【感想・ネタバレ】城塞(下)のレビュー

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豊臣家滅亡に向かっていく夏の陣。
豊臣方の牢人達が貫こうとする敗者の美学に惹きつけられた。毛利勝永の最期も描写してほしかったな。あと、上編で話を盛り上げたお夏の最期、あっさりしすぎてたのは残念。

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2023年05月13日

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ネタバレ

大坂方への壮大な鎮魂詩と言って良いと思う。また、狂言回しを真田幸村でもなく徳川家康でもなく小幡勘兵衛に担わせ、落城時のその悲喜劇のような場面が良い締まりとなっている

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2022年12月05日

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関西に住みながら一度も行ったことがない大阪城。この本を読んだおかげて、堀の中に入った際に、色々と感じることがあるはず。日本に帰国したらまず行って見たい場所の一つです。オリクロン感染拡大で帰らないけど。

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2022年01月16日

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司馬遼太郎、城塞の前に読んだのはなんだったか

この国のかたちを手にとって、一巻のちょっとだけ読んだ

俺は昭和史が嫌いというか、大平洋戦争前後の日本は醜悪過ぎて相手にしたくないので、読めなかった

それもあって?しばらく離れてたけど、高校生の頃の新撰組とか、徳川慶喜とか、楽しんで読んだのを思い出し

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2018年11月19日

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大阪冬の陣、夏の陣を扱った作品。「関ケ原」と比べ、こちらの作品での家康は、一層、老獪さを増し、豊臣勢を手玉にとる。悪役といってもいいほどの役回りである。
様々な登場人物の背景の解説の細かさや、心理の動きの描写はさすが。個人的には、不利な状況にあっても最後まで戦う真田幸村の姿が最も印象に残った。

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2018年03月13日

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ネタバレ

勝者家康の知略というよりも汚いやり口、徳川安泰のためには手段を選ばない嘘や恐喝の数々がことごとく成功することで読者の家康評を決定づける本編。対して真田幸村をはじめとした豊臣方武将たちの清々しさ、絶望の中でも正々堂々と知略と武力をもって真っ向から立ち向かう様にどうしてもひいき目が生じてしまいます。淀殿や秀頼を代表する愚物に従いつつも後世の名声をのみ欲する勇ましさ。そして終盤の、家康が大阪方に追われ逃げ惑う痛快な展開。真田十勇士をはじめ様々な寓話が生まれるのも道理と思われます。
人の心を操る陰と陽の好例を歴史上の一大事件のなかで鮮やかに描かれており、共感し学ぶことができます。
本編の主人公あるいは読者目線といえば小幡勘兵衛、そしてヒロインはお夏となるであろうが、残念ながら結局は歴史の傍観者である勘兵衛と創作キャラであるが故に大した活躍もなく、中途半端に創作する必要があったのか?のお夏の存在に疑問です。

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2018年03月05日

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小説のジャンルではあるものの、多くの部分は史料に基づいて書かれているものと思われる。
それゆえ、登場人物に対する著者の思い入れが少なく中立的、客観的に描かれており、これが読みやすさに繋がっている。ただし、家康を除いて。

家康に関しては、策士、戦略家と言ってもいいと思うが、どうしても狡猾性がデフォルメされ、前面に出てきてしまう。

とにかく上中下巻とボリュームたっぷり。
大阪冬の陣、夏の陣をじっくり読むにはオススメ。

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2018年01月28日

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あらゆる堀を埋められた大阪城での夏の陣。勝敗はすでに決し、その中で見どころはやはり真田幸村の活躍。華々しく死んで名を残すことだけを目指す武将がほとんどの大阪方の中で、彼だけは勝つことを決してあきらめない。綿密な作戦を練り、それがうまく行かなければ、次の策を練る。疲れることのない彼の精神と徳川方を蹴散らして突進する行動力は痛快だ。

こうした滅びに向かう美を描くことこそが司馬文学の真骨頂。そして、幸村の思考は戦闘のことだけではない。戦闘の合間に自身の娘を今日戦ったばかりの敵将、伊達政宗に託そうとする。そんな大胆な行為を見せる幸村に対して、それに応じる政宗。敵味方の関係を越えた2人の武将のやりとりは本巻の最高のエピソードだ。

