あらすじ
ペリー来航以来、開国か攘夷か、佐幕か倒幕かをめぐって、朝野は最悪の政治的混乱に陥ってゆく。
文久二年、将軍後見職として華々しく政界に登場した、のちの十五代将軍徳川慶喜は、優れた行動力と明晰な頭脳をもって、敵味方から恐れと期待を一身に受けながら、抗しがたい時勢にみずから幕府を葬り去った。
さまざまなエピソードを連ねて描かれる、“最後の将軍”の生涯。
解説・向井敏
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
高校2年の頃に慶喜に興味を持ち購入したが、当時は日本史の知識が足らず、読むのを諦めていた。
大学1年現在に掃除中に発見。2日で読み終えた。岩倉や薩摩のおこがましさ。
Posted by ブクログ
天によって登場させられた人物
馴染みのない単語や厄介な言葉の羅列しかない今作だが、これほどまでに面白さがあるのは、やはり司馬遼太郎その人のおかげである。
徳川慶喜を歴史の授業で習ったのは小学生の頃。当時は坂本龍馬、西郷隆盛、勝海舟の物語に魅せられ、徳川慶喜など敗者くらいにしか考えていなかった。
しかし、今作を読んで別の一面があると思った。
それは"宮廷史劇"ぽいところである。
このやりすぎなくらいの物語が現実で実際に起き、他の人物と照合しても辻褄の合う面白さに興奮を隠せない。
理解者のいない苦悩とそれをものともしない胆力。
羨ましくもあり悲しい慶喜の人生に初めて魅せられた。
Posted by ブクログ
★5つです。
一冊でギュッと詰まった内容の本で、慶喜だけでなく円四郎、栄ちゃん、容堂公と好きな人が沢山出てきて楽しかったです。
短期間で密度のある人生を送ったのに、77歳まで生き続けた慶喜公って凄いなと思い、葬儀の際に東京中の火消が“まとい”をかがけて勢ぞろいしたのは感動で、晩年で飯盒でご飯を炊き続けた慶喜公は可愛い。
良い本に出会えました。
Posted by ブクログ
慶喜に同情して、★5です。
坂本竜馬が、命を捨ててもいいと言った将軍が、どんな人だったのか、大政奉還を幕府側から見てみたかった。
徳川慶喜が、想像していた人物像とは違い、孤独な存在で、切なく感じた。
周りから無慈悲な人だと思われたり、終始、誤解されまくりの人だった。
賊軍呼ばわりされたシーンは、一番悲しい。
最後は、慶喜の計画通りなのか、みんなに同情され愛される存在になって、本人が望んでたわけではないのかもしれないけど、個人的に良かったと思った。
Posted by ブクログ
日本史上の劇的な革命であった明治維新を題材とした小説は多いがほとんどが維新側から見た歴史ばかりで、維新側の視線で当初劣勢であった薩長側が、どのように情勢をひっくり返し維新を成立させたかに焦点が当てられていて、いかに幕府側が腰砕けの政権であったかが強調されている。
本小説は、多勢の幕府側がなぜ劣勢の薩長に破れていったのか、そして世界史の中ではほとんど見られない流血を伴わない革命がなぜ成立したのかが、敗軍の将である慶喜側の目線で理路整然と書かれている。慶喜は頭脳明晰という評価がありながら、長州征伐や鳥羽伏見の敗戦、その後の敗戦処理など政治的評価が低くその矛盾を不思議に感じていたが、慶喜がなぜそのように振る舞ったのかが掘り下げられており、幕末期の理解が深まる小説であった。
Posted by ブクログ
幕末の動きを幕府側・特に慶喜視点で描かれており、これまで長州・新撰組・土州(というか龍馬)視点で見てきた幕末を違う角度から見れた。特にこの作品は竜馬がゆくの直後に書かれたということもあり、内容・表現もリンクしていて、非常に面白かった。
慶喜という人は、これまでの幕末物語で読んで思い描いていた像(弱腰等)とは違っていた。私利私欲⇔国家存亡という単純な構図でもなく、そこには純粋な貴族としての性格があるのかなと思った。
