あらすじ
土佐の郷士の次男坊に生まれながら、ついには維新回天の立役者となった坂本竜馬の奇蹟の生涯を、激動期に生きた多数の青春群像とともに壮大なスケールで描きあげる。総発行部数2500万部超! 司馬遼太郎の永遠のベストセラーが半世紀の時を経て、電子版で新たによみがえる!
第6巻/薩摩と長州が力を合わせれば、幕府を倒すことは可能であろう。しかし互いに憎悪しあっている両藩が手を結ぶとは誰も考えなかった。そして竜馬が動いた。その決死の奔走により、慶応二年一月、幕府の厳重な監視下にある京で、密かに薩長の軍事同盟が成立する。維新への道は、この時大きく開かれたのだ!
恥ずかしながら初めて読みました。昔から有名な作品ということは知っていましたが「どうせ竜馬は死ぬんだろ…」と手をつけなかったのです。何ともったいない!
沢山のビジネス書や自己啓発書がありますが、若人たち、まずは『竜馬がゆく』を読みましょう!物語を通して自由闊達な発想・先を読む力・間の取り方・人脈などの大切さを実感することができます。また、そのためにいろいろと勉強したくなります。100年以上前の話ですが新鮮に感じます。
さらに竜馬以外の登場人物もみな魅力的。若かりし木戸孝允や板垣退助など、日本史の授業に興味がなかった私でも知ってる人物や、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎など、様々な人物が登場します。一粒で2度3度とおいしい作品。とにかく出来るだけ若いうちに1度は読んでおきたい作品です。
感情タグBEST3
薩長同盟成立
六巻は竜馬によって薩長同盟が成立。この偉業成就について、著者司馬は「事の成るならぬは、それを言う人間による」という。🐉私は齢五十を超えているが、事業の成否を当事者の人柄が決したことは、多くなかったと感じる。司馬との違いに、興がそそられる。🐉ところで、本巻では「婦人」について、「思慮深さと伶俐さ」はあるが、「感情の鬱屈」するところがあり、「恨みを結べは容易に解くことができない」という。まぁ、そうかもしれないが、令和の小説ではとても書けまい。さすが昭和の小説である。🐉
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倒幕という風潮が高まるものの、依然として長州藩と薩摩藩との対立が解消されない。このままでは欧米列強による支配も時間の問題だった。そこで竜馬が両藩の同盟へ導くために交渉するが、その一方で幕府も本格的に京を監視しているので、いかに監視下をくぐり抜けて目的を果たすのか。第六巻でもそんな緊張感が常に続いていく。
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薩長同盟
読んでいて、何とも言えない高揚感に包まれた。
自らの行動で日本の歴史を動かす、その先頭に坂本龍馬という男が、西郷隆盛が、高杉晋作が。
日本史だとプラスαで覚えておくといいよくらいだったと思われる小松帯刀とかが、実はめちゃめちゃ重要人物だったりするの面白い。
教科書の文字の羅列を暗記するより、よっぽどストーリーを伝えて、感情移入して、自分ならどうする?って考える方が良質な教育だよなあ。
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6巻では薩長同盟に奔走する竜馬が印象的でした。竜馬がいなかったら同盟は決裂して元の木阿弥になってしまうので竜馬、桂、西郷の3人も必死さが伝わってきました。同盟が結んだ後に寺田屋で命を狙われてしまう所がありましたが、時代というか「天」が竜馬を助けたと思いました。おりょうさんと結婚した所では良かったと思いつつ戦乱の世では、いつ命を落とすかと不安に感じたり複雑でした。
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話の展開に引き込まれる、読みどころ満載の巻でした。歴史の波に乗っている感じでした。薩長連合にこぎつけられたのは、竜馬の発想力、思考の柔軟性、最終的には人間力にほかならず、それを受け止め、人間として大きな器をもつ西郷の力だと思いました。そして、船宿、寺田屋のおかみであるお登勢、おりょうの存在は大きいものでした。
現代社会でも仕事をしていく上で、人間関係の比重は高く、直球勝負だけでは上手くいかないことの方が多いです。竜馬の時運、人物を見抜く目、何よりも交渉力、調整力は、さすがです。
