【感想・ネタバレ】酔って候のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2022年02月11日

これを読んで龍馬伝などを観るとまた全然違って視点で楽しめる
同時代の賢人の半生も面白い
これを読んだ後では高知の日本酒、酔鯨を飲んでかつおをたべたくなります

0

Posted by ブクログ 2021年08月28日

幕末に賢候と呼ばれた四人の大名についての四編の短編が収められた短編集。それぞれの大名が皆別々の思いを抱いて幕末に臨んでいたことが詳しい人物描写を通して知れた作品でした。司馬遼太郎の歯切れの良いリズム感のある文章も相まって日本史のことを勉強したことのない私でも背景が分かりやすく理解できました。容堂の何...続きを読むかしたいがどうしようもなさ、大久保の時間をかけた策略や嘉蔵の不遇さが痛い程伝わってきて、当時の生活が手に取るように分かりました。読後の満足感もとても強く司馬遼太郎の他の作品へ興味が湧きました。
個人的に初めて読んだ歴史小説だったので新鮮でとても楽しめました。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年04月16日

山内容堂、島津久光、前原嘉市、鍋島閑叟の4人にスポットを当てた、幕末短編集。それぞれ個性が強烈である。容堂は明君ゆえ朝幕二重政権は愚と認識しながらも、徳川への恩が忘れられずに公武合体論を唱えた。しかし革命は時として理不尽であり、血を欲するところがある。小御所会議で公卿岩倉に揚げ足を取られたのが致命傷...続きを読むとなり、ついには薩長土連合政権が誕生するにいたるのであった。その他にも、自らのお家騒動の副産物として煙硝蔵と化した幕末の火種を作った久光、技術のみで提灯貼りから造船技師に化けた嘉市、勤王・倒幕など幕末の風雲に飲まれず超然と自藩の洋式化のみに注力した閑叟など、興味深いドラマが史実とともにドラマチックに蘇る。

0

Posted by ブクログ 2020年03月05日

長編だけでない短編も面白い。国民的作家の司馬遼太郎が幕末の賢公たちを描いた短編集。

表題作は土佐の山内容堂。他に薩摩の島津久光、宇和島の伊達宗城(主役は嘉蔵だが)、肥前の鍋島閑叟の4名。

宇和島藩の話だけ異色。黒船来航を知った藩主の気まぐれから手先の器用な提灯貼り職人の嘉蔵が蒸気機関の制作を命じ...続きを読むられる話。江戸時代の藩の身分差別がなんとも切なくなる。

いずれも少しだけ日本史に現れる人物ではあるものの、良く考えるとほとんど歴史の流れに影響を与えていないという壮大な皮肉。短編ならではのあっさりした結末。

司馬遼太郎というと「竜馬がゆく」「坂の上の雲」のような長編の方が有名であろうが短編集もまた面白い。

0

Posted by ブクログ 2019年12月12日

明治維新に活躍した西郷隆盛や坂本龍馬などの志士たち。彼らは低階級の武士身分に属し、そのコンプレックスをモチベーションにして、社会変革を成しとげた。では、彼らの上司である藩主は、維新や志士たちにどのように関わり、どんな考えを持って行動したのか。

多くの志士たちを排出した薩長土肥の4藩主を主人公にした...続きを読む短編小説集で、司馬遼太郎がそんな疑問に答える。

表題作は、土佐藩主の山内容堂が主人公。彼は武芸にたしなみ、知識欲も旺盛、自ら行動しないと気がすまず、そして大酒豪。大名ではなく、藩士として生まれていれば、歴史に名を残す志士になったかもしれない。

そんな彼は時代の変化を感じながらも、大名として、徳川家に忠義を尽くすことを最善と考える。そして、徳川家を残す最高の一手として、大政奉還という奇抜なアイデアを発表。さらに大久保や岩倉との議論にも勝利目前。が、その安心感と美味い酒は一瞬だった。