300年の徳川幕府歴史を閉めるために生まれてきた男、大政奉還・王政復古後の隠居生活も含めて、男として潔さが格好良い。
Posted by ブクログ
読破。
切ない、複雑。
お芳のその先が気になった。
彼は、もっと後世の、役者の家系に生まれるべきだった。
そして彼でなければ、このポジションに生まれついて、ここまで生き長らえず、また歴史に一点の儚さを投ずることはできなかったのだろうと思う。
賢さが無駄な"英雄道"を進ませず、その合理さが現世の人心を汲まず、後世にだけ語りかけた。
時に惹かれて、時に憎く、また最後には儚い。
飯盒で自ら炊いた晩年の彼の飯に、ご相伴に預かってみたかった。
そのシーンが一番沁みた。
臣は将に振り回され、将は時代に振り回されるの図。
この世に、「我が人生を生きた」と満足して死んでゆく民や、トップはどれほどいるのだろうか。
そういう点では、彼が生涯に於いて感じざるを得なかった"他人事"観は、そのまま、今を上手く生きられない人々の胸に響くのではないだろうか。
なぜ、わたしなのか、なぜ、今なのか。
できれば安寧に自分の趣味だけで生きていたい慶喜の"貴族"感は、戦いや煩わしいことを厭う大半の"凡人"に通じないことはないと思った。
--.
4章終わりまで読。
面白い!
爽快である。
6/18
---
22ページ目くらいまで。読書途中。
出だしが分かりやすくテンポがいいので、ハマりそう。竜馬がゆくよりは、ハマりそう。
--
面白かった!
慶喜って凄いんやな。
Posted by ブクログ
これを読むまでは慶喜はヘタレのボンクラ将軍やと思ってたんやけど、小説の脚色は多少あるにせよ、意外に英雄然とした人となりが分かって慶喜を少し見直した。
チンピラだが無邪気な長州じゃなく、佐幕派と見せかけて寝首を掻く策略家の薩摩に一番恐れていた朝敵の烙印を押されたことで薩摩を心から憎んでるというのもよく理解できる。
Posted by ブクログ
徳川慶喜の苦悩がよくわかる本でとても面白い。尊王攘夷や天皇の意向に翻弄されながらも、策を練り日本のために舵取りをしており、尊敬できる歴史上の人物。
Posted by ブクログ
徳川慶喜に対する認識がガラリと変わった。
知識のない私は江戸から明治に移り行く時節にたまたま将軍であって、薩長がお膳立てした大政奉還に抵抗できずに言いなりになった人物と思っていた。
けれどこの作品から感じたのは、慶喜その人が将軍であったからこそ明治維新が成ったのではないかと言う事でした。
そしてもし彼がむしろ将軍を補佐する立場でいたならその能力を最大限に活かせたのではないかと言う事。
新撰組に例えるのが適切か否かはともかく、近藤勇よりも土方歳三の位置にあるべき人材だったのではないかという事。
ただしそうだった場合、日本という国が現在のような先進国たり得たかどうかは別の事ですが。
Posted by ブクログ
「円四郎までよく申しておく」 と、言いすて、馬主をめぐらせて去った。…その時渋沢はこの貴人のために身命をなげうちたいと思った
○大河ドラマ『青天を衝く』でも有名な場面。司馬遼太郎が徳川慶喜から見た幕末から維新をどう描いたか、いくつかの場面で確認するために久方ぶりに再読しました。
「薩人の奸謀は、天下の知るところ」
○中川宮邸にて 幕府への横浜閉港の御沙汰書を取り消す決定を朝廷を出したことで、慶喜が島津久光、松平春嶽、伊達宗城同席の場で
○同じ場で
「いまより、天下の後見職を愚弄なさるな。これに控える三人の大愚物と同様同列であるとおぼしめさせるな。この段、よくよくお心得あってしかるべし」
○本人達を目の前にして、この辛辣な言葉が言える慶喜は只者ではない。
「慶喜がこれにあり、玉体守護し、奉じるかぎりご心配無用とおぼしめせ」