竜馬とおりょうさんがめでたく夫婦となり、新婚旅行の場面は、ほのぼのしました。
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竜馬の幕末が熱い!幕末志士たちの命懸けの想いと戦い。史実に基づいたフィクションとはいえ、
日本のために命を懸けた熱き日本人が大勢いたという事実には変わりない。
終わりに近づいてきて、涙なしには読めないかもしれません。
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勝失脚し、後任に勝の政敵である小栗忠順、栗本鋤雲ら。小栗忠順は勝失脚後、軍艦奉行になり、なったと同時に勝の嫌う特定外国(この場合はフランス)と手を握る。竜馬、薩摩に入る。薩摩は当時、他藩のものを受け付けない秘密国家のようなものであったが、(よそ者は関所で斬殺された)西郷と共に薩摩に入る竜馬。もっとも全てのよそ者が殺されたわけではないが、幕府の放った密偵などは帰ってこなかった、という。薩摩で西郷、大久保だけでなく大山巌や東郷平八郎(ともに日露戦争の英雄)とも会う竜馬。竜馬、薩長同盟のアイデアを西郷に打診。竜馬、長崎の亀山で「亀山社中」をつくる。長州人を口説くため大宰府にいる三条実美ら五卿をまず口説こうとする竜馬。幕府の長州再征の背景にはフランス公使レオン・ロッシュがいる。竜馬、桂小五郎に再会。中岡慎太郎が西郷を説得して長州に来させ薩長同盟を結ぼうとするも西郷、ドタキャン。伊藤博文、井上馨、登場。二人はグラバーという外人からゲベール銃より高性能なミニエー銃の話を聞きミニエー銃4300挺、ゲベール銃3000挺購入。軍艦も購入、39000両。竜馬、高杉晋作と会う。薩長連合のための桂小五郎と西郷隆盛の会談、まとまらず。竜馬、西郷の非を責め、西郷謝る。薩長同盟成立。竜馬、寺田屋にいたところ襲撃される。寺田屋襲撃をなんとか逃げ延びる。竜馬、おりょうと薩摩に新婚旅行に行く。竜馬、高杉晋作と組み長州側で幕軍と戦う。
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龍馬率いる亀山社中の活躍や、薩長連合の成立。その後に伏見寺田屋で龍馬が襲われるも、何とか生き延びたりとかなり目まぐるしい局面。束の間のおりょうとの薩摩行きも息抜き的に良かったかな。第二次長征とそこで行われる海戦も興奮しました。幕府の衰退、時代の大きな変化が正に起こっている事が感じられ、色々考えさせられ大変面白かったです。
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薩長同盟、めちゃくちゃ大きいことなのに、それまでとあまり温度変えずに描いていて、すごい!熱すぎたら、その分あとが冷めてしまうから、スキルが必要ですよぅ!さすが、司馬さん!
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▼山場です。薩長同盟締結~寺田屋で大捕物間一髪~海援隊始動~第二次長州征伐に参加、幕府海軍に連戦連勝。
▼この巻のためにここまでがあったと言っても過言ではない、まさ竜馬大活躍、日本史のど真ん中に登場です。講談を読むような司馬節、面目躍如の大活躍、文句なしのわくわくどきどき痛快英雄譚の回です。
▼一方で高杉晋作が突如として主役かの如き扱いで躍動します。このあたり、「世に棲む日々」と「竜馬がゆく」の豪華コラボを見ている感で、なんというかすごく豊穣な気がします。
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薩長連合を考えたときに、おなじ尊王主義の両藩がいがみあっているのはおかしい。考えが同じなら一つになるべきではないか、と思い、その方角から手を握らせようとした。観念や思想から入った。ところが竜馬は、利害関係から入っていく。薩長の実情をよく見て、利害が一致するところはないかと見た。
「長州が可哀そうではないか」この一言で、この夜を境に倒幕段階に入った。事の成るならぬは、それをいう人間による
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薩長同盟、寺田屋事件、幕長戦争の海戦と、歴史の大事の中で、おりょうさんとの新婚旅行というほっこりするシーンの対比がいい味を出している巻。