この山内容堂をはじめ、維新の藩主たちは時代に翻弄されるだけだった。命ずべき武士たちは勝手に藩を離れて、志士となったり、切腹したり。そのうえ、廃藩置県で領地も大名としての身分も没収。この時代の藩主というのは才能があろうとなかろうと、同じ運命だった。酒でも飲まなきゃ、やってられない。

0

Posted by ブクログ 2019年06月23日

久しぶりの司馬遼太郎。幕末の4賢候にまつわるエピソードを集めた、歴史の本流を知ったうえで読めると違った側面を楽しめる感じの1冊でした。ちょうど、八重の桜をDVDで見ていたり、会津若松や京都を訪ねたりしていたので、そういう意味で本の中で展開される物語と並行した物語や会話が交錯したりしておもしろかったで...続きを読むす。そして、やはり文章がうまい。一場面の補足を概観でしてみたり後日談としての意味付けをしたり、現代の読み手が、あまり知識を持ち合わせていなくても読みやすく楽しめる文章という点で、こういうレベルを目指したいと思えた文章で楽しめました。

0

Posted by ブクログ 2017年07月07日

久しぶりに司馬遼太郎。
しかも短編集。
舞台は幕末、新選組や江戸幕府直結関係かと思いきや
全然また違う当時200以上いた藩主の話。
土佐藩の山内容堂・薩摩藩の島津久光・宇和島藩の伊達宗城・肥前佐賀藩の鍋島閑叟
山内容堂はもう説明なしで有名すぎるから特にw
表紙の瓢箪の絵(お酒が入った)然り、まぁとに...続きを読むかく終始お酒が好きで気性が激しすぎ。
島津久光は自分が一番!って思いこみすぎてほかの人の意見聞いたり聞かなかったり(自分でなんとなくしか考えずに)ふと気が付けば倒幕なう。みたいな。
伊達宗城は思い付きがすごいというか何で黒船を
提灯職人に任せるのか謎だったけど結局は出来ちゃったのがすごい。
しかしこの職人がとてもかわいそうだった…
して、最後に鍋島閑叟。
この人が個人的には一番面白い。
富国強兵が趣味だもの…趣味にすんごいお金使ったおかげでまぁ強くなったんだけど。
パッとしないのは、脱藩者ほぼいないので佐賀藩独自という感じ。
こうゆうのドラマにしてほしいんだけど。

0

Posted by ブクログ 2016年08月07日

幕末史というと、とかく血なまぐさい印象ばかりが強いが、それを払しょくしてくれるぐらい喜怒哀楽入り混じった楽しい人間模様を描いている。大政奉還の陰に容堂あり。革命前夜に陥れたA級戦犯は島津家のろくでなし?宇和島の嘉蔵は幕末版太閤記さながらの成り上がり。閑叟は幕末人の中で最も人生を楽しんだ?とにかくびっ...続きを読むくり仰天、ぶっとんだ偉人たちの人生模様が面白くてはまる。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月12日

山内容堂、これまで呼んできた幕末史のイメージ通り、キレ者なのにロマンチストで酔狂、なんだかかわいらしさを感じる。
当時、時勢を先読んで公武合体論の走りのような考えで先行していたはずの彼が、最終的には拗ねて山に籠り切って女と酒に耽溺していったこと、なんだか辛くなった。やるせない。

島津家ってだいぶク...続きを読むソな気がする。幕末史を読めば読むほど薩摩好きになれませんごめんなさい。

伊達宗城というよりは嘉蔵の話が中心だったが、これは泣けた。先に花神で蔵六目線を読んでいたからこそ、なおのこと蒸気船作りの難題とか身分制度の厳しさがより強いものだと認識できて、めげずに頑張る姿が心に沁みた。