○蛤御門の変で長州兵が迫る中、宮中にて
「この開港に反対することをもって幕府をつぶす」とまで薩の大久保はいっていたし、…
○兵庫開港問題での薩摩の方針
○兵庫開港の勅許を慶喜がその行動と弁舌で得たあと、(討幕の企画者達は)慶喜を恐れた。
(この男をほろぼし、殺さぬかぎり幼帝の将来はあぶない)と考えたのは薩摩の西郷吉之助であり、それほどに評価し、この評価を江戸城攻撃計画を推進してゆく最後まですてなかった
○長州の桂小五郎も慶喜を恐れ、この時期から「討幕の密勅」工作がすすんだという。
「異存があるか。」…
「なければよし。されば政権を返上する」
○大政奉還を慶喜が諸臣に自ら説明した時、続けて
「あすは、諸藩の士をあつめよ」…
「疑念はあるか。あらば、後刻、格別に謁見する」と、言った
※「岩倉・西郷・大久保は、竜馬・後藤の大政奉還コースとは別にひそかに密勅降下の工作をつづけていたが、それがなんと、慶喜が大政奉還の決意を表明したその夜に密勅が降下した。偶然、同日であった」(『竜馬がゆく』)
○慶喜の表明が数時間早く、岩倉の手に入った密勅は無効になった。密勅工作と同時に岩倉は「現実にはどこにもない」が南北朝時代に使われたといわれる錦の御旗を制作した。この錦旗が後日、歴史を動かした。
…薩の流血革命方式は、この一挙によってみごとに往なされたが…好機を待った。
王政復古の大号令の後、幕府軍が薩軍と衝突することを避けるため(慶喜は一時的に勝利することは可能でも、朝敵となることを避け、最終的には薩摩には勝てないと思っていたというのが司馬遼太郎の見立て)
「大坂へくだりましょう」と、
慶喜はにわかに言った。
…この間、江戸で変事が起こった。薩摩系浪士が幕府挑発のため市中の治安をみだすのに幕閣が堪えかね、庄内兵をして薩摩藩邸を焼き討ちさせた。…将士は興奮し、慶喜の命を待たずに兵を部署し、京坂の間に全軍を配置して即刻にも開戦できる態勢をとった
(鳥羽・伏見の戦いの前)
「錦旗が出た」
と、のみ慶喜はいった。
○江戸へ逃げ帰り、慶喜が閉塞していた勝海舟を浜御殿に呼び出して、戦後処理を任せる時に涙を流しながら
○蛇足ながら江戸時代には武士階級には尊王の思想は幕府や諸侯を問わず浸透していた。朝敵となることは現代人には想像し難いほどの屈辱だったよう。戦国時代なら慶喜も薩長を蹴散らしていたかも知れない。
○慶喜は大河ドラマでも好評ですが、実際にも弁舌は冴えわたり、江戸城で鳥羽・伏見の戦いの顛末を語る慶喜を天璋院は団十郎も及ばずと、いっていたということ。
※以上
Posted by ブクログ
大河ドラマ「青天を衝け」に登場する徳川慶喜は凄く興味深い人物であり、その慶喜を司馬遼太郎という作者が描いているということで購入した。
読み終わってみて結局、慶喜の心境は想像できない。
どこまで真実なのか定かではないが、
常人のようにも人間らしさも感じる底知れない人物だった。
そして、『竜馬がゆく』の竜馬と、
この『最後の将軍』の慶喜の大政奉還について書かれている解説がすごく気に入った。
Posted by ブクログ
歴史には、それぞれの側からみた歴史がある。
将軍になることを望まず、朝敵になり史上に名を汚すのが嫌だった慶喜。
保身に走り、部下を騙し、捨て去り、己れだけが己を肯定すればよしを貫いた。
大政奉還、江戸城無血開城。歴史的にみれば、慶喜のこの偉業なくして明治維新は開かれなかったであろう。
時勢によって望まざる方へと流されたのはわかる。けれど、私はやっぱり、不器用なれど誇らしく生きた新撰組の側からみてしまう。
貴人、情を知らず
これに尽きる。
Posted by ブクログ
前回読んだのが、幕末の長州を描いた「世に棲む日々」であったので、その対立軸でもある幕府側の物語を読んでみたいと思いました。
