あらすじ
土佐の郷士の次男坊に生まれながら、ついには維新回天の立役者となった坂本竜馬の奇蹟の生涯を、激動期に生きた多数の青春群像とともに壮大なスケールで描きあげる。総発行部数2500万部超! 司馬遼太郎の永遠のベストセラーが半世紀の時を経て、電子版で新たによみがえる!
第8巻/慶応三年十月十三日、京は二条城の大広間で、十五代将軍徳川慶喜は大政を奉還すると表明した。ここに幕府の三百年近い政権は幕を閉じた。時勢はこの後、坂を転げるように維新にたどり着く。しかし竜馬はそれを見とどけることもなく、歴史の扉を未来へ押しあけたまま、流星のように……。「竜馬がゆく」遂に完結!
恥ずかしながら初めて読みました。昔から有名な作品ということは知っていましたが「どうせ竜馬は死ぬんだろ…」と手をつけなかったのです。何ともったいない!
沢山のビジネス書や自己啓発書がありますが、若人たち、まずは『竜馬がゆく』を読みましょう!物語を通して自由闊達な発想・先を読む力・間の取り方・人脈などの大切さを実感することができます。また、そのためにいろいろと勉強したくなります。100年以上前の話ですが新鮮に感じます。
さらに竜馬以外の登場人物もみな魅力的。若かりし木戸孝允や板垣退助など、日本史の授業に興味がなかった私でも知ってる人物や、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎など、様々な人物が登場します。一粒で2度3度とおいしい作品。とにかく出来るだけ若いうちに1度は読んでおきたい作品です。
感情タグBEST3
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これまで幕府と薩摩藩との争いが繰り広げられ、両者ともに消耗していったが、遂に第15代将軍徳川慶喜は大政奉還を受け入れた。これにより徳川幕府は幕を閉じ、朝廷を中心とした新しい時代の幕開けとなる。それまでの過程で、本作の主人公坂本竜馬はペリー来航をきっかけに次の時代に向けて、幕府側と倒幕側の人々に出会い、独自の思想を確立する。その後、無駄な争いをできる限り避けるために交渉にあたり、何とか無血開城のきっかけを導いたというように、竜馬の人たらしぶりが発揮される。結局、竜馬は新しい時代を目の当たりにすることなく何者か暗殺されてしまったが、彼の活躍のおかげでいくつかのことが達成された。
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今までの読書人生、長編大作を完読したことは一度もなかったのに、あっという間に読んでしまったし、全く長いと感じさせないくらい幕末と竜馬の魅力に引き込まれた。
少し間を空けてまた1巻から読みたいと思います。
司馬遼太郎作品は他も漁らないとあかんなあ、、
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最終巻読み終わりました。改めて坂本竜馬がいなかったら日本はどうなっていたかと考えさせられました。明治維新を見ることなく世を去ってしまいましたが、もし生きていれば、無用な戦はなかったかもしれませんね。作者の司馬遼太郎先生の解説も素晴らしかったです。次も司馬遼太郎先生の小説を読んでみたいと思いました。
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評価5以上の感動でした。大政奉還実現が分かったときの竜馬の涙。将軍徳川慶喜の心中を思い、「この公のために一命を捨てる」との言葉。無私の精神。大政奉還後も新政府樹立に走り回っているの姿。脱帽です。
竜馬、中岡の暗殺される場面の描写は真に迫るものがありました。頭脳明晰、かつ人物を見抜く目をもち、相手の立場に立った物の考え方もできる、尊敬すべき存在の竜馬が、最後は愛すべき存在になっていました。あの場面で死んでほしくなかったなあ。日本の未来を見据え、考え抜き実行に移した竜馬に感謝です。竜馬と共に、肝っ玉の座った乙女姉さんも大好きです。
【全巻を読んで】「坂の上の雲」もそうでしたが、けっこうな割合で、筆者の余談が入ります。読んでいて、司馬遼太郎さんも登場人物の一人に組み込まれているような感じがします。司馬遼太郎ワールドにようこそ!みたいでした。竜馬の恋バナも楽しかったです。
歴史事項を再確認できたばかりでなく、映像化された作品は見ていないのですが、人物像や情景が目の前に浮かぶようでした。小説を読む効果はすごいです。竜馬をめぐる周辺人物のその後などが記されているあとがきも、読む価値ありました。