鍋島閑叟は、浅い知識しかなかったけど、意外と本作で1番面白いパートだったかも。ミニェー銃しか知らなかったけどエンフィールド銃というさらなる小分類(?)があったのね。
龍馬目線も蔵六目線も、今回は鍋島閑叟目線も学んで、改めて長崎を訪れてみたくなった。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年08月26日

audibleで視聴
伊達の黒船
 これホント⁇と思うウソのような話。
 見たこともない黒船を作れと言われた、長屋に住む、誰からもバカにされている貧乏な男。
 ひとりプロジェクトで、上司も周りも誰も手伝わず、嫌がらせを受けながらも、なんとか黒船のエンジンを作っちゃう。
 格が低すぎて発注者の殿様にも...続きを読む直接会うこともできずじまい…時代とはいえせつない
 ストーリーは面白い

0

Posted by ブクログ 2022年04月30日

幕末期の賢侯と呼ばれた異色の大名をモチーフにした4つの短編より構成されている本書だが、その中で、伊達宗城が治める宇和島で身分も低く渡世も苦手な一庶民である嘉蔵が、40代になってから自身に眠るクリエイティビティを目覚めさせ、見たこともない蒸気機関の製作に挑む『伊達の黒船』は特に心を揺さぶられて秀逸だっ...続きを読むた。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月04日

p.199
親が子をおしあげて隠居させ、自分が相続者になるというはなしは、町人の社会にもあるまい。
p.313
人間の物の考え方というものは議論でやるべきものではない。眼で見、手で触れる物で表すべきだ。

藩主の視点で見ると幕末のイメージもまた変わってきます。いろんなフィルターを自分の中にもっていた...続きを読むいなーと思いました。

0

Posted by ブクログ 2022年03月07日

面白かった。
幕末人気は高けれど、なかなか“主役”にはなりにくい四人の藩主を中心とした物語。
徳川幕府の最後を飾る藩主たちだが、彼らを知ると徳川270年の“罪”が分かり、維新は起こるべくして起こされたのだと感じずにはいられない。

0

Posted by ブクログ 2022年02月05日

【司馬遼太郎幕末短編再読月間③】
2019年に購入してから二度目の再読。
幕末四賢公や、幕末の藩主、彼らに
巻き込まれたり、人生を翻弄された人々。

〈あとがきより〉
著者はこの幕末という動乱の時期の
藩主=殿様たちの、巻き込まれ、息を潜め
取り...続きを読む残された姿に思いをはせ続けていた
とのこと。

0

Posted by ブクログ 2020年08月16日

山内容堂、島津久光、伊達宗城、鍋島閑叟の伝記短編集。「養子大名」の観点は新鮮。宇和島から人工衛星を打ち上げるという発想も面白い。

0

Posted by ブクログ 2020年05月05日

司馬遼太郎さんの幕末短編集
収録作品
①酔って候 
土佐藩の山内豊信を主人公
②きつね馬
薩摩藩島津久光が主人公で、倒幕論者でなかったにもかかわらず、下級藩士の急進的な運動により討幕維新に向かわらざるを得なかった。「酔って候」と同じく『翔ぶが如く』原作の一部になった。
③伊達の黒船
宇和島藩の伊達宗...続きを読む城と、彼に命じられて蒸気船を開発した前原巧山(嘉蔵)を描いた。1977年の大河ドラマ『花神』の原作のひとつ。
④肥前の妖怪
近代化に邁進する肥前藩の鍋島直正を描く。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年04月26日

幕末の雄藩・薩長土肥のうちの長州を除く薩土肥の藩主、山内容堂・島津久光・鍋島閑叟を取り上げた司馬遼太郎の三作品。幕末ものは名維持維新後に活躍した志士達を主人公にしたものが多いので異色だが、視点を変えれば見える風景も違うことが分かる。真ん中に挟まれた島津久光のバカっぷりが際立つのが面白い。