また、いま大河ドラマでやってる「晴天を衝け」とも重なるのも動機のひとつです。
大政奉還や王政復古の裏にはこんな人間ドラマがあったんだと思うと、もう一度、中学の日本史の授業を受けてみたくたくなりますね。
もし、日本史の先生がこんな話を授業中に放り込んでくれてたら、日本史が好きになってたかも、って思ってしまう。
「世に棲む日々」と「最後の将軍」で描かれる「攘夷」は当たり前かもしれないけど、真逆な感じで描かれてます。
前者では、攘夷カッケー
後者では、攘夷ヤベー
慶喜は「守ろう」としたのではなく「終わらせよう」としたのが出色の将軍だったのでしょう。
幕引きってよほどの覚悟がなければできないと思います。しかも、自身の名に傷が付かないように先見性をもって行動したのも、慶喜のストイックさが垣間見れます。
Posted by ブクログ
とても賢く、何事も思慮深く行動できる人であることはよく分かった。水戸出身の天皇観が最後まで自分を縛り周囲に理解されなかったのでは。
p237かれは自分が足利尊氏になることを何よりもおそれ、その点で常に過剰な意識をもっていた
この一節がとても印象的。
Posted by ブクログ
慶喜は生まれながらにして、水戸斉昭に高く評価され、将軍になる才覚を持っていると言われながら育った。幕末の四賢候にも同じく扱われていた。しかし、家茂との将軍選抜には、井伊直弼大老の安政の大獄により破れる。外圧が高まる中、家茂死去後、将軍職が回ってくるが、拒絶。それは、そうだよなとも思います。大奥では嫌われ、譜代大名からも嫌われ、周りの重臣は暗殺されてはやりたくもないだろう。仕方なく継ぐことにはなるが、あとは大政奉還や謹慎などを行う。
有能ではあるが、生まれる時代を間違えてしまった感じです。現代に生まれていれば、写真家や美容師、三ツ星レストランのシェフとかやっていたかなと思いながら読んでいました。
Posted by ブクログ
読み終わったあと、今まで思ってた慶喜と違う慶喜が脳内に現れる。
天才、全体を見れる。幕末論破王…?
ただ、貴族的。
あの時代、このような人が出たから、血が無駄に流れなかったのだなと。
明治後の小話までおもろい。「憎し薩摩」は一生ものだったようだ。
「百策をほどこし百論を論じても、時勢という魔物には勝てぬ」
この慶喜のセリフが好き。
Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ司馬遼太郎作品。
幕末の動乱期は血生臭いですが、日本の大変革期であり英傑が多数輩出された時代ですので個人的には非常に好きな時代です。
で、大政奉還の当事者である慶喜に関心を持ち、読みました。途中、実際に京都の二条城を訪れるなどしたので時間がかかってしまいましたが、最後の将軍になるべくしてなった人物であると強く思いました。さらに幕末を深く知りたいと思えた一冊でした。
Posted by ブクログ
初・司馬遼太郎
いままさに社内政治において、その論の運び方や思考力に悩んでおり、作内の慶喜とそれを描く作者の論理力に痺れた。
受験で日本史を選択したはずが、幕末の動乱はいまいち頭に入っておらず、今作で興味が湧いたので色々勉強したい。
慶喜の心の内は誰にも分からないが、世が世なら、、と思うのもこれまた人の勝手なところ。
Posted by ブクログ
徳川慶喜については、文化的な素養があることを聞いたことがあるくらいで、あまり詳しいことは知らなかったけど、
読んでみて合理的な人ながらも開国と明治維新という時代の過渡期の中でかなり損な立ち位置にいた人だったんだなという印象を受けた。
人物像としては13章にある松平春獄の
「つまるところ、あのひとには百の才智が合って、ただ一つの胆力もない。胆力がなければ、智謀も才気もしょせんは猿芝居になるにすぎない」
