馬遼太郎のレビュー一覧
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アホな男の物語
大阪弁でよくいうアホな男の一代記である。国民的作家として名声が高い司馬遼太郎であるが、比較的初期にはこの作品のようにいわゆるエンタメっぽい気楽なものも書いたのだなと再認識させられた。とは言うものの司馬史観はすでにしっかりとしている。主人公の正反対の、幕末の一般武士の情けなさを辛辣なユーモアを持って描き出している。
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合理性を重視
現代の剣豪小説にも言えることではあるが、やたらと剣法を神秘化.呪術化.精神化したがる傾向があるが、江戸時代においても「合理性を重視」したという千葉周作は確かに興味を惹かれる存在である。太刀行きの速さを意味する「瞬息」という表現はなるほどと思わせるところがある。門下生には坂本龍馬を代表とする有名人物がたくさんいるが、開祖たる千葉周作本人は合理主義者だけあって今ひとつ地味かな。
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指揮官たるものの心得
日本軍とロシア軍のそれぞれの指揮官の気性や能力を通して、軍隊を率いるもの、現代においても組織を率いる経営者などに必要なことが学べる。
日本海軍の山本権兵衛、東郷平八郎、陸軍の大山巌や児玉源太郎とロシアのクロパトキンらの対比が面白い。もちろんロシアにも優れた指揮官はおり、クロパトキンも優秀である。だが優秀なだけでは統帥はできない。
■印象的なシーン
・6艦しかない戦艦のうち2艦を失っても平然としていた東郷平八郎
・黒木軍の勇猛さ
・この時代から根性突撃主義だった陸軍。勝ってしまったために反省せずそのまま大東亜戦争に突入してしまった
→これは高度経済成長期=日露戦争、失わ -
Posted by ブクログ
『アームストロング砲』
オーディブルで視聴。ナレーターの磯辺弘さんが個人的に好きなのでテンション上がった。
佐賀藩の藩主・鍋島閑叟は、「葉隠」という代々佐賀藩に伝わる急進的な武士道の心得よりも、近代的な科学技術に重きを置いている。世界を見据えた鍋島は、藩内から若き秀才を集めて欧州の技術を学ばせ、極端な勉学を強いていた。ある時、鍋島は欧州で製造された強力な最新鋭の大砲「アームストロング砲」の噂を聞く。その威力ゆえに暴発が多く、欧州でも実用化に至らない禁忌の武器に強く興味を惹かれた鍋島は、家臣の秀島藤之助に情報を集めるように命じる…
先見の明を持つワンマン藩主鍋島閑叟に酷使されるエリート秀島藤 -
Posted by ブクログ
▼「峠」(上中下全三巻)、司馬遼太郎。初出1966-1968、新潮文庫。幕末に越後長岡藩の家老として官軍相手に「北越戦争」を演じた河合継之助の話。個人的には数十年ぶりの再読。
▼司馬遼太郎さんの文章は多岐に渡って今でも商品化されていて。代表的な長編小説から短編小説集、いわゆるエッセイから、「歴史地理コンセプトエッセイ」的なもの、それから対談集に講演集…。全部は読めていませんし、再読も楽しい。司馬遼太郎さんの文章を読む、というのは最早個人的にはライフワーク…いや、というか生活習慣になっています(笑)。
▼何かのエッセイ的なものを読んでいて、司馬さんが自作を語る中で「”峠”はけっこう自信作だし -
Posted by ブクログ
実際の人物はどうか分からないが(だからこそ小説でいかようにも書けるのだが)、この上巻では、司馬は豊臣秀吉を人たらしの天才のみならず、相手の人物を瞬時に見抜く洞察力を持ち、また時には命を顧みず突撃する実行力が極めて高い人物として描いている。また所々で天下人としての器があることを示唆している。
この上巻は荒木村重の謀反までであるため(しかも黒田官兵衛が救出されたところまでで戦後処理については書かれていない)、まだ純粋で忠実な信長の家来としての秀吉でしかない(しかし着実に天下人への歩みを進めている)が、下巻で天下を取った後、司馬が人物像をどのように描写するか興味深い。