0

Posted by ブクログ 2020年03月08日

幕末のお殿様の生活を垣間見ることができる。特に、山内容堂と島津久光について、幕末の志士達との行動を照らし合わせると、よく整合されており面白かった。

0

Posted by ブクログ 2019年06月22日

四賢侯のお話。各一話 X 4。
佐賀出身のせいもあってか、鍋島閑叟の話が一番おもしろい。
山内容堂が徳川を朝敵とする会議で加えた反論は、短刀一本で封じられたとは言え、熱い。関ヶ原以来の恩義に応えたもの、という本人の整理は、まさに歴史主義でおもしろかった。

0

Posted by ブクログ 2018年02月09日

幕末の4大名(土佐の山内容堂・薩摩の島津久光・肥前の鍋島閑叟、そして、宇和島の伊達宗城)をとりあげているが、一番面白かった大名は科学かぶれで傑出した頭脳を持つ肥前の妖怪でした(明治維新後数年で亡くなったのはほんと勿体ない)。伊達の黒船の主役は下賤の平民嘉蔵ですが、司馬遼太郎の作品は平民を描かせた方が...続きを読む史実の拘束を受けないぶん自由度が高く面白いです。
 他方、きつね馬は島津久光の無能ぶりを書いているので、今後、西郷隆盛と大久保利通は大河ドラマでえらい苦労させられるんだろうなあと思い溜息ひとつ。酔って候は以前大河ドラマの龍馬伝を見てたので新発見もなく特に普通な感じ

0

Posted by ブクログ 2017年05月19日

当時の世界にあたかも自分が存在しているかのような感覚が楽しめる。
担がれている者のつらさ、勘違い、わかっているのに会えtの行動。それがまた楽しい。

決して幕末期のメジャーどころでない登場人物なのにこんなに面白いなんて。。

やはり、幕末は面白い。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年09月14日

幕末、山内容堂、島津久光、伊達宗城、鍋島閑叟、この4人にまつわるエピソードを描いた短編集。

幕末ではもっと有名な御仁が多くいるが、もっと凄い面白い人たちが居たんだということを改めて実感。

山内容堂、島津久光のエピソードももちろん面白いが、それ以上に特に伊達宗城と蒸気船製造を命令される前原嘉市の話...続きを読む、鍋島閑叟を中心に語られる鍋島佐賀藩の二重鎖国状態だった実状の話などかなり面白い。

個人的には大河はマイナー系の話の方が好きなので、ぜひ大河のネタとして扱ってくれないものか。

司馬遼太郎はこういうマイナーな人たちも緻密に取材し自分の考えも織り交ぜながら伝えてくれるのでやっぱり凄い人だったんだよなぁ。

0

Posted by ブクログ 2016年11月14日

藩主の視点で描かれる幕末も面白い。

山内容堂、島津久光、伊達宗城、鍋島閑叟。幕末の殿様4人にまつわる短編集。

0

Posted by ブクログ 2017年04月22日

☆☆2013年6月レビュー☆☆
幕末動乱期、明治維新を主導したのは
それぞれの藩の藩主ではなく、主に下級藩士であり、脱藩浪人であった。江戸300年の間に、多くの藩主はいわゆる飾り雛のような存在になっていたのだ。
しかしそんな中でも、英明な藩主もいた。
この短編集ではそれらの藩主を中心に取り上げている...続きを読む

土佐藩主 山内容堂
薩摩藩主後見人(実質藩主) 島津久光
宇和島藩主 伊達宗城
肥前佐賀藩主 鍋島閑叟

皆それぞれに個性があって面白い。
宇和島藩主の伊達さんは、黒船造りを市井のちょうちん張の職人に任せるような人物で、そうしてそんな発想が生まれるだろうと驚かされた。
鍋島さんは肥前の妖怪と呼ばれ、佐賀藩の軍を洋式に一新。戊辰戦争では最強の軍事力を持つに至った。その先見の明には恐れ入る。