という言葉に集約されるような気がする。
欧米列強の強さを目の当たりにして、鎖国下でもオランダやイギリスと早くから交流のあった薩長と、
江戸幕府内においても慶喜とその重臣たちは早くから未来を見ていた中で、
封建社会的システムを抱えた江戸幕府がハコとしての限界を迎えていたのにそれを壊すことが許された側と許されなかった側に別れた。
そういう意味で、慶喜は時代の犠牲になりつつ次の社会にバトンを渡した。
大政奉還がとても前向きなものとして描かれており、慶喜はただの犠牲者でもなくれっきとした功労者だった。
Posted by ブクログ
p.219
「百策をほどこし百論を論じても、時勢という魔物には勝てぬ」
大政奉還前後からが面白くなるところなのかなーって思ったら、そのあたりからはあっさり、サクッと描かれ、すーっと終わってしまいました。
司馬遼太郎らしいといえばらしいですが、おそらく、その時の文献や見聞があまり無いので書けなかったのかなーとも思いました。
慶喜はなおのこと表舞台から消え去った人(将軍)ですもんね。資料はそんなに残ってはいないでしょう。
あの激烈な時代にあって、生き続けた慶喜の心情、想いをもっと知りたいと思いました。
単に趣味が多い、多才だけでは納得できなかったです。
Posted by ブクログ
いろんな描き方をされる徳川慶喜。
聡明で、先見の明があって、多趣味で。
何を考えているのかわからなくて、変わり者。
でも好きなんだよなあ。いつも合理的で。『しめしがつかない』や『筋が通っていない』とか、そういうんじゃなくて、今どうすべきか、を考えているのだよ。周りは大変だっただろうけど、好感。いつもながらに容保さまは可哀想だけど。個人的に幕末四賢候のほうが信用ならん。晴天なんちゃらみてみようかなあ。
司馬遼太郎入門編で、短いこの本を手にとったけど、読みやすかったです。つぎは明治のやつかな。
Posted by ブクログ
2018今やってる大河ドラマ「西郷どん」での松田翔太演じる徳川慶喜、いや徳川慶喜演じる松田翔太がすごくいいので、徳川慶喜に興味を持ち、一体どんな人物だったのだろう、とこの本を読んでみた。・・今回はせごどんにあまり魅力を感じないので慶喜に目が行っている。
徳川慶喜といえば、中学か小学の歴史の教科書で、章の扉絵に「徳川慶喜は主だった大名を集めて大政奉還をしました。家康が全ての大名を集めたのと違いますね」というような事が載っていたのが一番の印象。・・読んでみれば集めたのは大名ではなく在京の陪臣だった。
司馬遼太郎のこの小説は、将軍になるまでの記述は特に慶喜の人となりを浮かび上がらせるために、史資料を基に司馬氏が俯瞰者となって語る、という印象が強い。しかし、二条城での大政奉還以後は、特に慶喜の心の動きが強く伝わってきた。非常に聡明な慶喜だが、大政奉還はしても、それ以後の歴史の動きは予想外だったのではないか。
明治になってから謹慎を解かれ静岡に移ると数え33歳。以後は趣味に生き、多くを語らず、大正2年11月、77歳で死んだ。葬儀には旧大名の当主たち3百余人がことごとく参列し、特に諸外国の使臣が多く参列した、とあり、「慶喜の死は、江戸を一挙に遠い過去のものにした。この日以来、慶喜は江戸を懐かしむひとびとの感傷のなかに生きはじめた。」という最後ではなにか胸がいっぱいになってしまった。
Posted by ブクログ
「徳川慶喜とはどういう人間なのか」
内面(性格、価値観)を中心とした生涯が書かれており、教科書だけでは知りえなかった徳川慶喜について知ることかできた。
なぜ、徳川慶喜は大政奉還をしたのか。
その問いを解消したくてこの書籍を手に取った。答えとしては、物語中で察することができたので満足だ。