昨今のウクライナ情勢を見て、日本はあの時代によく西洋化したなと感心する。竜馬をはじめ、木戸、大久保、西郷、山縣らの活躍あってこその今の日本だということを噛み締める。竜馬はよく、民間の力で軍艦を買ったもんだ。
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竜馬が亀山社中を立ち上げる。
この時代、武士の魂という観念的な考え方が強かった時代に、実利をもってして薩長同盟につなげようというのは、脱藩浪士として藩に囚われなかった竜馬ならではなのだろうか。
だが、決して実利だけでなくお互いの感情にも配慮する大切さ。
実践しようとすると、気苦労はかかるけれど、一番軋轢と後腐れないやり方なのだろうな。
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◯よく考えてみれば、この下関で西郷がきて君と握手し、いきなり薩長連合をとげる、というのははじめからむりさ。その無理を承知でサイコロをふったわけだが、思うような目が出なかった。世のことは偶然を期待してはいかん。(116p)
◯生死などは取り立てて考えるほどのものではない。何をするかということだけだと思っている。(264p)
◯三吉君、逃げ路があるかないかということは天が考えることだ。おれたちはとにかく逃げることだけに専念すればいい。(284p)
★薩長連合成る。そして寺田屋事件を経ておりょうと一緒になる。ドラマチックな6巻であった。
★亀山社中で孤立したために無念の死を遂げた饅頭屋長次郎を教訓にしたい。
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竜馬が本格的に動き出し、ついに薩長同盟を実現させる。改めてその凄さに敬服。そして寺田屋事件。よく知ってる話だが、よく死地を脱した。三吉慎蔵、大活躍! さらに薩摩への新婚旅行。これも知ってる話だが、改めて読むと面白い。
いよいよ大詰めが近づいてくるのがちょっと淋しい
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一人の人間が歴史を変えることがある。
坂本竜馬が存在しなければ、(襲いかかる幾多の危機を乗り越えられず、もっと早くに死んでいたら—その可能性は物凄く高かった)、現在歴史的として存在している「明治維新」はなかった。
そんなことはあるだろうか?
遅かれ早かれ、江戸幕府は崩壊し、「明治維新」は訪れていたのではないか。
この本は、それを否定しない。
しかし、竜馬無しで成し遂げられた「明治維新」は、現在我々が「明治維新」と呼んでいるものとは、違っていただろうと、本書は指摘する。
そして、あったかもしれない「もう一つの明治維新」の姿を、垣間見させてくれる。
それは江戸幕府主導の「明治維新」だ。
幕臣にも居たのだ、「もう一つの明治維新」を構想する、冷徹な男が。
それが、小栗上野介忠順(ただまさ)だ。
彼の考えた「明治維新」とは、どんなにものか。
薩長が力をつける前にフランスと組んで、軍の近代化を図り、藩を廃止する。
将軍中心の中央集権体制を確立し、新たな国家を作る。
坂本竜馬が、この小栗上野介が構想する、幕府主導の「明治維新」を阻止しなければ、日本は、欧米列強の餌食となっていた可能性が高い。
フランスの皇帝、ナポレオン三世は、日本国の皇帝となることを夢見ていた。
竜馬がいなければ、今頃、我々は、「ボンジュール。コマンタレ•ブー?」と挨拶しなければならなくなっていたやもしれない。
坂本竜馬が居なくとも薩長連合は成立したのではないか、という見方もある。
竜馬の盟友中岡慎太郎も、薩長連合を成立させようと奔走していたし、この構想自体が、当時の一般論だった。
だが、論と実行とは違う。
軍事的に見て、幕府に匹敵する軍事力を有するのは、薩長連合が最適だ。
だが、長州にとって、薩摩は、長州を京都から追い落とし、朝敵の汚名を着せた張本人だ。
恨み骨髄、絶対に許せない相手なのだ。
だから、ほとんどの人にとって「薩長連合」は見果てぬ夢に止まったのだ。
薩長同士も、討幕の道筋は薩長連合しかないと理解している。
だが、その間には怨讐が立ちはだかり、当人同士も連合は無理だと諦めている。
その怨讐を乗り越え、夢を実現したのが竜馬だ。
竜馬はどうしたのか。
彼はリアリストだ。そして、ビジネス•マンだ。
ビジネスの要諦は何か?