思春期や、20代の社会人になりたての頃に読むといいのかなと、はじめは思いましたが、竜馬の交渉力、調整力の卓越したところから学べることは多く、世代を問わないのかなと感じました。その人の持つ人間力が、道を切り開いていくのだと思います。
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遂に「竜馬」の人生が終わった。自分の現状と重ね合わせたり、当時のことを調べたりと、とても引き込まれた。司馬遼太郎の表現がさらにこの作品を面白くしていると思う。
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全8巻を読み終わっての感想
竜馬の凄いところは、この時代にあって世界という大局観を持っていたことに尽きると思う。まだこの本を読まず、何となく坂本龍馬のことを知っていた時は「薩長同盟の立役者」「北辰一刀流の達人」「昔はアホだった」位の認識しかなかった。もちろん小説だということを認識した上で、英仏が日本を狙ってることを認知し、幕府の体制は既に腐敗し限界だったことを説き、尊皇攘夷でも佐幕でもなく近代化への絵図を諸藩の英雄に認めさせ、仲間を増やして討幕に至る。この流れが非常にスリリングであった。竜馬には多くの人生の師匠が登場する。乙女姉さんを始め、千葉貞吉、勝海舟、松平春獄などなど。特に勝海舟から受けた影響が最も強く出た小説だと言えるだろう。竜馬は最も自由であり、彼ら師匠の影響を受けて自分というものを作り上げていった。
史実とは異なる部分も多いのだろうから、史実から見た坂本龍馬を勉強してみたいと強く思った。
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最後まで、竜馬の魅力がなんとなくわかるよ程度だったのが、死ぬ間際の潔さがかっこよすぎて、一気に竜馬ファンになります。暗殺のシーン、あっけないです。それともそこだけ集中して読んだから、短く感じたのか。
司馬さんも仰ってる通り、たしかに幕末で異色の思想の持ち主なんだなと、私の頭では、最後まで読んでやっと腑に落ちた。竜馬にだけは、目の前にある世界じゃなくて、その先の明るい未来が見えていた。
成就させるタイミングを辛抱強く待って、その間に周りをどんどん固めていって、その上運の神様も竜馬に微笑んだ。そして、神様は、天命が終わるとすぐに命を奪った。
現代の世知辛い日本にも竜馬が必要だ。
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終わっちゃった〜ヽ(;▽;)ノ。最後、龍馬が殺される時だけ、客観的に書かれていて、なんだろう。もうすでに物語は終わった感があって、悲しかった。龍馬の潔さ、偉大さが深く伝わってきた。この本を読んだ人全員龍馬を好きになるって、本当だったんだね…!
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どれだけかかっただろう?覚えていないほど、じっくり読んだがついに読み終えた。
司馬遼太郎さんの作品は多くが史実に基づくものという思い込み前提ではあるが、坂本竜馬はホントのヒーローだった。
月並みだが、この人がいなかったら日本はどうなっていたのだろう?と思わずにいられない。
神に使わされるなんて信じるべくもないが、この人ならそうなのかも?と思わずにいられない。
素晴らしい人だった。司馬遼太郎さんにも感服。
次は坂の上の雲と決めている。
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坂本竜馬という人に出会えてよかった。
この本に出会わなければ、明治維新の立役者の存在すら知らずに生涯を終えるところだった。
本を読み終えて、熱い想いが胸に宿った。
私心なく、社会をよくしたいと思う志を強くもって、仕事をしたい。
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最終巻。大政奉還への大奔走や、その途上での長崎での英国人殺人事件での海援隊への疑いを晴らす為の素早く且つ適切な動き。その大政奉還を成し遂げた時の涙。相当感慨深かったんだろうなあ、と想像するも、すぐさま、新官制を考案し、またその後の人選や調整にも自ら奔走。スーパーマンです。且つ私欲がない。最期は分かっている結末ながら、本当に残念。里帰りする機会があった事かませめてもの救い。運の悪さも多分にあるが、危険な目に遭いながら、どうしてこんなに無防備だったのだろう。話途上や後書きで、登場人物がその後、どうなったか等記されているのも、思いを馳せるにもなお良かったです。読み継がれる名作ですね。
Posted by ブクログ
★5つです!
