あらすじ
幕末の混迷期、なすすべを知らない三百諸侯のなかで、自らの才質をたのみ、また世間の期待を集めた賢侯たちがいた。土佐の山内容堂、薩摩の島津久光、伊予宇和島の伊達宗城、肥前の鍋島閑叟。「藩主なるがゆえに歴史の風当りをもっともはげしく受け、それを受けることによって痛烈な喜劇を演じさせられた」(「あとがき」より)彼らを題材に、著者ならではの視点で幕末を探る短篇連作。
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Posted by ブクログ
山内容堂、島津久光、前原嘉市、鍋島閑叟の4人にスポットを当てた、幕末短編集。それぞれ個性が強烈である。容堂は明君ゆえ朝幕二重政権は愚と認識しながらも、徳川への恩が忘れられずに公武合体論を唱えた。しかし革命は時として理不尽であり、血を欲するところがある。小御所会議で公卿岩倉に揚げ足を取られたのが致命傷となり、ついには薩長土連合政権が誕生するにいたるのであった。その他にも、自らのお家騒動の副産物として煙硝蔵と化した幕末の火種を作った久光、技術のみで提灯貼りから造船技師に化けた嘉市、勤王・倒幕など幕末の風雲に飲まれず超然と自藩の洋式化のみに注力した閑叟など、興味深いドラマが史実とともにドラマチックに蘇る。
Posted by ブクログ
山内容堂、これまで呼んできた幕末史のイメージ通り、キレ者なのにロマンチストで酔狂で、かわいらしさを感じる。
当時、時勢を先読んで公武合体論の走りのような考えで先行していたはずの彼が、最終的には拗ねて山に籠り切って女と酒に耽溺していったこと、なんだか辛くなった。やるせない。
島津家ってだいぶクソな気がする。幕末史を読めば読むほど薩摩好きになれませんごめんなさい。
伊達宗城というよりは嘉蔵の話が中心だったが、これは泣けた。先に花神で蔵六目線を読んでいたからこそ、なおのこと蒸気船作りの難題とか身分制度の厳しさがより強いものだと認識できて、めげずに頑張る姿が心に沁みた。
鍋島閑叟は、浅い知識しかなかったけど、意外と本作で1番面白いパートだったかも。ミニェー銃しか知らなかったけどエンフィールド銃というさらなる小分類(?)があったのね。
龍馬目線も蔵六目線も、今回は鍋島閑叟目線も学んで、改めて長崎を訪れてみたくなった。
Posted by ブクログ
audibleで視聴
伊達の黒船
これホント⁇と思うウソのような話。
見たこともない黒船を作れと言われた、長屋に住む、誰からもバカにされている貧乏な男。
ひとりプロジェクトで、上司も周りも誰も手伝わず、嫌がらせを受けながらも、なんとか黒船のエンジンを作っちゃう。
格が低すぎて発注者の殿様にも直接会うこともできずじまい…時代とはいえせつない
ストーリーは面白い
Posted by ブクログ
p.199
親が子をおしあげて隠居させ、自分が相続者になるというはなしは、町人の社会にもあるまい。
p.313
人間の物の考え方というものは議論でやるべきものではない。眼で見、手で触れる物で表すべきだ。
藩主の視点で見ると幕末のイメージもまた変わってきます。いろんなフィルターを自分の中にもっていたいなーと思いました。
Posted by ブクログ
幕末の雄藩・薩長土肥のうちの長州を除く薩土肥の藩主、山内容堂・島津久光・鍋島閑叟を取り上げた司馬遼太郎の三作品。幕末ものは名維持維新後に活躍した志士達を主人公にしたものが多いので異色だが、視点を変えれば見える風景も違うことが分かる。真ん中に挟まれた島津久光のバカっぷりが際立つのが面白い。
Posted by ブクログ
幕末の動乱の中で偶然にも出現した賢候たち。実際賢かったとは思うが、それ以上に各国の頭という立場故に誇張された噂が時代を変転させた原因となる、言い換えれば実力以上の影響力を残した賢候達の物語といえます。
土佐の山内容堂は豪傑で酒飲みという印象だが、歴史の大きな立役者たる坂本龍馬の存在を知らず、志士である武市半平太を死に追いやるなどで佐幕に固執したために視野が狭くなり残念な末路に。
島津久光についても同じようなものを感じるが自己に驕りすぎる気質があり、大成を成したとは言えない存在に。
伊達宗城、鍋島閑叟についてはあまり知らなかったが今回の短編で興味がもてた。
司馬作品は長編こそやはり楽しく、短編は読み応えの点で物足りないが、ほかの作品と照らし合わせながら主幹の相違を楽しむうえで貴重な作品ともいえますね。