幸村をはじめとする大阪方の武将たちの気迫に圧倒される徳川方。大阪の陣で徳川が勝てたのは、圧倒的な兵力差と家康の石橋を叩いて渡る知謀、そして淀殿を中心とする豊臣家の不甲斐なさが原因。

こうして燃え落ちる大阪城とともに、戦国時代は幕を閉じる。

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2017年12月13日

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・大きなものを崩すにはまず内側から。
・賢さというものは頭脳ではなく、意識。
・日本人が愛するのもは詩であり、
詩的な行動である。

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2016年09月27日

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大阪夏の陣。
家康の話と言うよりそれぞれの諸将たちなど全体像です。
真田幸村など魅力的な人物たくさん。
小幡勘兵衛、壇団右衛門なども。

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2024年01月22日

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 大阪の夏の陣での攻防が描かれる。攻める側と守る側のそれぞれのドラマが繰り広げられる。登場人物は多いがそんなに混乱することもなく読み進めることができた。

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2023年11月07日

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日本人(そしてこの作家)が「詩的」か否かでその人物の印象を決めるという指摘は間違いない気が。
でも、そうであれば家康という人物はもっと興味深く捉えてよいのでは?と逆に思ってしまいますな。ただこの作家はストーリーテラーという訳ではないので、そういう描写を要求するのは酷かなとは思いますけれども。
また、秀吉に明るさを感じるとかありえんと思いますけれども、当方からすると。
詰まるところ、前から思ってましたけれども、この作家はやっぱり、昭和の、そして男の作家なんだろうと思います、良くも悪くも。

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2022年09月09日

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小幡勘兵衛を主人公にして描かれた物語。大阪落城までのドラマ。家康は細心の注意を払って、全身で演技をし、豊臣家を潰した。
この大阪の陣こそが、後に260年もの太平の世を築く本当の意味での礎となったのであるが、結局は家康自身が禍根を絶ってしまったことがやはり大きな要因。
様々な人物の子孫、家への思い、主君への忠誠など、様々なものが知れて良かった。

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2022年02月13日

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勝者と敗者の心理が劇的に描かれている。
豊臣方の最後は悲惨で、家康の狡猾さが強調されるが、これにより200年の泰平が続いたことを思うと家康はやっぱり偉大だなと思う。

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2021年03月06日

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面白かった。
家康が細々と布石を打って
これぐらいやらないと
安心して死ねないよね。

大昔、大河ドラマで欣求浄土、厭離穢土
唱えていて
子供心にすんごい綺麗事だなと
思ってました。
ここまでやってくれると清々しい。

でも狂言回しの主人公あんまり、
お夏だって、やっぱり。

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2020年10月13日

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徳川家康の悪役扱いは皆様も書かれている通りです。
ただ、落城後の家康の描写には考えさせられるところがありました。数百年の太平のために徳川家康という人間を守り、表現しなければならなかったのか、という感想を抱きました。
また、豊臣家の自害を迫るシーン、あれは徳川のせめてもの温情なのでしょうか。それとも武士たちの憐憫の想いからでしょうか。何よりあの豊臣家を憐んでいたのは著者ではないかなと思います。
各陣営の心境にここまで丁寧な描写があるのはさすが司馬遼太郎氏です。本多忠朝や松平忠直の逸話もしっかり加えており、昔の大河ドラマで言われていた毛利勝永陣営の暴発についても丁寧に記述されていました。ただ、彼特有の余談、も多くありましたが・・・。

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2020年04月28日

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夏の陣における徳川側・豊臣側の内幕が生々しく描かれている。総じて徳川側の戦略勝ちだが、大阪城で死に花を咲かせるために自らの生き様を貫いた武士達(真田幸村、後藤又兵衛など)にも心を揺さぶられた。

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2020年02月25日

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家康がこれでもかと言うほどねちっこい。あらゆるところに謀略を打っていて、やり過ぎじゃないの?というほどの用意周到っぷり。
そしてそれにまんまとハマり続ける淀殿と大野治長にイライラする。
絶望的な状況の中での真田幸村の一瞬の奮闘が唯一の清涼剤。死を覚悟して儚く散る漢達の最期の輝きに胸打たれるが、全体を通して俯瞰するとやはり家康の凄まじさに感心する。