満足のいく一冊だった。


☆☆2017年4月レビュー☆☆

『伊達の黒船』
常識にとらわれない事の大切さ。
「異人が作れるものを、宇和島の提灯屋がつくれぬはずがあるまい」という発想が大事。何事も「できない」と決めつけてしまえば進歩はない。

『きつね馬』
志を果たすためなら、利用するものは利用する。大久保は島津久光を徹底的に利用した。命がけで。
「おのれの志を世に実現しようとすれば、権力者に取り入らねばならぬ」と大久保は語る。
だが、どうだろう。
仮に島津の殿様が『酔って候』の山内容堂のような自信満々の独裁者だったら。それでも大久保は取り入ることができたか。

0

Posted by ブクログ 2021年05月15日

山内容堂が生理的に苦手なので読もうか読むまいか迷いましたが、食わず嫌いもダメだなと思って読みました。
山内容堂の「酔って候」、島津久光の「きつね馬」、伊達宗城の「伊達の黒船」、鍋島閑叟(かんそう)の「肥前の妖怪」、の4本を収めた短編集です。

司馬先生はあとがきで、風雲の主役は藩の家来たちが担当した...続きを読むが、そんな中殿様たちはなにを思い、どう行動し、時流にどのように反応したのだろうかということが長い間の関心事だったと書いており、本書を書くきっかけになったようです。

本書を読んだ感想はやはり幕末の殿様にはあまり興味をもてないなあと思いました。
風雲の主役たちに比べてインパクトが薄すぎて、なかなか厳しい。
「こういう人達だったんだな」という一応の知識は入ったので、読んで損はなかったが。

0

Posted by ブクログ 2020年05月12日

幕末の賢候たちの話。
それぞれ主人公は、土佐の山内容堂、薩摩の島津久光、伊予宇和島の伊達宗城、肥前の鍋島閑叟。
維新志士でも新選組でもない、ちょっと変わった視点の幕末を。

0

Posted by ブクログ 2020年04月20日

土佐藩独特の階級制度、それは関ケ原の戦いでの(微妙な)武勲による土佐領地のやり取りまで遡るわけだから、歴史の長い遺恨になるのも当然で、そりゃちょっとやそっとでは解決しないよなぁ、と。武市半平太や坂本龍馬のような郷士出身の志士を最後まで全く相手にしなかったという容堂候の、お殿様としてはちょっと変わった...続きを読む男気に溢れ義士的で徳川幕府に対する忠信を持ち続け、当時の諸国大名の中では珍しい才覚をもった豪快なひとりの男の人生、という意味で非常に面白かった。
とにかく土佐の男はいごっそうで酒豪なんだわなぁ。

0

Posted by ブクログ 2018年10月20日

幕末の四賢候と呼ばれた、山内容堂、鍋島閑叟、島津久光、伊達宗城を綴った短編集。幕末は役者が多いが大名視点で語られる本小説は、漫画のように楽しめる。これを読めば、鍋島閑叟が好きになる。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年03月14日

幕末の動乱の中で偶然にも出現した賢候たち。実際賢かったとは思うが、それ以上に各国の頭という立場故に誇張された噂が時代を変転させた原因となる、言い換えれば実力以上の影響力を残した賢候達の物語といえます。

土佐の山内容堂は豪傑で酒飲みという印象だが、歴史の大きな立役者たる坂本龍馬の存在を知らず、志士で...続きを読むある武市半平太を死に追いやるなどで佐幕に固執したために視野が狭くなり残念な末路に。
島津久光についても同じようなものを感じるが自己に驕りすぎる気質があり、大成を成したとは言えない存在に。
伊達宗城、鍋島閑叟についてはあまり知らなかったが今回の短編で興味がもてた。
司馬作品は長編こそやはり楽しく、短編は読み応えの点で物足りないが、ほかの作品と照らし合わせながら主幹の相違を楽しむうえで貴重な作品ともいえますね。