どちらか一方が得をすることではない。
Win-Winの決着を図ることだ。
それが、ビジネス継続の秘訣だ。
竜馬は、怨讐を超えるものは実利だと考えたのだ。
商人=ビジネスマン=媒介者の面目躍如だ。
長州の最も必要とするものは何か。
幕府による長州征伐に対抗する武器だ。
薩摩の欲するものは何か。
不作で不足している米だ。
長州は、外国から武器を購入することは禁止されている。
薩摩は、外国から武器を購入出来るが、それを長州に譲渡することは出来ない。
それを仲介したのが、竜馬の作った商社「亀山社中」だ。
A—>Bのやってはならない取引に、Cが介在することで、取引を可能としたのだ。
(A—>C—>B)
その反対の流れを行ったのが、長州から薩摩への米の支援だ。
怨讐は、実利によって解凍してゆく。
これは、ビジネスマンにとっては、ビジネスの実践そのものに思えるだろう。
本書が多くのビジネスマンに愛される所以だ。
そして、連合に対するもう一つの壁が、互いの面子だ。
薩摩の西郷の面子と長州の桂の面子。
これも当事者同士では調整出来ない。
そこには、第三者の介在が必要なのだ。
竜馬の役割は、第三者の仲介者、媒介者。
ギリシア神話のヘルメスの役割だったのだ。
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薩摩へ、薩長同盟の結成、第二次長州征伐
「生死などは取り立てて考えるほどのものではない。何をするかということだけだと思っている。世に生を得るは事を成すにあり、と自分は考えている」(264頁)
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かの薩長同盟の成立、寺田屋からの逃亡劇に、新婚旅行、そして第二次長州征伐への亀山社中(海援隊)の参戦と、内容てんこ盛りで、ここぞとばかりに竜馬が暴れまくりの1冊。
これまでの経験や人脈、ときの運といったものが紙一重でつながり、幕末の日本を大きく変えていく。
教科書や大河ドラマなどで触れられているような
エピソードも多く、小説ゆえに事実とは異なる
ところがあるとしても、話の展開には手に汗にぎるものがありました。
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薩長同盟を達成した回。そしておりょうと結婚し、日本初の新婚旅行に行く回でもある。
ついに龍馬が行くも佳境に入ってきた。
作者の「事の成る成らぬは、それを言う人間による」という言葉。イチローも言っていたなぁ。
これからこっそり自分も使おう。。。
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竜馬の視点を借りながら、幕末の動乱を見ている感じがしました。確かに竜馬もめまぐるしく活躍するのですが、時の中心となる大物達や大事件がどんどん出て来て、竜馬が霞んでいく印象です。
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p.180
熟慮をこのみ、考えぬいたあげくなにも行動しない
盛り上がってきました。
桂小五郎のネガティブなところが、一周まわって好きです。
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司馬遼太郎の長編時代小説の6巻目
ついに歴史でも最も有名な薩長同盟を結ぶ.自分は知らなかったが,そこにいたるまでの薩長の対立を貿易を使うことで見事に和らげ,締結にたどり着けたことに司馬遼太郎の描写によってありありと伝わった.また,同盟を結んだ後にすぐに政府から命を狙われ,命からがらにげのびたことを知り,その強靭な肉体と運に坂本龍馬の時代の人だったということがよくわかった.脚色をかなり強くしたのではないかと思ってしまうが凡そは本当なのだろう.
一方で自分の会社である亀山社中が戦にも参加し,長州藩の存亡の一助となったことも今作の読みどころであり,剣術で培われたかどうかはわからない海戦術を駆使し見事政府を撃破したエピソードも彼の才能を感じられた.
ここから歴史が維新へ進むと思うがまだまだ先が見えないなと思った.