乙女大姉、さな子、おりょう、千代
気がつけば竜馬が大人気。
ということもさることながら、大政奉還までの怒涛の展開。
最後は皆の前に竜が駆け上る描写など。。
高知は死の国、幻想的な表現が似合います。
Posted by ブクログ
▼大政奉還実現に奔走して、一方で「長崎で海援隊が英国人斬殺の冤罪に問われる事件」があり、新政府の閣僚まで人選交渉し、そして暗殺に倒れます。まさに歴史の花道を駆け抜ける終盤戦。
歴史小説の素晴らしさでありミステリー、「大まかどうなるのか全部分かっているのに、オモシロイ」という見本です。やっぱりそれは、語り口であり、節回しであり、言ってみれば声色なんですね。
▼第1巻から登場する、便利使いの子分「寝待の藤兵衛」というキャラがいて、「エンタメ系司馬作品」にはこのようなキャラが(女性が多いけど)主に序盤だけ出てその後いなくなる(笑)というパターンが多い気がしていましたが、今回の再読で、
「ああっ!8巻でも出てるっ!ちょっとだけどっ!」
というのを発見して、妙に感動。
▼どうやら史実でしょうが、途中でいろいろのひょんなことで竜馬が高知に帰るんです。時世変節、脱藩他の罪科を解かれ、数日だけ、実家に帰ります。十年ぶり?くらいに、父親代わりの長兄、乙女姉さん、などなど家族親戚と再会します。物語はもう8巻だし、維新は目前だし、つまり竜馬は間もなく、あと100ページくらい?で、死ぬことが読者は分かっています。
実家に帰った竜馬は、歓迎されて楽しく過ごします。司馬さんの語り口の中では、たれも政治も国家も論じずに他愛もなく過ごします。竜馬さんも、嬉しい。司馬さんの描く竜馬さんは、姉乙女を筆頭に家族親戚に対して複雑な屈折なく育ってきた、言ってみればボンボンである、と描いていて、そんな竜馬が脱藩して天涯孤立の漂白歳月の中でも、家族親戚への他愛もない手紙を欠かさなかった。
▼手紙は、保存され残っているので、司馬さんは読んでいます。そこから作り上げたであろう<司馬竜馬>を味わってきた身としては、この、「第8巻の里帰り」の下りは、なんだかグッと来てしまいました。
今回、恐らく人生で3度目か4度目の通読で、しかも恐らく10年以上ぶりなんですが、この下りでこれほど胸打たれたことは、今回が初めてです(こういう場面があったこと自体、憶えていなかった)。
こちらが経年変化したってことなんでしょうね。平たく言うと、トシを取ったんで。こういうところで泣けるようになりました(笑)。
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司馬遼太郎さんの本は、何故か風神の門から入り、関ヶ原、花神、峠、戦雲の夢と読みましたが、どれも傑作ではありますが、改めて竜馬がゆくが内容、展開、そして今読み終えての読後感がなんとも言えず最高です。
幕末の日本人になった気分を味わえた数ヶ月、とても幸せでした。
創作の部分多数あれど、残した言葉の数々は心に残りました。
また読む機会あったら読み返してみたくなりました。
(てか実は10代、30代、40代と読み返し、更に50代で読んでるので五回目なんですけどね)
何回よんでも面白い、司馬遼太郎さんの作品は私のマイベストです。