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2019年07月01日

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ネタバレ

大坂冬の陣後の休戦状態から、大坂夏の陣の終わりまで。
誰がどういう理由でその役に付くことになったのか、どうしてこうなるに至ったのかがなど広く細かく描かれている。
小さな点を積み重ねていき、大局が出来ていくのだなと実感できる。
その分というか全体的に盛り上げるべきところ、熱を入れて読みたくなるであろう所をあえて外して、淡々と簡素に進めてある。
特に大坂方の武将勢については家康に比べ描写がかなりあっさりしている。心情風景などに深入りすることがあまりない。最期の奮闘というのも薄味。
彼らの個人個人の想いや行動を読みたいと思っていると、肩透かしを食らうと思う。
その中でだが体感では後藤又兵衛が一番濃厚に描かれ、次点が真田幸村だったかと思う。
真田はどうも他に短編が出ているようなので、そちらで補完してくれということかもしれない。
あくまで全体的に同じ熱量で描写しているという体だと思う。
それがこの作品の作風にもなっていて、熱狂しているはずの最後の大戦をどこか冷えた感覚で読むことが出来る。物語を俯瞰しているという気にさせてくれるのだ。

秀頼の最期について、実際は毛利勝永が秀頼の介錯をしたのだが、今作では違う形になっていた。
それはそれで寂しい雰囲気が漂っていて悪くないのだが、そこの描写に期待していたので個人的には残念。
有名所はこの後どうなったという点に触れられているのだが、最後の見せ所を失った毛利はその説明もなく。少々不憫…。

作中で「古今にない」とか「史上類を見ない」というような表現が頻出するのだが、本当にそうなのか?誇大では…と疑問が。真偽のほどは分からない。

上巻で大物風を吹かせて主役格の動きをした小幡勘兵衛は、当然後藤や真田のような活躍を見せることも無く、名を馳せることも無く、すっかり小さな男になってしまった。
作中で半生を無駄にしたというようなことが書かれていたが、本当にそうだなと。そしてこの程度の事を考え、実行した有象無象が多くいた時代なんだろうなとも。
身の丈に合わない自信や成り上がりをこの時代に夢見た男の代表として、彼は描かれたんだろうと思う。
この点現代にも通じる部分があるように思えて、少し考えさせられる。

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2018年05月18日

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ネタバレ

大坂の冬の陣・夏の陣を、戦が始まるきっかけから大坂城落城まで描いた歴史小説。
2016年大河ドラマ「真田丸」の予習として読んだ。
主人公は小幡勘兵衛という牢人で、後に軍学者となる人物。彼は、戦の表舞台には立っていないが、徳川方の間諜として豊臣方に入り込んでいた人物であるため、両者を行き来しつつ狂言回しとして物語を進めていく。でも、途中で時々、全く登場しなくなり、誰が主人公だっけ?となることも。司馬小説ではよくあることだけど(いわゆる「余談だが現象」)。

たまに勘兵衛が、恋人お夏のために豊臣方に肩入れして徳川を裏切りそうになり、その場面だけはグッとくるものがあるのだけど、最終的には打算と私利私欲で動く人物なので、途中からはそんなに感情移入は出来ない。

それ以外の、戦の表舞台に立つ登場人物は以下の人達
豊臣:淀殿、豊臣秀頼、大野治長、真田幸村、後藤又兵衛、片桐且元
徳川:徳川家康、徳川秀忠、本多正純、本多正信

どの人物も、何かしら足りないところや汚いところがあって、他の司馬小説の主人公(竜馬・高杉・土方・信長・秀吉ら)みたいに純粋にカッコいいと思える人はいない。でも、その人間臭さこそが、司馬さんが群像劇としてこの小説を描いた意味なのだろう。

そして、女優で歴女の杏さんが本の帯か何かで書いていた、『最強の城も、人間や組織次第でこうも簡単に滅びるのか』みたいなことが、この小説の一番のテーマ。最強の城と、実戦経験豊富な現場担当者。これらが揃っていながら、なぜ大坂城は落ちてしまったのか。上に立つ者が世間知らずでマヌケだったから、なのだろうけど、その一言だけでは片づけられない、数々のボタンの掛け違いによる失敗から学ぶことは多い気がする。