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【感想】
ついに倒幕の大きな推進力となる薩長同盟を実現させるに至った坂本竜馬。
坂本竜馬ひとりの力で功が成ったとはさすがに言い過ぎだが、やはり坂本竜馬なしでは同盟の締結なんて無理だったんだろうな~
温故知新というか、功を焦らず機が熟すまでじっくりと待つことの大切さ。
あと、それぞれが持つ背景をきちんと捉えた上で、「理」だけでなく各々の「情」も汲んで事を進める点は、現在にも通じる交渉術だなぁと思いました。
面白い本ではありますが、前巻同様で、おりょうとのラブストーリーの箇所が要らないなと個人的には思います(笑)
【あらすじ】
幕府を倒すには薩摩と長州が力を合せれば可能であろう。
しかし互いに憎悪しあっているこの両藩が手を組むとは誰も考えなかった。
奇蹟を、一人の浪人が現出した。
竜馬の決死の奔走によって、慶応二年一月、幕府の厳重な監視下にある京で、密かに薩長の軍事同盟は成った。
維新への道はこの時、大きく未来に開かれたのである。
【メモ】
竜馬がゆく 6
p28★★
西郷は沈黙した。竜馬が意外な情報通であることに驚いている。
竜馬の特技といっていい。この若者は、物怖じもせずひとの家の客間に入り込む名人と言ってよかった。
相手もまた、この若者に惹かれた。惹かれて、なんとかこの若者を育てたいと思い、知っている限りの事を話そうという衝動に駆られた。
竜馬には、それをさせる独特の愛嬌があった。
どんな無口な男でも、坂本竜馬という訪客の前では情熱的な雄弁家になる。
竜馬は、異常な取材能力を持っており、それゆえに自然と抜群の国際外交通であった。
p40
竜馬の理想は、幕府を倒すということでは西郷と一致している。次の政体は天皇を中心にするというところでも一致している。
しかし西郷の革命像は、天皇を中心とした諸藩主の合議制であり、その下には士農工商という階級がつく。
その点、竜馬は違っている。
一切の階級を雲散霧消させることであった。
大名も、公卿も、武士も、一切の日本人を平等にするということであった。
竜馬はにこにこ笑って言わない。言えば西郷に危険視される事を知っている。
事実、西郷は明治になってから武士の廃止に反対する薩摩士族団にかつぎあげられて明治10年に西南戦争を引き起こした。
p116
「よく考えてみれば、この下関で西郷がきて君と握手し、いきなり薩長連合をとげる、というのははじめから無理さ。その無理を承知でサイコロをふったわけだが、思うような目が出なかった。
世のことは偶然を期待してはいかん。桂君、君もそうやたらと腹を立てないほうがいい」
薩長連合ひとつにしても、主義をもって手を握らせるのではなく、実利をもって握手させる。
ひどく現実的な回天の方式なのである。
「思想さえ高ければ、商人の真似をしても構わない。むしろ地球を動かしているのは、思想ではなくて経済だ」
p214
藤堂は近ごろ思想的に動揺していた。
近藤・土方とともに新撰組を結成した結党以来の古参であるが、池田屋の変以来、新撰組が攘夷結社の性格を失い、純然たる幕府の走狗に成り果ててしまったことに激しい不満を感じている。
また、新撰組幹部は近藤勇、土方歳三をはじめ、武州多摩地方の天然理心流の出身であり、創立以来の同志とはいえどこか近藤らは自分に他人行儀である。
藤堂はすでに隊に新加入してきた千葉門の先輩らと共に脱退を決意していた。
p219
・藤堂について
「人の運命はわかりませんな」
「それは違う。人の運命は、九割は自分の不明による罪だ。何にせよ、藤堂平助などは、今となっては道を引き返すわけにはゆくまい」
p239
桂というひとは、維新後になってからもこの粘っこい拗ね者の性格が直らなかった。
革命家らしい理想家肌をもっていたため、維新後も自分の手でつくった政府に飽き足らず、絶望と不平と不満を蔵しつつ人に接し、ついにはその門を訪ねる人も少なくなった。
p245
・薩長連合
当時、薩長連合というのは、竜馬の独創的構想ではなく、すでに志士達のあいだで常識となっていた。
「薩摩と長州が手を握れば幕府は倒れる」というのは誰しもが思った着想である。
しかし所詮は机上の論で、冷戦時の「米国とソ連が握手すれば世界平和は今日にでも成る」という議論とやや似ている。
竜馬という若者は、その難事を最終的には一人で担当した。
すでに薩長は歩み寄っている。あとは感情の処理だけである。
p417★★★
長州人は、たった五百人の兵で上陸している。奇兵隊が主力だから、元々の武士ではない。町人、百姓の子弟である。