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第8巻まで読み終わり、坂本竜馬という人物が幕末においていかに巨大な存在だったかを知ることができました。「竜馬の霊が天へと翔け登った」みたいな感じの表現がありましたが、確かに竜馬ほどの大きな人物ならこの表現も納得です。司馬遼太郎の筆致も臨場感があり、素晴らしかったです。
司馬遼太郎の作品は他に「燃えよ剣」しか読んだことがないですが、他の作品もぜひ読んでみたいです。「竜馬がゆく」も色々と歴史的背景や人物のことを知ってから数年後に再読できたらと思います。
次は「坂の上の雲」か「世に棲む日々」を読みたいですね。
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司馬遼太郎は事をなす人間の条件を竜馬を通して伝えた。
=コミュニケーション能力
60年前に書かれてるけど、そこらの読みにくい自己啓発系の本を読むなら司馬竜馬の方が良い。
若い時に読まなかった事に後悔。
「司馬遼太郎は史実ではない」という指摘ほど野暮なものはない。
司馬遼太郎...まじバケモン...
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「竜馬がゆく」の第8作目は、長い時を経て、龍馬の平和を願う気持ちが実を結んだ事を実感出来る巻だった。今回特に感じたのは、偉人と言われている人達も一人の人間である事に変わりなく、時には悩んだり行き詰まったりするという事である。その中で無我夢中になりながらも自らの進むべき道を模索し、一人一人を相手に自分の考えを地道に説いていく龍馬たちの姿は、天才という言葉でまとめてしまうのは勿体無いほど、並大抵ならぬ努力家であったのだなと思った。
Posted by ブクログ
初めての司馬遼太郎作品
幕末知識は義務教育レベルなので知らない名前や事件が多数出てきたが、個性豊かで魅力的な登場人物たちのおかげでとても楽しく読めた
特に竜馬と陸奥陽之助のコンビがお気に入り
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「世に生を得るは、事をなすにあり」
坂本龍馬の口にしたこの言葉通りに生きた生涯であったと、追体験ができた。
竜馬という自分の道をひたすら貫き生き続けた人生に感動した。
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全8巻に及ぶ大長編小説を読み切ったのは、初めて。
維新史の奇跡こと、坂本権平弟竜馬の自由奔放さ、快活さ、思想的鋭さ、先進さなどあらゆる感覚が、書き出されていた。
あっぱれ!司馬遼太郎!!
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竜馬が奮闘した大政奉還が実現し、徳川幕府の時代が終わり、新しい時代の幕が開ける…
あぁ、ついに終わってしまった!
読み終わった私は完全に竜馬のファンになっている。
倒幕の後の地位や名誉を当然気にする人たちの中で、ここまでやっておきながら大政奉還の後は全てを他の人に任せて自分は世界の海に出ると言う。
かっこいい〜〜かっこよすぎる!!