以下、印象に残ったエピソード

片桐且元の豊臣方から徳川方への転身
- 豊臣を裏切る気持ちは無かったのに、家康の策略と豊臣上層部の疑心暗鬼から、やること全て裏目に出て、転身せざるをえなかった片桐且元。豊臣への忠誠心は誰よりも強かったはずなのに、最後は大坂城へ向けて大砲を打つことまでさせられた彼の心境は、言葉に出来ない。人と人との些細な擦れ違いから、人生を狂わされてしまうこともあるのだ。大河ドラマ「真田丸」小林隆さんの悲喜劇入り混じった演技も、印象深かった。

大坂五人衆集結
- 真田幸村、明石全登、後藤又兵衛、毛利勝永、長曾我部盛親ら五人衆。戦う場所を欲して、家の再興、キリスト教布教許可など、各々の理由を持ちつつ大坂城に集まって来て、団結して戦いに臨む。大河ドラマと並行して読んでいたため、映像とシンクロしてワクワクして読み進めた(負けるのは分かっているのだけれど)。
犯罪者家康と、純粋な豊臣方牢人たちとの対比

- 司馬さん曰く、徳川家康の大坂攻めは戦争というよりも、本質は「犯罪」(主家である豊臣家に対し、騙したり、約束をすっとぼけたり、内部分裂させたりしたから)。家康をとことん悪人に描いているが、それは彼が「後世にどう思われるか」という発想が無かったから、との解釈。一方、真田幸村・後藤又兵衛ら大坂方牢人は、豊臣が滅んだら他に頼るものが無いわけで、自然、死を恐れず武名をあげ、後世に向かってよき名を残すことに純粋に研ぎ澄まされていくようになる。それぞれの生き方の違いだったのだろう。

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2017年02月16日

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多少の着色はあろうが、家康の思慮深さと人身掌握術を見れば大坂夏の陣は当然のごとく東軍の勝利になるのだが。
この翁が見ていたのは、その戦の先にあることだったのか…改めて恐ろしい御仁である。
彼が経験してきた70年と言う歳月がここまでの策謀を張り巡らせる智謀を備えさせたというべきか…

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2017年01月29日

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ネタバレ

圧倒的に徳川方が強かったのか...と思っていたら、実は冬の陣でも負けそうな場面があった。関ヶ原からの十数年経つと、戦を経験してきた年代が亡くなり、それより若い世代が戦を未経験で、徳川方も将となる人が不足していたようだ。

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2016年08月16日

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国盗り物語、新史太閤記、覇王の家、関ヶ原、播磨灘物語、功名が辻、そしてこの城塞と司馬遼太郎さんの戦国物語を読み終えた。最終的に天下人となった徳川家康の負の部分が色濃く描かれており、読んでいて少し重たい気分になった。
徳川家康は江戸幕府を創設した。日本に平和をもたらすという大きな役割を果たしたが、日本から様々な進歩を取り上げるという愚もおかしてしまった。結局は徳川家のことだけを考えていたのだろうか。。

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2013年12月10日

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これぞ司馬遼太郎の戦国ものだよなぁ。
最後は唯一の創作人物お夏のシーンで終わるのが印象深い。
女を饅頭をくうように扱う男が好きである、お夏は今でいうハードボイルド系が好きということであろうか。
違うか。

終始一貫して豊臣秀頼の描写が好きだった。

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2015年07月14日

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家康の布石は見事に効いた。
おバカの大野修理をおだてることで、幸村ら能力者の意見はしりぞけられていく。

『和漢いずれにせよ、衰亡してゆく権力が過去にたどってきた法則的な道を、豊臣家はあらためて法則どおりに辿ろうとしていた』(p38)

普通にやれば勝てるはずの戦で、家康は、「さらにもう一手」を打つのを怠らない。その周到さ!