0

Posted by ブクログ 2020年07月15日

幕末の革命期を描いた小説といえば、たいがいは志士を主人公に、一介の藩士や浪人の視点から描かれることが多いけれども、この「酔って候」はそれとは逆に、藩主を主人公にして、大名の視点から維新を見た短編集になっているという構成が面白い。
収録された4編の主人公は、四賢侯の中から土佐藩山内容堂、薩摩藩島津斉彬...続きを読む(と久光)、伊予宇和島藩伊達宗城と、もう一人は松平春嶽の代わりに肥前藩主の鍋島閑叟。

表題作の「酔って候」は、土佐藩主山内容堂の一代記で、この短編が半分くらいの割合を占める。
同じ土佐藩の中でも、身分制度の厳しさのために、郷士として活動した坂本龍馬とはまったく交わることも、顔を合わせることすらなく、容堂の視点からは、龍馬の姿はまったく見えることがない。
同じ藩から同時代の革命を眺めていても、ここまで見え方が違うものかと思うけれども、司馬遼太郎の書き方からは、龍馬に対してだけではなく、龍馬とは別のベクトルに偏った一途さを持つ容堂に対しても、非常な愛着を持っているのが伝わってくる。

志士という立場でも、その所属する藩や身分によって、それぞれに固有の事情は生まれるけれども、大名という立場で在ることは、それとは比べものにならないくらいに特殊な条件をもって変動の時代に臨まなくてはいけないことを意味する。
ここで取り上げられている4人の藩主は、いずれも一編の主人公に成り得るだけの個性と、優れた資質を十分に持っていて、彼ら固有の物語の中での明治維新を感じることが出来る、面白い短編小説集だった。

容堂の心中、悲痛であった。
(いっそ大名にうまれておらずに、一介の士民に生まれておれば、おれはきっと天下を奔走して最も尖鋭激烈な勤王討幕の士になったかもしれない)
とおもった。気質的にはおそらくそうであろう。
西郷は、容堂の勤王好きとその天才的な機略、聡明さをよく知っている。(山内容堂)(p.117)

「唯八、おれは酔っているか」
と、馬上から小笠原唯八に声をかけた。
(酔っているどころではない)
と唯八はおもった。ぐらぐらと体がゆれている。差料は、二字国俊で蝋塗りの刻み鞘、丸鍔に銀の覆輪、黒柄に金目貫がきらりとかがやき、脇差は川井正宗で、こしらえは金無垢に転び獅子を彫りつけたこじり、鍔は金家作で垣に郭公の彫り、柄は黒。
どうみても豪華である。唯八は、この殿の酔態がすきであった。えもいえぬ気品があり、どうみても二十四万石の酔態というべきであった。(山内容堂)(p.129)

いわゆる幕末の志士は多く倒幕以前にたおれたが、生き残った者も、しょせんは革命の志士で新しい行政機構の行政家としては不適格であった。ところが大久保ひとりは例外で、卓絶した行政能力をふるった。革命家の激情と権謀の才をもち、かつ治世の能吏でもあるという才能は稀有といっていい。(島津久光)(p.163)

「佐賀の学制は、幾多の俊英を凡庸たらしめた」と大隈はいっている。ただし、閑叟ののちの活躍にとっては、俊英などは無用有害であった。なぜなら、佐賀藩を動かす頭脳は、閑叟がもってうまれた頭脳一つでこと足りた。あとは犬のように従順な藩士がおればよい、というのが閑叟の帝王学であった。(鍋島閑叟)(p.281)

歴史の魅力は時をおいて評価できることだ。四賢侯といい、五賢侯といっても、その世界観、経綸の能力、藩士に対する統率力は、棋士でいえば素人と玄人の差ほどに、閑叟はかれらよりもまさっていた。山内容堂のごときは、その土佐藩の上部は佐幕、下部は長州的勤王派で、収拾つかぬ混乱のまま明治維新をむかえている。(鍋島閑叟)(p.304)

0

「歴史・時代」ランキング