権力に媚びず、人を見る目を持って仲間を増やし、大胆に行動する。竜馬の器が大きくて、時に些細なことでクヨクヨしたりイライラしたり悩んだりする自分がとてつもなくちっちゃな人間に思える。
「しかない、というものは世にない。人よりも一尺高くから物事をみれば、道はつねに幾通りもある」
「仕事というものは、全部をやってはいけない。八部まででいい。八部までが困難の道である。あとの二部はたれでも出来る。その二部は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはではない」
「人の跡を慕ったり人の真似をしたりするな。釈迦も孔子も、シナ歴朝の創業の帝王も、みな先例のない独創の道をあるいた」
司馬遼太郎の文章にも痺れる。
「この長い物語も、おわろうとしている。人は死ぬ。
竜馬も死ななければならない。その死の原因がなんであったかは、この小説の主題とはなんのかかわりもない。筆者はこの小説を構想するにあたって、事をなす人間の条件というものを考えたかった。それを坂本竜馬という、田舎うまれの、地位も学問もなく、ただ一片の志のみをもっていた若者にもとめた。
主題は、いま尽きた。
その死を詳しく語ることは、もはや主題のそとである。
竜馬は、暗殺された。」
この後に竜馬暗殺の場面も描かれているが、竜馬らしい潔い最期に泣けてくる。
竜馬を暗殺した人、なんてことしてくれるんだ!!と思わずにいられない。
竜馬がここで暗殺されていなかったら新しい時代にどんなことを成し遂げたのか。
今、この現代に竜馬が生まれていたら、竜馬は何を成すのか。
文句無しに面白かった。
本棚の永久保存版にしよう。
Posted by ブクログ
ついに維新回天の壮大な物語を読み終えた。坂本竜馬を通じて幕末から維新に至るまで長編でしたが、間違いなく読んで良かった小説だった。
各登場人物の生き方、姿勢、座右の銘など今後の生きていくためのヒントが得られた。
全体を通して、幕末の志士(当時の武士)たちは自分の命を革命のためなら捨てるという、今の人たちとの死生観の違いにびっくりした。過去に実際こういう人考えを持つ人がいたことがわかっただけでも読んで良かった。
印象に残ったフレーズは、本文ではないが、あとがき5の最後の著者のフレーズ『私心を去って自分をむなしくしておかなければ人は集まらない。人が集まることによって知恵と力が持ち寄られてくる。仕事をする人間というものの条件のひとつなのであろう』が印象に残った。幕末も現代も大きな仕事をできる人の人物像はかわならいのかもしれない。
Posted by ブクログ
ついに慶喜が大政奉還を宣言。その後の新政府がどのように政治を行っていくのかまで考えている竜馬の時勢を読む力は流石だ。
それだけに、その先の日本と龍馬を見ることができないのが残念に思われる。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎による坂本竜馬を主人公とした小説。
文庫版で八巻にもおよぶ超大作。
司馬遼太郎の小説は初めて手に取ったが、引き込まれる内容だった。彼の膨大な取材量に裏付けられた緻密な描写もさることながら、ここまで長い小説であるにも関わらずほとんど中弛みがなかった。
本作は竜馬が故郷の土佐(高知)から武者修行のために江戸に発った1853年から、大政奉還直後に近江屋で暗殺される1867年までの期間を描いている。
個人的には、大学受験で日本史を得意としていただけに本作における時代背景や大まかな出来事、流れは頭に入っていた。
しかし、たった十数年の間にこれほど濃密で熱い男たちの闘いがあったことは全く知らなかった。
私は今まで教科書では数ページで終わる内容をただ暗記していただけで、竜馬をはじめとする維新志士が回天に際して懸けた想いに巡らすことなど思いもしなかった。
維新志士たちだけではなくて、幕臣や佐幕の侍たちも、彼らなり葛藤を抱えながら日本の行く先を憂い、真剣に考え、そして倒れていった。
彼らの遺志が今の日本の一部を形成していることは紛れもない事実なのに、私はそんな彼らの想いを考えもしなかった。日本人としてこれは知っておくべきであり、これが本当の歴史と言ってもいいだろう。