それが半洋式化された小倉藩の武士団を押しまくっているのだ。逃げるのは、大名の家柄を誇ってきた小倉小笠原家の藩士である。
「長州が勝っちょりますな」
「いや、長州が勝っちょるのじゃない。町人と百姓が侍に勝っちょるんじゃ」
たった今、竜馬の眼前で、平民が、長いあいだ支配階級であった武士を追い散らしているのてまある。
「天皇のもと万民一階級」
というのが竜馬の革命理念であった。
平等と自由。言葉こそ知らなかったが、竜馬はその概念を強烈にもっていた。
「あれが、俺の新しい日本の姿だ」
竜馬は自分の理想を、実物をもってみなに教えた。
竜馬の社中が掲げる理想が、単なる空想ではない証拠を眼前の風景は証拠だてつつある。
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7巻が読み終わって6巻を登録していなかったのに気づきました。6巻って、どんなだったかなあ。長編になると1巻前のお話も、昔のことのように思えます。読書とともに歴史を歩む醍醐味です。
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大志のために情勢をみつつ待つことも大事
時勢の情報を正しく掴んでいる人を見極める
この時代には日本人の概念も浸透していなかった
決断できる人を丁寧にわかりやすく説得する
大志も一発では上手くいかずとも、細かい事を積み上げて物事を動かす
上手く行きそうでも、様々な思案の後に行きつ戻りつでようやく物事は進み出す
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長次郎は才子ではあるが、組織でもって協同して事をする感覚が欠けているようである。貧家の秀才で無我夢中で世間の表通りに出てきた者のもつ悲哀といっていい。われがわれがとおもう一方で、仲間の感情を思いやるゆとりがないのである。
(しかし、城下の水道町のまんじゅう屋のせがれも、薩長両藩を相手に大仕事ができるまでになったか)
とおもうと、竜馬はあのまんじゅう屋の冷たくとぎすましたような秀才づらが、いとしくてたまらなくなるのである。(p.160)
「私は根が町人のうまれで、戦争はあまり好みませんが」
「ばかだな、お前は。そういうことをいうちょるから、あたらそれほどの才分をもちながら人にばかにされるのだ。男は、喧嘩をするときには断乎喧嘩をするという大勇猛心をもっておらねば、いかに名論卓説を口にしていても、ひとは小才子としか見てくれぬぞ」
「しかし、にが手はにが手です」
「にが手でもやれ、近藤長次郎が軍艦にのってひといくさした、といえば、あとあとお前の名論卓説に千鈞の重味がつくぞ。口さきの才子ではない、と人は思う。人がそう思えば仕事もやりやすくなる。思わぬ大仕事ができるというものだ」
「しかし、いくさに負けて軍艦が沈めばどうなります」
「死ぬまでさ」
と、竜馬はむしろまんじゅう屋の顔をふしぎそうに見、あたりまえだよ、といった。
「しかし死ぬのは、まだ惜しいです」
「惜しいほどの自分かえ、まんじゅう屋」
「まんじゅう屋はよしてください」
「では、長サン。男はどんなくだらぬ事ででも死ねるという自信があってこそ大事をなしとげられるものだ」(p.182)
桂の感情は果然硬化し、席をはらって帰国しようとした。薩摩側も、なお藩の体面と威厳のために黙している。
この段階で竜馬は西郷に、
「長州が可哀そうではないか」
と叫ぶようにいった。当夜の竜馬の発言は、ほとんどこのひとことしかない。
あとは、西郷を射すように見つめたまま、沈黙したからである。
奇妙といっていい。
これで薩長連合は成立した。
歴史は回転し、時勢はこの夜を境に倒幕段階に入った。一介の土佐浪人から出たこのひとことのふしぎさを書こうとして、筆者は、三千枚ちかくの枚数をついやしてきたように思われる。事の成るならぬは、それを言う人間による、ということを、この若者によって筆者は考えようとした。(p.246)
Posted by ブクログ
生きるも死ぬも、一表現に過ぎぬ。
事を成すか成さぬかだけを考えれば良い。
先人の真似事はくだらぬ。
龍馬の考え方は好きだ。
何もせずに死ぬのは、生を受けた意味がないと思う。そして、自分で考え、自分が正義だと思う、藩人ではなく、日本人を作ることに奔走した姿はかっこいい。時代が味方をするというのはこういうことなんだろう。
Posted by ブクログ
友人に勧められて読み始めたが、日に日にワクワクしなくなっていく自分がいる。序盤の展開にはハラハラドキドキさせられたのにな…
また違う機会に読んだら楽しめるかな??