家康によって最後の手段である秀頼出陣を阻まれた幸村は『古今の悪人とは駿府翁のことかな』(p467)と嘆じた。この物語で最も残酷で悲しいシーンの一つではなかろうか。

しかししかし、それでも、ぎりぎりまで運をみすてない幸村の執念には、驚嘆するほかない。その姿から、生きる力をもらった。最後の最後まで、全力で生きてみよ――その通りだ。

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2024年05月10日

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戦国絵巻のクライマックス。登場人物が多く、長いのでそれなりに読み進めるのが大変ではあります。あくまで司馬史観ではありますが、大坂の陣で豊臣家を滅亡させたことが徳川三百年の太平の世を作ったことがよくわかります。大阪の地名がたくさん出てくるので、大阪に縁のある方は楽しく読めるかもしれません。

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2020年04月26日

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豊臣家の滅亡と戦国時代の終焉を描いた本。家康の嘆きや心配事が会社の会長に思える。いつの時代も老人の悩みは同じなのだろう。淀君さえいなければ豊臣家は復興できたのかもしれなれないと読むほどに思う。そして、自分の子どもは選択できる大人に育てたいと強く思った。真田幸村、後藤又兵衛、かっこよすぎる。これで司馬遼太郎の国とり物語から始まる戦国物は読破できたのではないか。なんか達成感があるな。

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2015年08月12日

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 大坂夏の陣。
 ついに、大坂城がおちる。

 敗退を覚悟しながら、それぞれの思いを持って戦う大坂方の武将たちの生きざまがすごかった。戦の初めは作戦で勝つが数で勝てない。後続の部隊がいない大坂方と違って、徳川方は倒れても倒れても、次の部隊が出てくる。まるで使い捨て。
 真田幸村を初めとする勇士たちは、死を覚悟しながらも、家康さえ倒せば情勢が逆転するかもしれないというわずかなのぞみにかけて、死闘をくりひろげる。
 
 戦は武力だけでは決まらない。
 世の流れに真っ向から逆らっても勝つ事はできない。

 どんなに優秀でも環境と折り合う範囲でしか、その力をいかす事はできない。
 家康は微妙な情勢をきめ細かに読み、きめ細かな対応をとった。そして、これまでの生き方やそこで作ってきた流れがあったから、勝利をもぎとる事ができたのだと思う。

 大坂方の滅びた武将たちには、無念さがあったとしても後悔はないと思う。
 それは、覚悟して自分で決めた生き方だから。
 「主体的に生きる」とは、そういう事なのかもしれない。

 徳川方は、情勢をよんで自分を守るためにふるまう武将が多い。それも世を読むという事なのだろう。

 特に世の流れに疎かったのが、大坂の淀殿。そして、淀殿によって世間知らずに育てられた秀頼。

 全編を通して、大坂城はずるずると崩壊していった。
 起点は関ヶ原。ちょこちょこと出てくる石田三成という名が、それを思い出させる。

 秀吉の世の象徴であった強大な城塞がこの世から消えた。
 それはただ城が消えたという事ではない。徳川の世が決定的なものとなった瞬間だった。

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2013年09月26日

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城塞(上・中・下巻)と読み終えた。
歴史は勝者によって作られる。というが、世間で言われているほど秀吉の後継者秀頼は「あほう」では無かったように思われる。
老獪なタヌキ(家康)の天下取りへ向けた、並々ならぬ思いの強さ。また経験の豊富さによって、全国の大名達は必然的に旧恩を棄てる事となる。人心掌握の術もさることながら、時間軸も含めたマクロの視点で状況分析出来る人物だったのであろう。
一方、大阪方の面子も急ごしらえとはいえナカナカ個性的かつ強力な人物が豊家のためにと集い、適切な指揮命令系統があれば、歴史は翻った可能性も否めない。
この翌年に大御所は世を去る事となったと記憶するが、時間的にもギリギリの機会をモノにする。運命をたぐり寄せる大きな力を持つ人物であるが故、現代で神と崇められる存在となり得たのか。
ヒトの心の弱さともろさ、功利主義的思考がよく見え、現代の処世術でも学ぶ部分は大きくあると感じた作品であった。

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2013年08月28日

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 堀を埋められた大阪城は裸同然である。大阪夏の陣では当然、野外戦となるわけだが、城攻めが苦手な家康には分がある。冬の陣、真田丸で大健闘の幸村も、家康に勝利することはかなわないとあきらめムードがただよう。長宗我部元親の四男、盛親も大阪で安穏とはしれいられず、大阪城入城を果たす。それを知った、今は浪人の身分である家臣団が大阪に集まるくだりは泣ける。かれらは武士をして死ぬことを選ぶのだった。

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2012年06月28日

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