徳川慶喜の人柄を知りたいという人に、オススメの本だ。
Posted by ブクログ
今年の大河ドラマ、『青天を衝け』では、主人公渋沢栄一の旧主ということもあり、割と慶喜がドラマにも登場した。
が、実はこの人物について、よく知らない。
「なんだかよくわからない人」というくらいしか、イメージがない。
この本が今年、リバイバルしたのも、私と同じように思っている人が多いからなのかな、なんて思ったりもする。
大変能力の高い人だったそうだ。
そして、何でも自分でやってみないと気が済まない。
投網、調髪、大工仕事…およそ、藩主の子息としてする必要のないことでも、器用にやってのけたという。
意外だったのは、彼が雄弁な人だったということ。
後年、口を閉ざし続けたのは、立場上やむを得ないことだったかもしれないが、その寡黙さは性格的なものかと思っていたのだ。
本書では、その慶喜が、出自と時代のために、過剰に期待され、将軍の座に据えられていく様を描く。
そして、慶喜の、自分を歴史上の存在として客観的に、かつ他人事のように見る、独特なキャラクターと相まって、幕臣や諸侯の中で単なる「権謀家」に位置付けられてしまう様を描いていく。
本書は、歴史書ではなく、あくまでも小説だ。
にもかかわらず、何かものすごい説得力を感じる。
司馬遼太郎の作品としては、比較的早い時期のものらしい。
そして、あとがきによれば、司馬自身がこの人物にかなり魅せられているともある。
晩年の司馬はどう捉えたのだろうなあ。ということも気になる。
Posted by ブクログ
慶喜だからこそ大政奉還は実現したのかも。もし慶喜が薩摩長州と戦っていたら、日本は清国の二の舞になってたかも。そう考えると慶喜は日本の救世主だ。権力に拘らない貴族中の貴族の慶喜だからこそできたことかもしれない。でも、もっと自分の部下を大事にしたら、もっと良かったかも。徳川家康のように。そしたら、歴史は違っていたろう。徳川幕府が薩長を押さえつけ、大改革をして、徳川新政府を作り、新しい日本を作る。太平洋戦争も回避し、独立も守り、今も儒教思想が基礎となり世界から尊敬される立派な日本人がどんどん出てくる。教育崩壊などない。。。
ところで、薩摩のような大久保利通みたいな、謀略に長ける人間には、気を付けよう、と思った。
Posted by ブクログ
徳川慶喜の不遇さと傑物さを歴史に埋もれさせなかった作品。慶喜のことを見直してしまいます。
10年くらい前のNHK大河ドラマの「徳川慶喜」の原作だそうです。
知らなかった。知らないで、買って読んでみた。
幕末に関しての知識もそれほどなく、有名な人物の名前くらいしか
知らない程度なんですが、それでも面白く読めました。
なるほどなぁ、こんなふうに明治維新へと流れていったのか、ということが
よくわかります。攘夷だの佐幕だのという気運がどう人々や時代に
影響していっていたかがわかります。
たぶん、この時代の攘夷のくすぶりが、その後の軍国主義に多少なりとも
影響を与えている気がします。そう考えると、今の時代はなんと平和か。
徳川慶喜その人についてもかなり興味深かった。
水戸時代、一橋家時代とそうとうにその人物評価が巨大化されて
動きにくかったであろうこと。それでも、将軍後見職、そして将軍になった
いきさつとその傑物さ。かなり興奮させられながら読みました。
司馬遼太郎さんの本を読むのは初めてだったんですが、
そうとう研究して書かれていますね。研究がちゃんと血肉化されて、
自分の言葉で書かれている。それでもって、人物の内面の描き方も
ちゃっちくない。大作家だなぁ。
そういや、この本には、現在の大河ドラマの主人公である篤姫もちょっとだけ
出てきます。ま、見てないんだけどね。ドラマのほうにも徳川慶喜が
でてくるようですな。どんな描き方をされているのでしょうかね。