本作を読んでそう思った。
作者は、本作の終盤において「事をなす人間の条件というものを考えたかった。それを坂本竜馬という、田舎うまれの、地位も学問もなく、ただいっぺんの志のみをもっていた若者にもとめた」と記している。
これは確かに普遍的で奥深いテーマである。個人的にも本作を振り返って、坂本竜馬という人間がどのような人間なのかを一考したい。
坂本竜馬とは
伝統、作法、常識に囚われることを窮屈と切り捨て、
自身や藩の利益に固執せず、やり場のない大志の行き先を探し、
食えぬ傑物でありながら、少年のような大志を抱く男でもあり、
時代の常識であるパースペクティブから飛び出す自由な発想・思想を持ち、
土佐の差別的なまでの階層意識を乗り越えて、大事を成した男である。
竜馬は、決して生まれに恵まれた秀才だったわけではない。卓越した頭脳を持っているわけでも、弁が立つわけでもなかった。
しかし、彼はその人間的魅力をもって政府の有力者から気難しい志士、荒くれ者の侍、遊女までを惹きつけた。既成の価値観に囚われずに事物の良し悪しを見定め、生涯をかけて類稀な大局観と強烈な好奇心を養った。
故に坂本竜馬は、だれも夢想しなかった無血での維新を果たすことができたのだ。
この中でも最も重要で普遍的なことは、彼が人間として大きく、平易な目を持っていたことであろう。英雄としての必要最低限の条件はここにあると考える。
さらに、彼が剣道の達人として世に名を通したことも忘れてはならない。やはり、どんな跳ねっ返りであったとしても、人は何かを成すにあたっては既存の価値観の上で実力をつけて一定のプレゼンスを持つことが必須なのだと思う。
今、日本という国は幕末と同じぐらい危機的な状況に瀕していると考える。
幕末の危機が閉鎖的ゆえの世界全体の中で経済的・思想的・軍事的没落に起因したとすれば、現在の日本の憂国の危機はグローバルに「開かれすぎた」世界であるがゆえの競争力の低下だという違いはあるものの、どちらも同じくらい切迫した状況だと考える。
江戸時代における日本の長い太平は、結果的に相対的な経済・軍事の低下をもたらした。対して欧州は長く陰湿な混乱期によって力を手にした。払うべきときに、払うべき犠牲を払わなかったことが日本を弱体化せしめたのだ。
これも現在の日本の状況に当て嵌まる。
WW2の敗戦から高度経済成長、バブル、ただ経済における原理であるキャッチアップと人口ボーナスでしかなかった現象を、自らの実力だと勘違いし、然るべき準備をせず、払うべき犠牲を払ってこなかった。
結果が、今の日本の体たらくである。
最も確実な未来予測である人口構造の変化に手を打たなかった結果、世界一の超高齢社会と化し、何の役にも立たない老人を若者の犠牲によって生かし続けている国。
私欲と利権にまみれた無能な世襲政治家が跋扈し、本来であればそれを監視するべきマスメディアに大義がなく、癒着に沈んだ国。
最もたちが悪いのはそれに気づけず、黙殺している国民である。
本作中に「百姓・町民は欲望だけがあり、教養と知識がなく、ただ幕府に税金をとられるだけの非支配階級である」という記載がある。
日本国民もここからまったく進化していない。
無能を是とし、有能を堕としめて、無勉強で怠惰な国民が大多数を占めている。
今の日本にも維新が必要だ。
幸い、勝機はある。
インターネットの普及によって、少なくない若者はマスメディアからの洗脳を抜けつつある。
志と能力の高い若者は、上の世代が無能の塊であることに気づき始めている。
私も今の日本の志士の1人として、日本を再び世界の最前線に返り咲かせるべくリードしていきたいと思う。
坂本竜馬をはじめとする幕末の英雄たちに恥じない生き方をしていきたい。
Posted by ブクログ
大政奉還までの激動とエンディング
この大河小説を1週間強で読み切るくらい激動の時代だったことが改めて思い知らされる。
この本を読んで「坂本龍馬やっぱすごいな」で終わるのではなく、徳川慶喜の自己犠牲という判断、佐幕派の会津藩なりの意地、西郷隆盛の視点など…同じ著者の作品にも触れ、また深く歴史を勉強したいと思った。
また、自分は本当に愛国心がないのだが、なぜこの時代の人はここまで国のために命をかけて動こうと思ったのか…など改めて考えたい